マンションを購入すると、毎月の維持管理費として管理費と修繕積立金が必要となります。
管理費は、マンション共用部の日常的な清掃や軽微な修繕などの維持管理に充てられる費用です。
一方、修繕積立金は、外壁の塗り替えや屋上・バルコニーの防水工事など計画的に行う大規模修繕工事、または災害等による突発的な修繕工事に使われる費用です。
マンションによって異なる管理費や修繕積立金ですが、どれくらいの費用が適正なのでしょうか。
この記事では、管理費・修繕積立金の相場や高いマンションの特徴などについて解説します。
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Contents
1.管理費の相場
「国土交通省.”令和5年度マンション総合調査”.2024-10-30.(参照2024-09-26)」をもとに、お家のいろはが独自に作成
国土交通省の令和5年度マンション総合調査(調査日は2023年(令和5年)10月末~2024年(令和6年)1月末)によると、1戸当たりの管理費の相場は11,503円/月(使用料・専用使用料からの充当額を除く)となっています。
価格帯別に見ると、「10,000円超え15,000円以下」が30.8%と最も多く、次いで「7,500円超え10,000円以下」が20.6%となっており、全体の約半数が「7,500円~15,000円」の価格帯です。
自主管理のマンションなどは除き、管理費の多くは管理業務を委託する管理会社への支払いに使われ、その他、共用部の保守点検や消耗品費、電気・水道代などに充てられます。
そのため管理費は、マンションの共用部分の設備・施設あるいは管理サービスの充実度などで変わります。
2.修繕積立金の相場
「国土交通省.”令和5年度マンション総合調査”.2024-10-30.(参照2024-09-26)」をもとに、お家のいろはが独自に作成
同じく国土交通省のマンション総合調査によると、1戸当たりの修繕積立金の相場は13,054円/月(使用料・専用使用料からの充当額を除く)です。
修繕積立金は、マンション管理組合で作成した長期修繕計画をもとに、工事内容や費用、実施時期から逆算して決めるのが一般的です。
また、大規模修繕工事を行ったタイミングで長期修繕計画を見直す管理組合も多く、実際にかかった工事費用や修繕積立金の残高によっては値上げが必要となるケースもあります。
3.管理費・修繕積立金が高い物件の特徴
管理費・修繕積立金が高いマンションの特徴について解説します。
3-1.部屋が大きい
マンションは部屋の広さ(専有面積)によって、エントランスやエレベーターなど共用部分の持分割合が変わります。
管理費や修繕積立金は持分割合によって決まるため、持分が多ければ多いほど、いずれも高くなります。
そこで間取りや専有面積によって管理費や修繕積立金がどれくらい変わるか見てみます。
マンション総合調査によると、1平米当たりの管理費・修繕積立金の相場は次のとおりです。
1平米当たりの相場 (使用料・専用使用料からの充当額を除く) | |
管理費 | 158.6円 |
修繕積立金 | 181.9円 |
出典: “令和5年度マンション総合調査”.国土交通省. (参照2024-09-26)
これをもとに首都圏の中古マンションの成約情報から専有面積(間取り)別に、月額の管理費と修繕積立金を算出したものが次の表です。
間取り | 2DK・2LDK | 3DK・3LDK | 4DK・4LDK |
専有面積(平米) | 62.25 | 73.14 | 92.56 |
管理費 | 9,872円 | 11,600円 | 14,680円 |
修繕積立金 | 11,323円 | 13,304円 | 16,836円 |
合計 | 21,195円 | 24,904円 | 31,516円 |
※小数点以下は切り捨て
「 “年報マーケットウォッチ”.公益財団法人東日本不動産流通機構. (参照2024-09-26)」をもとに、お家のいろはが独自に作成
あくまで目安の数字ではありますが、管理費と修繕積立金の合計を3DK・3LDKと4DK・4LDKで比べると、およそ7,000円/月の違いとなっており、専有面積次第で費用が大きく変わることが分かります。
3-2.マンションが小規模
総戸数が少ない小規模のマンションのほうが管理費や修繕積立金は高くなる傾向です。
次の表は、総戸数別の管理費と修繕積立金(使用料・専用使用料からの充当額除く)をまとめたものです。
総戸数 管理費(円/月)
修繕積立金(円/月)
総戸数 | 管理費(円/月) | 修繕積立金(円/月) |
---|---|---|
20戸以下 | 14,282 | 15,569 |
21~30戸 | 13,948 | 14,207 |
31~50戸 | 11,682 | 13,201 |
51~75戸 | 10,934 | 12,902 |
76~100戸 | 10,155 | 12,868 |
101~150戸 | 11,183 | 12,213 |
151~200戸 | 9,540 | 11,875 |
201~300戸 | 10,298 | 11,687 |
301~500戸 | 10,002 | 11,898 |
501戸以上 | 12,929 | 13,131 |
「“令和5年度マンション総合調査”.国土交通省. (参照2024-09-26)」をもとに、お家のいろはが独自に作成
マンションの総戸数でみると、管理費、修繕積立金とも総戸数が少ないほど1戸当たりの費用が高くなりやすい傾向にあります。
また、次のような特徴も読み取れます。
- 総戸数30戸以下のマンションの管理費・修繕積立金が特筆して高い
- 501戸以上の大規模マンションの管理費・修繕積立金は高い
- 500戸までは総戸数が大きくなるほど修繕積立金が下がる傾向
総戸数の少ないマンションの管理費・修繕積立金が高くなる理由として、これら費用を少数の世帯で負担しなければならない点と、工事の発注においてもスケールメリットが生かしにくい点が考えられます。
次にマンションの階数別(単棟型)に管理費と修繕積立金(使用料・専用使用料からの充当額除く)をまとめたものです。
階数 | 管理費(円/月) | 修繕積立金(円/月) |
---|---|---|
3階建以下 | 13,642 | 13,890 |
4~5階建 | 13,880 | 13,357 |
6~10階建 | 11,484 | 13,361 |
11~19階建 | 10,688 | 12,423 |
20階建以上 | 14,415 | 14,025 |
「“令和5年度マンション総合調査”.国土交通省. (参照2024-09-26)」をもとに、お家のいろはが独自に作成
ここから読み取れる特徴は次のとおりです。
- 管理費、修繕積立金とも20階以上が最も高い
- 管理費については、5階建て以下のマンションが高い
- 修繕積立金については、11~19階建が低い
20階以上の大規模マンション(俗にいうタワーマンション)は、共用施設やエレベーターの設置台数の多さなどから各種コストが高くなります。
加えて、大規模修繕工事における足場の設置費用や工期の長さなどで修繕コストも大きくなりやすいため、管理費や修繕積立金が高くなる傾向にあります。
3-3.設備や共用施設が充実している
設備や共用施設が充実しているマンションは、管理やメンテナンス費用がかかりやすく、管理費・修繕積立金が高くなりやすいといえます。
プールやジム、ラウンジなどの共用施設が充実している、あるいはコンシェルジュがいる24時間管理のマンションなどでは、それに応じた維持費や人件費が必要になります。
また、機械式駐車場の割合が多いマンションは、保守管理費用がかかるため管理費や修繕積立金が高くなる傾向です。
国土交通省の「マンションの修繕積立金ガイドライン」においても、機械式駐車場が1台あるごとにマンションの修繕積立金に加算される加算額が設定されています。
3-4.築年数が古い
築年数が古いマンションは、修繕積立金が比較的高くなる傾向があります。
次の表は、完成年次別に管理費と修繕積立金(使用料・専用使用料からの充当額除く)をまとめたものです。
完成年次 | 管理費(円/月) | 修繕積立金(円/月) |
---|---|---|
昭和55年~昭和59年 | 9,984 | 11,241 |
昭和60年~平成元年 | 11,484 | 12,618 |
平成2年~平成6年 | 11,141 | 13,519 |
平成7年~平成11年 | 10,567 | 13,563 |
平成12年~平成16年 | 13,059 | 15,102 |
平成17年~平成21年 | 12,175 | 14,101 |
平成22年~平成26年 | 12,410 | 12,058 |
平成27年~令和元年 | 11,901 | 12,587 |
令和2年以降 | 14,122 | 9,666 |
「“令和5年度マンション総合調査”.国土交通省. (参照2024-09-26)」をもとに、お家のいろはが独自に作成
完成年次別でみた場合、修繕積立金については、平成12年~平成16年の完成年次(築18~23年程度)までは築年数が古いマンションほど高い傾向が見られます。ただし、それより築年が経過したマンションでは大きな違いはありません。
なお、管理費は令和2年以降の築浅のマンションが高くなっているものの、全体的には特徴的な傾向は見られません。
3-5.分譲時の管理費・修繕積立金が安かった
新築分譲時の管理費・修繕積立金の設定が安すぎるとその後上昇しやすくなります。
これは、一般的に新築分譲時は、管理費や修繕積立金を低くしているケースが多く、販売終了後に新たに発足した管理組合のもとで必要な費用を積み立てていくことになるためです。
特に修繕積立金については、新築時は安く設定し段階的に高くなっていく方式が主流であるため、新築時に過度に安くしていた場合、その分後々高くなる可能性が高いといえます。
なお、新築購入時には、発足したばかりの管理組合がスムーズに管理業務を行うための「管理準備金」、あるいは修繕積立金が一定程度貯まるまでに発生する修繕費用に備えるための「修繕積立基金」が一時金として徴収されます。
4.修繕積立金は値上がりしていく場合が多い
修繕積立金は、築年の経過とともに値上がりすることが多く、その主な理由として次の点があげられます。
- 段階増額積立方式が採用されている
- 人件費や修繕コストの値上がり
- 予期しない大規模修繕工事
修繕積立金の徴収方法には、新築時の負担を軽減し段階的に増額していく「段階増額積立方式」と当初から必要な修繕費用をもとに均等に徴収していく「均等積立方式」があります。
マンション総合調査をみると、完成年次が新しいマンションほど段階増額積立方式を採用しており、2015年以降ではおよそ8割が段階増額積立方式です。
段階増額積立方式では、将来の値上げを想定して設定されるため修繕積立金は値上がりします。
また、物価上昇に伴う資材費の高騰や人手不足による人件費増によって修繕積立金が上がる可能性があります。
大規模修繕工事の周期として12年~15年のマンションが多いなか、その間の物価上昇まで見込んで修繕積立金を徴収しているマンションは多くありません。
さらに自然災害や事故など、計画していない大規模修繕工事が必要となり修繕積立金が上がる可能性があります。
5.管理費・修繕積立金を滞納すると競売になる?
管理費・修繕積立金を滞納した場合どうなるのでしょうか。滞納を続けた場合の流れは次のとおりです。
- 管理会社から督促
- 管理組合による内容証明郵便による催告
- 簡易裁判所へ支払督促の申し立て
- 差押え・競売
管理費などの滞納者が出た場合に最初に行われるのが管理会社からの督促です。
通常、管理会社との管理委託契約では滞納から6か月間の督促は管理会社の業務となっています。
管理会社の督促で支払わない場合、管理組合は内容証明郵便で督促を行います。
通常このときに、「この督促が最後通告であり支払ってもらえない場合は裁判手続きに移行する」旨を併せて伝えます。
それでも滞納が続く場合、行われるのが簡易裁判所への支払督促の申し立てです。
支払督促の申し立てとは、裁判所を通じて管理費、修繕積立金を支払わない場合、公的機関が強制的に取り立てる(強制執行)ことになる旨の文書を送付する手続きです。
支払督促に対して滞納者から異議の申し立てがなければ、通常の訴訟によって得た確定判決と同様の効力を持ちます。
ただし、滞納者から異議の申し立てがあった場合、支払督促は効力を失い通常の訴訟手続きに移行します。
確定判決が出ても滞納が続く場合、最終手段として滞納者の財産を差し押さえ、滞納した管理費や修繕積立金を回収することになります。
まとめ
マンションを購入する場合、管理費や修繕積立金が適正な水準であるか、また今後上昇する可能性などを確認することが大切です。
国土交通省の調査によれば、管理費の相場は1戸当たり11,503円/月、修繕積立金の相場は1戸当たり13,054円/月でした。
こうした基準を持ちながら、マンションの規模や部屋の広さなどでも費用が変わることを把握しておきましょう。
管理費・修繕積立金に影響する主な条件は次のとおりです。
- マンションの総戸数・階数
- 共用施設や設備、管理サービスの充実度
- 築年数
- 部屋の広さ(専有面積)
- 分譲当初の価格設定
また、管理費や修繕積立金が安ければ良いというわけではありません。
適正な価格であることに加え必要な維持管理や将来の大規模修繕工事のための積み立てがしっかりとされていることが重要です。
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