3,000万円特別控除に必要な書類と申請方法

不動産の売却金額から、取得費や譲渡費用を差し引いた金額を譲渡所得といい、これに対して所得税と住民税が課税されます。

「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例(以下、3,000万円特別控除)」は、マイホーム(居住用財産)売却時の譲渡所得を最大3,000万円まで控除できる特例です。

積極的に活用したい制度ですが、必要書類や申請方法がわからないという方も多いと思います。
そこで本記事では以下について解説します。

不動産売却にかかる税金について詳しく知りたい方は『不動産の売却で税金はいくらかかる?』をご覧ください。

1.3,000万円特別控除の必要書類

3,000万円特別控除の申請は、譲渡所得の確定申告と併せて行います。その際に必要な書類は以下のとおりです。

書類名 取得先
確定申告書
「申告書第一表、第二表」
「申告書第三表(分離課税用)」
「譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】」
国税庁ホームページ
税務署
戸籍の附票の写しなど
(譲渡契約締結日の前日に、住民票の住所と売却したマイホームの所在地が異なる場合に必要)
本籍地の市区町村役場※
マイホーム取得時と譲渡時の
・売買契約書の写し
・諸費用の領収書
(所定の収入印紙の貼付及び消印がされていることをご確認ください)
本人所有
本人確認書類
「マイナンバーカード」または
「番号確認書類」と「身元確認書類」

※番号確認書類とは
・マイナンバー通知カード
・マイナンバーの記載がある住民票の写し

※身元確認書類とは
・運転免許証
・公的医療保険の被保険者証
・パスポート
・身体障害者手帳
・住基カード など

本人所有
住民票は市区町村役場
譲渡した建物・土地の全部事項証明書 法務局

※2024年3月1日から、最寄りの市区町村窓口で、別の役場にある戸籍謄本を取り寄せできるようになりました。しかし、戸籍の附票は対象外のため本籍地の市区町村窓口で取得します。

2.3,000万円特別控除の申請期間と申請方法

3,000万円特別控除の申請期間と申請方法は以下のとおりです。(なお、譲渡所得が発生した場合は確定申告の義務も伴うため、3,000万円特別控除により譲渡所得が0円になる場合でも特例適用のための申告が必要です。)

2-1.申請期間

原則的に譲渡所得を得た年の、翌年の2月16日から3月15日の間(土日祝日の関係で前後することもあり)に、確定申告によって申請します。
それぞれの日が休日に当たる場合は、翌日または翌々日が期限日になります。

2024年(令和6年)分の確定申告書の提出期間は、2025年(令和7年)2月17日(月)から同年3月17日(月)までです。

2-2.申請方法

申請方法には次の4つの方法があります。

・税務署への持ち込み
・税務署または業務センターへの郵送
・税務署の時間外収受箱への投函
・e-Taxによる電子申告

国税庁の、確定申告書等作成コーナーを利用して確定申告書の作成をすると、そのままe-Taxを通して電子申告が可能です。
税額などが自動で計算され、3,000万円特別控除の申請における入力も指示通りに進められるため、大変便利です。

また、同コーナーで入力した確定申告書を印刷し、税務署へ持ち込んだり郵送したりすることでも申請できます。

3.3,000万円特別控除の適用要件チェックリスト

以下は、3,000万円控除の適用要件と適用除外要件をまとめたチェックリストです。
3,000万円特別控除を適用するには、すべてにチェックがつく必要があります。

自分が住むマイホームや、同時にそのマイホームのある土地を売ること
マイホームを売った年の前年、前々年に、3,000万円特別控除の特例、損益通算・繰越控除の特例を受けていないこと
マイホームを売った年の前年、前々年に、買い換えなどの特例を受けていないこと
収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと
災害によって滅失したマイホームの場合、住まなくなった日から3年を経過する日が属する年の12月31日までに売ること
売手と買手が親子や夫婦など特別な関係でないこと
※特別な関係とは、親子や夫婦のほか生計を一緒にする親族、内縁関係の者などです。
特例の適用を受けることだけを目的として入居した家屋ではないこと
マイホームを新築する間の仮住まいなど、一時的な目的で入居した家屋ではないこと
別荘など主に趣味や娯楽、保養のための家屋ではないこと

4.マイホームの状況で異なる特例適用ポイント

基本的には、前章で解説した項目を満たせば、3,000万円特別控除を適用できます。
ただ、ひとことにマイホームといっても、その在り方は各人異なるでしょう。

マイホームの状況によっては、要件や適用範囲が変わることもあります。
以下では、マイホームの状況別に、特例適用のポイントを解説します。

  • マイホームを取り壊した場合
  • 共有名義の場合
  • 店舗併用住宅の場合

4-1.マイホームを取り壊した場合

マイホームを取り壊した場合に、3,000万円特別控除を受けるには、次の2つの要件を満たす必要があります。

  • マイホームがあった土地の譲渡契約が、建物を取り壊した日から1年以内に締結され、さらに住まなくなった日から3年を経過する日が属する年の12月31日までに売却すること。
  • マイホームを取り壊してから、土地の譲渡契約を締結した日までその土地を貸し駐車場など他の用途に使っていないこと。

4-2.共有名義の場合

マイホームが共有名義の場合、各共有者が譲渡所得の確定申告と3,000万円特別控除の申請を行います。
譲渡所得は、共有者の持分割合で分割した額で申告し、控除の額は共有者1人につき最高3,000万円になります。

例えば、家の持分が夫は2/3、妻は1/3で、譲渡所得が3,000万円だったとします。この場合、夫は2,000万円、妻は1,000万円の譲渡所得になります。

3,000万円特別控除はそれぞれに適用されるため、夫婦ともに譲渡所得は全額控除され0円になり、譲渡所得に課税はされないことになります。

4-3.店舗併用住宅の場合

店舗併用住宅を譲渡した場合でも、3,000万円特別控除の適用要件を満たせば控除を受けられます。
ただし控除対象になるのは、家屋の中の居住用に使う部分に限られます。

居住部分の面積の計算は、次のように定められています。

居住専用部分の面積(A)+居住と店舗の両方で使う部分の面積×(A)÷((A)+店舗専用部分の面積)

例えば、居住専用部分が50平米、居住と店舗の両方で使う部分が20平米、店舗専用部分が30平米の店舗併用住宅は、

50平米+20平米×50平米÷(50平米+30平米)=62.5平米

という計算になり、62.5平米分が控除対象になります。

また、居住部分が家屋全体の90%以上を占める場合、全体を居住用とみなし総面積で特例を受けられます。

より詳しくは『“No.3452 店舗併用住宅を売ったときの特例”. 国税庁』をご覧ください。

5.3,000万円特別控除はお得?他の特例との併用について

3000万円特別控除には以下の様に、併用できる特例と併用できない特例があります。

● 10年超所有軽減税率の特例:併用可
● 住宅ローン控除:併用不可
● 買い換え特例:併用不可
● 損益通算の特例:併用不可

5-1.10年超所有軽減税率の特例との併用が可

10年超所有軽減税率の特例と、3,000万円特別控除は併用が可能です。

10年超所有軽減税率の特例は、所有期間が10年超のマイホームを売却した場合に、譲渡所得にかかる税率が軽減される特例です。

特例対象の場合は、3,000万円特別控除を適用した後の譲渡所得金額に対し、下のような軽減税率を適用できます。

譲渡所得金額 所得税 住民税
6,000万円までの部分 10% 4%
6,000万円を超える部分 15% 5%

なお、軽減税率を適用しない本来の税率は、以下のようになっています。

区分 所得税 住民税
長期譲渡所得
(5年超所有)
15% 5%
短期譲渡所得
(5年以下所有)
30% 9%

詳しくは「“No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例”.国税庁」ご覧ください。

5-2.住宅ローン控除との併用が不可

3,000万円特別控除と、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の併用はできません。

住宅ローン控除は、年末時点の住宅ローン残高の0.7%を、所得税や住民税から最大13年間控除する制度です。例えば、年末の住宅ローン残高が2,000万円の場合、最大で2,000万円×0.7%の14万円が控除されます。

次の条件に当てはまる場合は住宅ローン控除を受けることはできません。

  • 新しく購入したマイホームに入居した年と、その前の2年間に3,000万円特別控除を受けた
  • 新しく購入したマイホームに入居した年の翌年から3年目までの間に、以前の住居を譲渡して3,000万円特別控除を受けた

マイホームの買い替えを行う方は、3,000万円特別控除と住宅ローン控除、どちらが得をするか計算しておきましょう。

詳しくは「“住宅ローン減税”.国土交通省」をご覧ください。

5-3.買い換え特例との併用が不可

マイホームの買い換え特例と、3,000万円特別控除は併用できません。

マイホームの買い換え特例は、マイホームを買い換えた際の、譲渡所得に対する課税を将来に繰り延べできる制度です。
今回の買い換えによる譲渡所得への税金は、新しく手に入れたマイホームを将来売却した際の利益に含めて課税されます。

例えば、1,000万円で購入したマイホームを5,000万円で売却し、買い替え特例を適用して、別のマイホームに買い換えたとします。(譲渡所得4,000万円を繰り延べ)
数十年後、新たマイホームを売却したことで譲渡所得1,000万円が生じました。
この場合は、過去に繰り延べた譲渡所得4,000万円と、新たな譲渡所得1,000万円を足した5,000万円に対して、税金が課税されます。

詳しくは「“No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例”.国税庁」をご覧ください。

5-4.損益通算の特例との併用不可

マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例と、3,000万円特別控除は併用できません。

譲渡損失の損益通算とは、マイホームの買い替えで譲渡損失が発生した場合に、給与所得や事業所得などから譲渡損失分を控除できる制度です。
さらに、その年に控除しきれなかった譲渡損失は、譲渡した年の翌年から3年間にわたって繰り越し、損益通算ができます。

しかし家を売却した年の前年と前々年に、3,000万円特別控除を受けていると、この損益通算の特例は受けられません。

詳しくは「“No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき”.国税庁」をご覧ください。

まとめ

3,000万円特別控除は、マイホームを売却した譲渡所得から、最大3,000万円まで控除できる特例です。課税の対象になる譲渡所得を減らすことで、所得税や住民税を軽減できます。

控除を受けるには、要件を満たすマイホームの売却を行い、お伝えした必要書類をそろえ譲渡所得の確定申告と併せて申請します。

3,000万円特別控除は、10年超所有軽減税率の特例との併用はできますが、住宅ローン控除・買い換え特例・損益通算の特例との併用はできないため注意してください。
積極的に制度を活用し、マイホーム売却時の税金の負担を減らしましょう。

マイホームを売却する際は、その適正な価格を知ることが大切です。NTTデータグループが運営する不動産売却 HOME4U(ホームフォーユー)を利用すれば、最大6社の不動産会社にまとめて査定依頼できます。信頼できる不動産会社を見つけやすくもなりますので、ぜひご活用ください。