土地を相続する際、兄弟でもめることがあります。遺言書がない場合や不動産の割合が高い場合、特に気をつける必要があるでしょう。
本記事では、兄弟で円満に土地を相続するための5つの方法を解説します。土地の売却・分筆をする際の注意点なども紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
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Contents
1.兄弟が土地の相続でもめる主な理由6つ
土地を相続すると、さまざまな理由から兄弟でもめることがあります。ここでは、もめやすい6つの理由について解説します。
対策を講じて、円満に相続手続きを進めましょう。
1-1.遺言書がない
遺言書がない場合、相続人全員で遺産分割協議を行わなければならず、意見の対立が起こりやすくなります。
相続人それぞれが異なる立場や希望を持っているため、話し合いが難航するケースがあるのです。
相続財産が多岐にわたる場合や、不動産が含まれている場合は、状況はさらに複雑化するでしょう。
このようなトラブルを避けるためにも、事前に遺言書を作成しておくことが重要です。
1-2.遺留分を侵害された相続人がいる
土地の相続で兄弟がもめる理由の1つとして、遺留分を侵害された相続人がいるという問題が挙げられます。
遺留分とは、法律上保障されている最低限の相続権のことで、親族が遺言で「特定の相続人にだけ財産を多く渡す」といった取り決めを行った場合でも、相続人が持つこの権利は守られなければなりません。
たとえば、兄弟のうち一人が親から多くの財産を受け取ることになった場合、他の兄弟は「遺留分が侵害された」として、最低限の相続分の主張を行うことができます。この遺留分が無視されると、兄弟間で不公平が生じ、トラブルの火種になりかねないのです。
1-3.相続財産の割合が土地に偏っている
相続財産の中で不動産が大きな割合を占める場合も注意が必要です。
不動産は現金とは異なり簡単に分けることができないため、複数の相続人で公平な分配を実現することは容易ではありません。
不動産の公平な分配を実現するためには、売却による現金化も視野に入れましょう。
1-4.想定よりも現金が少なかった
相続財産の現金が想定より少ない場合も、もめやすいです。現金が不足していると、公平な分配が難しくなるためです。
相続財産の中に不動産がある場合、簡単に現金化できません。また、相続税の支払いも現金で行わなければならないため、現金の不足は相続人にとって大きな負担となるでしょう。
したがって、事前に正確な財産評価を行い、現金の不足を見越して対策を講じることが大切です。
1-5.寄与分の主張がある
特定の相続人が被相続人の財産形成や維持に特別な寄与をした場合、貢献度に応じて相続分を増やしてほしい、と主張することがあります。
これを寄与分と言い、被相続人の事業を手伝った場合や、介護を行った場合などが寄与分に該当します。
しかし、寄与分を主張した相続人とほかの相続人との間で貢献に対する評価が一致しないことが多く、トラブルの原因になります。寄与分の主張が受け入れられない場合、相続人同士の関係が悪化するリスクもあるでしょう。
寄与分を認めるためには、その貢献度を具体的に証明する必要がありますが、これは容易ではありません。
したがって、事前に相続人同士で話し合いを行ったり、弁護士などの専門家に相談したりすることが重要です。
1-6.特別受益の主張がある
特別受益とは、被相続人が生前に特定の相続人に対して行った贈与や経済的支援のことです。事業用資金や住宅購入資金の援助などが特別受益に該当します。
特別受益がある場合、その相続人の相続分からその分を控除することが求められます。
しかし、いくらからが特別受益に該当するという決まりがないため、特別受益の範囲や評価を巡って相続人同士で意見が対立し、トラブルに発展することがあります。
特別受益の主張がある場合は、相続人同士でその証明と評価方法についてしっかりと話し合うことが大事です。
特別受益の存在をほかの相続人が知らない場合は、事前に明瞭な説明を行いましょう。
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2.相続した土地を兄弟で分ける5つの方法
ここでは、代表的な5つの分割方法について解説します。
それぞれのメリット・デメリットを表にまとめました。
方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
遺産分割協議 | 相続人全員の合意により柔軟に分けられる | 合意が得られない場合、協議が長引く可能性がある |
相続放棄 | 一部の相続人が権利を放棄することで他の相続人がより多く取得できる | 相続放棄した相続人は他の遺産も受け取れなくなる |
代償分割 | 土地の価値を維持することができる | 代償金を支払う相続人に金銭的負担がかかる |
換価分割 | 売却によって現金化し、平等に分配できる | 売却手続きに時間がかかる可能性がある |
分筆による現物分割 | 相続人それぞれが土地の一部を所有でき、独立して管理・活用できる | 分割後の土地が小さくなり、価値が下がる場合がある |
相続した土地を兄弟で分ける方法はいくつかあります。各方法にはそれぞれメリットとデメリットがあるため、家族の状況や土地の特性に応じて最適な方法を選びましょう。
なお、遺産相続の相続順位と割合は以下のとおりです。
2-1.遺産分割協議
遺産分割協議は、相続人全員が話し合いを行い、相続財産をどのように分けるかを決める方法です。
相続人全員が合意したうえで、遺産分割協議書を作成します。そして、遺産分割協議書に全員が署名捺印することで法的に有効となります。
この方法では柔軟な分割が可能で、各相続人の希望を最大限反映することができます。
ただし、相続財産の内容が複雑な場合や、相続人同士の関係が悪化している場合は、話し合いが難航し、合意に至るまでに時間がかかることもあるでしょう。
2-2.相続放棄
相続放棄とは、相続人が自身の相続権を放棄することです。
家庭裁判所に相続放棄の申述書を提出し認められると、その方は最初から相続人でなかったものとみなされます。放棄された分はそのほかの相続人が相続することになります。
相続放棄はほかの相続人にすべてを譲りたい場合に有効です。
ただし相続放棄をすることで、ほかの相続人に負担がかかる可能性もあるため、慎重に判断する必要があるでしょう。
2-3.代償分割
代償分割は、特定の相続人が土地を取得し、その代わりにほかの相続人に対して現金などで補償を行う方法です。
この方法は土地を物理的に分割する必要がなく、土地の価値を維持することができます。例えば、特定の相続人が土地を将来的に利用する計画がある場合、有効な方法です。
ただし、現金での補償が必要なため、土地を取得する相続人の資金状況によっては実行が難しいケースもあるでしょう。
2-4.換価分割
換価分割は、土地を売却して得た現金を相続人の間で分配する方法です。
土地を現金に換えることで分割が容易になり、相続人全員が公平に相続できます。
しかし、売却手続きには時間がかかるほか、売却価格が予想より低くなることもあります。
相続した土地の売却を検討している方は、NTTデータグループが運営する「不動産売却 HOME4U」の利用が便利です。
2-5.分筆による現物分割
分筆による現物分割は、土地を物理的に分割し、各相続人がそれぞれの土地を取得する方法です。
分筆による現物分割は、土地を物理的に分割し、それぞれの相続人が土地を取得する方法です。最も公平な相続を実現できる方法と言えるでしょう。現物分割は共有物の分割方法として基本的な手段であり、訴訟でも優先されます。
しかし、現物分割にはいくつかの注意点があるため気をつけましょう。分筆が禁止されている不動産や建物などの場合、現物分割はできません。また、分筆によって土地が細かくなりすぎると、共有物の価値が著しく減少するため、裁判所が共有物の競売命令を出す可能性もあります。
さらに、完全に公平な分筆が難しい場合には、超過分の支払いを伴う一部価格賠償による現物分割も認められています。現物分割を行う際には、まず土地の分筆登記を行い、その後に分割後の土地について共有物分割を原因とする持分全部移転登記を進めましょう。
3.土地を売却して分割する際に気をつけたい点
土地を売却して得た現金を相続人同士で分割する方法は、土地の価値を公平に分配する手段の1つです。しかし、この方法にはいくつか気をつけたい点があります。詳しく見ていきましょう。
3-1.最低売却価格を決める
土地を売却する際には、最低売却価格を事前に決めておくことが重要です。共有状態で土地を売却する際に注意すべき点は、売却価格に対する判断が異なることでしょう。
共有物件の売却には、すべての共有者の同意が必要なため、価格に関する意見の一致が非常に重要です。
したがって、共有の土地を売却する際には、「いくら以上の買主が現れたら売却する」という最低売却価格をあらかじめ兄弟間で決めておきましょう。最低売却価格を設定するためには、複数の不動産会社に査定を依頼し、適正価格を把握することが大切です。
共同名義の土地の売却を検討中の場合は、「共有名義物件をスムーズに売却したい!3つのルールと注意点を解説」をご覧ください。
3-2.窓口役の謝礼も考慮する
土地の売却手続きにおいては、窓口役となる相続人が必要です。窓口役は売却の手続きや交渉を担当し、ほかの相続人に代わってさまざまな業務を行います。このような窓口役の負担を考慮し、謝礼を用意することが望ましいでしょう。
具体的な謝礼の金額は、ほかの相続人と話し合い、公平に決めることが重要です。窓口役の尽力に報いることで、売却手続きがスムーズに進むでしょう。
3-3.譲渡所得が発生した場合は税金を支払う
土地を売却して利益が出た場合、譲渡所得税が発生する可能性があります。
譲渡所得税の課税対象となるのは、売却価格から取得費用や譲渡費用を差し引いた金額です。譲渡所得税があることで、売却価格がそのまま手元に残るわけではないため、事前に税額を計算しておきましょう。
正しく計算するために、取得費用や譲渡費用の詳細がわかる資料や領収書などを用意しておく必要があります。
譲渡所得税の計算式は以下の通りです。
譲渡価額とは売却額のことを指し、譲渡費用は仲介手数料等の売却に要した費用です。
取得費は土地の購入価額になり、購入額が分からない場合は、概算取得費と呼ばれる譲渡価額の5%が取得費となります。相続した土地は取得費が分からないケースが多く、概算取得費を用いる場合が多いでしょう。
税率は土地の所有期間によって決まり、所有期間が5年超の場合、土地の譲渡所得は長期譲渡所得、所有期間が5年以下の場合は短期譲渡所得に分類されます。
所得の種類 | 所有期間 | 所得税率 | 住民税率 |
---|---|---|---|
短期譲渡所得 | 5年以下 | 30% | 9% |
長期譲渡所得 | 5年超 | 15% | 5% |
出典:「“No.3211 短期譲渡所得の税額の計算”. 国税庁. (参照2024-11-13)」
「“No.3208 長期譲渡所得の税額の計算”. 国税庁. (参照2024-11-13)」をもとに、お家のいろはが独自に作成
相続の場合、所有期間に関しては、被相続人の所有期間を引き継ぎ、被相続人がすでに5年以上保有していれば、長期譲渡所得の税率が適用されます。
土地や建物を売却した際の譲渡所得にかかる税金は、給与所得などの他の所得とは別に計算される分離課税となり、確定申告が必要です。売却の翌年には確定申告手続きを忘れずに行ってください。
譲渡所得税の計算方法については以下の記事で詳しく解説しています。
4.土地を分筆する場合の3つの注意点
土地を分筆して複数の相続人で分けることは、公平な相続を実現する方法です。しかし、分筆には多くの手続きと注意点があります。ここでは、土地を分筆する際の注意点について解説します。
4-1.分筆には境界確定が必須
分筆を行う際には、まず土地の境界を確定する必要があります。境界が不明確なまま分筆を進めると後々のトラブルの原因となるため、事前に測量士に依頼して正確な境界を確定してもらうことが重要です。
境界確定には、隣接地所有者の立会いや同意が必要になる場合もあります。これは、隣接地所有者が境界の位置に同意しなければ境界線が確定せず、分筆後の土地利用に問題が生じる可能性があるためです。
境界を確定するためには、測量図や登記事項証明書(登記簿謄本)などの書類も揃えておく必要があります。これらの準備を怠ると、争いの原因となるため、慎重に進めるようにしましょう。
境界確定測量について詳しく知りたい場合は、以下の記事をご覧ください。
4-2.接道義務を満たすように分筆する
土地の分筆は、分筆後の各土地が法律上の接道義務を満たすように行う必要があります。
接道義務とは、土地の道路に接する部分が一定の幅以上であることを求める規定であり、これを満たさないと建築許可が下りない場合があります。
接道義務は都市計画法や建築基準法に基づいて定められており、原則2メートル以上の幅が必要とされています。この義務を満たさない形で土地を分筆すると、その後に建物を建てることができず、土地の利用価値が大幅に低下するリスクがあります。
接道義務を満たすためには、土地の分筆の形状を工夫しなくてはなりません。
接道義務について詳しくは以下の記事をご覧ください。
4-3.無理な分筆はしない
無理な分筆を行うと、土地の利用価値が低下する可能性があります。
例えば、狭小な土地や形状が悪い土地を作ると、売却時に不利になることがあるでしょう。
分筆を検討する際には、土地の形状や利用価値を考慮し、無理のない計画を立てることが重要です。
具体的には、分筆後の各土地が利用しやすい形状であるか、建築可能なスペースが確保されているかを確認しましょう。
また、土地の市場価値も考慮することが大切です。無理に分筆を行うことで、土地全体の価値が下がることもあるため、専門家のアドバイスを受けながら計画を進めるとよいでしょう。
以上のことから、土地を公平に分筆するのは難しいのが現状です。兄弟で公平に遺産を分割するためには、土地を売却して現金化する方法が現実的と言えます。
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5.トラブルが起きた際の解決法
相続におけるトラブルは、兄弟間の話し合いだけで解決が難しい場合も多いです。ここでは、トラブルが発生した場合に取れる具体的な解決方法を説明します。
5-1.話し合いの場に司法書士などを同席させる
まず冷静に話し合いを行う場を設けましょう。それぞれの意見や不安を共有し、立場を理解し合うことが重要です。円滑なコミュニケーションを図るために、第三者である司法書士などを同席させるのも有効な手段の1つです。
5-2.家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てる
話し合いや専門家への相談でも解決が難しい場合、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てる方法があります。調停では、裁判所の調停委員が仲介役となり、兄弟間の公平な話し合いが行われます。この際、法的な立場から解決策を見つけるため、トラブルが解決しやすくなります。
まとめ
兄弟で土地を相続する際、もめる理由は遺言書がないことや、相続財産の中で不動産が占める割合が多いことなどが挙げられます。
土地を相続する主な方法は、「遺産分割協議」「相続放棄」「代償分割」「換価分割」「分筆による現物分割」の5つです。
ただし、土地を売却して分割する場合と、土地を分筆する場合には、それぞれ注意しなければならない点があります。それらを踏まえて、兄弟でよく話し合い、土地の相続方法を選ぶことが大切でしょう。
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