
土地を8,000万円で売却した場合に発生する税金の目安は、以下のとおりです(7,000万円で購入した場合)。
土地の所有期間 | 課税される金額の目安 |
---|---|
5年以下 | 登録免許税(1,000円) 印紙税(3万円) 所得税・住民税(約115万円) 合計:約118万円 |
5年超 | 登録免許税(1,000円) 印紙税(3万円) 所得税・住民税(約60万円) 合計:約63万円 |
本記事では、土地を8,000万円で売却した場合にかかるこれらの税金の計算方法や、節税方法を詳しく解説します。
税額のシミュレーションや税金以外にかかる費用にもふれているため、土地の売却を検討中の方はぜひ参考にしてください。
なお、土地売却の流れや売却方法については以下で詳しく解説しています。あわせてご確認ください。
Contents
1.土地を8,000万円で売却した場合にかかる税金の種類
土地を8,000万円で売却した場合にかかる税金は、登録免許税、印紙税、所得税・住民税の3つです。
税金の種類 | 概要 |
---|---|
登録免許税 | 登記手続き1件につき発生する税金 |
印紙税 | 土地売買契約書に課される税金 |
所得税・住民税 | 土地売却における利益にかかる税金 |
1-1.登録免許税(抵当権を抹消する不動産の数 × 1,000円)
登録免許税とは、土地の名義変更をはじめ、各種登記手続きを行う際にかかる税金のことです。
土地売却時の名義変更にかかる登録免許税は、買主が支払うのが一般的で、売主の負担はありません。
ただし、土地の購入時にローンを組んでいて抵当権(ローン返済が滞った場合に金融機関が土地を担保として差し押さえる権利)が設定されている場合は、売却前に抵当権を抹消する登記手続きが必要となり、不動産1つにつき1,000円の登録免許税がかかります。
ローンをすでに完済していて、抵当権を抹消する登記手続きが不要な場合は、登録免許税はかかりません。
また、登記手続きを司法書士へ依頼する場合は、登録免許税とは別に、司法書士への報酬として1万円~2万円が必要です。
1-2.印紙税(3万円)
印紙税とは、土地や建物などの不動産売買をはじめとする各種契約書や領収証などの文書に課される税金のことです。
契約書に記載されている契約金額に応じた額面の収入印紙を契約書に貼付し、消印することで納付となります。
土地の売却における印紙税額は、契約金額によって以下のように異なります。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
---|---|---|
10万円超え50万円以下 | 400円 | 200円 |
50万円超え100万円以下 | 1,000円 | 500円 |
100万円超え500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円超え1,000万円以下 | 1万円 | 5,000円 |
1,000万円超え5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000万円超え1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円超え5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
5億円超え10億円以下 | 20万円 | 16万円 |
10億円超え50億円以下 | 40万円 | 32万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 | 48万円 |
出典:“不動産売買契約書の印紙税の軽減措置”.国税庁(参照2025-03-10)をもとに、お家のいろはが独自に作成
上表を見ると、土地を8,000万円で売却した場合の印紙税額は3万円です。本則税率では6万円ですが、2014年(平成26年)4月1日~2027年(令和9年)3月31日に作成される契約書には軽減税率が適用されます。
1-3.所得税・住民税
土地を売却して利益が発生した場合、利益に対して所得税と住民税がかかります。なお、土地売却の利益にかかる所得税を譲渡所得税と言います。
譲渡所得税・住民税の税率は、土地の所有期間により以下のように異なります。
土地の所有期間 | 税率 | ||
---|---|---|---|
譲渡所得税(※) | 住民税 | 計 | |
5年超え | 15.315% | 5% | 20.315% |
5年以下 | 30.63% | 9% | 39.63% |
※復興特別所得税2.1%を含む
出典:“土地や建物を売ったとき”.国税庁(参照2025-03-10)をもとに、お家のいろはが独自に作成
例えば、土地を8,000万円で売却し、諸経費を差し引いて約300万円の利益が出た場合、譲渡所得税と住民税の合計額は以下が目安となります。
土地の所有期間が5年超え:約61万円
不動産売却にかかる費用・税金、必要書類については、以下の記事でも詳しく解説しています。
2. 8,000万円で土地を売却する際にかかる税金の計算方法とシミュレーション
ここからは、8,000万円で土地を売却した場合の譲渡所得税と住民税の計算方法を、シミュレーションを交えて解説します。
譲渡所得税と住民税を計算するために、はじめに課税対象となる利益(課税譲渡所得)の算出方法を見ていきましょう。
2-1.課税譲渡所得の算出方法
課税譲渡所得は、次の計算式で算出できます。なお、譲渡所得に対する税額は、給与所得などほかの所得とは分けて計算します。
譲渡価格:土地の売却価格
取得費用:土地を購入したときにかかった費用
特別控除:税金の優遇措置
取得費用が不明な場合は、概算取得費として、譲渡価格に5%を乗じて算出します。
また、税金の優遇措置である特別控除には、3,000万円特別控除や10年超所有軽減税率の特例などがあり、詳しくは後述します。
なお、譲渡価格から取得費用と譲渡費用を差し引いた結果、ゼロやマイナスになる場合は、土地売却による利益がないと判断されるため、譲渡所得税と住民税を納める必要はありません。
2-2.シミュレーション事例(7,000万円で購入した土地を8,000万円で売却したケース)
8,000万円で土地を売却した場合にかかる税額をシミュレーションしてみましょう。前提条件は、以下のとおりです。
- 土地売却時の価格(譲渡価格):8,000万円
- 土地取得時の価格(購入価格):7,000万円
- 土地取得時にかかった経費(購入時経費):420万円
- 土地売却時にかかった経費(売却時経費):288万円
- 特別控除は利用しないものとする
上記の条件をもとに各費用や課税譲渡所得を算出し、課税譲渡所得に各税率を乗じることで譲渡所得税と住民税の金額を算出できます。
STEP1:基本情報を整理する
はじめに、税額計算に必要な基本情報を整理します。
- 譲渡価格:8,000万円
- 購入価格:7,000万円
- 購入時経費:420万円
- 売却時経費:288万円
- 特別控除:利用しない(控除・特例なし)
購入価格が不明な場合は、譲渡価格8,000万円の5%にあたる400万円を取得費用として扱います。
STEP2:各費用を算出する
次の計算式を用いて、土地の取得費用を算出します。
= 7,000万円 + 420万円
= 7,420万円
(※購入価格が不明の場合、取得費用は400万円を採用)
次に譲渡費用を算出します。譲渡費用とは、売却時経費のことです。
= 288万円
STEP3:課税譲渡所得を算出する
先述の計算式とSTEP2で算出した各費用を用いて、課税譲渡所得を算出します。
= 8,000万円 -(7,420万円 + 288万円)- 0円
= 292万円
本シミュレーションにおける課税譲渡所得(土地売却の利益)は、292万円となります。
STEP4:譲渡所得税と住民税の金額を算出する
STEP3で算出した課税譲渡所得に税率を乗じて、譲渡所得税と住民税の税額を算出します。税額は土地の所有期間によって異なります。
292万円 × 30.63%(所得税30% + 復興特別所得税0.63%)= 約89万円
292万円 × 9%(住民税)= 約26万円
約89万円 + 約26万円 = 約115万円
292万円 × 15.315%(所得税15% + 復興特別所得税0.315%)= 約45万円
292万円 × 5%(住民税)= 約15万円
約45万円 + 約15万円 = 約60万円
8,000万円で土地を売却する際の税額(譲渡所得税 + 住民税)は、本シミュレーションでは、土地の所有期間5年超えで約60万円、5年以下で約115万円となりました。
土地の売却では、譲渡所得の約20%~40%の税金がかかり、利益が大きくなるほど税負担も大きくなります。
この負担を最小限にするためには、各種控除や特例を活用して課税譲渡所得額をできるだけ少額にすることが重要です。
土地売却を検討中の方は、一括査定の利用をおすすめします。
3.土地を売却する際の節税対策
ここからは、土地の売却で有効な節税対策について見ていきましょう。
土地を売却する際、所定の条件を満たすと控除や特例が適用され、節税につながります。具体的な控除・特例は以下のとおりです。
各種控除・特例の適用を受けるには、いずれも確定申告が必要です。活用する制度により必要書類が異なるため、活用予定があれば忘れずに申告準備を進めましょう。
3-1. 3,000万円特別控除
3,000万円特別控除(※)は、譲渡所得から最高3,000万円まで控除可能な特例です。
※正式名称:居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例
居住用財産、つまり自分が住んでいる土地と建物を売却する場合、以下いずれかの条件を満たす居住用財産であれば、3,000万円特別控除の適用を受けられます。
(2)以前に住んでいた家屋(住まなくなってから3年を経過する日が属する年の12月31日までに売る場合に限る。住まなくなった日以後は用途自由)
(3)上記(1)または(2)の家屋とともに売った敷地や借地権
(4)上記(1)または(2)の家屋を取り壊した場合の敷地で、所定の要件に当てはまるもの
(5)家屋が災害により滅失した場合の敷地で、所定の期限までに売るもの(住まなくなった日以後は用途自由)
出典:“No.3302 マイホームを売ったときの特例”.国税庁(参照2025-03-10)
なお、売った年の前年および前々年にこの特例の適用を受けていたり、売った年、その前年および前々年にマイホームの買い換え(交換)の特例など、ほかの特例の適用を受けていたりすると、適用の対象外となります。
また、相続した住宅などで、自分が住んでいない空き家を売却する場合は、主に以下のような条件を満たすことで、3,000万円特別控除の適用を受けられます。
- 1981年(昭和56年)5月31日以前に建築されたこと
- 区分所有建物登記がされている建物でないこと
- 譲渡価格が1億円以下であること など
出典:“No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例”.国税庁(参照2025-03-10)
特例の適用を受けるには確定申告が必要で、上記以外にも詳細な適用条件が設けられています。売却前に、国税庁の該当ページなどで適用条件を満たしているか確認しましょう。
3-2.取得費加算の特例
取得費加算の特例(※)とは、土地を相続した際にかかった相続税を、売却時の取得費用として加算できる特例のことです。
※正式名称:相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
取得費加算の特例の適用を受けるには、以下の条件を満たしている必要があります。
- 相続や遺贈により財産を取得した方であること
- その財産を取得した者に相続税が課税されていること
- その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること
出典:“No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例”.国税庁(参照2025-03-10)
相続税の申告期限は、被相続人が死亡したことを知った日(通常、被相続人の死亡日)の翌日から10か月以内と定められているため、相続開始から3年10か月以上経過した土地の売却では、取得費加算の特例が適用されません。
不動産の売却には平均3~6か月の期間がかかるため、相続した土地の売却で取得費加算の特例の適用を受けたい場合、適用条件を踏まえた売却計画を立てましょう。
3-3.平成21年および平成22年購入の土地に適用できる1,000万円特例
2009年(平成21年)、または2010年(平成22年)に購入した土地を譲渡した場合、譲渡所得から1,000万円を控除できる可能性があります。
本特例は、リーマンショック後の景気対策として創設されたもので、適用を受けられれば大きな節税効果を発揮します。
ただし、3,000万円特別控除など、ほかの特例制度とは併用できない点に留意しておきましょう。
1,000万円の特別控除の適用を受けるには、主に以下のような条件を満たしている必要があります。
- 2009年(平成21年)1月1日から、2010年(平成22年)12月31日までの間に土地などを取得していること
- 2009年(平成21年)に取得した土地などは2015年(平成27年)以降に譲渡すること
- 2010年(平成22年)に取得した土地などは2016年(平成28年)以降に譲渡すること
- 相続、遺贈、贈与、交換、代物弁済および所有権移転外リース取引により取得した土地などではないこと など
出典:“No.3225 平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡したときの1,000万円の特別控除”.国税庁(参照2025-03-10)
3-4. 10年超所有軽減税率の特例
土地の所有期間が10年を超える場合、譲渡所得税と住民税に軽減税率が適用される特例です。
適用される軽減税率は、譲渡所得額6,000万円を境に以下のように異なります。
譲渡所得額 | 税率 | ||
---|---|---|---|
譲渡所得税(※) | 住民税 | 計 | |
6,000万円以下 | 10.21% | 4% | 14.21% |
6,000万円超え | 15.315% | 5% | 20.315% |
※復興特別所得税2.1%を含む
出典:“土地や建物を売ったとき”.国税庁(参照2025-03-10)
10年超所有軽減税率の特例の適用を受けるには、売却した居住用財産が主に以下のような条件を満たしている必要があります。
(2)以前に住んでいた家屋(住まなくなってから3年を経過する日が属する年の12月31日までに売る場合に限る。住まなくなった日以後は用途自由)
(3)上記(1)または(2)の家屋とともに売った敷地や借地権
(4)上記(1)または(2)の家屋を取り壊した場合の家屋および敷地で、所定の要件に当てはまるもの
(5)家屋が災害により滅失した場合の敷地で、所定の期限までに売るもの(住まなくなった日以後は用途自由)
出典:“No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例”.国税庁(参照2025-03-10)
なお、売った年の前年や前々年にこの特例の適用を受けていたり、マイホームの買い換え(交換)の特例など、ほかの特例の適用を受けていたりすると、適用の対象外となります。
ただし、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除との併用は可能なため、10年を超えて所有している住宅を売却する際は、活用を視野に入れるとよいでしょう。
3-5.収用等により土地建物を売ったときの特例
公共事業のために、国や地方公共団体による収用(強制取得)により土地や建物を売却する場合、所定の条件を満たすことで、通常の土地売却に比べて譲渡所得の計算における優遇措置が受けられ、譲渡所得税の節税につながります。
本特例には、以下2つの種類があります。
- 収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例
- 5,000万円の特別控除の特例
収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例
土地や建物の買い換え金額が譲渡価格を上回った場合、譲渡所得への課税が将来に繰り延べされ、売却した年は非課税となる特例です。
適用を受けるには、主に以下のような条件を満たしている必要があります。
- 売った土地や建物が固定資産であること
- 売却した資産と同じ種類の資産を買い換えること(土地を売却する場合は土地を買い換える必要がある) など
出典:“No.3552 収用等により土地建物を売ったときの特例”.国税庁(参照2025-03-10)
5,000万円の特別控除の特例
譲渡所得から最高5,000万円までの控除ができる特例です。
適用を受けるには、主に以下のような条件を満たしている必要があります。
- 売った土地や建物が固定資産であること
- その年に公共事業のために売った資産の全部について、収用などに伴い代替資産を取得した場合の課税の特例の適用を受けていないこと
- 最初に買い取りなどの申し出があった日から6か月を経過した日までに土地や建物を売っていること など
出典:“No.3552 収用等により土地建物を売ったときの特例”.国税庁(参照2025-03-10)
4.土地売却時に税金以外で考えておくべき費用
土地を売却する際は、税金以外にも以下のような費用が発生します。土地売却における出費の内訳を把握して、無理のない資金計画を立てましょう。
4-1.不動産仲介手数料
不動産仲介手数料とは、土地を売却する際に、買主との仲介をしてもらう不動産会社へ支払う費用のことです。
不動産仲介手数料は、土地の売却価格(譲渡価格)により変動しますが、宅地建物取引業法により上限額が定められています。
不動産仲介手数料の上限額の算出方法は、以下のとおりです。
売却価格が8,000万円の場合:8,000万円 × 3% + 6万円 + 24万6,000円
= 270万6,000円
4-2.書類取得のための諸費用
土地を売却する際は、書類の発行手数料などの諸費用がかかります。例えば、以下のようなものが挙げられます。
- 登記事項証明書(登記簿謄本)の取得費用
480円~600円/1通 - 固定資産評価証明書の取得費用
400円/1件(2件目以降は100円/1件)※東京都23区の場合
土地を売る際の必要書類や費用について詳しくは、以下の記事も併せてご覧ください。
4-3.測量費用
土地の売却にあたり、測量を行った場合は測量費用がかかります。測量費用は土地の状況や条件により異なりますが、35万円~80万円が目安です。
土地価格が高いエリアで土地の境界が曖昧な場合や、最後の測量から年月が経っている場合は、土地の売却前に測量を行うことをおすすめします。
測量は、土地の売買で双方が公平な取引を行い、のちのトラブルを防ぐためにも重要です。
4-4.解体費用
売却する土地に不要な建物があり、解体や撤去を行う場合、解体費用がかかります。
解体費用の目安は、建物の種別により以下のように異なります。
建物の種別 | 1坪当たりの解体費用(1坪 = 約3.3058平米) |
---|---|
木造 | 3万円~5万円 |
鉄骨造 | 6万円~7万円 |
鉄筋コンクリート造 | 7万円~8万円 |
解体費用は現場の状況や、作業を依頼する会社により変動するため、複数社に見積もりを依頼するとよいでしょう。
8,000万円の土地を高く売るためには
土地を売却する際にかかる税金には、大きく分けて次の3つがあります。
税金の種類 | 概要 |
---|---|
登録免許税 |
|
印紙税 |
|
所得税・住民税 |
|
ただし、所定の条件を満たす場合は、各種控除や特例の適用により節税につながります。土地を8,000万円で売却した場合、手元に残る利益をより多くするには、節税や諸費用の削減が大切です。
土地を少しでも高く売りたいと考えている方は、税金に詳しい不動産会社に仲介を依頼し、費用に関するアドバイスやサポートを受けることをおすすめします。
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