
- まずは家を売るメリット・デメリットを整理し、目的をはっきりさせることが大切!
- 事前準備として家を売却するまでの流れ・相場・税金・査定のポイントをチェックしよう。
- 損せずに家を売却するために地域や目的に合った「不動産会社」を選ぼう。
いま、家を売りたいとお考えでしょうか?
「家を売ったら、いくらで売れるのかが気になる」
「家の売却、具体的に何から始めたらいいの?」
「大切な家、売るのはもったいないかも…売ってしまっていいのかな?」
そんなふうに悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
家は住まずに所有しているだけでも費用がかかり、思いもよらないリスクが増えます。まずは家を売るべきなのか、自分の状況を知りましょう。その後、実際に売却すると決めたら、価格相場を把握する、つまり査定を依頼することから動き出します。
不動産会社を決めて媒介契約を結んでからは、売却の流れやかかる費用、税金、必要な書類などの基本的な知識も必要となります。
この記事では、家を売るために必要な情報、より高く・早く売るためのポイントをご紹介していきます。この記事を読むだけで失敗せずに、家の売却する方法や流れがすべてわかるでしょう。ぜひ最後までお付き合いください。
Contents
1.こんなときは家を売ろう!家を売るべき理由・状況とは?
ここでは家を売った方がよい状況や家を売ることのメリットについて説明します。
1-1.家を売ったほうがよい状況とは
家を売る状況は人によりさまざまです。冒頭にもありますが、例えば、
- 子供が生まれた(または独立した)ことで、より広い(小さい)家に住み替えたい
- 生活に余裕ができたので、あこがれの街に家を買って住み替えたい、実家で親と同居することになったので今住んでいる家が不要になった
- 実家を相続してそこに住むことになったので、今住んでいる家は不要になった
- 実家を相続したものの住む予定はなく、売却を検討している
- 急な転勤で今住んでいる家を売りたいが、ローンが残っているので迷っている
- 住宅ローンを返済できなくなったので家を手放したい
など、それぞれの事情があるでしょう。家を売ること、売りたいと考えることは、ごく一般的なことです。まずは自分の状況を確認し、整理してみましょう。
なお、売る場合にも、「より高く売りたいか」「より早く売りたいか」のどちらを優先するかによって、売却の流れは少し異なります(これについては、「9. より「高く」「早く」売るために知っておくべきこと」で説明します)。
また、「今は事情で売れないし、そのまま放置するより賃貸に出したほうがいいのかも…」と悩んでいるかたもいるでしょう。
いずれにしても、まずは自分の家にどのくらいの価値があるのか、査定を依頼して知ることが必須です。
すでにご自宅や所有物件、相続した家やマンションなどの不動産売却を決めているかたには、全国の不動産会社1,500社と連携している不動産一括売却サイト「HOME4U(ホームフォーユー)」がおすすめです。
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1-2.家を売って得られる4つのメリット
まずは、「家を売ったら、家を売らないより、いいことはあるの?」と疑問をお持ちのかたへ、不動産売却によるメリットを紹介します。
1-2-1.空き家のリスクや維持費、税金を減らせる
通常、建物は空き家になると、以下のように一気に老朽化が進みます。
- 空気の循環がないため、湿気によるカビの繁殖や木部の腐食が発生する
- たまったホコリを餌にして、虫・カビ・菌類などが増殖する
- 水道の通水がないため、排水トラップの溜め水が蒸発し、虫やネズミが繁殖する など
空き家のまま放置すれば、倒壊して隣接する建物や車に損害を与えたり、第三者にけがを負わせたりして、賠償問題に発展することもあります。かといって、定期的なメンテナンスにも手間と費用がかかります。
さらに、家や所有物件を空き家として長期間放置して「特定空家」に指定されてしまった場合、各市区町村から処罰を受ける可能性もあります。
特定空家は、平成 26年(2014年)に公布された「空家等対策特別措置法(正式名称:「空家等対策の推進に関する特別措置法」)」によって定義され、倒壊の危険があったり、衛生面・景観面で地域住民に多大な悪影響を及ぼしていたりする空き家を意味します。
特定空家に指定され、各市区町村からの助言や指導を無視した場合、以下の罰則受ける可能性があるため注意が必要です。
- 「住宅用地の特例措置」の適用が外れて、固定資産税の優遇処置がなくなる
- 立ち入り調査を拒否・妨害すると20万円以下の過料が発生する
- 勧告ののちに自治体から「命令」を受け、それに従わない場合、50万円以下の過料が発生する
参考:国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」
参考:NPO法人 空家・空地センター「空家等対策特別措置法とは」
家を売ることで、こうした空き家の所有にかかるリスクや維持費などの出費をなくすことにつながります。相続などによって自宅とは別の家を管理する必要が生じた場合も、家を売ることにメリットを見出すことができるでしょう。
1-2-2.築年数の浅いうちほど高く売れる可能性がある
建物は住んでいる・いないにかかわらず、年月が経つほど資産価値が低くなります。法定耐用年数を過ぎると建物の資産価値は「ゼロ」と判断されてしまいます。このことから考えると、家を売る決断は、少しでも早いほうがよいでしょう。
不動産の価格は築年数だけでなく社会情勢などに影響されるため、必ず不動産会社で正確な査定を受けて判断してください。不動産の査定を行う際に、一番大切なのは複数の不動産会社に依頼して比較することです。
インターネット上で不動産の一括査定をするなら、1,500社の不動産会社との提携をもつ「HOME4U(ホームフォーユー)」がおすすめです。簡単な項目を入力するだけで、複数の不動産会社に対して一度に査定を依頼し、適正価格を比較することができます。
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1-2-3.まとまった資金が手に入る
新居の購入や新しい生活に向けて、まとまった資金を手にできます。また、ローン残債より高く売れれば、ローン返済後に残った資金を運用できます。住み替えや新生活を考えるかたにとって、大きなメリットとなるでしょう。
1-2-4.税負担を軽くできる
空き家であっても、不動産を所有しているだけで固定資産税などの税金がかかります。家を売却することで、税負担が軽減されます。家を相続した際に運用や管理が難しく、固定資産税の支払いに不安がある場合、売却することも一緒に検討するとよいでしょう。
1-3.家を売ることのデメリット
ここでは、家を売って手放すことのデメリットを説明します。「1-2.家を売って得られる4つのメリット」とじっくり比較して、「自分にとってより有利である方法はどちらなのか」「売るか、売らずに所有を続けるか」を判断する材料としてお役立てください。
1-3-1.手放してしまうと、同じ家を再度手に入れることは難しい
一度売却すれば、不動産は再度手に入れることは非常に困難です。思い入れがある家で売却に迷いがあるなら、後悔しないように、不動産会社の意見も取り入れて慎重にこの先のプランを考えるようにしましょう。
1-3-2.売却に費用が必要
家を売却したら資金が手に入りますが、同時に売却の手続き費用や税金など出ていくお金もあります。状況次第ではかなり費用が大きくなることもあります。
売却をすすめるなら、不動産会社に売却時の費用についても事前に確認して相談しましょう。売却にかかる費用を加味して売却価格を設定することで、思わぬ出費を防ぐことができるでしょう。
家を売る際に発生する費用の詳細は、本記事の「3-1.家を売ることで支払うお金の一覧」でも詳しく解説しています。
1-3-3.売却スタートから完了まで一定の時間がかかる
家は、売却活動を開始してすぐに売れるかどうかはわかりません。また、不動産会社に査定依頼し、媒介契約を結び、売却が無事に済んでも、それで終わりではなく、さらに諸手続きがあるため、引き渡しというゴールまでは時間がかかります。
あらかじめ、「どの程度の時間がかかるのか」「どの程度の事務的な手続きが必要なのか」を確認しておきましょう。先の予定がわかることで、それに応じてそのほかの段取りを考えることができます。
以上のことから、家を売るデメリットのほとんどは、事前に「家を売る」ために必要なことを確認・準備しておくことで対策を立てることができるといえます。
「そうは言っても、家を売ったことがないから、具体的にどうしたらいいかがわからない」
「家の売却を自分ひとりの力でやる自信がない」
「売りたいけど、手続きが難しそうだし、お金もかかりそうで損をするかもと迷いがある」
そんなかたがたのために、ここからは、
- 家を売る手順や流れ・かかる期間
(⇒「2.家を売る全体の流れ・かかる期間を知ろう」) - 家の売却にかかる費用や出費の抑え方
(⇒「3.家を売るときに必要な費用や税金は?出費を抑える4つの方法も!」)
について具体的に説明します。
「家を売りたいけど、細かなことは不動産会社に直接相談したい」というかたには、複数の不動産会社に対して一括で査定を依頼し、仲介する不動産会社を見つけることができる「HOME4U(ホームフォーユー)」がおすすめです。
全国の不動産会社1,500社から、売却する家のあるエリアや状況に合った不動産会社を見つけることができます。簡単な情報を一度入力するだけで複数の不動産にまとめて問い合わせることができます。
目的に応じて、適切な不動産会社をピックアップしてくれるため、個別に不動産会社をまわったり、問い合わせたりする手間も省けます。大手から地域の不動産会社まで、効率的にしっかりと比較することができるでしょう。
2.家を売る全体の流れ・かかる期間を知ろう
ここでは、
「2-1.売却前(目安:約1カ月)準備~不動産査定~不動産会社との媒介契約」
「2-2.売却中(目安:約1~3カ月)売却活動~購入希望者との交渉~売買契約」
「2-3.売却後(目安:約1~2カ月)引き渡し準備~残代金の受領~引き渡し」
の3段階に分けて、家の売却前から完了までの流れとかかる期間について説明していきます。
2-1.売却前(目安:約1カ月)《準備~不動産査定~不動産会社との媒介契約》
【Step1】売却計画を立てる
売却するタイミング、売り出し価格、査定を依頼する不動産会社の検討を行います。住宅ローンの残債がある場合や買い換えする場合には、資金計画も必要です。
【Step2】売却価格の相場を調べておく
査定を依頼する前に、自分で相場を調べておきます。相場がわかれば、最終的な売り出し価格を決定する際の材料にもなります。
【Step3】家の査定を依頼する
不動産会社を選び、査定を依頼します。より適正な査定価格を知るためにも、一括査定サービスの利用をおすすめします。
【Step4】媒介契約を締結する
査定価格などを比較検討した上で、売却を依頼する不動産会社を決定し、媒介契約を締結します。
2-2.売却中(目安:約1~3カ月)《売却活動~購入希望者との交渉~売買契約》
【Step5 インスペクションを検討する】
2018年(平成30年)の宅建業法改正により、宅建業者は売主・買主に対してインスペクション(建物状況調査)のあっせんについて説明することが義務化されました。将来発生しうるトラブル回避のためにも、検討してみるとよいでしょう。
参考:国土交通省「https://www.mlit.go.jp/common/001201151.pdf」
【Step6 販売活動を開始する】
不動産会社と相談の上で売り出し価格を決定し、広告宣伝の方法を検討します。
【Step7 内覧対応を行う】
内覧の申し込みがあったら、売主も不動産会社の担当者とともに対応しなければなりません。あらかじめ、掃除・整理整頓・空気の入れ替えなどを行い、家の中の環境を整えておきましょう。
【Step8 売買契約を締結する】
購入の申し込みがあったら、売買契約を締結します。一般的に、売主は買主から手付金を受領し、不動産会社へ仲介手数料の半額を支払います。一部、引き渡し時に全額を支払うケースも見られます。
2-3.売却後(目安:約1~2カ月)《引き渡し準備~残代金の受領~引き渡し》
【Step9 引き渡しの準備をする】
売買契約のあと、売主側は「所有権移転登記に必要な書類の準備」「敷地の境界画定」「退去など引き渡しの準備」をします。
【Step10 決済・引き渡し】
売買代金の残金決済と同時に家の鍵や必要な書類を渡し、引き渡し完了となります。この時、不動産会社へ仲介手数料の残額を支払います。住宅ローンの残債がある場合は売買代金で清算し、抵当権抹消登記を行います。
なお、家を売って売却益が発生した場合、またはその他の所得と損益通算する場合には、その年の翌年の2月16日から3月15日までの間に確定申告を行います。
3.家を売るときに必要な費用や税金は?出費を抑える4つの方法も!
「1-3-2.売却に費用が必要」でお伝えしたとおり、家を「売却」するときにもお金はかかります。ここでは、家を売る際に必要な費用と、売却にかかる税金について説明します。
「売却するだけでお金がかかるなんて…支払えるのかな?」と不安な方へ、かかる費用を抑える4つの方法についても紹介します。
3-1.家を売ることで支払うお金の一覧
家の売却にかかる費用、税金を一覧表にまとめました。
費目 | 金額の目安 | |
---|---|---|
3-1-1.家の売却にかかる費用 | 仲介手数料 | 売買価格×3%+6万円 |
司法書士報酬 | 1~3万円+調査費 | |
リフォーム・クリーニング費用 | 水まわりのクリーニング 10万円前後 |
|
3-1-2.家の売却で発生する税金 | 印紙税 | 1~3万円 |
登録免許税 | 1,000円 | |
譲渡所得税・住民税 | 譲渡所得の14.21%~39.63% |
以下でくわしく説明していきます。
3-1-1. 家の売却にかかる費用
◆仲介手数料
不動産会社へ支払う仲介手数料は、物件の売買価格に応じて上限額が定められます。400万円を超える物件の取引については、以下の速算式で簡単に求めることができます。
<仲介手数料の速算式>
(売買価格×3%+6万円)+消費
◆司法書士報酬
ローンの支払いが完了する場合、抵当権抹消登記を行う必要があります。自分自身で手続することはできますが、司法書士に依頼した場合、1~2万円程度の報酬を支払います。また、調査にかかる実費と登録免許税が別途必要となります。抵当権抹消登記に必要な登録免許税は「3-1-1. 家の売却で発生する税金」にて詳しく説明しています。
◆リフォーム・クリーニング費用
リフォーム費用は、内装・水まわり・耐震補強など改修する範囲によって異なります。不動産会社や建築会社とも相談の上、費用対効果を考えて計画してください。
クリーニングは、最低でも水まわりはお願いしたいところです。予算として10万円程度を準備しておくとよいでしょう。不要になった家具(粗大ごみ)や家電の回収・リサイクルにも費用がかかります。
3-1-2. 家の売却で発生する税金
◆印紙税
不動産売買契約書は課税文書に該当するため、売主・買主の双方が印紙税を負担します。印紙税額は、契約金額1,000万円を超え5,000万円以下のもので1万円※、5,000万円を超え1億円以下のもので3万円※になります。
※金額は2022年(令和4年)3月31日までの軽減税率を適用した場合【参照: 国税庁 不動産売買契約書の印紙税の軽減措置】
◆登録免許税
登録免許税は、登記する際に課税されます。所有権移転登記は買主側で行うことが多いため、売主は抵当権が残っている場合のみ、抵当権抹消登記を行います。
抵当権抹消登記にかかる登録免許税は、不動産1個につき1,000円です。土地と建物がどちらもある場合は2件となり、合計2,000円がかかります。
◆譲渡所得税・住民税
家を売る(譲渡する)ことで利益が出た場合、所得税・住民税が課税されます。
<譲渡所得の計算方法>
譲渡所得=譲渡価額(収入金額)※1-(取得費※2 + 譲渡費用※3)-特別控除額
※1 売却代金に固定資産税等清算金を加算した金額
※2 家の購入代金や仲介手数料などの経費を合計した金額。減価償却費相当額を差し引く
※3 家の売却にあたり支払った仲介手数料や印紙税などの経費を合計した額
参考:国税庁「No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」
上記で算出した譲渡所得に税率を掛けて、税額を計算します。適応される税率は所有期間に応じて異なります。売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超える場合は「長期譲渡所得」、5年以下の場合は「短期譲渡所得」となり、以下の税率が適用されます。
区分 | 所得税 | 住民税 |
---|---|---|
長期譲渡所得 | 15.315% | 5% |
短期譲渡所得 | 30.63% | 9% |
いずれの場合も、所得税には2037年(令和19年)12月31日まで復興特別所得税として2.1%相当額が加算されています。
参考:国税庁「土地や建物を売ったとき」
3-2.支払うお金を抑える4つの方法
家の売却で損をしないためには、払うべき費用はきちんと払いながら、必ずしも必要でない費用を削減するなど費用対効果を考えて計画することが大切です。
3-2-1.リフォームを焦って行わない
中古住宅の大多数は、リフォームせずに販売されています。理由はリフォームにはコストがかかりますが、コストをかけたからといって高く売れるわけではないという点にあります。
特に、新耐震基準が制定される1981年(昭和56年)以前の家であれば、現在必要な耐震性が確保されていない可能性が高く、内外装だけをきれいにするリフォームでは意味がないケースも多くあります。
また、中古の家を買うなら、自分好みにリフォームしたいと考える方も少なくないでしょう。焦ってリフォームするのではなく、まずはそのまま売りに出してみてもよいのではないでしょうか。
参考:国土交通省「住宅・建築物の耐震化について」
3-2-2.仲介手数料は「しっかり払う」ことで無駄をなくす
不動産会社に支払う仲介手数料は、上限額が設定されています。例えば、3,000万円で家が売れれば、仲介手数料の上限は消費税込みで100万円程度となります。
仲介手数料は、値引きを求めることも可能です。しかし、不動産を扱う責任の重さや手間暇を考えると、手数料の上限額は必ずしも高すぎるとはいえません。
値引きを強請った結果、積極的な広告をしてもらえず、逆に広告費用などを追加請求されたり、熱心に売却してくれなってしまうこともあるでしょう。そうなると、売れるまでに時間が平均よりかかり、さらに売却価格を下げざるを得なくなることもあり得ます。
仲介手数料をきちんと支払い、買主との交渉を少しでも有利に進めてもらうよう、信頼関係を構築することが大切です。
3-2-3.登記は自分でやれば節約可能。でも司法書士報酬を払ったほうが安く済む?
登記を自分で行えば、その分、司法書士に支払う報酬を節約することができます。しかし、司法書士に登記を依頼するにはそれなりのメリットがあります。
例えば、仕事などで忙しい時間の合間をぬって、法務局へ行く手間を省けることが挙げられます。また、せっかく申請に出向いても、書類が不足している、誤記入があるなどの理由で補正・取り下げとなり、再度提出し直しとなることもあります。また、万が一、引き渡し当日までに抵当権が抹消できなかった場合は、違約金が発生することも考えられます。
よほど登記の知識のある人を除き、限られた時間の中で慣れない申請を行うより、司法書士に依頼したほうが確実で安心といえるでしょう。
3-2-4.税金は軽減税率や控除が使える場合がある
自宅として住んでいた家を売却する場合、さまざまな軽減税率や控除の特例が適用されます。
例えば、その年の1月1日時点で10年を超えて所有していた自宅を売却すると、譲渡所得税・住民税に以下の軽減税率が適用されます(「軽減税率の特例」)。
長期譲渡所得金額 | 所得税 | 住民税 |
---|---|---|
6,000万円以下の部分 | 10.21% | 4% |
6,000万円を超える部分 | 15.315% | 5% |
※所得税には復興特別所得税として2.1%相当額が加算されています。
また、いくつかの要件に該当すれば、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例を受けることができます(「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除の特例」)。
例えば、所有してから10年以上が経つマイホームを売却し、6,300万円の利益を得た場合、まず「3,000万円の特別控除」が入り、長期譲渡所得金額は3,300万円となります。
そこに「10年以上所有するマイホーム売却に対する軽減税率」が適応され、所得税は10.21%、住民税は4%の税率が適応され、所得税+住民税の支払い金額は、3,300万円×(10.21%+4%)=約469万円となります。
「3,000万円の特別控除」と「10年以上所有するマイホーム売却に対する軽減税率」が適応されない場合、所得税と住民税の合計金額は、6,300万円×(15.315%+5%)=約1,280万円となるため、結果として約811万円の節税をすることができます。
また、家を買い換える場合には、一定の要件のもと譲渡所得税を将来に繰り延べることもできます。
買い換えた家を、将来売却する際の譲渡所得税と合算して課税する制度で、「特定の居住用財産の買換えの特例」といいます。
非課税にはなりませんが、納税を将来に繰り延べることで、新たな家の購入にかかる金銭的な負担を軽減することができます。なお、この買い換えの特例の適用を受けるには、2021年(令和3年)12月31日までに家を売却する必要があります。
参考:国税庁「土地や建物を売ったとき」
「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
「No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例」
住宅ローンが残っている場合、引き渡しまでに完済し、抵当権を抹消しなければなりません。
まずは、金融機関から発行される返済予定表で残債を確認します。余裕資金があれば一括返済する、それが無理なら売却代金と相殺するなど、返済方法を検討します。相殺しても全額返済できない場合には、金融機関で不足分の調達方法を相談してください。
4.家の売却相場を知っておこう
家を売る手順やかかる費用、必要書類などはお分かりいただけたでしょうか。
実際に家を売ることになったら、不動産会社へ査定を依頼するところからが本格的なスタートです。
しかし、家を売却するのが初めての方の中には「査定ってよく聞くけど、具体的に何をどうすればいいの?」という方もいらっしゃるでしょう。
ここからは、あなたの家の売却相場の調べ方について説明します。
4-1.自分で調べる方法
売却の意図が固まっているのであれば、一括査定サービスの利用が最適です。しかし「だいたいの相場を知ってから売却を検討したい」という場合には、自分で相場を調べてみるのもよいでしょう。
自分で相場価格を調べる方法を3つ、ご紹介します。
4-1-1.不動産情報サイトで相場を調べる
条件の近い戸建てがどれくらいの価格で売り出されているのか、目安を知ることができます。※実際の成約価格とは異なります。
まずはトップページから「相場価格」を選択します。
「一戸建て」タブを選択し、所在地を選びます。
物件のエリアと面積ごとの価格(平均値)が一覧で表示されます。
4-1-2.土地総合情報システムを利用する
◆「土地総合情報システム」
国土交通省が実施するアンケート調査結果をもとに作成されたデータで、物件に関する情報が細かく記載されています。
まず、「不動産取引価格情報検索」を選択します。
取引時期、物件の種類、地域を選択し、検索します。
所在地や近隣情報、物件情報、取引総額などが一覧で表示されます。
4-1-3.レインズを利用する
直近の取引データがグラフで表示されるため、相場価格帯を一目で把握できます。
まず、「戸建」の都道府県と地域を選択し、検索ボタンを押します。
直近1年の取引情報がグラフと一覧で表示されます。
追加条件を入力することで、売却したい物件により近い情報を探すことができます。
4-2.自分の家に愛着を持ち過ぎない。買主の立場で考えよう
自分の家に愛着があるのは当然です。幼少期から暮らした実家や、自分たちで建てた家なら、余計に思い入れがあることでしょう。
ただし、家を売却する上で大切なのは、「いくらで売りたいか」ではなく「いくらなら買ってもらえるか」という視点を持つことです。
売主が自宅に対して持つ思い出や愛着は、買主にとっての付加価値にはなりません。冷静な目で判断し、良いところも悪いところも含め、買主にとってプラスになる情報を提供してあげてください。結果的に、それが買主からの信用にもつながります。
不動産には定価がありません。家を買った時の価格も売却価格とはあまり関係がなく、木造住宅なら築20年もたてば、どのような家でも一律に価値はほぼゼロと判断されます。
自分で調べた相場価格も、確実な数字とはいえません。景気の変動や金利動向、周辺環境の変化によって、不動産の価格は常に変化しています。今この時点で、あなたの家がいくらで売却できるかは、実際に査定に出し、売り出してみなければわかりません。
そのため、過去の相場価格にとらわれず、家と土地の資産価値、それを取り巻く状況といった現実を知った上で売出価格を設定することが大切です。
そうは言っても、自分の家の価格について割り切ることは、どうしても心情的に難しいものです。できるだけ高く、しかし早く売れる価格を見つけるには、やはりプロの力を借りるのが最も近道といえます。
そのためにも、「不動産売却 HOME4U」で査定価格を比較し、信頼のおける不動産会社を見つけましょう。
5.不動産会社へ査定依頼!不動産会社の選び方とポイント
不動産会社を選ぶ際には、査定価格以外にも重視すべきポイントがあります。ここからは、査定を依頼する際の注意点や不動産会社の選び方についてお伝えしていきます。
5-1.必ず複数の不動産会社へ査定依頼を出そう
査定の根拠は不動産会社によって少しずつ違うため、複数の不動産会社に査定を依頼すると、それぞれ違う査定価格が出てきます。中には極端に査定価格の高い会社、低い会社もあります。そのような会社は詳しい根拠なく査定しているか、もしくは戸建ての査定に慣れていない可能性も考えられます。
査定の段階から一社に限定してしまうと、その査定価格が高いのか安いのか判断できませんが、こうして複数の会社に査定を依頼することで、正確な相場や不動産会社の適正が見えてきます。
そのため、できるだけ多くの不動産会社へ査定を依頼し、その中から信頼できる会社、少しでも高く売ってくれそうな会社を見つけてください。
5-2.不動産会社を比較するときの3つのポイント
信頼できる不動産会社を選ぶ3つのポイントについて説明していきます。
5-2-1.売却が得意(専門)かどうか
不動産会社にも、それぞれ得意分野や強みがあります。
- 賃貸業がメインの会社・仲介業がメインの会社
- マンション売却が得意な会社・土地や戸建ての取り扱いが多い会社
- 全国展開している会社・地域密着型の会社
例えば、戸建てを売るのであれば、「賃貸業よりも仲介業に強い会社」や「マンションの売却よりも戸建ての売却に強い会社」を選ぶのがポイントです。どのエリアの物件を多く取り扱っているのかもチェックしましょう。
「忙しくて、不動産会社を探す時間がない…でもなるべく早く家を売却したい!」というお悩みをお持ちの方には、空き時間でも夜中でも一括で査定を依頼できる「不動産売却 HOME4U」がおすすめです。
「不動産売却 HOME4U」は全国の不動産会社1,500社との提携をしており、条件を入力するだけで、あなたの家を売るのに最適な不動産会社を自動でピックアップしてくれます。自分で一社一社の不動産会社を調べて査定依頼を出す必要はありません。
家の売却を決めたら、まずは「不動産売却 HOME4U」で一括査定依頼から始めてみましょう。
5-2-2.営業担当者の印象はよいか、信頼できるかどうか
営業担当者の対応も、重要なポイントの1つです。大切なのは、まず質問に対して的確な回答があること。そして確認が必要な事柄に対しては即答せず、きちんと調べてから返事をくれること。こういった対応を見るためにも、わからないことは積極的に質問するようにしてください。
レスポンスの早さ、フットワークの軽さは基本中の基本です。また見落としがちですが、書類の不備や誤字脱字など、初歩的なミスは多い担当者の場合、のちに契約書などの大きなトラブルにつながることもあるため注意が必要です。
5-2-3.具体的な販売戦略を持っているかどうか
あなたの家を売るためにどのような方法で広告をするのかも、あらかじめ確認しておく必要があります。具体的には下記のような方法が考えられるでしょう。
- 「レインズ」への登録
- チラシの配布
- フリーペーパー広告
- 自社サイトでの紹介
- 不動産情報サイトへの掲載
地域の特性もありますが、昨今ではいかにインターネットを活用するかがポイントとなるでしょう。
「レインズ」は不動産会社が情報を共有するネットワークのことで、正式名称を指定流通機構といいます。レインズへの登録義務がない一般媒介契約の場合、売主側から不動産会社へ登録を依頼するとよいでしょう。
このほか、物件を紹介できそうな見込み顧客をどれだけ抱えているかも重要なポイントです。
5-3.媒介契約について知っておこう
媒介契約には、「5-3-1.一般媒介契約」「5-3-2.専任媒介契約」「5-3-3.専属専任媒介契約」の3種類があります。それぞれの契約内容は宅地建物取引業法によって定められたルールがあり、以下の表のように違いがあります。
不動産会社としては、他社と競合する「一般媒介契約」よりも、自社で成約できる確率が高い「専任媒介契約」か「専属専任媒介契約」のほうが、積極的に販売活動を行う傾向にあります。
5-3-1.一般媒介契約 | 5-3-2.専任媒介契約 | 5-3-3.専属専任媒介契約 | |
---|---|---|---|
他社への仲介依頼 | 〇 | × | × |
自ら探した相手との契約 | 〇 | 〇 | × |
契約の有効期間 | 定めなし | 3カ月以内 | 3カ月以内 |
レインズへの登録 | 登録義務なし | 媒介契約から7日以内 | 媒介契約から5日以内 |
報告義務 | 報告義務なし | 2週間に1回以上 | 1週間に1回以上 |
参考:国土交通省「宅地建物取引業法施行規則の規定による標準媒介契約約款(最終改正 平成 17年 3月 28日 国土交通省告示第 356号)」
e-Gov法令検索「宅地建物取引業法 第三十四条の二(媒介契約)」
公益財団法人東日本不動産流通機構「媒介契約制度」
5-3-1.一般媒介契約
まず、一般媒介契約を結んだ場合、複数の不動産会社に並行して仲介を依頼することができます。しかし、レインズへの登録義務はないため、より広く情報を出して早く売りたい方はレインズに登録してもらうよう、不動産会社に依頼してください。
また、一般媒介契約には明示型と非明示型があり、売主が自由に選択できます。明示型の場合は、仲介を依頼している不動産会社に、どこの会社に重ねて依頼しているかを通知する必要があります。非明示型の場合は、通知の必要はありません。
5-3-2.専任媒介契約
専任媒介契約では、ほかの不動産会社に並行して仲介を依頼することはできません。ただし、親戚や知人など自ら探した相手と売買契約を結ぶことは可能です。
不動産会社は、専任媒介契約等を締結した日の翌日から7日以内に物件情報をレインズへ登録します。さらに、売主に対して2週間に1回以上進捗状況を報告しなければなりません。
また、契約の有効期間は3カ月以内で設定します。
5-3-3.専属専任媒介契約
専属専任媒介契約は、ほかの不動産会社に重ねて仲介を依頼することができないことに加えて、自分で探した相手と直接契約を結ぶこともできません。
不動産会社は、専属専任媒介契約を締結した日の翌日から5日以内に物件情報をレインズへ登録します。
売主に対しては、1週間に1回以上の頻度で進捗状況を報告する義務があります。契約の有効期間は、専任媒介契約と同じく3カ月を超えない範囲で設定します。
「ただ売ればいい」と考えている不動産会社は、親身になって対応してくれません。以下のように、損をする家の売却につながってしまう可能性が高いでしょう。
- 売り出し価格が安すぎて損をする
- 売り出し価格が高すぎて売れない
- 買い手との交渉がうまくいかない
- 損害賠償などのトラブルに発展する
不動産会社選びで間違った選択をしてしまうと、売却によって損失を生むだけでなく、契約不適合責任など大きなトラブルに発展することもあります。不動産会社選びが納得のいく家の売却にかかっているといえます。
机上査定、訪問査定(「6-1.机上査定と訪問査定の違い」を参照)のどちらにおいても、担当者の対応なども含めて慎重に選ぶようにしましょう。
6.いよいよ査定!査定の前に知っておきたいこと
不動産の査定にはどのような種類があって、どういったところを見られるのでしょうか。ここでは、査定の前に知っておきたいことをお伝えします。
6-1.「机上査定」と「訪問査定」の違い
「机上査定」とは現地を訪問せずに、公図や登記簿謄本、周辺の相場といった基礎となるデータをもとに査定を行う方法です。「簡易査定」ともいわれています。日程調整や立ち会いの手間がかからず手軽に申し込めるのがメリットで、多少の誤差はあるものの、売却の意思決定をする上での資料として活用できます。
一方、「訪問査定」は実際に現地を訪問した上で、基礎データと現地の状況をもとに査定を行います。
周辺環境や家の状態なども含めて評価されるため、より精度の高い査定価格が提示されます。売却の意志が固まり、売り出し価格を決める際の参考価格として利用できます。
6-2.査定で評価の対象になるポイント
戸建て住宅の査定では、立地条件や土地の状態のほか、家の老朽化の度合い、環境のよさなどがポイントとなります。査定でチェックされるポイントを、以下にまとめました。
立地 | 交通の便・生活の利便性 | 最寄り駅まで徒歩圏内であるか、商業施設・公共施設までの距離など |
---|---|---|
周辺環境 | 騒音や振動、日照などの居住性や、景観・街並み・眺望、嫌悪施設の有無など | |
治安 | 犯罪多発地域ではないか、外灯はあるか、近隣に空き地や空き家がないか | |
敷地 | 形状・広さ | 広さや向き、間口と奥行のバランス、整形地かどうかなど |
前面道路 | 道路の種類や幅員、接道状況など(建築基準法第43条?) | |
地盤の状態 | 周辺土地との高低差や土質など、水はけに関わる部分 | |
ライフライン | 上下水道、都市ガス、電気の整備状況など | |
建物 | 築年数 | 新耐震基準(1981年施行)に適合しているか否かを含めた築年数 |
構造 | 木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造の種別 | |
状態 | リフォームの有無を含めた内外装・設備の年数、維持管理の様子など | |
居住性 | 日照、通風、プライバシーなど、居住性に関わる部分 |
参考:e-Gov法令検索「建築基準法」
6-3.査定で評価を上げるために売主がすべきこと
リフォームやメンテナンスの履歴、住みやすさ、周辺環境のよさなど、売主にしかわからないアピールポイントをまとめておくことで、評価アップにつながる場合があります。
築年数が古く劣化しているからといって、リフォームをする必要はありません。査定価格が多少上がるとしても、リフォームにはそれ以上の費用がかかります。
ただし、人の目で査定するため、見た目の印象は大切です。不要なものは早めに処分する、小まめな掃除と整理整頓を行うなど、家の中や建物まわりをすっきりさせておくだけでも評価は違います。
ちょっとした手間と一工夫で、内覧時の印象をアップすることが可能です。内覧の際は以下のことに注意しましょう。
- 不要なものや粗大ごみは早めに処分する
- 汚れやほこりのない状態にしておく
- 特に水まわりは配管まできちんと掃除をして、古くても清潔感があることをアピールする
- 家の中だけでなく、敷地内の草むしりや植木の剪定も忘れずに行う
- 当日は早いうちから窓を開けて、空気の入れ替えをする
- 室内を暗く感じさせないように、カーテンを開けておく。また日中でも照明をつけておく
また、日当たりや風通し、間取りの便利さ、リフォーム箇所など、物件の長所はその場できちんと説明できるよう、メモしておくとよいでしょう。
7.家を売るときに必要な書類と準備
家の売却をスムーズに進めるには、必要な書類や情報を整理し、あらかじめ準備しておく必要があります。
7-1.家を売るときに必要な書類とは
まずは、家を売る際に必要な書類について説明していきます。
7-1-1.本人確認書類 | 身分証明書(運転免許証など) |
---|---|
実印および印鑑証明書(3カ月以内に取得したもの) | |
住民票(3カ月以内に取得したもの) | |
7-1-2.権利に関する書類 | 登記済権利証または登記識別情報 |
売買契約書または工事請負契約書 | |
重要事項説明書 | |
7-1-3.土地・建物に関する書類 | 境界確認書または土地測量図 |
確認済証または検査済証 | |
設計図書および工事記録書 | |
7-1-4.付属情報に関する書類 | 固定資産税評価証明書または固定資産税納税通知書 |
借入残高証明書 | |
各種報告書・証明書 | |
7-1-5.区分所有に関する書類 | 管理組合規約・使用細則 |
管理費・修繕積立金の明細書 | |
長期修繕計画表 | |
購入時のパンフレット |
7-1-1.本人確認書類
本人確認書類は、引き渡しの際に必要となります。権利者が複数いる場合は、全員の書類がそろうまでは引き渡しができません。買主が決まったら、なるべく早めに準備しておくようにしましょう。
〇身分証明書
運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなど本人確認に使用します。
〇実印および印鑑証明書
所有権移転登記の際に必要となります。印鑑証明書は、発行から3カ月以内のものとなります。
〇住民票
売主の現住所が登記上の住所と異なる場合に必要です。発行から3カ月以内のものとなります。
7-1-2.権利に関する書類
物件の権利に関する書類は、不動産会社に対して売却を依頼する際に必要になります。
〇登記済権利証または登記識別情報
売却する土地・建物の所有者であることを証明するための書類です。
〇売買契約書または工事請負契約書
以前の持ち主との契約書です。査定の資料となるほか、確定申告の際の取得費計算で必要になる場合があります。
〇重要事項説明書
購入時の物件の詳細や告知事項が記載されており、査定や買主への説明の際に必要となります。
7-1-3.土地・建物に関する書類
土地や建物の仕様に関する書類は、不動産会社に対して売却を依頼する際に必要です。
〇境界確認書または土地測量図
境界が画定している場合、この書類で正しい面積を把握することができます。
〇確認済証または検査済証
建物が建築基準法に適合していることを証明するための書類です。
〇設計図書および工事記録書
家の構造や間取り、仕様がすべてわかるため、査定の資料とするほか、買主がリフォームする際にあると便利です。
7-1-4.付属情報に関する書類
〇固定資産税評価証明書または固定資産税納税通知書
固定資産税の確認に必要です。引き渡しの日を基準に、売主と買主で固定資産税を日割りで精算します。
〇借入残高証明書
住宅ローンの残債がある場合には、不動産会社に残高を伝え、返済方法を相談します。
〇各種報告書・証明書
土地の「地盤調査証明書」、建物の「住宅性能評価書」「耐震診断報告書」「アスベスト使用調査報告書」などがあれば、提出します。
7-1-5.【マンションの売却に必要】区分所有に関する書類
なお、マンションを売却する際には下記の書類も必要となります。
〇管理費・修繕積立金の明細書
管理費や修繕積立金について、買い手に対し説明する必要があります。滞納がないかどうかを確認する上でも必要です。
〇管理組合規約・使用細則
このほかマンション理事会の会計報告書、議事録の写しなど、管理組合に関わる書類はすべて買主へ引き継ぎます。
〇長期修繕計画書
いつどんな工事を予定しているのか、修繕積立金の値上げの可能性があるのか、買主が把握するために必要です。
〇購入時のパンフレット
必須ではありませんが、手元に残っている場合、ほかの書類とあわせて引き渡します。
7-2.家をスムーズに売るために必要な準備とは
家をよりよい条件でスムーズに売るために、以下のような準備を進めておきましょう。
◆必要な書類をそろえておく
査定や売却活動に必要のない書類でも、有効期限のある本人確認書類以外のものはできるだけ早めに準備しておくようにしてください。
◆だいたいの相場を把握しておく
不動産会社へ査定を依頼する前に、売却する物件の相場を自分でも調べておきます。相場を調べる方法は「4.家の売却相場を知っておこう」で説明しています。
◆隣接地との境界線を確認しておく
隣接する土地の境界が曖昧である場合は、成約した時点で境界確定測量を行いましょう。境界確定後、正確な面積に基づいて売却価格を決定します。
◆修繕・リフォーム履歴をまとめておく
適正な維持管理を行っていることを証明できれば、建物の資産価値が高いと判断され、高く売れる可能性があります。
◆マイナスポイントを洗い出しておく
敷地や建物の不具合・不良箇所を、きちんと説明できるようにしておきます。売却後に瑕疵があるとわかった場合、契約不適合責任に問われる可能性があります。
参考:一般財団法人 住宅金融普及協会「瑕疵担保責任から契約不適合責任へ」
8.「戸建て」「マンション」の売却注意ポイント
家を売る際の注意点を、「戸建て」と「マンション」の場合に分けて説明します。
8-1.戸建て売却の注意点
次に、戸建ての家を売却する際の注意点です。
8-1-1.家の状態を細部までチェックする
木造の戸建ては、維持管理によって建物の状態が大きく左右されます。雨漏りや水漏れ、シロアリ被害や木部の腐食がないかどうか、天井裏や床下も含め、しっかりチェックしてください。
契約解除や損害賠償といった大きなトラブルを防ぐためには、問題点を明確にしておき、売主と買主で情報を共有することが大切です。
8-1-2.見た目の印象をアップする
戸建ての場合は、外観の印象が特に重要なポイントです。屋根や外壁のメンテナンス履歴をきちんとまとめておくことが、大きなアピールポイントとなります。
庭の除草や木の剪定、不要なものは粗大ごみに出すなど、外まわりをすっきりと見せることも大切です。内部については、必要に応じてハウスクリーニングやホームステージングを依頼してください。
8-1-3.土地や戸建ての売買に慣れた不動産会社を選ぶ
「戸建て」と「マンション」では、査定のポイントが異なります。室内の状態、共有部分や管理面が主な査定ポイントとなるマンションに対し、戸建てでは建物内外の状態のほか、土地の形状や状態も査定価格を大きく左右します。
不動産会社を選ぶ際には、土地や戸建ての売買を多く取り扱っている不動産会社を探してください。
不動産の資産価値は、まず「立地」で判断されます。加えて、建物の場合は「維持管理の状態」で資産価値が左右します。
立地を変えられないなら、建物の見た目を変えようとリフォームを検討する方も少なくないでしょう。しかし、一過性のリフォームでは建物の資産価値は上がりません。むしろ、中古住宅を購入して自分好みにリフォームしたいという買い手を、売主自ら逃してしまうことになります。
また、古いマンションや戸建てを売る上でもっとも重要なのは、「安心感」です。そのためにも告知義務を守るのはもちろん、ホームインスペクションを利用するなどして建物の不良箇所を「見える化」し、買い手の安心感を高めることが大切です。
参考:国土交通省「https://www.mlit.go.jp/common/001201151.pdf」
8-2.マンション売却の注意点
まずは、マンションを売却する上での注意点です。
8-2-1.売却物件を客観的にチェックする
最寄り駅や施設からの距離、部屋の日照やプライバシーなど、周辺環境や物件のセールスポイントをしっかり把握し、伝えるようにします。
ただし、よいことばかりでなくマイナスポイントも隠さず伝えるようにしてください。それが、あとから発生しうるトラブルを回避すると同時に、売主への信頼につながります。
8-2-2.マンションに強い不動産会社を選ぶ
信頼度の高い不動産会社を選択するのはもちろんですが、直近の実績も大切です。土地・戸建ての売却に強い会社、賃貸管理がメインの会社など、不動産会社にも得手不得手があります。マンションをより高く・早く売却するためには、マンション売却の実績が豊富な不動産会社を選ぶようにしてください。
8-2-3.内覧の際の注意点
「6-3.査定で評価を上げるために売主がすべきこと」でも紹介しましたが、内覧の際は清潔感が何よりも重要です。水まわりを中心に、玄関、ベランダ、クローゼットも整理しておきます。また、当日は換気をして生活臭を消し、部屋を明るく見せるため日中でも照明をつけておきましょう。
居住中の物件であっても、ホームステージングで室内をモデルルームのように見せることは可能です。必要に応じて、サービスの利用を検討してみてください。
9.より「高く」「早く」売るために知っておくべきこと
ここからは、家をより「高く」「早く」売る方法をお伝えしていきます。
9-1.「売れやすい家」の秘訣とは
中古の家を購入する上で、もっとも重要視されるのは「価格」です。安いほうが売りやすいのはもちろんですが、あまりに相場とかけ離れた安さだと「何らかの事情があるのでは」と不安を感じる方もいます。
あくまでも相場の範囲内で、手頃な価格の家がもっとも売れやすい家だといえるでしょう。
価格に次いで求められるのが、家の広さや間取り、日当たり・風通し、設備といった居住性に関わる部分です。
設備に関しては、性能や機能よりも「不具合がないこと」が重視されるため、水漏れ、詰まりなどがある場合には修繕しておくとよいでしょう。
9-2.家を「高く」売る方法
家を「高く」売る上でもっとも重要なのが、築年数ですが、これは立地と同様、売主側で改善できるものではありません。しかし、実際には築年数の古い家でも、写真や内覧で見る人によい印象を与えることは可能です。
まずは、クリーニングで汚れをすべて落とし、清潔感をアピールしましょう。さらに室内をステージングします。家具や小物、観葉植物を飾るだけでも、家の魅力はアップし、印象ががらりと変わります。
あまりにも痛みが激しい場合には、リフォームするのも一案です。費用対効果を考え、不動産会社とも相談の上で進めましょう。
9-3.家を「早く」売る方法
価格が安ければ家は早く売れますが、値下げをするのは最終手段です。アメリカでは古くから、物件を早く売る方法としてホームステージングが活用されてきました。
日本においてもホームステージングの認知度は徐々に上がってきており、ステージングをした中古住宅は通常の約5倍の速さで売れているといいます。
ホームステージングは、モデルルームのように演出することで室内の印象を高めるだけでなく、家具を置いた時の部屋の広さや空間の使い方をイメージしやすくなる、家具選びの参考にできるなど、買主にとっても非常にメリットの多いサービスです。ぜひ、活用してみてください。
9-4.売主として押さえておくべき注意点
家を売る際に売主が知っておくべきこと、注意点について説明していきます。
9-4-1.買取の検討
転居や資金繰りの問題で、一刻も早く家を売らなければならない時もあるでしょう。築年数が古く、耐震性・断熱性に問題がある・状態が悪いなど、どうしても売れない物件もあるかもしれません。
そんな時は、不動産会社などによる「買取」も検討してみてください。「価格が仲介で売却する場合の7~8割程度になってしまう」というデメリットはあるものの、「時間をかけずに売却できる」ほか、「契約不適合責任を負う必要がない」「仲介手数料がかからない」などのメリットもあります。
9-4-2.個人売買にはリスクもある
自分で買い手をみつけて、個人売買することも可能です。仲介手数料を節約できるのがメリットですが、売買契約書など必要な書類をすべて自分で作成する必要があるため、かなりの手間を要します。
契約不適合責任などのトラブルにも売主自らが対応しなければならず、個人売買にはさまざまなリスクがあることは覚えておく必要もあります。
また、宅地建物取引士の作成した重要事項説明書がないとほとんどの住宅ローンの融資を受けることができません。そのため、現金での取引が条件となります。
9-4-3.瑕疵などは隠さず伝える
建物に瑕疵がある場合、売主は売買契約を締結する前に、それを買主に伝えなければなりません。あとから瑕疵が見つかった場合は「契約の内容に適合しない」として、買主は損害賠償、契約解除、追完請求、代金減額などの権利を、売主に対して行使することができます。
2020年(令和2年)の民法改正により「瑕疵担保責任」が「契約不適合責任」に変更となり、”隠れた”瑕疵である必要がなくなるなど、売主の責任はさらに重くなっています。
このようなトラブルのないよう、瑕疵の存在はきちんと買主に伝えるようにしましょう。
参考:法務省「売買,消費貸借,定型約款などの契約に関するルールの見直し」
9-4-4.信頼できる不動産会社を選び、かつ、任せきりにしない
よりよい条件で家を売るためには、信頼できる不動産会社、そして営業担当者と付き合うことが大切です。しかし、どれだけよい不動産会社に出会えたとしても、売却活動を任せきりではいけません。
営業担当者と小まめに連絡を取り合いましょう。状況を確認して宣伝方法を相談するだけでなく、時には売主側から提案するなど、密にコミュニケーションをとることが大切です。売主自身もできるだけ積極的に売却活動に参加していくことを意識するとよいでしょう。
10.【よくある質問】家を売りたい!こんなときはどうする?
家を売却する上でよくある質問についてお答えしていきます。
10-1. 住み替え(買い替え)の場合
Q.「住み替えの場合、家の売却と購入どちらを先行すればよいのでしょうか?」
買い先行の場合はダブルローンになってしまう可能性があり、月々の返済負担が大きくなってしまいます。ローンを一本化できる住み替えローンや、売却後に一括返済が可能な「つなぎ融資」の利用も検討してみてください。
また、現在住んでいる物件が売れなかった場合、新居となる物件の売買契約を解除できる「買い換え特約」を利用できるかどうかも、あらかじめ不動産会社に相談してみるとよいでしょう。
余剰資金のない方には、仮住まいが必要になる場合もありますが、資金計画の立てやすい売り先行で進めることをおすすめします。
10-2. 相続した(する)家を売る場合
相続する前の家を売る場合、何か注意点はあるのでしょうか? また、登記していない家を売ることはできるのでしょうか。相続の際に気になる質問をまとめてみました。
10-2-1. 相続する前に売る場合
Q.「相続人が複数いるのですが、不動産をどういうふうに分ければよいのでしょうか?」
複数の相続人がいる場合、「先に売って現金化することで遺産分割がしやすくなる」というメリットがあります。
ただし、不動産として相続する場合、土地は「相続税路線価」で公示価格の80%程度で評価され、建物は「固定資産税評価額」で公示価格の40~70%程度の評価となるため、現金で相続するよりも相続税が節約できます。
このほか、要件に該当すれば「小規模宅地等の特例」が適用されるなど、税制上は不動産で相続した方が有利であるといえます。
参照:国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)[令和2年4月1日現在法令等]」
10-2-2.登記していない家を売る場合
Q.「相続が発生してからわかったのですが、実家の登記が祖父の代のままでした。どうしたらいいでしょう?」
本来、売却する前に遺産分割協議をすべきですが、協議書がなくても売却することは可能です。ただし、相続人が複数いる場合には、相続人全員の同意がなければ買主は所有権移転登記をすることができません。
引き渡しまでに全員の同意が得られなかった場合、売買契約は解除となり、多額の違約金を請求される可能性もあります。登記していない家を売る場合は、より早めに準備をすることが肝心です。
10-3. 住宅ローンが残っている家を売る場合
Q.「家を売却したいのですが、住宅ローンが残っています。それでも売れるのでしょうか?」
住宅ローンの残債があっても、家を売ることは可能です。ただし、引き渡しまでに残債を一括返済する、または売却した代金と相殺するなどして、抵当権を抹消しておく必要があります。
売却代金で全額相殺できない場合には、残債を現金で支払うか、新たにローンを組むなどして、返済することになります。金融機関に相談してみてください。
10-4.住んでいる家を売る場合
Q.「売却活動の間、仮住まいへ引っ越さずに今の家に住み続けたいです。そんな状態でも売却は可能でしょうか?」
仮住まいせずに、住みながら家を売却したいという方も多いでしょう。しかし、あまりに生活感のありすぎる家では、売れるものも売れなくなります。
内覧にあたっては、買い手に対し雑然とした印象を与えないよう注意してください。きちんと掃除・整理整頓をして、印象アップに努めましょう。
また、売主が留守の最中に見学を行う「オープンハウス」方式なら、一度の内覧で効率よく売却活動をすることができます。不動産会社に相談してみるとよいでしょう。
10-5.家を売ることを知られたくない場合
Q.「ご近所に知られずに家を売りたいです。可能ですか?」
広告を出さずに、不動産会社の顧客名簿から条件の合う買い手を紹介してもらうことは可能です。ただし、既存顧客の中から条件が合う買い手を見つけることは容易ではないため、通常よりも成約するのに長い時間を要します。
不動産会社による買取なら、仲介の7~8割程度と売却価格は下がるものの、誰にも知られずに早く売却することが可能です。
10-6.第三者に賃貸している家を売る場合
Q.「賃貸に出している家を売りたいのですが、居住用の家を売るのと何かやることに違いはありますか?」
賃貸している家を売る場合、投資家をターゲットに売却することになります。一方、この家を買って自分で住みたいという買い手がいる場合には、入居者に立ち退いてもらってから売却することも可能です。
この際、入居者の立ち退きにかかる費用は売主が負担しますが、立ち退き交渉については不動産会社に任せたほうがよいでしょう。
10-7.遠方にある空き家を売る場合
Q.「住んでいる場所から離れている空き家を相続しました。売却は可能でしょうか?」
離れて住む親や親族から不動産を相続した場合など、遠方にある家を売却するケースはめずらしくありません。
しかし、不動産会社探しから、物件の確認、査定の立ち会い、売買契約、決済など、たびたび現地へ足を運ぶ必要があるため、時間も費用もかかります。近隣に住む親戚や専門家に依頼するなど、代理人を立てることも検討してみてください。
10-8.共有名義の家を売る場合
Q.「兄弟で相続した家を売却したいが、遠方に住む者もおり、全員がそろうことは難しい。それでも売却を進めることはできるか?」
共有名義の家を第三者へ売却する場合、共有者全員の同意を得る必要があります。共有者のひとりが、ほかの共有者の持分を買い取ることも可能です。
共有者の人数が多くスケジュールの調整が困難である、遠方に住んでいる共有者がいる、高齢の共有者がいるなど、全員が立ち会って売買契約書に署名・押印することが難しい場合には、委任状を作成して手続きをほかの共有者へ委託することも可能です。
まとめ
いかがでしたか。この記事では「家を売る具体的な方法」「家をより高く、早く売る方法」について解説しました。
家を売るには、まず、自分がなぜ家を売りたいのか、冷静に、客観的に見る必要があります。そして、家を売ることによって得られるメリットとデメリット、家を売ったことによる「結果」「将来的なプラン」についても、十分に検討しましょう。
自分でできることもありますが、不動産の売却については、まず査定を依頼し、信頼できる不動産会社と担当者を見つけて、じっくり相談することがベストです。
そのためには、査定は必ず複数の不動産会社に依頼して、それぞれの査定の結果や不動産会社の対応を比較してください。
査定を依頼するなら、一括査定サービス「不動産売却 HOME4U(ホームフォーユー)」がおすすめです。すでに長年の実績があり、さらに運営は通信最大手NTTグループ、NTTデータ・スマートソーシング。信頼性は他のどの一括査定サービスよりも群を抜いています。19年の実績があるからこそ、「査定依頼してみたけど、いまいちだった…」ということはありません。
ここまで読んでくださった方は、家を売却する際の流れや費用、必要書類、相場の調べ方、不動産会社を選ぶポイント、さまざまな疑問点への回答など、家を売るにあたり知っておくべきことを、すべてを把握できたことでしょう。
不動産査定のポイントや、家をより「高く」「早く」売るための方法を念頭に、早速、家を売るための準備を始めてみましょう。
まずは、自宅がどのくらいの金額で売れるのか、「不動産売却 HOME4U」で査定を依頼することからスタートしてくださいね。「家を売るのがはじめてで何もわからない…」といった不動産売却が初めてのかたにもおすすめです。