
転勤や海外赴任になった場合、家を長期間空き家にするのは防犯面や家の劣化面で心配です。家を手放したくはないけれど長期間不在にする時には、リロケーション(定期借家契約)で賃貸に出す方法があります。リロケーションで自宅を人に貸す場合、大切なのは管理会社選びです。
リロケーション期間中は管理会社に任せっきりになるため、会社選びを失敗すると思わぬトラブルが発生しかねません。
また、リロケーション物件は、長く住めないという理由で借主側からは敬遠されます。 賃貸に住む入居者のうち、リロケーション物件の利用率はわずか2.5%です。
出典:国土交通省住宅局「令和2年度 住宅市場動向調査」
リロケーションで効率よく家賃収入を得るためには、わずかな入居者を効率よく探してくれる、実績豊富な会社でなくてはいけないのです。
この記事では、
- リロケーションとは
- リロケーションと賃貸の違い
- リロケーションのメリット・デメリット
- リロケーションの流れ
- 管理会社を比較するときにチェックすべきポイント
- おすすめのリロケーション専門会社
を紹介します。
リロケーション会社選びの参考になれば幸いです。
なお、リロケーションについての基礎知識を知りたい方は「【リロケーションで副収入】基礎知識や始め方をやさしく解説」の記事をご覧ください。
Contents
1.リロケーションとは?
リロケーションとは、転勤や海外赴任などある一定期間だけ家を空ける際に、留守宅を賃貸に出し家賃収入を得る賃貸方法です。英語の「Relocation=移転・配置転換」という意味からきています。
転勤で数年ほど家を不在にすることになった場合、家を所有していれば住んでいなくても固定資産税などの税金が発生します。リロケーションを利用すれば、留守宅を人に貸すことで空き家にすることなく家賃収入も得られ、資産を有効に活用できます。リロケーションは、転勤だけではなく高齢者世帯の住み替えや家族の介護などで、一定期間家を空けるが手放したくない場合に利用するのがおすすめです。
1-1.賃貸との違い
リロケーションと賃貸は、「人に家を貸す」という点では一緒ですが、賃貸契約の種類が異なります。通常の賃貸は「普通借家契約」といい、正当な理由がない限り借主が契約更新の意思を示した場合に貸主は断ることができません。
一方、リロケーションは、契約時に貸主と借主の双方が物件の賃貸期間に合意して契約を結ぶため、契約期間満了時には確実に家が戻ってくるという点が賃貸との大きな違いです。リロケーションであれば、転勤が終わって戻って来た際に、確実に住む家を確保できる点が安心です。
定期借家契約(リロケーション) | 普通借家契約 | |
---|---|---|
更新の有無 | 期間満了で終了、更新はなし (ただし、再契約は可能) |
正当な理由がなければ更新 |
突然の転勤で持ち家をどうしようかと迷っている方はこちらもご覧ください。
2.リロケーションのメリット
リロケーションには、さまざまなメリットがあります。大きく次の3つです。
2-1.家賃収入が得られる
リロケーションの最大のメリットとして、家賃収入が得られる点があげられます。
家を空き家にしていても、所有している限りは固定資産税などの税金が発生します。家に住んでいないからといって税金の支払いやローン返済を止めることはできません。
リロケーションを活用すれば、家賃収入を税金やローン返済に充てることができます。家賃収入が得られる点はリロケーションの大きなメリットといえます。
2-2.家のダメージを最小限に抑えられる
リロケーションのメリットの一つとして、家のダメージを最小限に抑えられる点があげられます。
長期間空き家にしておくと、雑草が生え、換気が出来ないことからカビやダニが発生し家の経年劣化が通常よりも進んでしまいます。
リロケーションでは、人に住んでもらうことで適度な換気ができ、管理会社も定期的なメンテナンスに入るため家の状態を保つことができます。
家のダメージを最小限に抑えられる点は、リロケーションのメリットといえます。
2-3.防犯対策として効果的
リロケーションのもう一つのメリットとして、防犯対策になることがあげられます。長期間空き家にしておくと、空き巣に入られたり放火されてもすぐに気づかれないなど防犯面で不安が残ります。
リロケーションでは、契約期間中は入居者が住んでいるため安心です。仮に入居者が見つからない場合でも、リロケーションの管理会社に管理してもらえるため全く人の手が入らない状態で放置されるという心配はありません。
リロケーションは防犯対策としても有効な点はメリットの一つと言えるでしょう。
3.リロケーションのデメリット
リロケーションにはデメリットもあります。リロケーションを検討されている方は、デメリットも理解した上で検討してみてください。
3-1.入居者が見つかりにくい
リロケーションのデメリットとの一つとして、入居者がなかなか見つかりにくい点があげられます。リロケーションは、借主にとっては契約満了時に退去しなくてはいけないため借りづらいという難点があります。また、リロケーション制度の認知度も低く、調査では約6割の人が「リロケーション制度を知らない」と回答しています。(国土交通省 住宅市場調査)
実際に、賃貸契約のうちリロケーションの利用率は全体のわずか2.5%となっており、貸主にとって借主を見つけるのが難しいという点は、大きなデメリットといえます。
3-2.賃料が相場より安くなる
リロケーションのもう一つのデメリットとして、賃料が相場より安くなる点がデメリットとしてあげられます。
理由として、リロケーションは期限付きの賃貸物件になるため、通常の賃貸物件よりも賃料を安く設定する傾向にあるからです。
一般的に、相場より1~3割ほど安い賃料設定です。賃料が通常より安くなる点は、デメリットの一つといえるでしょう。
契約年数 | リロケーションの家賃の相場 |
---|---|
2年契約 | 相場より20-30%安くなる |
3年契約 | 相場より15-25%安くなる |
4年契約 | 相場より10-20%安くなる |
3-3.「住宅ローン控除」が適用されない
リロケーションのデメリットの一つとして、住宅ローン返済中にリロケーションを利用する場合は、住宅ローン控除(住宅借入金特別控除)が適用されないことがあげられます。
住宅ローン控除は、本人か家族が居住するということが条件になるため、リロケーション期間中は住宅ローン控除対象から外れてしまいます。
契約が満了し、元の家に戻って住み始めた際には、条件を満たせば残りの控除期間の再適用を受けることは可能です。住宅ローンの返済が残っている場合は注意しましょう。
リロケーション期間中は控除対象外になってしまう点は、デメリットといえるでしょう。
家を貸すときの注意点や流れについて知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
4.リロケーションを始める際の流れ
実際にリロケーションを始めようとした際に、何から始めたらいいのか迷わないように流れをまとめてみました。リロケーションを検討されている方はぜひ参考にされてください。
4-1.管理会社選び
実際にリロケーションを始めようとした際に、一番最初にすることは管理会社選びです。個人ですべてするよりは、管理会社に任せた方が負担が少なくてすみます。
会社によって、サービス内容や料金、手数料や条件にも違いがあります。また、リロケーション物件取扱い実績や、安心して家を任せられる担当者かどうかも重要なポイントです。
管理会社を選ぶ際には、複数の会社を比較・検討して信頼できる会社を選ぶようにしましょう。
4-2.管理業務委託契約の締結
リロケーションを委託する管理会社が決まったら、管理会社との間で管理業務委託契約を結びます。そして、契約後に管理会社が入居者の募集などを開始する流れです。
委託契約を結ぶ前には、管理会社が「どこまで対応してくれるのか?」をしっかり確認しておきましょう。プランによっても管理会社が対応してくれる内容には差があります。しっかり把握しておかないと、後々トラブルのもとになりかねませんので注意が必要です。
4-3.賃料・入居条件などの決定
管理業務委託契約を結んだ後は、家賃やリロケーションの契約期間はどのくらいにするのか、ペットの可否など、入居者を募集する際に必要な条件を決めていきます。
リロケーションは期限付きの賃貸のため、賃料を相場より安く設定するのが一般的です。しかし、駅近の人気エリアや、契約期間が長い場合は通常の賃貸と同程度でも借り手が見つかることもあります。
経験豊富な管理会社のアドバイスも参考にしながら、条件を話し合って決めていくことがおすすめです。
4-4.リフォームなどの貸出し準備
入居条件などの具体的な内容が決まった後は、設備をチェックしたり、畳や障子を張り替えるなどホームクリーニングを行い貸出準備を進めます。必要に応じて、修繕工事をしたりリフォームをする場合もあります。
4-5.入居者募集
実際に貸出する準備が整ったあとは、インターネットなどで賃貸物件情報サイトへリロケーション物件の情報を掲載して入居者を募集します。全賃貸契約物件の中でも、リロケーション物件はわずか2.5%です。
入居者募集は、実績のある管理会社を選ぶことが大変重要です。入居者が見つからないと家賃収入を得ることはできないため、管理会社選びの際に入居者の実績なども確認しておきましょう。
4-6.入居者の審査・契約
入居希望者が見つかった後は、管理会社が入居者の支払い能力や入居条件の確認などをして、審査が通れば管理会社と入居者の間で賃貸契約が結ばれます。
5.会社選びで絶対後悔しないための6つのチェックポイント
リロケーションの業務委託では、管理会社は主に以下のことを担当します。
- 入居者募集
- 家賃の回収
- 入居者のクレーム対応
- 修繕要望などの対応
- 期間満了時の入居者との明け渡し処理
など。
上記の内容は、ほとんどの会社のサービスにも含まれています。
しかし、どのような方法で、どこまで対応するか、などの細かい規定は会社によってさまざまです。
会社を選ぶ際には、必ず以下の6つのポイントをチェックしておくといいでしょう。
- 実績(管理戸数)はどのくらいあるのか?
- 契約期間は選べるか?
- 入居者の募集方法はどんな手法か?
- 修理修繕費用はいくらまで、誰が負担するのか?
- 収支報告書はあるか?
- 担当営業マンは信頼できるか?
5-1.実績(管理戸数)はどのくらいあるのかを確認する
実はリロケーション(定期借家契約)の制度は、2000年3月1日に施行されたまだ比較的新しい制度です。
そのため、リロケーション事業を専門に扱っている会社がまだまだ少ないのが現状です。
ノウハウを持っている会社を見極めるには、今までの「管理戸数」を聞いてみるのがひとつの手です。
管理戸数の累積数は、今まで取引した実績数のことです。
「管理戸数」=「実績の数」となります。
不在にしている間、家のこと全般の対応は委託会社の管轄になります。そのため信頼できる会社かどうかが大変重要です。
今までの管理戸数を確認して、”リロケーションに慣れている”会社を見つけ出しましょう。
5-2.契約期間は、選べるかどうか確認する
リロケーション期間は、貸主の事情によって異なります。
あなたの希望に沿って貸し出し期間を選択できるサービスになっているか確認しましょう。
会社によっては、「最低契約期間は3年」などと規定していることがあります。
「4年後の3月まで」「1年間だけ」など、あなたの貸したい期間を選択できるか、必ずチェックしてください。
5-3.入居者の募集方法はどんな手法?
入居者をいかに早く見つけ出すか、リロケーション会社の腕にかかっています。
例えばあなたが海外赴任をする場合、できれば国内にいる間に入居者を決めて、安心して出発したいですよね。
また、入居者が見つからなければ、空室期間が長くなり家賃収入が減ってしまいます。
- 入居者募集をどのような広告手法で行うか
- 自分の家と似た物件が、過去にどのくらいの期間で契約できたか
を、打ち合わせ時に確認しましょう。
また、法人と提携しているリロケーション会社の場合、早く、質の良い入居者を見つけてくれる可能性が高まります。
大手企業などの法人企業が、社員の社宅向けにリロケーション物件を活用しています。
リロケーション会社は、法人と提携することで、その法人企業に勤めている身元のはっきりとした入居者をあなたの家の借主として契約してくれるのです。
- 法人提携をしているか
- 法人提携がある場合は、借主の何割くらいを占めるのか
を確認してみるとよいでしょう。
5-4.修理修繕費用はいくらまで、誰が負担するのか?
クーラーなどの家の設備に故障があった場合、通常、修理費はあなた(家のオーナー)が費用を負担するべきものです。
この修繕管理費について、あなたの代わりに費用を負担してくれる会社があります。
ただし、上限費用や修繕の種類が会社によって異なります。
どのような場合に、いくらまでリロケーション会社が負担してくれるのか、事前に確認をしておきましょう。
5-5.収支報告書はくれるのか?
リロケーションにより賃貸収入を得ると、給与以外の収入を得ることになるため、確定申告が必要になります。
管理会社が家賃収入の収支報告書を毎年発行してくれるか確認しましょう。
収支報告書の有無で、確定申告をする手間がかなり違ってきます。
できればサンプルを見せてもらい、且つ、手続き方法を詳しく教えてくれる会社が望ましいでしょう。
また、海外赴任などで国内にいない場合は、確定申告をするのも一苦労です。
確定申告するのが難しい方は、「納税代行」サービスがあるか必ず確認しておきましょう。
5-6.担当営業マンは信頼できるか?
最後に最も見極めが難しく、でも一番大切な比較のポイントをご紹介します。
“担当営業マンを信頼できるかどうか”です。
おそらくあなたは、初めて家を貸すのだと思います。
法律や税金のことなど、まだ不明な点が多くあるでしょう。
- その疑問をあなたがちゃんと質問できる話しやすい相手かどうか?
- その質問にあなたが理解できるように丁寧に回答してくれるか?
という点を意識しながら、営業マンと打ち合わせをしてみましょう。
あなたが留守の間も、家を返してもらう時も、その営業マンとは今後頻繁に連絡を取り合うことになります。
営業マンが信頼できるかどうかは、リロケーション会社を選ぶ際には大切なポイントなのです。
6.頼れるリロケーション会社3選
上記の6つのポイントをふまえ、おすすめのリロケーション会社をご紹介します。
リロケーション事業を本業としている、実績豊富な会社ばかりです。
ぜひ、参考にしてください。
6-1.株式会社リロケーション・インターナショナル
日本で初めてリロケーションサービスを事業化した会社です。
この会社が所属している株式会社リログループは、社宅の仲介、各地の不動産仲介業などを営んでおり、グループ内の独自のネットワークを駆使して入居者を探し出してくれます。
「募集から最短3日で入居者決定」とうたっていることからも、その実績と自信の高さが伺えます。
対応エリア | ほぼ全国の主要都市 |
---|---|
管理戸数 | 10万戸 |
契約期間 | 自由に設定が可能 |
修理・修繕費用 | 同一箇所を1回5万円まで管理会社が負担 |
URL | http://www.tenrusu.jp/newlp2/ |
6-2.株式会社ダーウィンプラス
ダーウィンプラスは、リロケーションをメインに不動産事業を展開している会社です。
契約者の約70%が法人契約のため、身元のはっきりとしている入居者を早く見つけてくれる可能性が高いといえます。
また、契約満了時に入居者が退去していない場合に、賃料と同額を損害金として保証するという「明渡保証」などのサービスが充実しており、入居者募集から家の返却時まで安心して任せられる会社です。
対応エリア | 東京都・千葉県・埼玉県・神奈川県・茨城県・大阪府・兵庫県・京都府・滋賀県・奈良県・和歌山県 |
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管理戸数 | 不明 |
契約期間 | 自由に設定が可能 |
修理・修繕費用 | 管理会社が負担※上限・上限あり |
URL | https://7771.co.jp/ |
6-3.東急住宅リース株式会社
株式会社東急コミュニティー、東急リバブル株式会社、東急リロケーション株式会社の賃貸住宅事業を統合して誕生したのが東急住宅リースです。
なんといっても、東急不動産ホールディンググループという「大手」であることの信頼感は抜群です。
リロケーションプランのほかに、普通借家契約のベーシックプランやサブリースプランなどのサービスがあり、あなたに合ったプランを提案してくれるでしょう。
対応エリア | 東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府、兵庫県、京都府、福岡など |
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管理戸数 | 107,000戸(2022/1当時) |
契約期間 | 不明 |
URL | https://www.tokyu-housing-lease.co.jp/service/mng-units/relocation/ |
6-4.【番外編】複数の会社に一括相談
複数の会社にまとめて相談の依頼をするなら、リロケーションの一括相談サービスを利用しましょう。
リロケーション会社は、対応エリアが限られていることが多く、個別に問い合わせてもあなたの家のエリアを対応していない可能性があります。
一括相談サービスなら、家の住所を入力すると、あなたのエリアを得意とする会社をおすすめしてくれます。
また、不動産会社の中には、リロケーション業務にあまり本腰をいれていない会社もあります。
せっかく相談に出向いても、「リロケーションは取り扱っていない」と断られると時間が無駄になってしまいます。
リロケーションを得意とする専門会社だけを選んで相談したい場合、一括相談サービスはとても便利です。
参考:HOME4U(ホームフォーユー)のリロケーション提携会社一覧
7.各社の話を聞いたら忘れないうちに書き留めていきましょう
複数の会社の話を聞いていると、どの会社がどんなサービスだったか、だんだんわけがわからなくなってきてしまうものです。
話を聞いたら、忘れないうちに要点を書き留めておきましょう。
数値などを書き留めるのはもちろんですが、担当者営業マンの風貌や印象を書いておくことをおすすめします。
担当営業マンの顔を思い出せると、どんな話をしたか、自分がどんな印象を持ったのかなど、話の内容を思い出しやすくなります。
まとめ
いかがでしたか?
- リロケーションとは
- リロケーションと賃貸の違い
- リロケーションのメリット・デメリット
- リロケーションの流れ
- リロケーションの管理会社を選ぶときのポイント
- おすすめのリロケーション管理会社
をご紹介しました。
転勤などで、時間のない中で家を貸すことを同時に考えている方も多いはず。リロケーションの一括相談サービスなどを使って、効率よく管理会社を探してください。
信頼できるリロケーション会社と出会えることを祈っています。
この記事のポイント まとめ
リロケーションとは、「期限付きの」賃貸のこと。
契約期間が終われば、確実に家が戻ってくる点が賃貸との大きな違い。
定期借家契約 (リロケーション) |
普通借家契約 | |
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更新の有無 | 期間満了で終了、更新はなし(ただし、再契約は可能) | 正当な理由がなければ更新 |
詳しくは、「1.リロケーションとは?」をご覧ください。
- 家賃収入が得られる
- 家のダメージを最小限に抑えられる
- 防犯対策として効果的
詳しくは、「2.リロケーションのメリット」をご覧ください。
- 管理会社を選ぶ
- 管理業務委託契約を結ぶ
- 賃料・入居条件などを決める
- リフォームなどの貸出し準備をする
- 入居者募集
- 入居者の審査・契約
詳しくは、「4.リロケーションを始める際の流れ」をご覧ください。