滅失登記は1か月以内に申請する必要がある!申請しないリスクや申請の流れも

滅失登記は1か月以内に申請する必要がある!申請しないリスクや申請の流れも

建物を解体した場合、所有者や相続人は滅失登記を行う義務があります。期限内に申請しなければ過料を科されるなどのリスクもあるため、早めに手続きを進めることが大切です。

本記事では、滅失登記の申請期限について紹介するとともに、自分で滅失登記する流れや建物を相続した場合の手続きについて解説します。

1.滅失登記の申請期限

滅失登記の申請期限

滅失登記とは、解体や火災・災害による消失などで建物がなくなった場合に、その事実を不動産登記簿に反映させる手続きです。滅失登記を行うと建物の登記事項が抹消され、登記簿が閉鎖されます。

不動産登記法では、建物の所有者に対して滅失登記の義務や登記申請を怠った場合の過料について規定しています。

ここでは、滅失登記の申請期限や滅失登記を怠った場合のリスクについて解説します。

滅失登記について詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。

1-1.滅失登記の申請期限は建物の解体後1か月以内

滅失登記の申請期限は、建物を取り壊した日から1か月以内と定められています。

建物の所有者や相続人は、申請期限内に必要書類を収集し、滅失登記申請書に必要事項を記入のうえ、手続きを行う必要があります。

また、手数料はかかりますが、土地家屋調査士に代行してもらうことも可能です。申請期限が1か月以内と短期間であるため、手続きに不安がある方などは土地家屋調査士への依頼を検討してもよいでしょう。

1-2.申請期限を過ぎた場合の罰金やリスク

正当な理由なく滅失登記の申請期限を過ぎた場合、以下の罰金やリスクがあります。

  • 10万円以下の過料に処せられる
  • 新しい建物を新築できない
  • 土地が売却できない
  • 売却の際、不動産会社に仲介を断られる
  • 相続人が準備する書類と手間が増える
  • 解体を証明する書類を紛失する など

解体後に滅失登記をせず、登記上建物が存在しているままでは、新しい建物を新築しようとしても、建築計画に不備があると判断され、建物の建築に着手できないことがあります。

さらに土地を売却する際も、基本的に土地の現況と登記簿上の記載が一致していることが必要です。そのため、不動産会社から仲介を断られる場合もあるでしょう。

加えて、滅失登記をしないまま建物の所有者が亡くなってしまうと、戸籍事項全部証明書(戸籍謄本)など、相続人が準備する書類や手間が増えます。

それだけでなく、解体から時間が経過すると、解体を証明する書類を紛失するなどのリスクもあります。

したがって、建物の所有者は建物の解体後、速やかに滅失登記を済ませることが大切です。

1-3.申請は法務局で行う

滅失登記は、解体した建物の所在地を管轄する法務局に申請します。

申請手続きは法務局の窓口で行うことができるほか、郵送でも可能です。窓口であれば、申請に必要な書類や滅失登記申請書の記載方法について相談しながら進めることができます。

ただし、法務局の窓口は平日9時から17時までしか利用できません。そのため、建物の所在地から遠方に住んでいる場合などは、郵送での手続きが便利です。

1-4.相続した建物の場合は相続人の一人が申請する

相続した建物を解体したあとの滅失登記については、相続人が複数いる場合でも、一人の相続人のみで申請できます。

これは、滅失登記が民法が定める共有物に対する「保存行為」にあたり、取り壊されている建物の滅失登記を申請しても、ほかの相続人に不利益が生じないためです。

ただし、建物の解体は民法が定める共有物の「変更行為」にあたるため、相続人全員の同意がなければできません。建物を解体することと滅失登記することは異なるという点を理解しておきましょう。

家の売却を検討中の方や、家の処分方法について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

2.自分で滅失登記の申請を行う流れ

滅失登記を土地家屋調査士に依頼せず、自分で行うことで費用を節約できます。ここでは、自分で申請する場合の流れについて解説します。

滅失登記の費用について詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。

2-1.必要書類をそろえる

滅失登記の申請に必要な書類は次のとおりです。

(1)建物滅失登記申請書

滅失登記の申請書は、法務局の窓口あるいは法務局のホームページで入手できます。

建物滅失登記申請書
出典:“登記申請書”. 法務局. 2019-05-10. (参照2024-08-08)

登記申請書の主な記載事項は、申請する方と解体した建物についてです。

申請する方の情報は、登記事項証明書(登記簿謄本)の現在の名義人の情報をそのまま記載し、建物の情報としては、登記事項証明書(登記簿謄本)の表題部の内容を記載します。

(2)建物取壊証明書(建物滅失証明書)

建物取壊証明書は、建物を取り壊したことを証明する書類です。解体工事を請け負った事業者が作成したものを受け取ります。

取壊証明書に決まった書式はありませんが、一般的な記載事項は次のとおりです。

  • 解体した建物の情報(所在・家屋番号・種類・構造・床面積)
  • 滅失の理由(〇年〇月〇日取壊し)
  • 建物の所有者情報
  • 取り壊したことを証明する文言
  • 証明書の作成年月日
  • 解体した事業者名・所在地・実印

なお、建物取壊証明書を紛失したなどの理由で準備できない場合は、建物が存在しないことを明記した上申書を作成します。実印を押印し印鑑証明書を添付することで、取壊証明書がなくても滅失登記の申請が可能です。

(3)解体事業者(法人)の資格証明書・印鑑証明書

解体した事業者の資格を証明する書類として、法人の場合は登記事項証明書(登記簿謄本)と代表者の印鑑証明書が必要です。事業者が法人ではなく個人の場合は、個人の印鑑証明書が必要となります。

資格証明書に関する書類も、建物取壊証明書と併せて解体事業者に手配してもらいます。

なお、登記申請書に法人の会社法人等番号を記載することで、登記事項証明書(登記簿謄本)や印鑑証明書の添付を省略することが可能です。

(4)地図や建物図面

法務局の担当者が現地を確認するため、取り壊した建物があった場所を確認できる資料を添付します。公図や住宅地図、建物図面などを添付すると手続きがスムーズに進みます。

公図(※)や建物図面は、自宅で保管しているものがなければ法務局の窓口やオンラインでも入手可能です。

※公図とは、土地の位置や形状を表す公的図面で、法務局に備え付けられているもの

(5)状況に応じて必要となる書類

書類は必ず必要となるもの以外に、状況に応じて追加で用意しなければならないものもあります。

例えば、登記上の所有者の住所と現在の住所が一致していない場合は、登記上の住所から現住所に至るまでの経緯がわかる住民票の写しや、戸籍の附票などを申請書に添付する必要があります。

このように必要な書類は状況次第で異なるため、事前に管轄の法務局に確認するようにしましょう。

滅失登記の必要書類について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

2-2.管轄の法務局に申請書を提出する

必要書類を準備し、申請書への記入が済んだら、取り壊した建物の所在地を管轄する法務局に提出します。状況管轄以外の法務局では受け付けてもらえないため、注意しましょう。

法務局の状況によって、申請から登記完了までに要する期間は異なりますが、通常1週間から10日程度で登記完了証が発行されます。

申請時に登記が完了する予定日を聞いておき、その日までに不備などの連絡がなければ無事完了していると考えられます。

後日、申請した法務局にて登録完了証を受領しましょう。あるいは、申請時に必要な郵便切手を貼付した返信用封筒を併せて提出しておくことで、郵送で受け取ることも可能です。

3.相続人が滅失登記を行なう場合の必要書類

建物の所有者が亡くなっている場合は、相続人が滅失登記を申請します。

建物を相続する場合、本来、建物の所有権の名義を亡くなった方(被相続人)から相続人に変更する相続登記(所有権移転登記)が必要です。

とはいえ、解体する建物の名義変更を行う意味はないため、相続登記を省略して滅失登記を行うことができます。

ただし、相続人が申請する場合、所有者が亡くなった事実や所有者の相続人であることを証明するために、次の書類が必要です。

  • 亡くなった方の戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)もしくは除籍全部事項証明書(除籍謄本)
  • 亡くなった方の住民票の除票または戸籍の附票
  • 滅失登記を申請する方の住民票または戸籍の附票

申請する方についての書類は、申請者本人の分のみ準備すればよく、相続人全員の分をそろえる必要はありません。

なお、土地と建物を合わせて相続した場合、相続登記を省略できるのは解体する建物についてだけで、土地については相続登記が必要です。

相続した建物を解体せず、古家付きの土地を売却したい方は、以下の記事をご覧ください。

4.土地家屋調査士に依頼する場合は委任状が必要

滅失登記を土地家屋調査士に依頼する場合、委任状が必要となります。費用の相場は、建物の所在地や抵当権の有無などによっても変わりますが、4~5万円程度です。

滅失登記と一口に言ってもさまざまなケースがあるため、見積書の内訳や必要書類の内容をわかりやすく説明してくれる土地家屋調査士に依頼しましょう。

なお、「登記手続きであれば司法書士に依頼できる」と思われる方もいるかもしれませんが、建物の新築や滅失など「表示に関する登記」を依頼できるのは土地家屋調査士のみです。一方の司法書士は「権利に関する登記」を取り扱います。

また、建物を取り壊したあとの土地を売却する場合は、信頼できる不動産会社に依頼することが大切です。

不動産会社によって、土地の最終的な売却価格が大きく変わることもあるため、複数の不動産会社に査定を依頼し、それぞれの査定価格や販売方法を比較しながら依頼先を決めることが重要です。

NTTデータグループが運営する「不動産売却 HOME4U(ホームフォーユー)」は、大手から地域密着の中小不動産会社まで約2,300社と提携し、最大6社に一括で査定を依頼することができます。ぜひご活用ください。

まとめ

滅失登記は、建物を解体した日から1か月以内に申請しなければならず、正当な理由なしに申請を怠ると過料が科せられる恐れがあります。

滅失登記をせずに放置していると、解体後の土地を売却する場合や、その土地に建物を新築する場合の手続きに支障が出るため、なるべく早めに手続きを進めるようにしましょう。

申請手続きは、解体事業者から必要書類を収集し、登記申請書に記入のうえ管轄の法務局に提出することで、自分でも完了することができます。

ただし、建物の所在地から遠方に住んでいる場合や申請手続きに不安がある方は、土地家屋調査士に依頼することも検討しましょう。