土地を相続する際、何から手をつけるべきか迷う方は多いでしょう。相続の際は費用や税金が発生します。
本記事では、土地相続の基本的な流れや費用、税金を抑える方法についてわかりやすく解説します。土地相続に関する理解を深め、余裕をもって手続きを進めましょう。
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Contents
1.土地を相続する手続きの流れ
土地を相続する際には、多くの手続きを一つひとつ正確に進めることが大切です。ここでは、土地を相続する際の流れを解説します。
1-1.遺言書の有無を確認する
土地を相続する際に最初に行うべきことは、遺言書の有無を確認することです。遺言書の内容が相続において最も優先されるためです。遺言書には、以下の種類があります。
- 自筆証書遺言:遺言者が全文、日付、氏名を自分で手書きして、押印をする遺言書
- 公正証書遺言:公正役場で証人2人以上の立会いのもと、公証人が作成して公証役場で保管される遺言書
- 秘密証書遺言:遺言者が作成して、署名・押印し、封筒に入れ、遺言で用いた印で封印し、公証人が内容を確認せずに保管する遺言書
被相続人(亡くなった方)の自宅で遺言書が見つからない場合は、公正証書遺言や秘密証書遺言として公証人役場に保管されているケースがあるため、調べてもらいましょう。
遺言書が発見されないまま手続きを進めると、あとで発見された場合に再度手続きが必要になることがあるため、注意が必要です。
1-2.相続する遺産の内容を把握する
遺言書の確認が終わったら、相続する遺産の内容を把握することが必要です。例えば、被相続人が所有していた以下のような財産と負債をすべてリストアップします。
- 土地
- 建物
- 預貯金
- 株式
- 負債
土地がある場合、借りている土地(借地権)でないか確認もしましょう。借地権は何十年と長い期間が設定されるため、相続人が借地であることを知らないといった場合もあります。
借地権もそのまま相続ができますが、期間の定めがあり、原則として更新が無しとなっている定期借地権の可能性もあるため注意しましょう。
土地や建物に関しては、登記事項証明書(登記簿謄本)を取得し、地目や地積、所有者名義などの情報を確認します。また固定資産税評価証明書を用いて、土地の評価額を把握しておきます。この作業により、どの財産が相続の対象となり、相続税の計算や遺産分割協議にどのように影響するかが明確になります。
遺産の全体像を把握することで、相続手続き全体の計画が立てやすくなり、後々のトラブルを防ぐことが可能です。
1-3.遺言状がない場合は遺産分割協議を行う
遺言書が存在しない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。遺産分割協議とは、相続人全員が話し合いを行い、誰にどの財産を相続するか決める方法です。
協議には、相続人全員の同意が必要で、誰かが反対すると話し合いが成立しません。そのため、全員が納得できる形で協議を進めることが重要です。
協議内容は必ず書面に残すようにします。遺産分割協議として残したうえ、相続人全員が署名・捺印することで、後のトラブルを防ぐことができます。
土地の場合、分割が難しいケースが多いため、売却して現金で分けるか、共有持分で相続するかなどの方法を検討するようにしましょう。
協議がまとまらない場合は、家庭裁判所での調停や審判を申請することも考慮しますが、時間と費用がかかるため、可能な限り相続人同士で解決することが望ましいです。
1-4.相続登記に必要な書類を揃える
遺産分割協議が無事に完了したら、相続登記に必要な書類を揃えましょう。相続登記とは、被相続人が所有していた土地の名義を、相続人に変更する手続きです。
相続登記には、以下のような書類が必要です。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)
- 相続人全員の戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)・印鑑証明書
- 相続人のうち新たに所有者になる方の住民票
- 遺産分割協議書
- 固定資産課税明細書
これらの書類がすべて揃っていない場合や、書類の内容に不備がある場合、相続登記の申請が受理されなかったり、再提出を求められたりするため、注意しましょう。
なお、各自治体や法務局、役所で発行されるため、取得に時間がかかることがあります。時間に余裕を持って準備を進めることが、スムーズに手続きを行うポイントです。
1-5.相続登記を行う
相続登記は、2024年(令和6年)4月1日から義務化されており、遺産分割を行った場合は遺産分割が成立した日から3年以内、遺言などによる相続の場合は、所有権の取得を知った日から3年以内に申請を行うことが法律で定められています。
相続登記の義務を怠ると、10万円以下の過料が科される恐れがあるため、必ず期限内に手続きを完了させることが必要です。
相続登記は法務局で行い、申請書と共に必要書類を提出します。申請が受理されると、登記簿上の所有者名義が相続人に変更され、正式に土地の所有権が移ります。相続登記を行うことで土地の売却が可能です。
手続きをスムーズに進めたい場合、相続登記を司法書士に依頼する方法もありますが、司法書士報酬が必要となります。司法書士報酬を節約したい方は、相続登記の手続きを自分で行うことも可能です。
自分で相続登記を行う方法については、以下の記事でも詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
1-6.相続税の申告・納付
相続税の申告と納付は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に行う必要があります。原則、金銭で一括で納付します。
相続税を一括で納付できない場合は、特別な事由や条件がある場合に限り、延納や物納といった制度を活用することも可能です。利用する際は事前に税務署に相談して、必要な手続きを行いましょう。
相続税の申告は複雑なため、税理士に相談することで、適切な対応ができます。特に、複数の相続人がいる場合はトラブルになりやすいため、専門家のアドバイスを受けることがおすすめです。
2.相続した土地を分ける方法
相続時に複数の相続人がいる場合、土地をどのように分けるかが大きな課題となります。土地は他の財産と異なり、そのまま分けるのが難しいため、相続人の間で慎重な話し合いが必要です。
土地の分け方には、以下の4つの方法があります。
- 現物分割:土地を物理的に分けて相続人に分配する方法
- 換価分割:相続した土地を売却した代金を相続人に分配する方法
- 代償分割:一人が相続した土地を取得する代わりに他の相続人に現金や他の財産を支払う方法
- 共有分割:相続した土地を複数の相続人が共同で所有する形で分割する方法
- 現物分割
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メリット:十分な広さがある場合、広い土地を複数の相続人がそれぞれの名義で分割して所有し、各自が自由に利用することが可能です。
デメリット:土地の面積や形状によっては均等かつ十分に分けるのが難しいため、不公平感が生じることがあります。物理的に分割する際に、土地の価値が下がることも考慮することが必要です。
- 換価分割
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メリット:土地を売却して現金化することで、相続人同士で公平に分配しやすいです。それぞれが均等に現金を得られるため、各相続人が独立して資産を利用できます。
デメリット:売却までに時間がかかり、それによって売却価格が安くなるリスクがあります。
- 代償分割
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メリット:他の相続人に代償金を支払うことで、土地をまるごと相続できます。物理的に分割しにくい形状の土地でも、相続問題の解決が可能です。また、売却を急ぐ必要がないため、適切な時期に資産を管理・売却できます。さらに、小規模宅地等の特例を活用することで、評価額を減額して節税効果を高めることができます。
デメリット:代償金の用意が必要になるため、資金調達が困難な場合は実現が困難です。また、代償金の額については、相続人全員の同意が必要となり、交渉しなければなりません。
- 共有分割
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メリット:複数の相続人が共同で土地を所有することで、維持管理がしやすいです。大規模な土地を1人で管理するのが難しい場合がありますが、共有することで相続人全員が負担を分担できます。
デメリット:相続人同士で意見の相違が生じると、財産の管理や処分が難しくなり、トラブルの原因になります。
土地の相続について詳しくは、以下の記事でも解説しています。ぜひご覧ください。
3.土地を相続放棄したい場合は3か月以内に!
土地を相続したくない場合、相続放棄ができます。相続放棄をすると、土地や財産だけでなく、借金や未払いの税金などの負債も引き継がなくて済みます。
特に、相続する土地に多額の税金や管理の負担がかかる場合や、被相続人に多額の借金がある場合には、おすすめの選択肢です。
手続きとしては、相続が開始されたことを知った日から3か月以内に家庭裁判所に対して「相続放棄申述書」という書類を提出します。
出典:“相続放棄申述書”. 裁判所.(参照2024-08-16)
申述書には、相続放棄をする理由や相続人の情報を記入し、提出後、裁判所が内容を審査します。審査が終わり、裁判所から認められると、相続放棄が正式に成立します。
手続きの期限を過ぎると、相続放棄ができなくなり、自動的に相続人としての権利と義務が確定します。相続放棄を検討しているなら、まずは弁護士もしくは司法書士に相談し、確実に手続きを進めるようにしましょう。
4.土地を相続した際にかかる費用と税金
土地を相続する際には、以下のような費用と税金が発生します。
4-1.司法書士の報酬
土地を相続する際、相続登記や書類作成を司法書士に依頼することが一般的です。司法書士の報酬は、依頼内容や土地の評価額に応じて異なりますが、相場としては5~8万円程度です。
また、遺産分割協議書の作成や相続人の調査を依頼する場合は、さらに費用が加算されることがあります。
司法書士に依頼することで、複雑な手続きや書類作成をスムーズに進めることができますが、その分の費用がかかる点を考慮する必要があります。
複数の司法書士から見積もりを取り、比較検討することがおすすめです。
4-2.必要書類を用意するための費用
相続手続きを進めるには、以下の書類が必要です。
- 被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)
- 相続人全員の戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)
- 新しく名義人になる方の住民票
- 固定資産評価証明書 など
被相続人の戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)を揃える際、転籍をしていなければ1つの市区町村役場で取得が完了します。
しかし、転籍歴がある場合は、過去に本籍地があった市区町村役場から戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)を取り寄せる必要があり、費用や手間が増える可能性があります。
これに伴う費用は、各自治体ごとに異なるため、事前に確認しておくことが重要です。
東京都の場合1通450円となります。また固定資産評価証明書は、土地の評価額を正確に把握するために必要となり、東京都の場合、発行手数料が1件目は400円(2件目以降1件100円)かかります。
遠方の役所から書類を取り寄せる場合には郵送料も別途発生します。
必要書類をあらかじめ把握しておき、早めに揃えておくことで、相続手続きをスムーズに進めることが可能です。
4-3.登録免許税
土地を相続した場合、相続登記を行う際に登録免許税が発生します。登録免許税は、土地評価額の0.4%が課税されます。
例えば、土地の評価額が1,000万円の場合、登録免許税は4万円です。登録免許税は、相続登記を行う際に法務局に納付します。
また、相続人が複数いる場合には、相続持分に応じて登録免許税を分担して支払います。
4-4.相続税
相続税は、相続した財産の総額に対して課税される税金です。相続財産の総額から基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を差し引き、その残額に対して課税されます。
例えば、相続財産が5,000万円で、法定相続人が2人いる場合、基礎控除額は4,200万円(3,000万円+600万円×2)となり、課税対象額は800万円となります。
税率は課税対象額に応じて設定されており、このケースでは、800万円に対して10%の税率で相続税(80万円)が課されます。相続財産が多いほど税率も段階的に上昇し、高くなる仕組みです。
相続税は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に申告・納付する必要がありますが、納付期限を過ぎると延滞税や加算税が発生するため注意が必要です。
相続税の計算方法や控除の適用について詳しくは、以下記事でも解説しています。ぜひご覧ください。
5.土地を相続した際に発生する税金を抑えられる特例
土地を相続する際に特例や控除を活用することで、相続税の負担を軽減することが可能です。ここでは、相続税を抑えるために最も効果的な「小規模宅地等の特例」と、さらに併用できる控除について詳しく解説します。
5-1.小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例を使えば、一定の条件を満たした宅地については、評価額が最大で80%減額されます。例えば、相続する土地が5,000万円の評価額であっても、この特例を利用すれば評価額は1,000万円まで減額されるため、相続税が大幅に減少します。
この特例は、被相続人が居住していた宅地や事業に使用していた宅地が対象となります。さらに、相続後もその土地に配偶者や同居していた親族が引き続き住む、または事業を継続することが条件です。
出典:“No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)”. 国税庁. (参照2024-08-16)
土地を相続する際には必ず適用の可否を確認し、必要な手続きを行うことが重要です。
5-2.小規模宅地等の特例と併用できる控除
「小規模宅地等の特例」に加えて、相続税の負担をさらに軽減するために併用できる6つの控除があります。以下では、それぞれの控除について解説しています。
- 基礎控除
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すべての相続に適用される基本的な控除で、相続税の計算から最初に差し引かれるものです。具体的には、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」という計算式で算出されます。
- 配偶者控除
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配偶者が相続する財産に対して適用される控除です。配偶者が相続する財産については、1億6,000万円または法定相続分のいずれか大きい方の金額までが非課税となります。
- 贈与税額控除
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相続開始前3年以内に、被相続人から贈与を受けていた財産にかかる贈与税を、相続税額から控除できる制度です。例えば、被相続人が生前に贈与を行い、その贈与税を支払っていた場合、その分を相続税から差し引くことで二重課税を防ぐことができます。
- 未成年者控除
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相続人が未成年の場合、18歳(※)に達するまでの年数に応じて、1年につき10万円が相続税から控除されます。未成年者が安心して生活できるよう、相続税の負担を軽減するための制度です。
※2022年(令和4年)4月1日より前に相続または遺贈により財産を取得した人は20歳未満
- 障害者控除
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相続人が障がい者である場合に適用される控除です。85歳に達するまでの年数に応じて、1年につき10万円(特別障がい者の場合は20万円)が相続税から控除されます。
- 相次相続控除
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前回の相続から10年以内の短期間に相続が続いた場合、前回の相続から10年以内に再度相続が発生した場合、前回の相続税の一部を今回の相続税から控除することができます。
相続税の申告を行う際には、これらの控除が適用できるかどうかを確認し、最適な節税対策を講じることをおすすめします。
まとめ
土地の相続には、相続税の負担や手続きの複雑さが伴いますが、特例や控除をうまく活用することで、負担を軽減することが可能です。
また、相続した土地を「そのまま保有するか売却するか」という選択肢がありますが、売却を考える場合は、適切なタイミングで行動を起こすことが大切です。計画的に手続きを進めることで、売却による利益を最大化できる可能性があります。
相続した土地の売却を検討されている方は、「不動産売却 HOME4U(ホームフォーユー)」の一括査定サイトを利用して、最適な売却価格を確認し、早めに動き出すことをおすすめめします。
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