相続税は、故人(被相続人)が残した財産を相続する際に、課される税金です。一定額以上の財産を相続した場合、課税対象となります。
2015年の相続税法改正で基礎控除額が引き下げられたことで、課税対象となる方が増えています。
本記事では、いくらから遺産相続の税金が発生するのかや、基礎控除、税制優遇について解説します。
- 相続税がいくらから発生するのか
- 相続税の計算方法
- 相続税に関する控除
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Contents
1.遺産相続の税金はいくらから発生する?
相続税は相続遺産の総額が基礎控除額を上回ったときに発生します。
2015年(平成27年)の相続税改正により、遺産にかかる基礎控除額が引き下げられました。国税庁の調査によると、課税対象者の割合は年々増加傾向にあります。
出典:“令和4年分相続税の申告事績の概要”. 国税庁. 2023-12. (参照2024-.07-.02)
改正後の2015年(平成27年)以降8.0%と約2倍に増え、2021年(令和3年)には9%を超えています。
ここからは、相続税の算出方法を詳しく解説します。
1-1.法定相続人の人数と基礎控除額
法定相続人の人数と基礎控除額は、相続税の発生額を知るための重要な要素です。
法律で定められている相続人を、法定相続人といいます。相続税は、法定相続人の人数に応じて基礎控除額が増える仕組みになっています。
つまり、法定相続人が多いほど、相続税の基礎控除額が大きくなります。相続税の基礎控除額は下表のとおりです。
法定相続人の数 | 基礎控除額 |
---|---|
1人 | 3,600万円 |
2人 | 4,200万円 |
3人 | 4,800万円 |
4人 | 5,400万円 |
5人 | 6,000万円 |
例えば、法定相続人が3人の場合、4,800万円の基礎控除を受けられます。相続する財産の評価額が4,800万円を引いた金額に対して相続税が発生します。
なお、相続税は超過累進課税を採用しています。超過累進課税とは、課税対象額を複数の区分に分け、各区分ごとに異なる税率を適用して算出する方式です。
法定相続分に応ずる取得金額課税総額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | なし |
1,000万円超から3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
3,000万円超から5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
5,000万円超から1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円超から2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
2億円超から3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
3億円超から6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
出典:“No.4155 相続税の税率”. 国税庁. (参照2024-07-02)
算出した課税総額に該当する税率をかけて控除額を引くと納税すべき税額がわかります。
1-2.法定相続人と法定相続分
法定相続人とは、民法に定められている相続人のことであり、配偶者や子ども、直系尊属、兄弟姉妹が該当します。遺言状による指定によって友人や知人が相続人となることはできますが、法定相続人にはなれません。
故人(被相続人)の配偶者は常に法定相続人となり、配偶者がいない場合は、子がすべてを相続します。子がいない場合は父母、父母もいない場合は兄弟姉妹が相続することになります。
1-3.相続財産に含まれるもの・含まれないもの
相続財産とは、相続人が引き継ぐ資産や負債、権利義務を指します。具体的には、現金や不動産、有価証券、車、家財といったプラスの財産のほか、借金などのマイナスの財産のことです。
プラスになる資産 | マイナスになる資産 |
---|---|
現金 不動産 株式などの有価証券 生命保険(みなし相続財産) 車、家財 会員権 |
住宅ローン カードローン 未払いの税金 連帯保証人・連帯債務者になっている債務 |
上記の財産の評価額が基礎控除額を上回った場合、相続税を納税しなければなりません。
一方、相続財産に該当しない資産には、年金や生活保護の受給権、墓地や墓石などの祭祀財産があります。
被相続人が存命している間にしか行使できない権利や、先祖供養に使用される特別な財産は相続財産の対象外となり、相続税の対象にはならないのです。
2.相続税の計算方法
相続税の計算は、被相続人の財産を洗い出し、合計の評価額を算出する作業から始めます。
相続財産の総額から基礎控除額を差し引き、課税対象額に税率を適用することで具体的な税額がわかります
ここでは、相続財産の評価額の算出から、法定相続人1人当たりの税額を算出するまでの流れを解説します。
2-1.相続財産の評価額を調べ、遺産総額を算出する
まずは、相続する財産すべての評価額を調べる必要があります。財産の評価額は、種類によって以下のように算出方法が異なります。
相続財産の評価額を算出する方法は以下のとおりです。
- 現金・預金
- 死亡時の時価(つまりそのままの金額)
- 不動産
- 土地:路線価方式と倍率方式のいずれかで算出
建物:固定資産税評価額 × 1.0
※不動産を賃貸として貸し出している場合は、貸家建付地と貸家の評価額が適用されます。
- 有価証券
- 上場株式:相続開始日、相続開始月の3か月の平均額
公社債:銘柄や種類によって異なりますが、基本的には課税時期(相続開始日)の市場価額を券面額100円当たりの単価で評価
2-2.基礎控除額を算出する
すべての相続財産の評価額を調べ、遺産総額を算出したら、基礎控除額を引きます。相続税の基礎控除額の計算式は下記のとおりです。
【相続税の基礎控除額の算出方法】
例えば、配偶者と子2人の場合、法定相続人は3名となります。法定相続人3名の基礎控除額は下記のとおりです。
このケースでは、4,800万円が相続税の基礎控除額となります。被相続人のすべての財産から4,800万円を引いた金額が課税総額です。
相続財産の評価額より基礎控除額のほうが多い場合は、相続税の支払いはありません。
2-3.課税対象額を算出する
基礎控除額を算出できたら、遺産の総額から基礎控除額を引き、課税対象額を求めましょう。
【相続税の算出シミュレーション】
- 法定相続人3名(配偶者と子2人)
- 預金:800万円
- 不動産:8,000万円(土地:5,000万円・建物:3,000万円)
(遺産評価額:8,000万円 + 800万円)-(基礎控除額:4,800万円)= 4,000万円
上記のシミュレーションでは、4,000万円が相続税の課税総額となります。
2-4. 課税総額を相続分で按分する
課税対象額を求めることができたら、法定相続分に基づいて1人あたりの相続分を按分します。
法定相続分とは、それぞれの法定相続人が相続する財産の割合を指します。民法では、法定相続人の相続順位および法定相続分は以下のとおり定められています。
相続順位 | 法定相続人と相続分 | 配偶者の相続分 |
---|---|---|
第1順位 | 子 1/2 | 1/2 |
第2順位 | 父母 1/3 | 2/3 |
第2順位 | 父母 1/3 | 2/3 |
第3順位 | 兄弟姉妹 1/4 | 3/4 |
出典:“No.4132 相続人の範囲と法定相続分”. 国税庁. (参照2024-07-02)をもとに、お家のいろはが独自に作成
ここでは、配偶者と子2人の相続税の按分計算をシミュレーションします。按分の割合は、配偶者が2分の1、子が2分の1で、それを2人で分けます。
■配偶者
4,000万円 × 1/2=2,000万円
2,000万円 × 15% − 50万円=250万円(本来の納税額)
250万円 – 2000万円(配偶者の税額軽減措置)=0円
※配偶者には税額軽減の措置があるため、法定相続分の2,000万円が非課税になります。
■子2人
4,000万円×1/2=2,000万円(法定相続分)
2,000万円 ÷ 2=1,000万円(子1人当たりの相続分)
1,000万 × 10%=100万円
この場合、上記の計算のように配偶者は非課税、子1人当たりの相続税は100万円になります。
3.基礎控除以外の利用できる控除・特例
相続税には、基礎控除以外にもさまざまな控除や特例があります。これらの制度を活用することで、節税効果を高めることができます。
ただし、基礎控除以外の控除や特例を活用するには、相続税の申告が必要な場合もあります。ここでは、基礎控除以外の控除や特例と、申告の有無について詳しく解説します。
3-1.相続税の軽減に使える主な控除・特例
相続税の軽減に使える主な控除や特例は以下のとおりです。
いずれも相続税申告が必要になります。
- 小規模宅地の特例
- 配偶者の税額軽減
- 公益法人などに寄付した場合の非課税の特例
1つ目の「小規模宅地等の特例」は、被相続人が居住していた宅地や事業に使用していた宅地に適用されます。この特例を利用することで、宅地の評価額を最大80%減額が可能です。
被相続人が住んでいた住宅用地については330平米まで、事業用地については400平米までが対象となります。
この特例を利用するためには、相続税の申告書に必要書類を添付して提出することが求められます。
2つ目は「配偶者の税額軽減」です。配偶者が相続する遺産について、法定相続分もしくは1億6,000万円のいずれか多い金額までの相続税が非課税となる制度です。この軽減措置を利用することで、配偶者は税負担を大幅に軽減できます。
利用するためには相続税の申告書に配偶者の税額軽減を受ける旨を記載し、必要な書類を添付して提出する必要があります。
3つ目は「相続財産を公益法人などに寄付した場合の非課税の特例」です。相続税の申告期限までに公益を目的とした団体に寄贈した場合に、寄付分が非課税になります。確定申告時に納付時の明細書を添えて提出します。
3-2.そのほかの利用できる控除・特例
下表のとおり、そのほかにも死亡保険金の非課税枠、未成年者の税額控除、相次相続控除などがあります。
控除・優遇制度 | 内容 |
---|---|
死亡保険金の非課税枠 | 被相続人が契約者となっている生命保険金は、 法定相続人1人当たり500万円までの非課税枠が設けられている。 |
未成年者の税額控除 | 相続人が未成年者である場合、 18歳に達するまでの年数に10万円を乗じた金額が控除される。 |
障害者の税額控除 | 相続人が障害者である場合、 障害者が85歳に達するまでの年数に10万円を乗じた金額が控除される。 特別障害者の場合は1年当たり20万円が控除される。 |
相次相続控除 | 相続人が障害者である場合、 前回の相続から10年以内に再度相続が発生した場合、 前回の相続で課された相続税の一部が控除される。 |
贈与税額控除 | 被相続人から生前に贈与を受けていた場合、 その贈与に対して支払った贈与税が相続税額から控除される。 |
出典:“No.4164 未成年者の税額控除”. 国税庁. (参照2024-07-02)
“財産を相続したとき”. 国税庁. (参照2024-07-02)
“No.1750 死亡保険金を受け取ったとき”. 国税庁. (参照2024-07-02)をもとに、お家のいろはが独自に作成
それぞれに該当する場合は控除の適用が可能です。
4.相続税は相続開始日の翌日から10か月以内に申告を
相続税の申告期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内と定められています。この期限を過ぎてしまうと、通常の相続税に加えて延滞税が課されます。
延滞税は、納期限の翌日から2か月を経過する日までは年7.3%、納期限の翌日から2か月を経過した日以後は年14.6%課されるため、十分に注意しましょう。
5.遺産相続は専門家に相談するのがおすすめ
遺産相続でお悩みの方は、専門家へ早めの相談することをおすすめします。遺産相続は手続きが煩雑で、自身で行うには負担が大きいからです。
遺産分割協議書や財産目録は、法律で定められた書式で記載しなければ根拠書類として認められないため、司法書士に依頼するとよいでしょう。
また、相続税の納税や財産の課税についてわからないことがある方は、税理士に相談しましょう。
まとめ
遺産相続は、2015年(平成27年)の相続改正で基礎控除額が引き下げになり、課税対象となる方が増えています。相続税がいくらかかるのかを把握するためには、法定相続人の人数と基礎控除額の算出が重要です。
また、基礎控除以外の控除や特例を知っておくことで、相続税をなくしたり、軽減したりできる可能性があります。
とはいえ、相続手続きには専門知識が必要です。したがって、相続書類作成や相続税について専門家に相談することが大切です。
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