土地活用ってどういうことか、どんな方法があるかご存知ですか?
そもそも土地活用とは、所有している土地を現状より有効に活用して利益を生み出すことです。更地のままで持ち続けていても、地価が上がる可能性は低く、利益は生まないのに毎年固定資産税などを支払い続ける必要があります。
また、相続の際に土地はどうやって分けるのか、といった問題も出てきています。
資産として土地をうまく活かせれば収入を得ることができ、資産価値を下げずに節税効果を得ることも可能です。相続を考えた活用法を選ぶこともできます。
ただし、立地や環境によって、土地をどう活かせばよいかは変わってきます。更地に建物を建てる、だけが活用方法ではありません。また今だけでなく、将来を見据えて計画することが必要です。
いろいろな活用事例と、どんな土地だと何に向いているのかを、メリットでメリットも含めて解説していきます。
1.立地や希望に応じて、土地活用の方法を見つけよう
土地活用としてよく知られているのは、「土地を別の用途に変えて活かす」方法でしょう。
賃貸住宅やオフィスビルなど、その土地に合わせて建物を建てたり、駐車場にしたりして活用する方法です。更地よりも資産価値を高め、節税できるというメリットがあります。何を建てるかによっても特徴は異なります。
ではどんな活用方法があるのでしょうか。詳しく紹介します。
1-1 借り入れせずに建物を建てたいなら「等価交換」
所有している土地を提供し、その上に建設会社が費用を出して建物を建てます。出来上がった建物を、それぞれの出資比率に基づき配分するという方式です。
つまり、今持っている土地と、建築後の建物の一部を交換することになります。土地を手放すといっても共有持分となるので、新しい建物に住むこともできますし、貸すことも可能です。
- 新たな借り入れをせず、土地を活用できる
- 譲渡取得税の優遇措置がある
- 完成した建物に自宅を設けることもできる
- 相続発生時に遺産分割が容易
- 土地全体の所有権はなくなり「共有」で持分が決められる
- 完成後の持分は査定により決められ、希望通りではない可能性がある
- 資金は少ないが土地を活用して建物を建築したい
1-2 節税効果を得るなら「マンション、アパート経営」
マンションやアパートを建てると、毎月の家賃収入が得られます。老後の私的年金としても期待できるのが魅力です。
また建物を建てると、固定資産税や都市計画税の軽減措置が利用できます。
たとえば、空地や駐車場に比べて土地の固定資産税課税基準は6分の1(※1)、建物部分も一定の条件を満たせば3年もしくは5年間2分の1に減額されます(※2)。都市計画税も3分の1(※1)になるのです。
※1 一戸あたりの敷地面積が200平米以下の部分
※2 一戸あたりの居室面積が40平米以上280平米以下の場合、5年または3年間の減額
相続税についても、賃貸マンションを建てることで「貸家建付地」として評価額が2割前後軽減されます。またローンを借りることで相続財産から債務控除を行うことも可能です。さらに「小規模宅地等の特例」が適用できるとさらに税額が軽減されます。
さらに所得税が軽減できるケースもあります。賃料収入から借入利息や固定資産税、都市計画税、建物の減価償却費など必要経費を計算し、赤字になると所得税は課税されません。また会社員の人が、同じ名義で不動産貸付業も行っているなら、損益通算をすることで所得税を軽減することも可能です。
2018年(平成30年)の調査によると、空き家数は846万戸で、5年前の2003年(平成25年)と比べ26万戸(3.2%)増加しています。今後も人口が減って空き家がさらに増えていくと予想されます。また建てた後の維持管理も重要です。「○年一括借上で安心」などという言葉で安心は禁物。築年数が経っても特徴のある魅力的な物件か、管理はどのようにしていくのかも含め、将来を見据えた計画を立てましょう。
- 土地を貸すよりも収益性が高い
- 資産価値が高くなる
- 節税効果がある
- 建築費用が必要となる
- 空室ができた場合にリスクがある
- 50〜200坪程度の土地がある
- 資産価値を高めたい
- 長期にわたり安定収入を得たい
1-3 都心やアクセスのいい立地なら「オフィスビル、商業ビル経営」
都心やビジネス街など、アクセスのよい立地なら、オフィスビルや商業ビルとして利用することも考えられるでしょう。マンションやアパートと同じく建物を建てますが、規模や設備に違いがあります。
オフィス機器を利用するため、電気設備の充実、防犯やセキュリティ対策など、居住用より高いコストが必要です。賃料は住宅より高めですが、景気に左右されるため、不況時は賃料が下がる傾向があります。
- 住宅用物件より高い賃料が得られる
- 資産価値が高まる
- 相続税、所得税が節税できる
- 景気の影響を受け空室のリスクがある
- 住宅用の建物に比べて設備などのコストが高くなる
- 固定資産税や都市計画税の軽減は受けられない
- 都心や駅前などアクセスのよい立地
- 50〜300坪程度の土地がある
- 資産価値を高めたい
1-4 一時的利用や需要が見込めるなら「駐車場経営」
今すぐ建物を建てるつもりはない、借金をしてまで土地活用をしたくないと思うなら、駐車場経営を考えてみましょう。
大きく分けて、平面駐車場と立体駐車場があります。また立地によって、駅や商業施設に近いなら時間貸し、住宅地が多いなら月極駐車場にするほうがいいでしょう。
時間貸し(コインパーキング)
土地を業者に貸すだけの土地賃貸方式と、自分で駐車場を整備して管理・運営は業者に委託する自己経営方式があります。
月極駐車場
駐車場を整備した上で、業者に募集や管理のみを委託する方法と、業者に空きリスクを肩代わりしてもらい一定の賃料を受け取る一括借上方式があります。
住宅ではないのでマンション経営とは異なり、固定資産税や都市計画税の軽減は受けられません。青空駐車場の場合は、相続税も更地と同じ評価となります。所得税も住宅と比べるとメリットは少なくなっています。
- 賃貸マンション建築より初期投資が少ない
- 更地にして転用、売却しやすい
- 賃貸マンション建設に比べ節税効果は少なめ
- 空車が多いと利益が減る(一括借上方式は除く)
- 駐車場需要がある立地
- 資金をあまりかけずに土地活用をしたいとき
- 賃貸マンションを建てるまでの一時的利用
1-5 幹線道路沿いに広い土地があれば「ロードサイド店舗経営」
郊外の幹線道路沿いに広い土地があれば、駐車場付きの店舗経営も可能でしょう。土地の広さによって、コンビニからホームセンター、家電量販店などさまざまな業態があります。
経営方法としては、地主が建物を建ててから賃貸に出すリースバック方式、土地を定期借地で貸し、テナントが建物を建てるというパターン(事業用定期借地方式)があります。
リースバック方式は毎月固定の賃料を、定期借地方式は毎月定額の地代を受け取ることになります。
- 収益性が高い
- 事業用借地契約の場合は、初期費用が不要
- 建物を地主が建設する場合は、建築資金が必要
- テナントが撤退すると賃料が入らない
- 固定資産税、都市計画税の優遇はない
- 幹線道路沿いにまとまった土地がある
- 地域の活性化、利便性アップに貢献できる
- 住宅用地としては向かない立地
1-6 サービス付き高齢者住宅等
超高齢化社会の到来により、高齢者向けの住宅は今後ますます需要が高まる建物です。駅から遠い立地でもあまり問題ではなく、一定の条件を満たせば国の補助金を受けられる場合もあります。
地主はサービス事業者と契約することになりますが、そのサービスの善し悪しによって入居率は異なるもの。個人ではなかなか選定して契約するのも難しいため、地主とサービス事業者の間に不動産会社が入るケースもあります。地主が建てた建物を不動産会社が一括借上して事業者にサブリース。毎月の賃料を受け取るというものです。
- 今後需要が伸びる施設
- 補助金が受けられるケースがある
- 住宅系の施設は節税効果がある
- ある程度広い土地が必要
- 運営事業者がいないと経営ができない
- 地域社会に貢献したい
- 駅からは遠い土地だが土地活用をしたい
- 200坪以上の土地がある
2.相談するならどこがいい?
土地活用には法律や税金など、幅広い知識が必要です。希望に基づいてしっかりとしたプランニングをしてくれるところを選びたいものです。
2-1 住宅メーカー、建設会社
住宅メーカーや建設会社では、土地活用として建物を建てるということが基本となっています。賃貸住宅なら、人口や周辺の家賃相場などのデータをもとに、ワンルームなどの単身者向けがいいのか、ファミリータイプがいいのかなど、土地に応じた建築計画を提案してくれるでしょう。合わせて収支計画、資金計画も行われます。
商業施設や店舗経営をする際、会社の規模によっては、テナント企業の誘致や交渉を手がけてくれる場合もあります。
平成29年度 賃貸住宅に強い建設会社年間着工数ランキング
(全国賃貸住宅新聞 2018.6.25号より)
関東エリア
- MDI(東京都中央区)
- シノケンハーモニー(東京都港区)
- TATERU(東京都渋谷区)
- 金太郎ホーム(千葉県千葉市)
- 三光ソフラン(埼玉県さいたま市)
近畿エリア
- 生和コーポレーション(大阪府大阪市)
- フジ住宅(大阪府岸和田市)
- 信和建設(大阪府大阪市)
- ケーティアイ建設工業(大阪府大阪市)
- 進和建設工業(大阪府堺市)
2-2 不動産会社
不動産会社の中には、土地活用や不動産投資、相続に関する相談を受け付けているところがあります。建物を建てる場合は、建設会社を紹介してくれる場合もあるでしょう。
2-3 金融機関
金融機関といえば、住宅ローンの相談が一般的ですが、信託銀行では不動産コンサルティングを行っているところがあります。それぞれのライフプランをもとに、資金計画や収支計算、不動産の活用や組み替えの提案があります。
2-4 コンサルティング団体
税理士、一級建築士、ファイナンシャルプランナーなど専門家が属する団体で、土地活用や賃貸経営についての相談を受け付けています。
- 一般社団法人 全国不動産コンサルティング協会(http://www.jreca.jp/member/index.html)
各地域に相談窓口があり、第三者的なアドバイスをしてもらえます。無料、有料相談あり。
2-5 自治体
お住まいの地域によっては住宅供給公社があり、土地活用の相談窓口を設けているところがあります。高齢者向け優良賃貸住宅、子育て世帯向け賃貸住宅などの建築相談を行っているところが多いようです。
2-6 その他の相談先、参考になるサイト
- HOME4U(ホームフォーユー)土地活用
複数の大手建築会社などからの土地活用プランの資料を取り寄せることができます。
3.その他の土地活用方法
これまで紹介した方法の他に、土地を売却する、貸す、といった活用も考えられます。
3-1 現金化したいなら土地売却を
先祖代々の大切な土地を何とか活用したいという気持ちはあっても、立地や形状によっては難しいこともあります。毎年かかる固定資産税や都市計画税が負担になってきている場合もあるでしょう。
そんなときは思い切って売却し、現金化するのもひとつの方法です。
土地を売却すれば現金収入が得られ、その後の管理費や固定資産税等がかからないというのがメリットです。希望した金額や時期に売れるとは限りませんが、売却による資産の整理や組み替えができます。
売却の際には、複数の不動産会社に査定を依頼して、販売方法なども確認の上、信頼して任せられるところにお願いしたほうが安心です。売却時には、諸費用が必要となるため、売れた金額=手元に残る金額ではないことは覚えておきましょう。
売却をするなら複数の会社にまとめて査定が依頼できるHOME4U(ホームフォーユー)などの一括査定依頼サービスが便利です。
3-2 土地を貸して地代を得る方法
土地を手放さず、地主が建物を建てて貸すという方法があります。
このほか、企業に事業用の土地として貸す場合なら、建物は借り主が建てるため負担が少なくすみます。
貸し出す期間は、一般定期借地権方式では50年以上、事業用定期借家権では、10〜50年未満と長い契約となります。長期間収入を得られるというメリットはありますが、周辺の環境が変化したり、相続などが発生したりする可能性があります。よく考えて選びたいものです。
4.まとめ
土地を有効に活用するには、マンションなどを建てるか、駐車場にするか、はたまた思い切って売却するかといろんな選択肢があります。それぞれの目的や立地によって、費用や節税効果も異なり、どの活用方法がよいかは悩むところですね。
さまざまな相談窓口がありますので、まずは気軽に問い合わせてみましょう。専門家のアドバイスを通じて、どう活用するのがベストか見えてくることもあると思います。できれば複数の会社や機関に相談したほうがいいでしょう。
(2019/08/14追記:「空き家の戸数」および「賃貸住宅に強い建設会社年間着工数ランキング」を2019年8月時点の最新データに更新いたしました。)