【譲渡所得税の計算方法は?】シミュレーションや税金を抑えられる特例など

【譲渡所得税の計算方法は?】シミュレーションや税金を抑えられる特例など

不動産を売却した際、利益(売却益)が出ると、譲渡所得税がかかることがあります。

この記事では、譲渡所得税の計算方法や、売却金額別のシミュレーション、譲渡所得税を軽減できる特例について解説します。

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1.譲渡所得税がかからないケース

土地や建物を売却して得た売却益を譲渡所得と言いますが、譲渡所得が発生しない場合には譲渡所得税がかかりません。

なお、譲渡所得についてはほかの所得と合算せずに個別に計算する「分離課税方式」です。譲渡所得がマイナスでも、ほかの所得と損益通算ができない点に注意してください。

2.不動産売却時にかかる4つの税金

不動産売却時にかかる税金は、印紙税・登録免許税・消費税・譲渡所得税の4つです。

税金の種類 税金の概要
印紙税 不動産売買契約書を作成した際にかかる税金
登録免許税 不動産の登記情報を変更する際にかかる税金
消費税 売買が成立したときに不動産会社に支払う仲介手数料にかかる税金
譲渡所得税 譲渡所得に対して課される税金

各税金の詳細や税率について詳しく解説します。

2-1.印紙税

印紙税は課税文書に課される税金で、印紙税法によって納付が義務付けられており、指定の金額の印紙を購入して課税文書に貼り、消印することで納付が完了します。

不動産売買の際は、売主と買主が1部ずつ保管するためには、2部分の印紙税が必要となり、それぞれが印紙税を負担することが一般的です。

不動産売買契約書に課される印紙税は、2027年(令和9年)3月31日までに作成される場合は、以下のように軽減税率が適用されます。

売買契約書の契約金額 軽減税率 本則税率
10万円超50万円以下 200円 400円
50万円超100万円以下 500円 1,000円
100万円超500万円以下 1,000円 2,000円
500万円超1,000万円以下 5,000円 1万円
1,000万円超5,000万円以下 1万円 2万円
5,000万円超1億円以下 3万円 6万円
1億円超5億円以下 6万円 10万円
5億円超10億円以下 16万円 20万円
10億円超50億円以下 32万円 40万円
50億円超 48万円 60万円

詳しくは、以下の記事でも解説しています。ぜひご覧ください。

2-2.登録免許税

登録免許税は、不動産登記を行う際にかかる税金のことです。土地・建物の購入や建築を行った場合は所有権保存登記や移転登記などが必要であり、この際に併せて納付します。

所有権移転登記にかかる登録免許税は一般的に買主が負担するため、売主が負担するのは抵当権抹消登記にかかる登録免許税です。

登記の種類 概要
所有権保存登記 新築など、まだ登記されていない不動産の所有者として初めて設定する登記
所有権移転登記 不動産の相続・売買・贈与などによって所有者が変わった場合に設定される登記
抵当権設定登記 金融機関が融資を行う際の担保として不動産に抵当権を設定する登記
抵当権抹消登記 ローン完済時に設定されていた抵当権を抹消する登記

登録免許税の本則税率と軽減措置は以下のとおりです。登録免許税額は、固定資産税評価額に以下の税率を掛けて計算をします。

固定資産税評価額は、固定資産税の納税通知書に同封されている課税明細書に記載されています。

対象 軽減措置適用後の税率 本則税率 軽減措置
土地 所有権移転登記(売買・贈与・交換など) 2.0% 売買による所有権の移転の場合0.15%(※1)
土地 所有権移転登記(相続) 0.4% 売買による所有権の移転の場合0.15%(※1)
建物 所有権保存登記 0.4% 0.15%(※2)
建物 所有権移転登記(売買・贈与・交換など) 2.0% 0.3%(※2)
建物 所有権移転登記(売買・贈与・交換など) 2.0% 0.3%(※2)
建物 所有権移転登記(相続) 0.4% 0.3%(※2)
土地・建物 抵当権設定登記 0.4% 0.1%(※2)
土地・建物 抵当権抹消登記 不動産1つにつき1,000円

※1 2026年(令和8年)3月31日まで
※2 2027年(令和9年)3月31日まで

2-3.消費税

仲介で不動産を売却した場合、不動産会社に仲介手数料を支払いますが、仲介手数料にも消費税がかかります。仲介手数料には売買代金の金額によって上限が定められており、計算式は以下の通りです。

不動産売却価格 仲介手数料の上限
400万円超 売却代金 × 3% + 6万円 + 消費税
200万円超400万円以下 売却代金 × 4% + 2万円 + 消費税
200万円以下 売却代金 × 5% + 消費税

2-4.譲渡所得税

不動産を売却した際の売却益に課されるのが譲渡所得税です。譲渡所得税には以下が含まれます。

税金の種類 概要
所得税・住民税 ・給料や商売をして得た利益にかかる税金
・所得税は国に、住民税は都道府県や市区町村に納める
復興特別所得税 東日本大震災の復興財源に充てるため、
2037年12月31日まで所得税に上乗せして徴収される特別税

譲渡所得税の税率は不動産の所有期間によって異なるため、「3-1.譲渡所得を計算する」で詳しく解説しています。

3.譲渡所得税の計算方法

譲渡所得税の計算方法

譲渡所得税は以下の流れで計算します。

  1. 譲渡所得の計算
  2. 利用できる特別控除があれば控除する
  3. 課税譲渡所得に税率を掛けて税金を算出する

譲渡所得税は、まず譲渡所得を計算し、そこから特別控除を引いて出した課税譲渡所得に、不動産の所有期間に応じた税率を掛けて算出します。

譲渡所得税の計算方法について詳しく解説していきます。

3-1.譲渡所得を計算する

まずは以下の計算式によって譲渡所得を計算します。

譲渡所得 = 売却金額 - (取得費 - 減価償却費) - 譲渡費用 - 特別控除額

譲渡所得を計算したあと、適用可能な特別控除があれば該当の金額を控除して課税譲渡所得を計算します。

課税譲渡所得 = 譲渡所得 - 特別控除
売却金額
土地や建物を譲渡する対価として受け取った金額を指します。
取得費
建物の土地や建物を取得した際にかかった費用のことで、次のようなものがあります。

  • 建築代金
  • 購入手数料
  • 設備費
  • 改良費
  • 登記費用
  • 登録免許税
  • 不動産取得税
  • 土地の測量費用
  • つなぎ融資などの利息部分
  • 設備費
  • 改良費

建物の取得費は、購入代金などの合計額から減価償却費相当額を差し引いた金額です。土地は購入代金などの合計額がそのまま取得費となります。

なお、不動産の取得費が不明な場合は、譲渡した金額の5%相当額を概算取得費とすることができます。

譲渡費用
土地や建物を譲渡するために直接かかった費用のことで、以下のようなものがあります。

  • 仲介手数料
  • 印紙税
  • 賃借人の立退料
  • 土地を売却するときにかかった解体費用
  • 借地権を売却するための地主の承諾費用
特別控除
一定の要件を満たすことで適用を受けられる控除です。適用を受けると譲渡所得が減少するため、譲渡所得税を抑えることができます。具体的な特別控除の内容については、「5.不動産売却時の税金を抑えられる主な特例3つ」で解説しています。

3-2.譲渡所得税を算出する

課税譲渡所得を計算したら、所有期間に応じた税率を掛けて譲渡所得税額を算出します。

譲渡した年の1月1日時点で不動産の所有期間が5年以下であれば短期譲渡所得に該当し、税率39.63%、5年超の場合は長期譲渡所得に該当し、税率20.315%が適用されます。

短期譲渡所得の税率 所得税30% + 住民税9% + 復興特別所得税0.63% = 39.63%
長期譲渡所得の税率 所得税15% + 住民税5% + 復興特別所得税0.315% = 20.315%

4.譲渡所得税のシミュレーション

ここでは売却金額ごとにシミュレーションを紹介します。

2,500万円で取得した新築木造戸建て物件を3年後に譲渡した場合、売却金額によって譲渡所得税はどう変わるのでしょうか。いずれも3年後に減価償却費は209万円とします。

4-1. 2,000万円で売却した場合のシミュレーション

売却金額が2,000万円の場合、仲介手数料は72万6,000円、印紙税は1万円です。

2,000万円 - (2,500万円 - 209万円) - 73万6,000円 = ▲364万6,000円

譲渡所得は▲364万6,000円であり、利益が出ていないため、このケースでは譲渡所得税がかかりません。

4-2. 3,000万円で売却した場合のシミュレーション

売却金額が3,000万円の場合、仲介手数料は105万6,000円、印紙税は1万円です。

3,000万円 - (2,500万円 - 209万円) - 106万6,000円 = 602万4,000円

このケースでは譲渡所得が602万4,000円となります。短期譲渡所得に該当する場合の譲渡所得税額は約238万円、長期譲渡所得に該当する場合は約122万円です。

なお、3,000万円の特別控除を利用すれば、譲渡所得602万4,000円は全額控除されます。

4-3. 4,000万円で売却した場合のシミュレーション

売却額が4,000万円の場合、仲介手数料は138万6,000円、印紙税は1万円です。ただしこのケースでは、3,000万円の特別控除の要件を満たしているものとします。特別控除の要件については後述しています。

4,000万円 - (2,500万円 - 209万円) - 139万6,000円 - 3,000万円(特別控除額) = ▲1,430万6,000円

3,000万円の特別控除が利用できるため、このケースでは税金がかかりません。

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5.不動産売却時の税金を抑えられる主な特例3つ

不動産を売却する際は、特例の適用を受けられないか確認してみましょう。ここでは比較的利用しやすい3つの特例を紹介します。

ただし、いずれの特例も、適用を受けるためには確定申告をする必要がある点に注意してください。

控除が利用できれば、売却時にかかる税金を軽減できる可能性があります。

節税以外の控除や特例について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

5-1.居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例

自宅として利用していた居住用不動産(居住用財産)を売却した場合、所有期間に関係なく、その年の譲渡所得から最大3,000万円が控除されます。

この特別控除の特例が適用される主な要件は以下のとおりです。

  • 自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地や借地権を売ること。以前住んでいた家屋や敷地等の場合は、住まなくなった日から3年を経過する日が属する年の12月31日までに売却すること
  • 売却した年、その前年および前々年に、3,000万円の特別控除または、マイホームの譲渡損失についての損益通算および繰り越し控除の特例の適用を受けていないこと
  • 売却した年、その前年および前々年に、マイホームの買換えや、マイホームの交換の特例を受けていないこと など

出典:「“No.3302 マイホームを売ったときの特例”. 国税庁. (参照2024-10-02)」

5-2.マイホームを売ったときの軽減税率の特例

この特例では、売却するマイホームの所有期間が10年を超えていた場合、譲渡所得にかかる税率が軽減されます。3,000万円の特別控除の特例との併用も可能です。

譲渡所得金額6,000万円以下の部分と6,000万円超の部分で、適用される税率が変わります。

譲渡所得が6,000万円以下 譲渡所得6,000万円超
(譲渡所得が6,000万円以下の分)
譲渡所得6,000万円超
(6,000万円超の部分)
所得税 10% 10% 15%
復興特別所得税 0.21% 0.21% 0.315%
住民税 4% 4% 5%
合計 14.21% 14.21% 20.315%

この特例が適用される主な要件は、以下のとおりです。

  • 日本国内にある自身が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地を売ること
  • 売った年の1月1日時点で、売った家屋や敷地の所有期間が10年を超えていること
  • 売った年の前年、および前々年にこの特例の適用を受けていないこと など

出典:「“No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例”. 国税庁. (参照2024-10-02)」

5-3.相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

相続した不動産を定められた期間内に売却した場合、相続税額のうちの一定額を譲渡資産の取得費に加算することができます。

この特例を利用できる要件は以下のとおりです。

  • 相続や遺贈で財産を取得した者であること
  • 財産を取得した方に、相続税が課税されていること
  • 相続した財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以降3年を経過する日までに譲渡していること

出典:「“No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例”. 国税庁. (参照2024-10-02)」

譲渡資産の取得費に加算できる金額は、以下のように算出をします。

取得費加算額 = 支払った相続税額 × 譲渡した不動産の相続税評価額 ÷ 相続した財産の総額(相続税評価額)

不動産譲渡に関連する特例は要件がわかりにくいため、不安な方は税理士などの専門家に相談してみましょう。

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まとめ

所有している不動産を売却して売却益が出た場合、譲渡所得税を納める必要があります。とはいえ、売却代金から取得費や譲渡費用などを差し引けるため、譲渡所得税がかからない場合もあります。

また、不動産売却時にかかる税金は、譲渡所得税・印紙税・登録免許税・消費税の4種類です。税金は手元に残る利益にも影響するため、どのようなタイミングにどの程度かかるのかを確認しておきましょう。

加えて、不動産売却にあたっては、3,000万円の特別控除や、軽減税率の特例などを利用できる場合があります。譲渡所得税を軽減できる可能性があるため、要件や利用方法をしっかり把握しておきましょう。