住み替えにかかる税金を売却・購入に分けて解説|特例を知って節税まで考えよう

住み替えにかかる税金や特例は、名称の長いものも多く、理解が難しいと感じる方もいるでしょう。しかし、税金や特例について正しく理解しておくと、住み替えにおける収支をしっかりと見通せるようになります。

本記事では、住み替えに関する税金や特例を、売却と購入に分けてわかりやすく解説します。

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1.家の売却にかかる税金

家を売却する際は、以下のような税金がかかります。

ここでは、各税金の概要と目安の金額を解説します。

1-1.印紙税

印紙税は、契約書など特定の文書を作成する際に課される税金です。

家の売却では、不動産売買契約書に収入印紙を貼り納税します。
税額は、契約書に記載される金額に応じて変動します。

※2027年(令和9年)3月31日までに作成される契約書には、軽減税率が適用されます。

契約金額 本則税額 軽減税額
10万円を超え50万円以下 400円 200円
50万円を超え100万円以下 1千円 500円
100万円を超え500万円以下 2千円 1千円
500万円を超え1,000万円以下 1万円 5千円
1千万円を超え5千万円以下 2万円 1万円
5千万円を超え1億円以下 6万円 3万円
1億円を超え5億円以下 10万円 6万円
5億円を超え10億円以下 20万円 16万円
10億円を超え50億円以下 40万円 32万円
50億円超 60万円 48万円

出典:“不動産売買契約書の印紙税の軽減措置”.国税庁.(参照2024-09-26)

1-2.登録免許税(抵当権抹消のため)

登録免許税は、住宅ローンを借りる際に設定された抵当権の抹消登記にかかる税金です。
抵当権付きの家を購入されるケースは少ないため、基本は引き渡し前に住宅ローンの完済と抵当権の抹消登記を済ませてから売却を行います。

抵当権抹消登記にかかる登録免許税は、<<不動産1件につき1,000円>>です。
一般的に、住宅ローンのための抵当権は建物と土地の両方に設定されるため、それぞれの抹消が必要です。この場合、抵当権抹消が必要な不動産は2個になるため、登録免許税は2,000円になります。

また、家が建つ土地が複数の筆に分かれ、それぞれに抵当権が設定されている場合は、その筆の数だけ登録免許税がかかります。
例えば、土地が2筆に分かれ、それぞれに抵当権が設定されていると、2,000円の登録免許税が必要です。

1-3.譲渡所得税

家や土地の売却によって得た利益(譲渡所得)には、譲渡所得税が課されます。
譲渡所得は、売却代金から購入時にかかった費用(取得費)と売却するためにかかった費用(譲渡費用)を差し引いた金額で、これに税率を掛けて税額を計算します。

譲渡所得 = 売却代金 - (取得費 + 譲渡費用)
譲渡所得税 = 譲渡所得 × 税率

所有期間 所得税※ 住民税
5年以下 30.63% 9%
5年超 15.315% 5%

※2037年まで復興特別所得税が含まれます。

2.家の売却時に適用できる特例

家の売却時には、要件をみたすことで以下のような特例が適用できます。

ここでは、各特例の概要と主な適用要件について解説します。

2-1.3,000万円特別控除の特例

家や土地を売却して所得をえた場合、要件を満たすと「居住用財産の3,000万円特別控除の特例」の適用を受けられます。<<売却で得た所得からs最大3,000万円が控除>>され、所得に課される税金(=譲渡所得税)を軽減できます。

以下は、主な適用要件です。

  • 自ら住む家や土地であること
  • 以前住んでいた家や土地の場合は、住まなくなった日から3年目の年末までに売却すること
  • 家と土地を売却した前年と前々年に「3,000万円特別控除の特例」または「マイホームの譲渡損失についての損益通算および繰越控除の特例」の適用を受けていないこと
  • 家と土地を売却した年と、その前年および前々年に「マイホームの買い換えや交換の特例」の適用を受けていないこと など

2-2.10年超え所有軽減税率の特例

10年を超えて所有していた家や土地を売却した場合は、要件を満たしていれば「10年超え所有軽減税率の特例」が適用され、長期譲渡所得に対する税率が軽減されます。

売却金額 所得税※ 住民税
6,000万円以下の部分 10.21% 4%
6,000万円を超える部分 15.315% 5%

※2037年まで復興特別所得税が含まれます。

以下は、主な適用要件です。

  • 自ら住む家や土地であること
  • 以前住んでいた家や土地の場合は、住まなくなった日から3年目の年末までに売却すること
  • 家や土地を売却した年の1月1日において、その家と土地の所有期間がともに10年を超えていること
  • 売却した家や土地に対して「マイホームの買い換えや交換の特例」など他の特例の適用を受けていないこと(「居住用財産の3,000万円特別控除の特例」は重ねて適用可)など

2-3.買い換え特例

家や土地を売却して新たなマイホームに買い換えた場合、要件を満たすと「特定のマイホームを買い換えたときの特例」によって、譲渡益に対する課税を将来に繰り延べできます。

この特例の適用を受けると、売却時に得た譲渡益にかかる税金が、次のマイホームを売却した際に得られた譲渡益と合算されて課税されます。

例えば、1,000万円で購入したマイホームを5,000万円で売却し、6,000万円の新しいマイホームに買い換えた場合、通常4,000万円の譲渡益に所得税などが課されます。

しかし、買い換え特例の適用を受けることで課税のタイミングが繰り延べされ、今回の買い換えでは課税されないことになります。その代わり、6,000万円で購入した新しいマイホームをその後売却して2,000万円の譲渡益が出た場合、繰り延べた4,000万円との合計額である6,0000万円に対して課税されるのです。

以下は、主な適用要件です。

  • 自ら住む家や土地であること
  • 以前住んでいた家や土地の場合は、住まなくなった日から3年目の年末までに売却すること
  • 家と土地を売却した年と、その前年および前々年に、以下の特例を受けていないこと
    「居住用財産の3,000万円特別控除の特例」
    「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」
    「マイホームの譲渡損失についての損益通算および繰越控除の特例」
    「収用等の場合の特別控除」など
  • 売却した者の居住期間が10年以上であり、なおかつ売却した年の1月1日において家と土地の所有期間がともに10年を超えること
  • マイホームを売った年の前年から翌年までの3年間にマイホームを買い換えること など

2-4.損益通算と繰越控除の特例(損失が出た場合)

住み替えにあたって、売却したマイホームの譲渡所得額よりも新たなマイホームの購入金額のほうが高く、損失が発生した場合は「損益通算と繰越控除の特例」を受けられます。

買い換えによる損失を給与所得や事業所得などから差し引いて損益通算することで、課税所得全体の額を抑え、税金を軽減できます。

例えば、給与所得800万円の方が、マイホームを4,000万円で売却し、新たに4,500万円のマイホームを購入した場合、譲渡損失の500万円を給与所得と損益通算できます。

譲渡損失 = 4,500万円 - 4,000万円 = 500万円
課税給与所得 = 800万円 - 500万円 =300万円

このように、課税対象となる所得を300万円に抑えることが可能です。

さらに、その年に控除しきれなかった損失は、売却の翌年以降3年間にわたって繰り越し控除できます。

以下は、主な適用要件です。

  • 自ら住む家や土地であること
  • 以前住んでいた家や土地の場合は、住まなくなった日から3年目の年末までに売却すること
  • 売却した年の1月1日における家と土地の所有期間が5年を超えること
  • 売却した年の前年から売却の翌年の年末までに、床面積50平米以上の家を取得すること
  • 買い換えたマイホームの購入に、返済期間10年以上の住宅ローンを利用すること など

3.家の購入にかかる税金

家の購入においては、以下のような税金がかかります。

ここでは、各税金の概要や税率などを解説します。

3-1.印紙税

家の購入時は、売買契約書に印紙税が課されます。
税額は、契約書に記載される金額に応じて異なります。

※2027年(令和9年)3月31日までに作成される契約書には、軽減税率が適用されます。

契約金額 本則税額 軽減税額
10万円を超え50万円以下 400円 200円
50万円を超え100万円以下 1千円 500円
100万円を超え500万円以下 2千円 1千円
500万円を超え1,000万円以下 1万円 5千円
1千万円を超え5千万円以下 2万円 1万円
5千万円を超え1億円以下 6万円 3万円
1億円を超え5億円以下 10万円 6万円
5億円を超え10億円以下 20万円 16万円
10億円を超え50億円以下 40万円 32万円
50億円超 60万円 48万円

出典:“不動産売買契約書の印紙税の軽減措置”.国税庁.(参照2024-09-26)

3-2.登録免許税※

他の所有者の家を購入した場合は、所有権移転登記が必要です。
また、新築の家を購入した場合は、所有権保存登記が必要であり、いずれにも登録免許税がかかります。

税額は、家と土地それぞれの固定資産税評価額に、定められた税率を掛けて算出します。
税率は登記の種類、不動産の種類によって異なります。

また、それぞれに軽減税率があります。

【土地】

登記の種類 税率 軽減税率
所有権移転登記
(土地の売買)
2.0% 1.5%

※土地に関しては、すでに誰かが所有している土地であるので、新築住宅購入時でも所有権移転登記が基本になります。

【家屋】

登記の種類 税率 軽減税率
一般住宅 特定の住宅
所有権移転登記(住宅用家屋の売買) 2.0% 0.3% 0.1~0.2%
所有権保存登記(住宅用家屋の売買) 0.4% 0.15% 0.1%

上記、家屋の軽減税率は、住宅用家屋の売買をした場合です。
特定の住宅は、特定認定長期優良住宅や認定低炭素住宅などを指しており、種類により適用税率が異なります。

詳しくは、国税庁「 特定の住宅用家屋の所有権の保存登記等に係る登録免許税の税率の軽減措置に関するお知らせ」をご覧ください。

3-3.不動産取得税

家や土地を取得すると、不動産取得税が課されます。
固定資産税などと同様に、不動産取得税の納税通知書が届きますので、期限までに納付しましょう。

税額は、家や土地の課税標準(=固定資産税評価額)に、4%の税率を掛けて算出します。

不動産取得税額 = 課税標準 × 4%

不動産会社が売主 個人が売主 家建物 課税 非課税 土地 非課税 非課税

なお、不動産会社に支払う仲介手数料や、所有権移転登記の司法書士報酬などに対しては、いずれの場合も消費税が課されます。

3-5.贈与税

個人から財産の贈与を受けると、取得した財産に贈与税が課されます。

2026年(令和8年)12月31日までに、直系尊属(父母や祖父母)から家の購入資金の援助を受けた場合、要件を満たすことで非課税限度額までの贈与税が非課税になります。

非課税限度額は、省エネ等住宅の場合で1,000万円、それ以外の住宅は500万円です。

住宅取得等資金(援助金)のうち、非課税限度額を超えた部分の課税価格については「暦年課税の基礎控除」か「相続時精算課税制度」を選択することで、贈与税を節税できます。
贈与税の非課税制度

4.家の購入時に適用できる特例

家の購入時には、要件を満たすことで以下の2つの特例が適用されます。

・不動産取得税の税率、課税標準の特例
・住宅ローン控除

ここでは、各特例の概要と主な適用要件について解説します。

4-1.不動産取得税の税率、課税標準の特例

家や土地の購入時に課される不動産取得税には、軽減税率、課税標準の控除、税額の控除が適用されます。

軽減税率
まず、税率に対する措置として、2027年(令和9年)3月31日までに取得した家と土地は、不動産取得税の税率が4%から3%に軽減されます。
課税標準の控除
課税標準に対する控除として要件を満たす新築住宅は1,200万円が、同じく要件を満たす中古住宅は新築日によって定められた額が課税標準から控除されます。

以下は、主な適用要件です。

  • 自ら住む住宅であること
  • 床面積が50平米以上240平米以下であること
  • 中古住宅の場合は以下のいずれかの耐震基準を満たすこと
     a.昭和57年1月1日以降に新築されたもの
     b.昭和56年12月31日以前に新築された住宅で、建築士などが行う耐震診断によって新耐震基準に適合していることが証明されたもの

さらに、宅地の不動産取得税は、課税標準を1/2としたうえで税率を掛けて算出します。

住宅地の不動産取得税 = 課税標準 × 1/2 × 3%
税額の控除
住宅用の土地を取得した場合は、以下のいずれか高いほうの額を不動産取得税の税額から控除します。

  • a.45,000円
  • b.土地1平米当たりの課税標準×1/2×住宅床面積の2倍(1戸当たり200平米を限度)×3%

以下は、主な適用要件です。

【新築住宅用の土地の場合】

  • 土地を取得した日から3年以内に特例適用住宅を新築すること
  • 住宅を新築した日から1年以内にその土地を取得すること など

【中古住宅用の土地の場合】

  • 土地を取得した日から1年以内にその土地に立つ中古住宅を取得すること
  • 中古住宅を取得した日から1年以内にその土地を取得すること

4-2.住宅ローン控除

住宅ローンを利用してマイホームを購入すると、住宅ローン控除の適用を受けられます。
住宅ローン控除は年末のローン残高に対して0.7%を、最長13年間、所得税や住民税から控除する制度です。

例えば、年末時点でローンの残高が3,000万円であれば、最大21万円の控除を受けられます。

住宅ローン控除の対象となる借入限度額は、住宅の省エネ性能や、子育て世帯・若夫婦世帯に該当するかなどで異なります。

以下は、主な適用要件です。

  • 借入する者が主に居住する家屋であること
  • 床面積が50平米以上であること
  • 合計所得金額が2,000万円以下であること
  • 住宅の引き渡し、または工事完了から6か月以内に居住すること
  • 返済期間が10年以上の住宅ローンであること など

5.家を高く売る3つのポイント

家の住み替えでは、税金を抑えるだけでなく、できるだけ高く売ることも大切です。ここでは、家を高く売る3つのポイントを紹介します。

5-1.複数社を比較する

家を高く売るには、複数の不動産会社に査定を依頼し、結果を比較することが大切です。
複数社の査定を受けることで、地域の相場や家の適正な価格を把握でき、より迅速に高い価格での売却が可能になります。

また、各社の対応や販売戦略を比べることで、信頼できる不動産会社を選べるようになるでしょう。

複数社への査定依頼は手間がかかりますが、NTTデータグループが運営する不動産売却 HOME4U(ホームフォーユー)なら、1分ほどの簡単な入力で最大6社の不動産会社に一括で査定依頼が可能です。
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5-2.売り急がない

家を高く売るには、売り急がないことも大切です。
焦って売却しようとすると、「不用意に値下げをしてしまう」「買手の値引き交渉に対して弱気になってしまう」などの理由で、安売りしやすくなってしまいます。

余裕を持ったスケジュールを組み、時間をかけて慎重に売却活動を行えば、安売りを防ぎ、最適な価格での売却を実現できるでしょう。

家の売却にかかる期間は、目安として6カ月程度です。
売り出しから買手が見つかるまでのスケジュールを、余裕をもって3~6カ月程度と設定しておけば、いくらかゆとりある売却ができるかと思います。

5-3.掃除や部屋づくりで内覧の印象を高める

掃除や部屋づくりによって、購入希望者が内覧に訪れた際の印象を高めることができます。

清潔感は、「丁寧に家を扱っていたであろう」という信用になり、購買意欲を高められます。
また素敵な家具を適切に配置すれば、購入希望者が購入後の暮らしをイメージしやすくなるため、意思決定に大きく影響するでしょう。

また、あえて物を減らすことで、生活感が抑えられ、広々とした印象になります。
小さくてもよいので観葉植物を置くと、爽やかな印象が加わり、部屋が明るく感じられます。

このように、内覧時の部屋の状況は重要です。
空き家の状態で売却する場合は、予算に応じてホームステージング(物件をインテリアコーディネートするサービス)なども検討してみましょう。

まとめ

住み替えの売却時にかかる税金には「印紙税」「登録免許税」「譲渡所得税」があります。
一方、税金に対する特例としては「3,000万円特別控除」「10年超え所有軽減税率」「買い換え特例」「損益通算と繰越控除の特例」が設けられています。

また、購入時には「印紙税」「登録免許税」「不動産取得税」「消費税」「贈与税」を課されることが考えられます。
また、要件を満たすことで「不動産取得税の税率や課税標準への特例」「住宅ローン控除」といった特例を適用できます。

こうした税金や控除を把握しておくと、住み替えのための資金計画をより正確に立てられるようになります。

ただし、ほとんどの税金は家の価値、価格が分からないと計算もできません。
家探しと、売却査定も並行して進めていきましょう。

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