不動産を個人で売買することは可能です。しかし、専門家を介さない個人間の取引はトラブルに発展するリスクが高いことも理解しておく必要があります。
本記事では、個人売買と仲介との違い、メリットとデメリットについて解説しています。最後までお読みいただき、ご自身の状況にあった最適な不動産売却方法を選んでください。
なお、不動産売却の相談先については「不動産売却の相談は誰にする?内容別で相談先を選ぶ」をご参考ください。
- 不動産は個人売買できるが不動産会社に依頼するのが一般的
- 個人売買のメリット・デメリット
- 不動産を個人売買する場合の基本的な流れ
Contents
1.不動産は個人売買できる!
不動産は個人売買できます。
一般の方が不動産を売る際には仲介会社に売買を依頼するのが一般的ですが、法律の観点では、個人間で売買しても問題ありません。
不動産仲介の仕組みは、文字通り不動産会社が売り手と買い手の間を仲介し、売買成立のために販売活動や契約手続きなどの業務を代行します。不動産会社は成約が決まれば、成功報酬として仲介手数料を受け取ります。
対して、個人売買は売主と買主が直接取引を行います。
不動産仲介と個人売買では、以下の様なメリットとデメリットがあります。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
個人売買 | ・仲介手数料がかからない ・売買活動の自由度が高い ・知人への売却なら短期間で完了する |
・トラブルに発展しやすい ・売却価格の設定が難しい ・ローン審査が通りづらい |
仲介 | ・手間がかからない ・買い手を見つけやすい |
・時間がかかる(最低3ヶ月~6ヶ月) ・仲介手数料がかかる |
費用だけで比較すると、不動産会社への仲介手数料がかからない個人売買の方がメリットは大きく感じられますが、トラブルに発展するリスクがあることを考えると、安易に個人売買を選ぶのは危険です。
また、買い手を新たに探す場合や買主が住宅ローンの利用を希望されるのであれば、仲介の方がメリットは大きい場合もありますので、個人売買と仲介それぞれのメリットとデメリットを比較してから決めるようにしましょう。
2.個人売買のメリットは「費用の安さ」
不動産を個人売買で売却するメリットは「費用の安さ」に加えて、次のような点が挙げられます。
- 仲介手数料が発生しない
- 売買活動の自由度が高い
- 知人への売却であれば、短期間で売却しやすい
2-1.仲介手数料が発生しない
個人売買の費用が安いのは、仲介手数料が発生しないためです。
不動産仲介で売却する場合は、売却価格に応じて最大「売却価格×3%+6万円(別途消費税)」がかかります。
例えば、3,000万円の戸建ての場合は105万円ほどの仲介手数料になります。
こうした手数料を個人売買の場合は支払う必要がありません。売買の費用をおさえて、少しでも手元に多くの利益を残したい方には大きなメリットと言えます。
2-2.売買活動の自由度が高い
個人売買は、仲介よりも売買活動のスケジュールや契約などの自由度が高いです。
仲介の場合は不動産会社の担当者が間に入り、売り出し価格の設定や契約手続きを進めていきます。専門的な知見を持つ売買のプロに任せられるので、売主にとっては安心感がありますが、反面、売主の希望条件を100%反映できるとは限りません。
個人売買であれば、販売価格や買い手、契約条件などを自由に決められますし、買主を無理に決める必要もないため、自分のタイミングで売却が可能です。
2-3.知人への売却であれば短期間で売却しやすい
知人に売却することを決めているなら、個人売買の方が短期間で売却しやすいでしょう。
仲介会社に依頼すると、媒介契約の締結から成約、引渡しに至るまで最低でも3ヶ月〜6ヶ月程度はかかります。
対して、個人間であれば、価格を決めて契約手続きをするだけなので、必要書類や司法書士への依頼を準備しておけば、最短1週間程度で完了するでしょう。
知人への売却に限ってですが、「急いで現金化したい」などの理由から短期間で売却されたい方にとっては、個人売買の方が取引を進めやすいと言えます。
3.個人売買のデメリットは「トラブルのリスク」
個人売買は仲介手数料不要や自由度の高さなど、売り手にとってのメリットは大きいですが、以下のようなデメリットもあります。
- 知人・友人間の売買はトラブルに発展しやすい
- 売却価格の設定が難しい
- ローン審査が通りづらい
- 仲介よりも手間がかかる
トラブルに発展しやすい理由や、個人売買だからこそ生じる問題について詳しく解説します。
3-1.知人・友人間の売買はトラブルに発展しやすい
個人売買は、仲介よりもトラブルに発展するリスクが高くなります。特に、知人や友人間の個人売買には注意しなければなりません。
気の知れた間柄だからといって、契約内容について十分な確認を行わないまま手続きを進めてしまうことで、契約時や引き渡し後にトラブルが生じることも珍しくありません。
また、不動産取引は確認事項や必要な手続きも多いことから、専門知識がないまま進めると不備が発生しやすくなります。
3-2.売却価格の設定が難しい
個人売買で難しいのが、売却価格の設定です。売主が自由に設定できるからこそ、専門的な知識が求められます。
売却価格は築年数やエリアの需要、周辺環境などあらゆる条件を元に算出しますので、単に周辺の不動産と同じ価格に設定すれば良いという訳ではありません。
また不動産売買において、価格交渉による値引きは当たり前のように行われていますので、値引きを想定しないまま価格設定してしまうと、損をする場合もあります。
売り出し価格の決め方については「4-2.価格設定」で解説していますので、適正価格の見極めのためにご参考ください。
3-3.ローン審査が通りづらい
個人売買の場合は、住宅ローン審査が通りづらい傾向にあります。
住宅ローンを申し込む際には「重要事項説明書」の提出を求められることが多いのですが、重要事項説明書を一般の方が作成することは難しいからです。
重要事項説明書とは、不動産仲介で売買取引を行う際に宅地建物取引士が作成する書類のことで、物件の権利状況や物理的な状態について記載されています。
不動産仲介による売買では、売買契約時に重要事項説明書の記載内容について売主と買主に説明し、双方合意の元で契約を締結します。
金融機関は住宅ローンを貸し出すにあたって不動産を担保にしますので、リスク回避の観点から不動産の権利状況や物件状態を証明する重要事項説明書を重要視しています。
個人売買の場合、重要事項説明書に代わる書類を作成して提出することも可能ですが、不備が発生するケースも多いことから、取引の正当性を証明できず審査に通りづらいのが現状です。
3-4.仲介よりも手間がかかる
個人売買は、仲介よりも多くの手間がかかります。
仲介だと販売活動や契約書の作成、契約手続き、さらには買主との日程調整など、不動産売買に必要な作業はすべて不動産会社が行ってくれます。しかし、個人売買の場合は全てを売主本人が行わなければなりません。
不動産取引に関する専門知識をお持ちの方以外は、契約書を一枚作成するだけでも多くの時間がかかりますので、スムーズに売却されたい方には不向きです。
「仲介で売却したい」という方は、不動産査定を依頼して、信頼できる不動産会社を探してみましょう。
不動産査定には、一度に複数社へ査定を依頼できる「不動産売却 HOME4U(ホームフォーユー)」がおすすめです。
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スムーズに不動産売却を進めたい方は、ぜひ「不動産売却 HOME4U」をご活用ください。
4.不動産を個人売買する場合の基本的な流れ
不動産を個人売買する際の流れは、相場調査や必要書類の事前準備から始まり、価格設定、買い手探し、価格交渉、売買契約、決済へと進めていきます。
本章では、個人売買を進めるにあたっておさえておくべきポイントを、仲介との違いも交えながら解説します。
4-1.相場調査・必要書類の準備
個人売買も仲介も、不動産を売却するとなればまず相場調査から行います。
個人売買の場合は不動産会社の査定を受けないので、自分で調べる相場が売却価格を決める際の指標となります。
自分で相場を調べる方法は、以下2つがあります。
「不動産情報ライブラリ」は、国土交通省が運営する不動産価格が掲載された情報サイトです。実際に売買を行った人を対象としたアンケート結果をデータベース化し、価格情報を公開しています。
対して「レインズ・マーケット・インフォメーション」は、国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営する情報サイトです。直近1年間で実際に取引された価格情報が公開されており、間取りや築年数など物件の細かい条件を絞って検索できます。
ただし、両サイトともあくまで過去の成約情報であり、類似物件の情報を元に「いくらで売れるのか」を把握する程度と考えてください。
また、相場調査とあわせて、必要書類も準備しておきましょう。
必要書類は契約内容によりますが、以下の書類を揃えておくと安心です。
- 売買契約書
- 権利証
- 登記事項証明書
- 住民票
- 固定資産税評価額証明書
- 身分証明書(顔写真付き)
- 公図
売買契約書の作成や証明書等を発行するまで時間がかかりますので、売却したい時期が明確であれば、早期に準備を始めてください。
4-2.価格設定
おおよその相場を把握し、必要書類も準備できれば販売価格を決めます。
仲介の場合は不動産会社の査定額や担当者のアドバイスを基に売り出し価格を決めますが、個人売買の場合は、売主が希望する通りの価格を設定できます。
不動産売買では、買主から値引き交渉を受けることが一般的です。そのため、価格設定は、相場より1割程度高い金額を目安にしましょう。値引きを前提に価格設定しておかないと、売主が損をしてしまう可能性があるため、注意が必要です。
4-3.買い手探し・価格交渉
販売価格が決まれば、買い手探しを始めます。
個人売買だと、買い手を探すための広告活動や内覧に向けたスケジュール調整なども、全て自分で段取りしなければなりません。
価格交渉の際は買主の希望に寄り添いながらも、安易な値引きは避けましょう。値引きする分だけ売主の手元に残る利益は減ってしまいます。
損をしない価格交渉を行うためにも、「これ以上は値引きできない」といった基準をあらかじめ明確にし、買主に対しても意思表示してください。
4-4.売買契約書を作成
価格交渉の末、無事に成約が決まれば売買契約書の作成へと移ります。
売却後のトラブルを避けるためにも売買契約書を作成しましょう。不動産取引は高額なため、売却後に「室内に重大な欠陥が見つかった」「取引前に言っていた内容と違う」など、さまざまなトラブルが発生しやすいです。
契約書がないことで、売主が責任を負う可能性だけでなく、最悪の場合は訴訟などに発展するケースもあります。たとえ知人や友人へ売却する場合でも、売買契約書は用意しましょう。
売買契約書は自分で作成することも可能ですが、専門知識が必要となるため、司法書士への依頼をおすすめします。
4-5.決済・引渡し
売買契約を終えたら、売却代金の決済手続きと物件の引渡しを行います。
買主が住宅ローンを利用する場合は、金融機関の担当者も同席し、融資の手続きも進めます。
あわせて、物件の引渡しに必要な鍵や資料なども準備し買主に渡します。
5.不動産を個人売買するなら「専門家に依頼する」ことが大事
「3.個人売買のデメリットは「トラブルのリスク」」で解説したように、不動産の個人売買はトラブルに発展するリスクがあるため、専門家への依頼をおすすめします。
本章では、専門家へ依頼する内容や、契約書作成における注意点を解説します。
5-1.売買契約書の作成は司法書士へ依頼する
不動産売買を行うにあたって必要な売買契約書の作成は、司法書士へ依頼することをおすすめします。
個人で作成しても問題ありませんが、専門知識が必要な上、記載内容に不備があると手続きをスムーズに進められなくなります。
最悪の場合、売買自体が成立しなくなる可能性もあるため、費用はかかりますが専門家である司法書士へ依頼する方が安心ですし、効率的に取引も進められます。
なお、司法書士への依頼報酬の相場は1〜2万円程度です。
5-2.物件に欠陥がある場合は契約書に記載する
物件に何らかの欠陥がある場合は、隠さずに必ず契約書に記載するようにしましょう。
不動産取引には「契約不適合責任」が存在します。契約不適合責任とは、契約書に記載されていない重大な欠陥や不備が発生した場合、買主が被る損失を売主が負担する責任があることを指します。
売却時に既に認識している欠陥については、契約書に明記しておくことで売却後に買主から責任追及されるリスクを避けることができます。また、買い手が合意するれば「契約不適合責任を免責する」と記載することもできます。
個人売買は特に、売主と買主との間で認識の相違が生じやすいため、契約書に細かく記載することを徹底してください。
6.不動産売却をするなら仲介のメリットも知っておこう
個人売買は費用が抑えられるメリットが大きいものの、トラブルや交渉が難航する、取引自体が成立しないなど、メリット以上のデメリットもあります。
「トラブルを避けて売買したい」という方は、仲介も一つの選択肢として検討しましょう。
上述した通り、仲介の場合は不動産会社が間に入って買い手探しから売却活動、契約手続きまで一貫してサポートしてくれるので、トラブルを最小限に抑えられ、売主の負担も軽減されるメリットがあります。
結果的に仲介手数料を支払っても、手元に残る利益を確保できる場合も十分ありますので、一度不動産査定を受けてみることをおすすめします。
一括査定サイトで査定を依頼するなら、ぜひ「不動産売却 HOME4U」をご活用ください。
まとめ
費用を安くおさえて取引ができるのが個人売買の大きなメリットです。
ただし、買主とトラブルに発展するリスクや、契約内容を巡って売却後にトラブルへと発展するリスクが高いため、物件に欠陥がある場合は必ず売買契約書に詳細を記載するようにしてください。また、契約書の作成については、司法書士への依頼をおすすめします。
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