バリアフリー住宅の上手な建て方を具体例を交えて解説します

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バリアフリー住宅

高齢化の進む現代において、注文住宅を建てる際にバリアフリー住宅を検討する方も多いのではないでしょうか。しかし、バリアフリーというと改修に関する情報が多く、新築の場合は改修とどう違うのか考えれば考えるほどわからなくなってしまいます。
今現在バリアフリー住宅を検討されている方のために、新築でバリアフリー住宅を建てる際に最低限押さえておくべき基本やポイントや助成金等について、具体例を挙げながら解説します。
バリアフリー住宅として、新築時にどこまで対応すべきか検討する上での参考にしてみてください。

1.バリアフリー住宅とは?

バリアフリーという考え方が日本で広く知られるようになったのは、1994年に「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律(ハートビル法)」が施行されたことがきっかけでした。

住宅においてバリアフリー化が浸透したのは、1996年に住宅金融公庫(現・住宅金融支援機構)がバリアフリー住宅に基準金利を適用したことがきっかけといわれています。
「バリアフリー」は、もともと高齢者や障害のある方々が安全な暮らしを送るため、建物内外にある段差などのバリア(障壁)を取り除くことを意味していました。しかし、近年では物理的・心理的、そして制度的な障壁すべてを除去することに対して「バリアフリー」という言葉が使われています。

「ユニバーサルデザイン」という言葉もありますが、ユニバーサルには「一般的、普遍的」という意味があるように、これは障害の有無だけでなく年齢、性別を問わずより多くの方々が利用できるようにデザインされた空間や製品のことをいいます。「多目的トイレ」がその一例です。

2.家庭内で多い高齢者の事故

毎年、約3万人もの高齢者が不慮の事故で亡くなっています。消費者庁が3年ごとに実施する高齢者の事故状況に関する調査によると、もっとも多いのが誤嚥(ごえん)などによる窒息で、転倒・転落、溺死・溺水、交通事故と続きます。

2010年から2016年にかけて「誤嚥」による死亡はやや減少していますが、「転倒・転落」は横ばい、「溺死・溺水」は増加傾向にあります。75歳以上の後期高齢者になるほど不慮の事故による死亡件数が多いことから、長寿化がすすんでいることも「転倒・転落」「溺死・溺水」の死亡件数が増加している一因であると考えられます。
こうした不慮の事故防止のためにも、バリアフリー住宅の計画は非常に重要なのです。
参考:消費者庁「高齢者の事故の状況について」

3.バリアフリーで注文住宅を建てるポイント

リフォームの場合は、それまでの生活において不便だった点や不安だった箇所にポイントをしぼってバリアフリー化することができます。しかし、新築の場合は何に留意すればよいのか、どこまで対応すればよいのか、バリアフリーについて調べれば調べるほど悩んでしまうことでしょう。

3-1.基本は「段差の解消」「手すりの設置」

高齢者の不慮の事故による死亡者数は、誤嚥に続いて「転倒・転落」が多いとお伝えしました。この「転倒・転落」を防ぐために必要なのが、段差の解消と手すりの設置です。
従来の日本家屋は、板の間よりも和室の床が畳の厚さぶん高くなっていました。ほかにも、くつずりや建具の下枠など数ミリ程度の段差が至る所にあり、高齢者にとっては大変危険だったのです。

一方、手すりの設置には2つの役割があります。
1つは、階段や廊下の歩行時に、転倒を防止するための手すりです。つえをついて歩くことをイメージするとわかりやすいでしょう。
もう1つは、足腰の弱くなった高齢者が立ったり座ったりする動作を補助するための手すりです。玄関框(かまち)の近くやトイレ、浴室など、上り下りをともなう箇所に設置します。

3-2.今必要なのか、将来的に必要なのか

バリアフリー住宅を新築する上で大切なのは、「いつ必要なのか」ということです。
バリアフリーリフォームは必要に迫られて行うのが一般的ですが、新築の場合は「将来のために」と検討される方も多いのではないでしょうか。
内閣府が公表している「高齢者の住宅と生活環境に関する調査」によると、段差などの住宅の構造に不便を感じている高齢者は8.3%。リフォームの必要性を感じている方も少なくありません。
参考:内閣府「平成30年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査結果」

しかし、中には介護施設や高齢者向け住宅への入居、住み替え、親族との同居を視野に入れている高齢者もいることから、将来設計ができていない時点で完全バリアフリーの住宅を建てることは、あまり現実的ではないとも考えられます。
適度な運動は身体機能の早期低下を防ぐことにもつながりますから、段階を踏んでバリアフリー化していける住宅を目指すのがよいでしょう。
もし、すでに要介護の同居ご家族がいる場合には、担当ケアマネジャーにも相談の上で計画を進めてください。

3-3.介護されることも視野に入れる

バリアフリー住宅とする際、高齢者等がひとりでも安全に生活できることはもちろん大切ですが、将来的には家族や介護士に介助されることも視野に入れた計画が必要となってきます。
介助されることを想定した時、もっとも重要なのは寝室の配置や仕様です。
寝室付近にトイレを設置するのはいまや常識ですが、それが難しい場合には室内にポータブルトイレを置ける広さを確保します。介助しやすいよう、介護ベッドは壁から少し離しておくのが理想です。8畳のスペースがあれば、ポータブルトイレや車いすを置いても余裕をもって介助ができるでしょう。
におい対策のため、そして感染症予防のためにも換気設備にはこだわりたいところです。

そして意外と重要なのが、寝室から屋外までの距離です。デイサービスの送迎車や介護タクシーを利用する際の動線も考えて計画してください。
このように、バリアフリー住宅の計画においては「介助する側」のバリアを排除することも非常に重要です。
段差をなくし、手すりを設置するだけならリフォームでもできますが、間取りを変更するような大掛かりなリフォームは手間も費用もかかります。新築でバリアフリー住宅を建てるのであれば、ご自身やご家族が介助されることまで気を配ってレイアウトしてみてください。

4.高齢者でも安全なバリアフリーの具体例

ここからは、高齢者等が自宅で安全に生活するためのバリアフリー住宅の具体例をご紹介します。

4-1.玄関・アプローチのバリアフリー

玄関アプローチへのスロープ設置は意外と大変なものです。
「建築物移動等円滑化基準」では、スロープの勾配は1/12以下とされています。玄関ポーチが地面から40センチの高さにあるとすると、スロープの長さは4.8メートル必要です。これだけのスペースを確保するのは、よほど広い敷地でないと難しいでしょう。
介助者がいる場合には1/8の勾配でも上り下りは可能ですが、必要に応じて電動昇降器具の設置を検討するのも一案でしょう。

玄関ポーチの階段は、踏面30センチ以上、蹴上(1段の高さ)16センチ以下が理想です。手すりは最初から設置しておくと、後付けの手間がかかりません。
最近の住宅は開き戸の玄関ドアが主流ですが、開き戸は手を挟んでケガをする、風が強い時の開閉が危険である、高齢になるとスムーズに出入りしにくくなるなど、デメリットが多いです。バリアフリー住宅には、取っ手が持ちやすく軽く開閉できる引き戸を選択してください。
また、玄関框は式台のある二段式框にしておくと、将来的にも上り下りに困りません。土間に高さ40~45センチ程度の飾り棚や収納棚を造作しておくと、靴を脱ぎはきする際のベンチとしても利用できます。手すりの位置も考えながら設置してください。
参考:国土交通省「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」

4-2.廊下・階段のバリアフリー

バリアフリーは「安全」に「不自由なく」生活できることを基本として計画します。
そのためには手すりの設置が必須となりますが、現時点で廊下の手すりが必要ないのであれば、あとから設置できるよう壁に下地を入れておきます。階段には手すりのほか、ノンスリップ(滑り止め)も施工しておくと安心です。

廊下や建具の有効寸法は、一般的な尺モジュールと105ミリ角の柱を使用した木造住宅であれば「高齢者が居住する住宅の設計に係る指針」の廊下幅(780ミリメートル)はクリアできますが、120ミリ角以上の柱を使用する場合には柱を露出した真壁仕様とする必要があります。
もう少し廊下幅に余裕をもたせたいのであれば、メーターモジュールで設計してもよいでしょう。
しかし、基本的には寝室からトイレや浴室、屋外への動線が最短・直線になるようレイアウトに配慮することで、一般的な廊下幅や開口幅であっても不自由なく生活することが可能です。
参考:国土交通省「高齢者が居住する住宅の設計に係る指針」

4-3.トイレや浴室のバリアフリー

入浴介助を利用する可能性も視野に入れると、トイレだけでなく、水まわりをすべて寝室に近いところに集中させることが望ましいでしょう。車いすでも出入りできる、ゆったりとした広さを確保してください。
建具は引き戸が基本ですが、どうしても開き戸しか設置できない場合は外開きとします。特にトイレのドアを外開きとするのは、スリッパがドアに引っかからないようにという配慮もありますが、内開きにしてしまうと、万が一トイレの中で誰かが倒れてしまった時、倒れた人の体にドアがあたって中へ入れず、救助が遅れる場合があるからです。

水まわりの床には、滑りにくく、できるだけ柔らかい建材を使用します。手すりの位置も、実際に立ったり座ったりしながらもっとも使いやすい位置を検討してください。
浴室での溺水を防ぐため、浴槽の高さや形状にも留意します。
また、浴室での事故にはヒートショックも大きく関係しますので、浴室、洗面脱衣室には暖房器具を設置するなどの対策を検討してください。

4-4.リビングや寝室など居室のバリアフリー

高齢者等の寝室は、できるだけリビングに近接してレイアウトします。
家庭内での孤立を防ぐことも心理的なバリアフリーのひとつですから、引き戸を開けたらリビングにつながるような、家族とのコミュニケーションがとりやすい間取りが理想です。
玄関から距離がある場合には、寝室かリビングの掃き出し窓から直接外に出られるようにします。掃き出し窓の外に車いす用のスロープを設置してもよいでしょう。

高齢者は床にペタンと座った状態から立ち上がるのが困難なため、和室ではなく洋間にイスやベッドを置いての生活になるでしょう。数ミリ、数センチの小さな段差は排除することが基本ですが、リビングに高さ40センチ程度の小上がりがあると、和室の気分を味わうことができるだけでなく、腰かけたりごろ寝をしたり、ソファやベッドのように活用できて便利です。

4-5.そのほかの住宅設備

室内の小さな段差を解消するためには、吊り戸(ハンガー引き戸)がおすすめです。

吊り戸は、建具の上枠にレールを取り付け、そこに建具を吊り下げて開閉します。下部にレールが必要ないため、床をフラットに保つことができます。

夜間の転倒防止には、寝室、リビング、トイレ、玄関に通じる廊下のところどころにセンサー付きフットライト(足下灯)を設置しておきます。
電気のスイッチは明かり付きのワイドタイプで、通常よりも低めの位置に設置します。高さ100~110センチ程度なら、車いすでも不自由なく使用できるでしょう。車いすを想定するのであれば、コンセントも40~50センチ程度の高さに設置することで、プラグの抜き差しがしやすくなります。
すでに利用者の足腰が弱っている状態であれば、ユニバーサルデザインのキッチンや洗面台を採用してもよいでしょう。現時点で車いすを使用していなくても、座った状態で作業できると毎日の家事や身支度が楽になります。
高齢者等が家にひとりでいる時間が長いのであれば、安心・安全のためセキュリティー会社の見守りサービスや緊急通報サービスの導入を検討するのも一案です。

5.バリアフリー住宅を建てる場合の助成金

助成金バリアフリー住宅に対しては、介護保険制度の利用による補助金や、バリアフリー改修工事をした場合の住宅特定改修特別税額控除、省エネリフォームとあわせてバリアフリーリフォームを行う場合の助成金など、さまざまな支援が行われています。

しかし、これらの制度はいずれもバリアフリー改修を対象としたものであり、新築には適用されません。最近の住宅はバリアフリー仕様が標準となっていることもめずらしくなく、バリアフリー住宅を建てるからといって建築費が高額になるわけではないというのも理由のひとつでしょう。
ただし、新築住宅も対象として助成を行っている自治体も中にはあるかもしれません。念のため、お住まいの自治体に確認してみてください。

6.ハウスメーカー選びのポイントは?

「高齢者が居住する住宅の設計に係る指針」の内容に応じて設計することで、どこの会社でもバリアフリー住宅は建築できますが、ある程度バリアフリー住宅の実績が豊富なハウスメーカーに依頼することで、より暮らしやすい間取りが実現できます。
例えば、三菱地所ホームはラインナップの1つとしてユニバーサルデザインの住まいを提案しています。段差の解消や手すりの設置、廊下幅の配慮はもちろん、照明の設置や部材の色による段差の認識しやすさ、全館空調によるヒートショック対策にも取り組んでいます。

先駆的な高福祉国であるスウェーデンに由来するスウェーデンハウスでは、バリアフリーは当然の仕様であり、基本モジュールは尺モジュールの1.3倍である1,200ミリとしています。温度のバリアフリーや介護型住宅の提案にも取り組んでいるのです。
必要最小限のバリアフリーをとり入れるのか、本格的なバリアフリー住宅とするかによっても選択肢は変わってきますが、まずはバリアフリーに精通したハウスメーカーを探してみてはいかがでしょうか。

まとめ

バリアフリーの基本は転倒や転落、溺水を防止することであり、そのために必要なのは段差をなくすこと、手すりを設置することであるとお伝えしました。
これだけならリフォームでも十分に対応可能ですが、介助する側の立場に立ったプランニングや心理的なバリアフリーに関しては、寝室などのレイアウトにも関わる問題であり、新築でなければ対応できない部分です。
最初から完璧なバリアフリー住宅である必要はありませんが、将来的に車いすや寝たきりの生活になった場合でも家族とのコミュニケーションがとれることを中心として、介助する側にも配慮しながら計画をすすめてください。

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