
不動産売却時には諸費用や税金がかかります。売った金額すべてが手取り額(手残り金)となるわけではないため、具体的に何がどれくらいかかるのか把握しておくことは重要です。
中でも、売却により課税される税金は、確定申告で節税が可能なケースもあるため、事前に知っておいて損はありません。
本記事では、下記の4点をテーマに、不動産売却と税金について解説します。
- 不動産売却にかかる3種類の税金
- 譲渡所得の計算方法
- 節税効果がある特別控除
- 税金をいつ払うか?納付時期(タイミング)
不動産売却時の税金について知ることで、適切な資金計画をたてられるようになり、節税をしながらスムーズに納税を行えるでしょう。
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Contents
1.不動産を売却した時に発生する税金は3種類
不動産売却時には、税金のシミュレーションを事前にしておくことがおすすめです。まずは、どのような種類の税金があるかを把握しましょう。
不動産の売却にともない課税される税金は以下の3種類です。
■不動産売却時に払う税金
譲渡所得税 | 売却益に対して課税される税金で、確定申告が必要 |
---|---|
印紙税 | 契約書を作成した際に課税され、収入印紙を用いて納税 |
登録免許税 | 所有権移転登記や抵当権抹消登記の手続きの際に課税される |
これらの税金の内容を正しく理解し、適切に納税しなければペナルティの対象になってしまうことがあります。
また、登録免許税を納税しなければ売買契約自体が滞ってしまう原因にもなります。
不動産売却をスムーズにすすめるためにも、売却で発生する税金の種類と特徴を正確に把握しておきましょう。
1-1.譲渡所得税
不動産売却の売却益に対して課税される税金が譲渡所得税です。
税金の名称から分かるとおり譲渡所得税は「所得税」の一種で、給与所得や事業所得と同様に収入に対して課税されるものです。
不動産を売却して得た利益に対し、不動産の所有期間に応じて変化する税率が課税され、納税額を計算します。
譲渡所得税の注意点には以下の点があります。
- 自分で売却益=譲渡所得や税額を計算する必要がある
- 売却した翌年に確定申告する必要がある
- 納付書などは送られてこないので、自分自身で納税する
- 計算を間違えると修正申告や追徴課税の対象になる
- 確定申告しなければ無申告加算税や延滞税のペナルティが発生する
- 売却損の場合には確定申告が不要
注意点を総括すると、自分で正しく譲渡所得税を計算して確定申告しなければならない、ということです。
詳しい計算方法は後ほど解説しますが、不動産売却して売却益=譲渡所得が発生した場合には確定申告する必要があります。
なお、売却益ではなく、売却損が発生した場合には原則として確定申告が不要です。
しかし、売却損が発生した場合に適用となる節税特例は確定申告が必要なので、不動産売却したならば確定申告したほうが良いと考えましょう。
1-2.印紙税
印紙税とは印紙税法にもとづき、課税対象になる一定の文書に対して課される税金です。
不動産取引の現場では契約書や領収書を作成した際に課税されます。
取引金額によって印紙税額が定められていて、それぞれ対応した収入印紙を貼り付け、消印することで納税したとみなされます。
収入印紙そのものは郵便局や法務局で購入しましょう。
印紙税額は以下の金額です。
契約金額 | 本則税額 | 軽減税額 |
---|---|---|
10万円を超え50万円以下 | 400円 | 200円 |
50万円を超え100万円以下 | 1,000円 | 500円 |
100万円を超え500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 10,000円 | 5,000円 |
1,000万円を超え5,000万円以下 | 20,000円 | 10,000円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 60,000円 | 30,000円 |
1億円を超え5億円以下 | 100,000円 | 60,000円 |
5億円以上の売買については省略しています。
この印紙税額は本来の税額と、令和6年3月31日までの軽減措置の適用を受けた金額を表記しています。
軽減措置を受けられる期間を経過してから売買契約書を作成した場合、印紙税額が変わるので確認が必要です。
1-3.登録免許税
登録免許税とは、不動産の名義変更に必要な登記手続きにともなって課税される税金です。
不動産売買の現場では、以下の登記手続きが見られます。
所有権移転登記 | 不動産の所有者を変更する登記手続き、登記費用や税金は買主が負担することが一般的 |
---|---|
所有権保存登記 | 新築された建物に所有権を付ける登記手続きで、貸主が負担する |
抵当権設定登記 | 住宅ローンなどの借り入れを行って売買代金を支払った場合に、不動産に対して抵当権が設定され、その手続きに必要な登記、買主が負担 |
抵当権抹消登記 | 不動産売却によって住宅ローンなどを完済する場合に、不動産に設定されていた抵当権を抹消する登記、売主が負担 |
その他にも地積更正登記や建物の表題登記など状況によって異なる登記手続きがあります。
売主が直接関係する登記としては「所有権移転登記」と「抵当権抹消登記」について把握すれば充分でしょう。
「所有権移転登記」では、一般的に登記費用や登録免許税の負担を買主が行うので、売主としては必要書類の提出や、署名捺印して書類作成に協力する程度です。
一方で「抵当権抹消登記」が必要な場合は売主が登記費用と登録免許税を負担します。
書類を整え、法務局に申請することで登記手続きが完了します。
その際に登録免許税を納税しますが、司法書士に依頼して登記手続きと登録免許税の納税を代行してもらうことが一般的です。
2.譲渡所得税の計算方法
譲渡所得税を納税するためには売却益=譲渡所得を計算する必要があり、以下の手順で計算します。
- 譲渡所得を計算する
- 算出した譲渡所得から特別控除を差し引く
- 不動産の所有期間によって決められた税率を掛けて税額を算出する
計算式自体は難しいものではありませんが、細かい取り決めを守らなければ修正申告の対象になる可能性もあります。
後々の税金トラブルにならないように、確実に譲渡所得の計算方法を把握しましょう。
不動産売却時の税金は、計算ツールを使用して一度に算出することも可能ですが、本章では譲渡所得から順に算出方法を解説します。
2-1.譲渡所得を計算する
譲渡所得は売却価格から取得費や諸経費などを差し引いて算出し、以下の計算式で求めます。
譲渡所得 = 売却価格 -(取得費 - 建物の減価償却費)- 譲渡費用
売却価格とは、売買契約書に記載されている金額をそのまま挿入します。
取得費は不動産を購入した際の費用のことで、購入価格に加えて諸費用や建物のリフォーム費用なども含められます。
もし、相続などで取得した不動産の購入費用が不明な場合、売却価格の5%を概算取得費として計算可能です。
しかし、概算取得費では、譲渡所得が増えて課税額が多くなる傾向があります。そのため、できる限り取得費の根拠になる売買契約書や、住宅ローンの契約書などの書類を探すことをおすすめします。
減価償却費とは、建物が経年劣化によって減少させた価値のことで、建物の用途、構造、築年数によって変わります。
減価償却費の計算方法は以下の計算式で求めます。
減価償却費 = 建物の取得価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数
最後に譲渡費用とは、不動産売却にかかった諸経費のことです。
譲渡費用として計上できる諸経費には主に以下のものがあります。
- 仲介手数料
- 印紙税
- 建物の解体工事費
この他にも借地の場合に必要な承諾費用や、立ち退きが必要な場合の立ち退き料も含まれます。
2-2.譲渡所得から適用する特別控除を差し引く
特別控除の適用を受けられる場合には、譲渡所得から特別控除を差し引きます。不動産取引の現場でよく見られる控除には以下があります。
- 居住用財産の3,000万円特別控除
- 相続空き家の3,000万円特別控除
この他にも区画整理や住宅地造成事業など、特定の要件を満たした売却ならば特別控除を受けられる場合もあります。
これらの条件を満たすと、算出した譲渡所得から定められた金額を差し引けます。
たとえばマイホームを売却した場合に適用できる、居住用財産の3,000万円特別控除ならば、算出した譲渡所得額が3,000万円以下ならば譲渡所得税は課税されません。
大きな節税効果が期待できるので、条件をよく確認して、該当するならば特別控除を活用しましょう。
2-3.所有年数によって決められた税率をかける
控除額を減額したら、譲渡所得に定められた税率をかけて譲渡所得税額を算出します。
算出時の税率は、所有期間に応じて以下2種類に区別されます。
短期譲渡所得 | 保有期間5年以下 | 39.63%(所得税30.63%、住民税9%) |
---|---|---|
長期譲渡所得 | 保有期間5年超 | 20.315%(所得税15.315%、住民税5%) |
上記の税率を踏まえ、譲渡所得税を算出しましょう。
3.不動産売却で譲渡所得が発生した場合に適用できる特別控除
不動産売却時に特別控除を用いることで大きな節税効果が期待できますが、そのためには条件を満たす必要があります。
また、条件を満たしても確定申告しなければ特別控除を利用できません。
どのような控除があり、どのような条件が必要なのでしょうか。
3-1.3,000万円特別控除の特例
マンションや戸建てなど、マイホームを売却した場合には保有期間の長短に関わらず、3,000万円の特別控除を受けられます。
3,000万円の特別控除とは、「2-2」で前述したように、売却利益である譲渡所得が3,000万円以下であれば、課税されないという特例です。
3,000万円の特別控除を利用するには、大前提として売却する不動産が「マイホーム」である必要がありますが、それ以外には以下の条件が求められます。
■3,000万円の特別控除の適用条件
- 売主と買主の関係が配偶者や親子ではない
- 売った年の前年、及び前々年に3,000万円の特別控除など、他の特例を受けていない
- 住まなくなった日から3年目の年末までに売却する
- 建物を解体しているならば、解体した日から1年以内で、かつ住まなくなった日から3年目の12月31日年末までに契約する
- 家屋や土地を賃貸や貸駐車場として利用していない
- 売却した敷地や建物が、収用等の場合の特別控除など、他の特例の適用を受けていない
適用除外としては以下の3点が挙げられますので、確認にしておきましょう。
■3,000万円特別控除の適用とならないケース
- 3,000万円控除の適用を目的で購入した不動産ではないv
- 仮住まいや一時的な目的で入居したものではない
- 別荘や主に趣味、娯楽または保養のために所有した家屋ではない
また、以下の3点にも注意しましょう。
■3,000万円特別控除の注意点
- 住宅ローン控除や買換え特例、譲渡損失の損益通算などの特例や制度が併用できない
- 相続した不動産で本制度を利用するためには、被相続人と相続人が同居している必要がある
- 特別控除を用いるためには確定申告が必要
3-2.マイホームを売ったときの軽減税率の特例
マイホームを10年超所有していた場合には「10年超所有軽減税率の特例」が適用され、譲渡所得の税率が以下に変わります。
譲渡所得6,000万円以下の部分 | 14.21%(所得税10.21%、住民税4%)/td> |
---|---|
譲渡所得6,000万円以上の部分 | 20.315%(所得税15.315%、住民税5%) |
そして、この特例を利用するためには以下の条件を全て満たす必要があります。
■10年超所有軽減税率の特例の適用条件
- 売った年の1月1日において売った不動産の所有期間が10年を超えていること
- 日本国内にある自分が住んでいる家屋の売却、または家屋とともに敷地を売却すること
- 住まなくなった日から3年目の年末までに売却する
- 建物を解体しているならば、解体した日から1年以内で、住まなくなってから3年目の12月31日までに契約する
- 家屋や土地を賃貸や貸駐車場として利用していない
- 売った年の前年や前々年にこの特例の適用を受けていない
- マイホームの買換え特例や交換の特例などを受けていない
- 売主と買主の関係が配偶者や親子ではない
一般的に特別控除とは併用できないことが多いのですが、軽減税率の特例は「居住用財産売却の3,000万円特別控除」と併用できることがメリットです。
10年以上居住したマイホームを売却する際には積極的に活用しましょう。
3-3.被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例
相続で取得した空き家を売却すると、3,000万円の特別控除を受けられて、譲渡所得から差し引けます。
ただし、控除を受けるには建物の要件と、適用を受けるための要件の2種類を満たさなければなりません。
■被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の建物の要件
- 昭和56年5月31日以前に建築されている(旧耐震基準の建物)
- 区分所有建物ではない
- 家屋を取り壊す、または耐震改修を行う
■被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の適用要件
- 相続日から3年を経過する年の年末、かつ本制度の期限である令和5年12月31日までに売却する
- 相続開始の直前に被相続人が1人で生活していた
- 相続時から売却まで、事業や賃貸、居住目的で利用されていない
- 相続や遺贈により土地や建物を取得している
- 売却価格が1億円以下
- 土地や建物が相続財産を譲渡した場合の取得費の特例や、収容等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていない
- 売主と買主の関係が配偶者や親子ではない
出典:国税庁「被相続人居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
なお、被相続人が亡くなる前に老人ホーム等の介護施設に入所していたとしても、適用は可能です。
3-4.特定のマイホームを買い換えたときの特例
マイホームを買い替えた場合、売却した不動産の譲渡所得税の納税を、購入した不動産を将来売却するときまで繰延べできる制度です。
たとえば、3,000万円で購入したマイホームを5,000万円で売却し、1,800万円の譲渡所得を得たとします。
その後、4,000万円で新たなマイホームを購入し、その後5,000万円で売却、800万円の譲渡所得を得た場合、最初の家と二つ目の家の譲渡所得を合算し、2,600万円分の納税をまとめて行うことができる、ということです。
本制度を利用するために、売却する家には以下の要件があります。
■特定のマイホームを買い換えたときの特例の適用条件
- 自分自身が住んでいた国内にある家
- 住まなくなってから3年以内に売却する
- 直近2年間に3,000万円の特別控除や、10年超所有の場合の軽減税率、譲渡損失の特別控除を利用していない
- 売却価格が1億円以下
- 10年以上住んでいる物件を売却する
- 売主と買主の関係が配偶者や親子ではない
そして、購入する家には以下の要件があります。
■特定のマイホームを買い換えたときの特例の家の条件
- 国内にある
- 建物の床面積が50㎡以上、敷地面積が500㎡以下
- 売却の前年から得年までの3年間で買い替えしている
- 中古住宅の場合、新築後25年以内または新耐震基準に適合している
- 新築住宅の場合、一定の省エネ基準を満たしている
4.不動産売却の税金はいつ払う?納付時期について
不動産売却時には、譲渡所得税・印紙税・登録免許税の3種類(住民税も含めると4種類)が課税されますが、以下のように納付時期は異なります。
納付時期 | |
---|---|
譲渡所得税 | 売却翌年の確定申告後、2月16日から3月15日の間に納税 |
住民税 | 売却翌年の確定申告後、翌年の住民税に上乗せされるため基本的には納税の手続きは不要 |
印紙税 | 売買契約時、郵便局や法務局で印紙を購入し売買契約書に貼付け、消印することで納税が完了する |
登録免許税 | 抹消登記を申請したとき。司法書士に登録免許税を預け、登記手続き時に代行して納税してもらうことが一般的 |
納税時期を過ぎたり適切な額を支払わないと、ペナルティの発生や手続き自体が進まないことがあります。
不動産売却に際してどの税金をいつ納税する必要があるのか把握して、不動産売却に備えましょう。
この記事のポイント
譲渡所得税の計算手順は以下の流れになります。
- 売却価格から取得費や譲渡費用を差し引いて譲渡所得を計算する
- 控除があれば譲渡所得から差し引く
- 所有年数に応じた税率を掛けて、譲渡所得税を計算する
詳しくは「2.譲渡所得税の計算方法」をご覧ください。
不動産売却時に譲渡所得が発生し、その際に利用できる特別控除などの制度には以下があります。
- 3,000万円特別控除の特例
- マイホームを売ったときの軽減税率の特例
- 被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例
- 特定のマイホームを買い換えたときの特例
詳しくは「3.不動産売却で譲渡所得が発生した場合に適用できる特別控除」をご覧ください。
不動産売却によって課税された税金は納付時期が定められています。
- 譲渡所得税は確定申告後
- 印紙税は売買契約締結時
- 登録免許税は登記申請時
詳しくは「4.不動産売却の税金はいつ払う?納付時期について」をご覧ください。