マンション建て替えの費用負担はいくら?相場と流れ・払えない場合の選択肢は

マンションは築年数を経て老朽化が進んでくると、大規模修繕ではなく建て替えが検討されるようになります。

しかし、建て替えになると区分所有者にも大きな費用負担がかかります。
現状、建て替えには所有者の4/5の賛成が必要なため、現実に建て替えに至るケースはごくわずかに限られています。
とはいえ、居住中の方は特に不安を感じながら生活をしているでしょう。

この記事では、建て替えの費用相場や流れ中心に、建て替えについて解説していきます。
建て替えについて理解し、適切な判断と行動をとれるようにしていきましょう。

マンションの売却を考えている方は、『マンション売却で失敗・損しないための注意点』『マンション売却の流れ』も併せてご覧ください。

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1.マンションの建て替え費用相場

マンションの建て替え費用相場
築年数を経過したマンションは、以下のような理由から建て替えが提案されることがあります。

  • 設備が現代の仕様に合っていない
  • 修繕では対応できない不具合がある
  • 新耐震基準を満たしていない

マンションは区分所有者の資産になるため、建て替えの費用は区分所有者が負担しなければなりません。

建て替えには高額な費用がかかることが一般的ですが、費用は建物の構造や延床面積の大きさ、設備のグレードなどさまざまな条件により、大きく変動します。

まず、建て替えとなった場合に必要になる費用の相場を把握しておきましょう。

1-1.マンション建て替え費用の相場

マンション建て替えにかかる平均的な費用は、1戸あたり1,000~3,000万円が相場と言われています。

ただし、マンションのグレードによってはさらに高額になることもあります。
逆にほとんど負担なく建て替えができる事例もあるなど、条件によって大きく変わります。

また、建て替えになった場合、負担が必要になるのは建て替え費用だけではありません。
建て替え工事中は仮住まいが必要になるため、初期費用や2回分の引っ越し費用、1~2年分の家賃などがかかります。

建て替え費用に加えて、200~500万円程度がかかることを認識しておきましょう。

1-2.修繕積立金は建て替え費用に充てられない

区分所有マンションでは、設備の修繕のために修繕積立金がプールされています。
その費用を建て替え費用に回せば良いのではと考える方もいるでしょう。
しかし、修繕積立金は原則として建て替え費用に充当することは認められていません。

管理組合の多くは国土交通省が定めた「マンション標準管理規約」を採用しており、修繕積立金の建て替え費用への流用を禁止されているためです。

ただし例外的に、マンションを建て替えすべきかを調査するための費用には修繕積立金を使用できます。

なお、建て替えが決まった場合、その時点で残っていた修繕積立金は、清算して所有者に返還されます。

また、マンション利用規約を変更すれば、修繕積立金の活用も可能です。
しかし、築年数を経過しているマンションはすでに大規模修繕済み、あるいは老朽化にともなって修繕費用が増大しています。

そのため、そもそも修繕積立金が残っていないことも多いようです。

2.建て替え費用は条件によって大きく変わる

建て替え費用は条件によって大きく変わる
マンションの建て替え費用は、マンションの建て替え条件によっても大きく異なります。

  • 建て替え費用の負担が少ないケース
  • 建て替え費用の負担が多いケース

それぞれどのような例が想定されるのか解説します。

2-1.建て替え費用の負担が少ないケース

建て替え費用の負担の大きさと建て替え規模は、直接関係するとは限りません。

建て替えにより戸数が増やせる場合は、一般的に費用の負担は少なくなります。
増えた戸数分の売却益を建て替え費用に充てられるため、1戸あたりの負担額を軽減・ゼロにできる可能性もあります。

2-2.建て替え費用の負担が多いケース

一方、すでに容積率いっぱいで建て替えにあたり戸数を増やせない場合には、負担が多くなる可能性が高いでしょう。
容積率とは、敷地面積に対する延床面積の割合です。
容積率の制限以に床面積を増やすことはできません。

また、地方や駅遠いのマンションなど人気のないエリアでは、建て替え後の売却が難しいため、費用負担が大きくなりやすくでしょう。

3.マンション建て替えの流れ

マンション建て替えの流れ
マンションの建て替えは、所有者の合意が4/5以上に達したうえで実施されます。

合意形成は難しく、手続きも煩雑です。
実際に建て替え準備に取り掛かってから工事完了までには、10年以上とかなりの年数がかかるケースが多くあります。

計画が浮上しても、合意が得られず頓挫してしまうことも少なくありません。

マンションの建て替えが行われるまでの流れは、大きく分けて以下4ステップです。

  • 専門家を交えて話し合う
  • 「修繕か建て替えか」を決める
  • 建て替え検討委員会を立ち上げて具体的な計画を立てていく
  • 建て替え工事を開始する

それぞれについて、詳しく紹介します。

3-1.専門家を交えて話し合う

まず、建て替えの準備段階として管理組合が専門家を交えて建て替えを検討すべきかの協議や、区分所有者向けの勉強会を実施します。

ゼネコンやディベロッパーは、勉強会のサポートや建て替えについて具体的な金額や計画の提示なども行っています。

建て替えの選択肢が現実的であれば、具体的に検討を始めます。

3-2.「修繕か建て替えか」を決める

さらに検討を進め、建て替えか大規模修繕で建て替えを延長するかを審議・検討します。

建て替えを進める場合には、住民アンケートやアナウンスで、所有者の賛成を得られるよう活動が行われます。

建て替えを進めることについて管理組合で所有者の合意を得ることは、「建て替え推進決議」と呼ばれています。

建て替えの実施には、区分所有法において所有者の4/5以上が合意する「建て替え決議」が必要ですが、この段階で行うのは具体的な計画開始に対する基本合意です。

建て替え推進決議は必須ではありませんが、建て替えを進めていくには区分所有者の3/4以上が計画開始に同意していることが望ましいとされています。

3-3.建て替え検討委員会を立ち上げて具体的な計画を立てていく

建て替え推進について所有者の合意が得られれば、建て替え検討委員会を立ち上げます。

建て替え検討委員会では、建て替えを依頼するゼネコンやマンションデベロッパーを選定し、具体的な建て替え計画の策定を開始します。

建て替え費用や、部屋数を増やす場合に見込める収入など具体的な数字を出して計画を策定した後、所有者に説明会を実施し、建て替え決議を行います。

建て替え決議で所有者の4/5の合意が得られたら、建て替え実施の決定となります。

3-4.建て替え工事を開始する

マンション建替え円滑化法に基づき、賛成者の3/4以上の合意と都道府県知事の認可を得て、法人格を持つ建て替え組合を設立します。

建て替え組合を設立することで、建て替えに必要な以下の諸手続きや権利者の調整を、組合が主体となって行うことができます。

  • 建て替え不参加者に対する売り渡し請求
  • 建て替え後の区分所有権・敷地利用権・住宅ローン抵当権などの権利変換計画の策定・認可申請

入居者が仮住まいに転居したら、建て替え工事に着手します。
新しいマンションが完成したら、再入居開始と同時に新しい管理組合を設立します。

4.マンションの建て替えを行う平均築年数

マンションの建て替えを行う平均築年数
建て替えをするマンションは築40年前後が多くなっていますが、建物の状況によって年数はまちまちです。
また、築年数を経過したマンションであっても、建て替えに至るケースは限られています。

ここからは、マンションの建て替えの実態を把握するために参考になる、建て替えまでの平均年数や建て替えの実施状況について紹介します。

4-1.マンション建て替えの平均年数

マンションには、建て替え時期について法的な定めはありません。

東京カンテイが実施している建て替え事例の検証によると、2022年時点で建て替えに至ったマンションの平均築年数は40.3年です。

築年数分布を見ても40~50年未満が最多で、築30~40年未満が続きます。

しかし、老朽化の程度はコンクリートや配管設備などの状態が関係するため、建物ごとに大きく差があるのが実情です。

近年のマンションは黎明期に比べてメンテナンス性が高まっている構造が多いため、建て替えまでの年数は長期化する傾向が見られます。

4-2.建て替えを行うマンションは非常に少ない

国土交通省の調査によると、築30年以上のマンションの数は、2021年末時点で全国に249万戸ほどです。
実際に建て替え実施に至っているマンションは、2022年4月時点で累計270件、2万2,000戸ほどにとどまっており、建て替えの事例は非常に少ないことがわかります。

建て替えが進まない理由には、建て替えについて所有者の4/5の賛成が必要で、合意形成が難しいことが挙げられます。
費用負担が大きいため、簡単に賛成とはいかないのが現状でしょう。

特に築年数が経過していると所有者も高齢化しているため、新たな費用負担が現実的に難しく、反対せざるを得ないケースもあるでしょう。
費用だけでなく、以下のような理由から建て替えに反対する所有者もいます。

  • 仮住まい移転に手間がかかる
  • リフォームから間もないため、建て替えの必要性を感じない
  • 現在の生活環境を変えたくない

また、築年数を経過している場合建設時は適法であっても、法改正により現在では法的要件を満たせない「既存不適格」なマンションがあります。
既存不適格のマンションでは、容積率の変更などが必要になることがあり、場合によって戸数を減らさなければいけません。
その際、退去者を募る必要性がありますが、合意を得るのは簡単ではありません。

以上のような理由から、老朽化が進んでも建て替えを選択できず、大規模修繕やリフォームで代替されるケースが多いようです。

そのため国は老朽化マンションの増加を危惧しており、将来的に建て替えに必要な4/5の要件を緩和する方向で検討を始めています。

どんなマンションでも、いずれは寿命を迎えます。
今後国として、建て替えを推し進めていくのかもしれません。

5.マンションの建て替え決定後の2つの選択肢

マンションの建て替え決定後の2つの選択肢
マンションの建て替えが決まった後の所有者の選択肢は、以下の2つです。

  • 費用を負担し再入居
  • 売却し立ち退く

それぞれ、どのような流れになるか、メリット・デメリットを含めて解説します。

5-1.費用を負担し再入居

建て替えに賛同する場合には、建て替え費用を負担し完成後再入居することになります。

建て替えで再入居を選択した場合、費用負担こそ大きいものの、新築マンションを購入するよりは安く済むケースが多いでしょう。
住み慣れた場所で再び生活を始められることもメリットです。

また、建て替え後に建物がグレードアップすれば、資産価値は上がります。
建て替え費用を捻出できるのであれば有効な選択肢でしょう。

建て替え費用は、引き渡し時に支払います。
費用が高額な場合は、新たに住宅ローンを組む必要があるでしょう。

5-2.売却し立ち退く

建て替えに賛同できない場合や立て替え費用を用意できる目途が立たない場合には、売却して立ち退きすることになります。

マンションの建て替え決定後、賛同をしない場合は、建て替え組合から時価で持分を売却することを求める「売渡請求」を行います。
請求を拒否することはできません。

修繕積立金が残っている場合には、清算金が戻ります。

なお、建て替えが決まっている場合でも、買手がいれば売渡請求前に売却することもできます。
新築マンションの建設が難しい地域の場合、新築に住みたいと考えている人が建て替えを見込んで購入するというニーズがあります。

建て替え予定があるマンションは買手が限られるため安価になることもありますが、売渡請求額よりも高値で売却できる可能性があります。

売却を考える方は、不動産会社に建て替えが行われることを伝えたうえで査定を依頼してみましょう。
査定額はもちろん、売り方やノウハウは不動産会社に異なるので、複数社に査定を依頼し比較することが大切です。

複数社に査定を依頼する際に便利なのが、NTTデータグループが運営する一括査定サイト「不動産売却 HOME4U(ホームフォーユー)」です。

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この記事のポイントまとめ

マンションの建て替え費用の相場は?

マンションのグレードや環境によって異なりますが、1戸あたり1,000~3,000万円と言われています。

詳しくは「1.マンションの建て替え費用相場」をご覧ください。

建て替え費用が変わってくるのはなぜ?

建て替えには大きな費用が掛かりますが、建て替えにより戸数が増やせる場合は販売代金が見込めるので、所有者の負担額が軽減されるケースがあります。

詳しくは「2.建て替え費用は条件によって大きく変わる」をご覧ください。

マンションの建て替えはどうやって進められるの?

マンションの建て替えは、以下の4つの段階を経て進められます。

  • 専門家を交えた話し合い
  • 修繕と建て替えとの比較検討
  • 建て替え検討委員会による具体的な検討
  • 工事開始

詳しくは「3.マンション建て替えの流れ」をご覧ください。

マンションはいつごろ建て替えになるの?

マンションの建て替えは平均築40年前後で実施されています。しかし、現実には建て替えは困難で、大規模修繕やリフォームで代替されることが大半です。

詳しくは「4.マンションの建て替えを行う平均築年数」をご覧ください。

マンションの建て替えが決まったらどうすれば良い?

マンションの建て替えが決まった場合の選択肢は以下の2つです。

  • 費用を負担して新しいマンションに再入居する
  • 売却し立ち退く

詳しくは「5.マンションの建て替え決定後の2つの選択肢」をご覧ください。