家を相続した際に必要な手続きの流れを全解説!費用や税金、家の分け方も

家を相続した際に必要な手続きの流れを全解説!費用や税金、家の分け方も

家を相続した際には、相続登記を行い、相続税の申告をする必要があります。そのため、相続のためにどのくらいの費用や税金を支払うことになるのかも、事前に知っておくことが大切です。

本記事では、家を相続した際に必要な手続きの流れや、相続時にかかる費用・税金などについて詳しく解説します。

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1.家を相続する手続きの流れ

家を相続する手続きの流れ

はじめに、家を相続する手続きの流れについて解説しましょう。

不動産を相続する際の手続きは、以下の手順で行います。

1-1.遺言書の有無を確認する

最初に行うのは、遺言書の有無を確認することです。

遺言書が残されている場合は、原則として、その内容に従って相続手続きを進めます。

遺言書の種類は、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3つで、それぞれの詳細は以下のとおりです。

自筆証書遺言 公正証書遺言 秘密証書遺言
作成方法 遺言者が遺言を全文手書きして、押印 公正役場にて証人2人以上が立会い、
遺言者が述べた遺言の内容を公証人が筆記して作成
遺言書の内容を秘密にしたまま保管するために、
封をした封筒の中に遺言書が入っていることを証明する公正証書の手続きを行う
保管方法 遺言者が管理
(法務局でも可能)
公証役場で保管 遺言者が管理
家庭裁判所の検認 必要 不要 必要
メリット ・費用がかからない
・手軽に書き直せる
・遺言内容を秘密にできる
・無効になりにくい
・紛失のリスクがない
・遺言内容を秘密にできる
・偽造や変造などを防げる
デメリット ・要件を満たしていないと遺言が無効になる
・紛失する恐れがある
・手間と費用がかかる
・証人2人以上が必要
・公証人が作成するのは遺言書の封紙面のみのため、遺言の内容に不安が残る
・紛失する恐れがある

自筆証書遺言や秘密証書遺言は、家庭裁判所が遺言書の内容を確認する「検認」の手続きが必要です。そのため、相続人は遺言書を見つけても勝手に開封してはいけません。

1-2.相続する遺産の内容を把握する

遺言書の有無を確認したあとに行うのは、相続する遺産の内容を把握することです。具体的にどのような遺産が残されているのかを確認します。

相続財産の主な種類は、「金融機関の預貯金」「有価証券」「不動産」の3つです。

ここでは、家を相続する場合の確認方法について解説しましょう。

亡くなった方が不動産を所有していたかどうかは、市区町村から毎年4月頃に送付されてくる「固定資産税の納税通知書」で調べます。

ただし、建物の課税評価額が20万円未満であるなどの理由によって課税対象外の場合は、納税通知書が送付されないため通知書での把握ができません。共有不動産の場合も、代表者でなければ通知書が送られてこないため、わからないケースもあります。

被相続人が所有していた不動産を正確に確認するためには、被相続人名義の固定資産評価証明書を取得しましょう。この方法であれば、非課税の不動産や共有不動産についても確認できます。

1-3.遺言状がない場合は遺産分割協議を行う

遺言状が残されていない場合は、相続人間で遺産分割協議を行います。

遺産分割協議とは、法定相続人全員で被相続人の財産の分割方法について話し合うことです。全員で話し合った結果を遺産分割協議書にまとめます。

遺産分割協議では遺産の配分を巡ってもめることも多いため、法定相続人全員が納得できるよう十分に話し合う必要があります。

遺産分割協議を行っても意見がまとまらない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立て、調停員の仲介のもとで当事者同士が話し合います。それでも決まらない場合には自動的に審判へと移行する流れです。

1-4.相続登記に必要な書類を揃える

遺産分割の内容が決まったら、相続登記に必要な書類を揃えます。

相続登記に必要な書類は以下のとおりです。

必要書類 対象者 入手先 備考
戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)
もしくは除籍全部事項証明書(除籍謄本)
被相続人 本籍地の市区町村 出生から死亡まで、在籍していたすべての戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)と
除籍全部事項証明書(除籍謄本)が必要
住民票の除票 被相続人 住所地の市区町村 登記簿上の住所および本籍地の記載のあるもの
戸籍全部事項証明書(戸籍謄本) 被相続人 本籍地の市区町村 亡くなった方の死亡日以降に発行されたもの
印鑑証明書 法定相続人 住所地の市区町村 遺産分割協議を行った場合に、協議書に押印された印鑑のものが必要
固定資産課税明細書 法定相続人 毎年4月頃に市区町村から送付 登記申請をする日の属する年度のものが必要
住民票 新しく所有者になる法定相続人 住所地の市区町村
登記申請書 新しい所有者
委任状 新しい所有者と代理人 代理人による申請の場合に必要
相続関係説明図 新しい所有者または代理人 戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)・除籍全部事項証明書(除籍謄本)
の原本の還付を希望しない場合は不要
遺言状 被相続人 自筆証書遺言:自宅または法務局など
公正証書遺言:公証役場
秘密証書遺言:自宅など
遺言状がある場合に必要
遺産分割協議書 法定相続人 遺産分割協議を行った場合に必要

出典:“相続による所有権の登記の申請に必要な書類とその入手先等” . 国税庁. (参照2024-08-23)」をもとに、お家のいろはが独自に作成

遺言状による相続、法定相続、遺産分割協議のいずれも、基本的に必要な書類は同じです。

ただし、遺言状による相続では被相続人が残した遺言状、遺産分割協議による相続では遺産分割協議書が必要となります。

1-5.相続登記を行う

必要な書類を揃えたら、相続登記を行います。

2024年(令和6年)4月1日から相続登記の申請が義務化されたため、この手続きは必ず行わなければなりません。例えば、親が亡くなった場合、その時点で親名義の家に住んでいたとしても相続登記が必要となります。

相続人が決まってから3年以内に相続登記しなかった場合は、10万円以下の過料が科されるリスクがあるため、申請を怠らないようにしましょう。

家の名義変更について詳しくは、以下の記事でも解説しています。ぜひ、ご覧ください。

1-6.相続税の申告・納付

相続登記が完了したら、相続税の申告・納付を行います。

相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日(通常、被相続人の死亡の日)の翌日から10か月以内に行うことが定められています。申告先は、被相続人の住所地の税務署です。

相続税の申告書に添付する主な書類は以下のとおりです。

  • 戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)
  • 遺産分割協議書の写し
  • 各相続人の印鑑証明書
  • 預貯金・借入金などの残高証明書
  • 生命保険金・退職手当金などの支払証明書
  • 不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)、地形図
  • 固定資産税評価証明書

2.家を相続した際にかかる費用

相続登記をする際には、専門家への報酬など、さまざまな費用がかかります。

ここでは、家を相続した際にかかる費用について解説しましょう。

2-1.司法書士の報酬

相続登記の申請を司法書士に代行してもらう場合には、所定の手数料がかかります。

司法書士の報酬は自由化されているため、各司法書士事務所によって費用が異なります。

日本司法書士連合会が行った司法書士の報酬アンケート調査では、関東地区の場合、相続による所有権移転登記の平均報酬は「65,800円」でした。全国的にも6~7万円台が相場となっています。

ただし、登録免許税や必要書類の取得費用は別途必要です。

相続による所有権移転登記の報酬は、相続人や不動産の数によって大きく異なるため、あくまでも目安として捉えてください。

2-2.税理士の報酬

相続税の申告は複雑なケースが多いため、税理士に代行を依頼するとスムーズに進められます。

税理士に依頼すれば、正しく算出した額で相続税申告を行えるのが大きなメリットです。

適正な財産評価が行われ、要件を満たしている控除や特例の利用も提案してもらえるため、大幅な節税効果も期待できます。

税理士の報酬も自由化されており、各税理士事務によって報酬体系が異なりますが、相続税申告における税理士報酬は「遺産総額の0.5~1.5%」が一般的です。

例として相続財産が5,000万円の場合、25~75万円程度の費用が見込まれます。

なお、相続人が多い場合や、相続した土地の数が多く、それぞれの評価に手間がかかる場合などは、税理士報酬が相場より高くなる可能性があります。

2-3.必要書類を用意するための費用

相続登記に必要な証明書などを取得するのにも費用がかかります。

必要書類とその発行手数料は以下のとおりです。

必要書類 発行手数料の目安/th>
戸籍全部事項証明書(戸籍謄本) 450円/1通
除籍全部事項証明書(除籍謄本) 750円/1通
戸籍の附票の写し 300円/1通
住民票の除票の写し 200~300円/1通
印鑑証明書 200~300円/1通
固定資産評価証明書 200~400円/1通

必要書類は各自治体により、発行手数料が異なります。

3.家を相続した際にかかる税金

家を相続した際には、「登録免許税」と「相続税」が課されます。

ここでは、家の相続にかかるこの2つの税金について解説しましょう。

3-1.登録免許税

相続によって所有者移転登記を申請する際には、登録免許税がかかります。

相続登記で必要な登録免許税の税率は、相続人が行う場合、不動産価格(固定資産税評価額)の0.4%です。

例えば、固定資産税評価額が4,000万円の戸建て(土地:2,000万円、建物:2,000万円)を相続する場合、以下のように計算します。

登録免許税=4,000万円×0.4%=16万円

この場合、登録免許税額は16万円です。

相続登記の登録免許税の納付方法には、「現金」「収入印紙(登録免許税額が30,000円以下の場合)」「オンライン」の3種類があります。

3-2.相続税

家を相続する際には、相続税も課されます。

相続税は財産額や相続人の数、適用できる控除などによって変動するため、相続税額の概算を把握しておくことが重要です。

国税庁が公表している相続税の速算表は以下のとおりです。

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額/th>
1,000万円以下 10%
1,000万円超から3,000万円以下 15% 50万円
3,000万円超から5,000万円以下 20% 200万円
5,000万円超から1億円以下 30% 700万円
1億円超から2億円以下 40% 1,700万円
2億円超から3億円以下 45% 2,700万円
3億円超から6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

出典:「“No.4155 相続税の税率”. 国税庁. ( 参照2024-08-23)」

遺産相続にかかる税金についてや、相続税の計算方法や、相続税を抑える方法について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

4.相続した家を分ける方法4選

相続した家を分ける方法

不動産は現金のように均等に分けることができません。

そこで、相続した家を分ける方法としては以下の4つが挙げられます。

それぞれの分割方法について解説します。

兄弟でもめずに土地を相続する方法について詳しくは、以下の記事でも解説しています。ぜひ、ご覧ください。

4-1.現物分割

現物分割とは、不動産などの遺産を現状のまま引き継ぐ方法です。

例えば、土地と家を相続人の一人が単独で相続したり、土地を法定相続人がそれぞれ同じ割合で「分筆」して取得したりします。

現物分割の主なメリット・デメリットは以下のとおりです。

メリット デメリット
・財産の評価額を厳密に調べる必要がない
・手続きが簡単
・不公平感が生じる
・土地を分筆すると価値が下がることがある

現物分割であれば、財産の評価額を厳密に調べる必要がなく、手続きも簡単に済ませられます。

ただし、相続財産によっては資産価値に差があるケースがあるため、相続人間で不公平感が生じるリスクが考えられます。また、土地を分筆すると使いにくくなり、価値が下がる可能性もあります。

4-2.代償分割

代償分割とは、特定の相続人が不動産などの現物を相続する代わりに、他の相続人に金銭などを支払うことで代償とする方法です。現物分割が難しい場合に行われます。

例えば、長男が実家を継ぎたい場合などによく利用されます。

代償分割の主なメリット・デメリットはこちらです。

メリット デメリット
・比較的公平に遺産分割できる
・財産を残せる
・共有状態を解消できる
・相続財産の評価が原因でトラブルになる場合がある
・現物を取得する相続人に代償金を支払う資金がなければ利用できない

代償分割を利用すると、他の相続人に対して法定相続分に応じた代償金が支払われるため、比較的公平となりトラブルを防げるのがメリットです。不動産を現状のまま維持し、次世代にも財産として残すことができます。

不動産を共有していると共有者同士で問題が発生しやすいですが、代償分割であれば単独で所有することになるため、共有状態を解消できます。

一方のデメリットとしては、相続財産の評価が原因でトラブルになる場合があることです。

また、そもそも現物を取得する相続人に他の相続人に代償金を支払える資金がなければ、代償分割は実行できません。

4-3.換価分割

換価分割とは、不動産などの相続財産を売却し、売却代金を相続人で分割する方法です。

法定相続分の割合と計算式は以下のようになります。

割合 計算式
配偶者 1/2 遺産額 × 1/2
1/2(複数の場合さらに分割) 遺産額 × 1/2

例えば、配偶者と子2人で5,000万円の戸建て住宅を換価分割する場合、法定相続分に従って売却代金を分けるときの計算式は以下のとおりです。

【配偶者の金額】5,000万円 × 1/2 = 2,500万円
【子2人各自の金額】5,000万円 × 1/4 = 1,250万円

配偶者が2,500万円、子は1,250万円ずつ受け取れます。

換価分割のメリット・デメリットは以下のとおりです。

メリット デメリット
・不動産の評価額に全員が納得できる
・公平に遺産分割できる
・売却価格が相場より低くなる可能性がある
・仲介手数料などの経費がかかる
・譲渡所得税が発生する

換価分割のために不動産を売却する際は、不動産会社が市場価格に見合った評価額を算出するため、不動産の評価額に全員が納得できるのがメリットです。

また、売却金を法定相続分に従って配分すれば、公平に遺産分割できます。

デメリットは、不動産市況によっては売却価格が相場より低くなる可能性があることや、不動産会社に支払う仲介手数料などの経費がかかることです。

さらに、売却益が発生した場合、特例や控除を活用できなければ譲渡所得税を納付することも念頭に置いておきましょう。

特例や控除を活用できたとしても、売却益がそれを上回っていれば譲渡所得税は発生します。

4-4.共有分割

共有分割とは、遺産の一部または全部を複数の相続人で共有して相続する方法です。

例えば、戸建て住宅を長男と次男の2人で共有で取得する場合などが挙げられます。

ただし共有分割は、遺産分割調停や審判の現場では「最終手段」とも言える調整方法であり、可能であれば避けたい分割方法です。

共有分割のメリット・デメリットはこちらです。

メリット デメリット
・公平に遺産分割を行える
・所有時、売却時の所得税を節税できる
・相続人全員の同意がないと売却できない
・相続人が増えるなど、将来的に問題が発生しやすい

共有分割は、不動産を現状のまま維持し、各相続人はその不動産について分割した割合を「持分」として所有することになります。

不動産を収益物件として利用する場合は、収入を相続人で按分するため、単独所有するよりも所得税を抑えられます。

売却時には、相続人一人ひとりが3,000万円控除を使えるため、譲渡所得税の節税につなげられる可能性があるのもメリットです。

ただし、共有分割の場合、共有者の誰かが売却を希望していても、相続人全員の同意がないと売ることができません。さらに、各共有者の相続が発生すると、相続人がどんどん増えていくため、権利関係が複雑になります。

まとめ

2024年(令和6年)4月1日から相続登記が義務化され、相続した日から3年以内に相続登記の申請をしなければならなくなりました。

また、家を相続した際は、相続税などの税金や各種費用がかかります。

相続登記の申請は司法書士、相続税申告は税理士に依頼するとスムーズに手続きを進められます。

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