空室保証やサブリースは本当に有利?仕組み・長所・短所を解説

空室保証やサブリースは本当に有利?仕組み・長所・短所を解説 アパート外観

アパート経営を考えるとき、誰もが不安に思うのが空室リスクです。
どうしても空室が不安な場合には、空室が発生した場合の「保証」を活用すれば、損失を一定の範囲に抑えることができます。
このような空室リスクを減らすための保証には、「空室保証」と「サブリース」の2種類があります。

※補足

空室保証は「補償」という字を使うこともあります。
また、サブリース契約には「家賃保証」「空室保証」といった表現が使われることがあります。
サービスを提供している会社によって表現がまちまちなので、契約内容をしっかり確認してください。
この記事では、「空室保証」と「サブリースによる家賃保証」の表現に統一して解説します。

「空室保証」や「サブリース」を利用すれば、空室リスクを下げることはできますが、空室リスクがゼロになるわけではありません。
また、全てのアパートに向いているとは限りませんし、デメリットもあります。
アパートの需要が多い立地の場合、サブリースは逆に不利になってしまうこともあります。
立地が良いなら、しっかり競争力があるアパートを建てて、サブリース契約を利用しないで経営するのがおすすめです。

そこでこの記事では、「空室保証」と「サブリースによる家賃保証」の仕組みやメリット・デメリットについて解説していきます。ぜひ最後までお読みいただき、アパート経営の空室リスクを上手に避けるための参考にしていただけたらと思います。

1.「空室保証」と「サブリースによる家賃保証」の仕組み

空室保証とサブリースの両方に共通するのは、空室リスクをゼロにするというわけではないという点です。
これらのサービスは、空室リスクをある程度まで抑えることができる仕組みです。

なお、これらは、入居者が家賃を払えないときに家賃を保証してくれる「滞納保証」とは異なります。

空室保証と家賃保証は似たような言葉ですが、仕組みが大きく異なります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。

1-1.空室保証の仕組み

「空室保証」とは、家賃収入が満室時より一定以下になった場合に、差額を補填してもらえるサービスのことをいいます。
「空室保証」では、満室賃料の8~9割まで補填されるのが一般的で、満額まで保証されるわけではありません。
物件オーナーは、稼働率に関わらず、保証会社に毎月一定の保証料を支払います。
保証料は、物件の立地等の条件によって異なります。

「空室保証」は、ケガに備えて掛け捨ての保険に加入しておくようなイメージに近いです。
空室が増えたときに備えて、保証金を毎月支払っておくということです。
例えば80%まで補填される契約の場合、稼働率が70%まで落ち込んだときに、満額家賃の10%を支払ってもらえます。
この契約では、空室が発生したときの損失は最大でも20%となり、リスクヘッジできるというわけです。

なお、「空室保証」では、保証会社に建物管理業務を委託するわけではありません。
物件の管理業務については、別の管理会社等に委託するか、オーナー自身が管理する必要があります。
次にご説明する「サブリースによる家賃保証」では、建物の管理も任せることになる点が大きな違いです。
「空室保証」や「家賃保証」という表現が会社によって異なることがありますので、契約内容をしっかり確認することが大切です。

空室保証の仕組み

1-2.サブリース契約による家賃保証の仕組み

「サブリース契約」とは、アパートまるごと一棟をサブリース会社(不動産会社)が借り上げるサービスのことをいいます。
借り上げたアパートは、サブリース会社から入居者へ「転貸」される形態になります。

サブリース契約による家賃保証の仕組み

オーナーは空室の有無に関わらず、一定の家賃収入(サブリース賃料)を受け取ることができます。
サブリース賃料の料率は、満室賃料の8~9割くらいが相場です。
立地が良ければ料率は高めになり、不利な立地では低めの料率になります。
「稼働率が70%になっても8~9割の家賃がもらえる」と思えば良い話ですが、逆に言えば「満室稼働であっても8~9割の家賃しか受け取れない」ということになります。
なお、実績に応じてサブリース賃料が変動する契約を結ぶこともあります。

サブリース契約では、サブリース会社にアパート一棟を借りてもらうことになるので、建物の管理業務も任せられます。
サブリース会社が物件の清掃などの管理や、入居者募集、契約などを全て行ってくれるので、オーナーは手間がかかりません。

サブリース契約の内容は会社によって様々ですが、次のような契約が一般的です。

  • オーナーからの中途解約が難しい。
  • 満室賃料に対する一定割合がサブリース賃料として支払われる。
  • 保証率(サブリース賃料)は2年ごとに見直される可能性がある。
  • 入居者からの敷金、礼金、更新料は、サブリース会社が受け取る。
  • サブリース賃料の免責期間がある(竣工直後と入居者の退去後の数ヶ月)。
  • 管理会社、修繕工事会社は指定の会社があって、変更できない。

サブリースに関しては、これまで様々なトラブルや訴訟が起きています。
サブリース契約を結ぶときには、詳細まで契約内容を確認するようにしてください。

2.空室保証とサブリースのメリット・デメリット比較

空室保証とサブリースのメリット・デメリット比較 メリットデメリット

空室保証、サブリースによる家賃保証には、それぞれメリット・デメリットがありますので、詳しく解説していきます。

2-1.空室保証のメリットとデメリット

空室保証のメリットとデメリットは次のとおりです。

2-1-1.空室保証のメリットは2つ

・稼働が良いときは収入アップ

空室保証は、稼働率が悪い時の空室損失の一部を補填してもらえる契約です。
そのため、稼働率が良ければ、損失の補填もされない代わりに、増えた家賃は全てオーナーのものになります。
サブリースの場合には稼働率が良くてもオーナーは8~9割の家賃しかもらえませんので、それと比べると「空室保証」は増えた家賃がしっかり受け取れるというメリットがあります。

・稼働が悪くても一定の損失に抑えられる

長期的な空室などが発生した場合でも、空室保証があれば一定の損失に抑えることができるため、保証がない場合に比べると損失を抑えることができます。
空室リスクがゼロになるわけではありませんが、損失の最大値が決まるので、空室保証を付けると融資を受けやすくなるケースもあります。

2-1-2.空室保証のデメリットは2つ

・保証料の負担

稼働が良くても悪くても、オーナーは保証料を負担しなければなりません。
稼働が良い時が続けば、「家賃保証」によるメリットが全く受けられないのに保証料の支出だけが発生するので、支払い損になるケースもあります。

・100%保証されるわけではない

「空室保証」は満室相当家賃の100%が保証されるわけではないのがデメリットです。
契約によりますが、最大でも9割程度が相場なので、稼働率が平均90%を超えそうなら、「空室保証を契約する必要はない」ということになります。

2-2.サブリースのメリットとデメリット

次に、サブリースのメリットとデメリットをみていきます。

2-2-1.サブリースのメリットは2つ

・収入が安定

空室の有無に関わらず、オーナーは一定の家賃収入を継続的に得られます。
退去の通知が出るたびに落ち込んだり、入居希望者がすぐに見つかるかどうか心配する必要がなく、どっしり構えてアパート経営をすることができます。

・手間がかからない

サブリースは、物件に関するほとんどをサブリース会社が請け負ってくれるのがメリットです。
入居者はサブリース会社と契約している形態になります。
そのため、賃料回収や入居者募集も行ってもらえますし、賃料の延滞が発生したときなどもサブリース会社が対応してくれます。
日常の建物管理だけでなく、修繕計画なども立ててもらえるので、オーナーには経営する上での手間がかからないのは大きなメリットです。

2-2-2.サブリースのデメリットは5つ

・一定期間ごとのサブリース賃料見直しの可能性がある

サブリース契約では、「一定期間ごとに賃料の見直しが可能である」という内容が契約書に含まれているのが普通です。
実際、契約当初の家賃がずっと継続されることは稀です。

サブリース会社からの賃料値下げ要求に対して、「聞いていない、納得できない」という訴訟も過去に多く見られましたが、オーナーに勝ち目はあまりありません。
サブリース会社はアパートの借主なので、「借地借家法」で保護される立場だからです。
サブリース会社は、賃料が周辺相場よりも割高になったら、サブリース賃料の値下げを要求する権利があります。
「家賃保証30年」といっても、「30年間ずっと同じ家賃が保証される」というわけではないのでご注意ください。

・管理会社や修繕工事会社が変更できないのが一般的

サブリース契約では、管理会社や修繕工事の会社が指定されており、変更できない契約になっているのが一般的です。
修繕工事の費用が割高な場合でも、指定の工事会社に依頼しなければならないので、結果的にアパートの維持費が高めになってしまうことがあります。
一般的には、アパートの修繕工事の際には複数の工事業者から「相見積もり」を取得してコストダウンを図ることができるのに対し、サブリース契約ではコストが割高になりやすいです。

・サブリースを中途解約するのが難しい

サブリース契約では借地借家法が適用されるので、借主である不動産管理会社が有利です。
そのため、オーナーからの解約が難しいのが一般的です。
オーナーから解約を求める場合には「正当な理由」が必要となります。
また、もし正当な理由が認められても解約するまでに時間がかかることがほとんどです。
中途解約が認められる場合でも高額な違約金や立退き料が発生してしまうこともあります。
契約内容についてしっかり確認することが大切です。

・稼働が良くてもサブリース賃料しかもらえない

サブリースは稼働率が良くても、家賃収入の満額を受け取ることができません。
事前にわかっていたこととはいえ、高稼働を維持できているのに8割くらいの家賃収入しか得られないと、損をした気分になることもあるでしょう。

・敷金、礼金、更新料などはサブリース会社が受け取る

敷金・礼金・更新料は、サブリース会社が受け取る契約になっているのが一般的です(敷金は一定の条件のもと、返還義務があります)。
敷金・礼金・更新料をサブリース会社が受け取るとなると、オーナーの収益は毎月の家賃のみとなってしまいます。
礼金は取れない地域が多いものの、新築であれば1ヶ月くらいもらえるエリアは珍しくありません。
また、更新料は家賃の0.5ヶ月分程度ですが、積み重なると無視できない金額になります。
一時金は誰が受け取るのか、契約内容をしっかり確認することが大切です。

・免責期間がある

サブリース契約では、「免責期間」が設けられるのが一般的です。
「免責期間」とは、サブリース会社が空室による収益ゼロの状態を回避するために、竣工後の数ヶ月や、入居者が退去した後の一定期間はオーナーに家賃を支払わなくてよいという期間です。

とはいえ、一般的に新築アパートは人気なので、完成前から計画的に入居者募集を開始すれば、早期に満室になることも珍しくありません。

免責期間中に満室になれば、差額はサブリース会社の収入となります。
サブリース契約でない場合と比べると、新築時の最も高い水準の家賃を数ヶ月分受け取れなくなるのは不利です。

3.空室保証やサブリースは本当に必要なのか見極めが必要

空室リスクは、アパート経営をする上で避けて通れない課題です。
だからといって、空室保証やサブリースを必ず選んだほうがいいかというと、一概にそうとは言えません。

3-1.「空室保証」か「サブリース」がおすすめのケース

駅からやや離れていて、アパート需要に不安がある場所に建てるなら、「空室保証」か「サブリース」を検討するとよいでしょう。
どんなに魅力的なアパートを建てても、空室率を10~15%未満にできるかどうかわからないときにはサブリースを検討する余地があります。

「立地が不利である」ということに加えて、「アパート経営をすべて任せたい」というオーナーには、「空室保証」よりも「サブリース」が合っています

サブリースを利用する場合には、色々な企業があるのでその中から信頼できる一社を見極める必要がありますので、以下に注意したいポイントを挙げておきます。

・経営状況が安定しているかどうか

一般的にサブリース契約は長期的なものとなります。
そのため、経営が安定している企業を選ぶことが大切です。

・提示されたサブリース賃料が適正かどうか

周辺の同じような条件のアパートの家賃と比較したり、複数のサブリース会社の提案を比較したりして相場を把握してください。
立地が良いほど安定稼働が見込めるので、サブリース賃料は高めになります。

・免責期間や賃料改定の時期などの条件面で納得できるか

免責期間は1~3ヶ月程度で、立地やサブリース会社によって異なります。
他の条件面もしっかり比較して納得できる会社を選んでください。

・稼働率や管理の実績が良好か

熱心に入居者募集を行い、良好な実績を上げている企業かどうかが重要です。
「空室が増えたら、サブリース賃料の値下げを要求すればいい」というようなやる気のないサブリース会社を選んでしまわないように注意してください。

3-2.サブリースをつけなくてもよいケース

空室リスクを避けるために最も大切なことは、アパートの需要がしっかり見込めるエリアで、入居者にとって魅力的なアパートを建てることです。
立地がよく、集客力のあるアパートを建てれば、空室保証やサブリースは必ずしも必要ではありません。

高稼働で推移した場合、サブリースは不利です。
例えば、稼働率が90%以上をキープできているのに、サブリース賃料として8割程度しか受け取れないということになると、非常に損をしていると感じるはずです。

どうしても空室リスクの不安が残るなら、減収を補填するだけの「空室保証」だけで十分でしょう。
サブリースの場合、敷金・礼金・更新料の受け取りがオーナーではない場合が一般的ですし、「免責期間」もあるため、どうしても収益性が低くなります。
その上に、数年ごとに家賃を減額されたりしてしまう可能性もあり、管理会社や工事業者に不満があっても変更できず、サブリース契約そのものを中途解約することも難しいです。

3-3.サブリースを使う場合も使わない場合も実行すべきこと

サブリースを利用する場合には、契約内容をしっかり確認し、信頼できる企業を選ぶことが大切です。
もしサブリースを利用しない方針なら、空室リスクの低いアパートを建てることに注力してください。

サブリースを利用する時も、利用しないときも、最も重要になるのがハウスメーカー選びです。
ハウスメーカー選びで失敗しないコツは、複数の企業をじっくり比較して、納得のいく企業を選ぶことです。

しっかり比較検討して決めたい時に便利なのが、NTTデータグループが運営する「 HOME4U(ホームフォーユー)土地活用」です。

HOME4U 土地活用

実績豊富で優良施工の国内ハウスメーカーがずらりと参画していて、簡単に複数の企業からアパートの経営プランを取り寄せることができます。
複数のハウスメーカーの建築費や収支計画などをじっくりと比較し、サブリースが必要かどうかなどもあわせてプロの意見を聞いてみてください。
サブリースを勧める会社とそうでない会社の両方の提案を聞いてから、使うか使わないかの判断をし、後悔しないようにすることをおススメします。

なお、現在すでにサブリース契約を結んでアパート経営を行っていて、サブリース会社を変更したいと考えている場合には、「 賃貸経営 HOME4U(ホームフォーユー)
」を使うと、優良なサブリース会社を探すことができるのでぜひご利用ください。

まとめ

それではおさらいです。
「空室保証」と「サブリースによる家賃保証」の仕組み、それぞれのメリット・デメリット、空室保証は本当に必要なのかを見極める必要性について解説してきました。

空室リスクを避けたい場合には、空室保証やサブリースを有効利用する選択肢もあります。
ただし、満室時の賃料が100%保証されるわけではありません。

アパートに向いた立地に、しっかりと競争力のあるアパートを建てれば、サブリース契約は必要ないかもしれません。
むしろ競争力のあるアパートを建てれば、サブリース契約よりも一般的な契約形態のほうが高収益を得られます。

ハウスメーカーの提案内容をじっくり吟味し、契約内容をしっかり確認して、高収益なアパート経営を実現していただきたいと思います。