高気密高断熱の住宅とは、気密性や断熱性を高める工法により、1年中快適に暮らせるよう工夫された住宅のことです。
性能が高く多くのメリットがある一方、結露が発生しやすい、乾燥しやすいなどのデメリットもあります。高気密高断熱住宅を選んで後悔しないためには、メリットとデメリットについて理解しておきましょう。
この記事では、高気密高断熱の住宅について以下の内容を解説します。
- 高気密高断熱住宅で採用される工法
- 高気密高断熱住宅のメリットとデメリット
- 後悔しないためのポイントとおすすめのハウスメーカー
注文住宅を建築しようとしている方は、ぜひ参考にしてください。
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Contents
1.高気密高断熱の住宅とは
高気密高断熱の住宅とは、その名のとおり気密性や断熱性を高めた住宅のことです。
気密性と断熱性を高める工法を施すことで、外気温の影響を受けにくくなり、室温が一定に保たれやすくなります。そのため、1年中快適に過ごしやすいのが特徴です。
なお、高気密高断熱と公式に認められるために、統一された基準があるわけではありません。ハウスメーカーが独自の基準で、高気密高断熱を謳っています。
1-1.気密性を高める工法
そもそも高気密とは、壁や天井などの隙間を減らして空気の出入りを防止することです。外気の影響を受けにくくなり、室内の空気が外に逃げることを防ぎます。
気密性を高める工法には、大きくシート気密とボード気密があります。シート気密は、壁の室内側にポリエチレン製の防湿気密シートを入れて家全体を覆う工法です。壁の内側で気密を確保します。
一方、ボード気密は外壁に用いる構造用面材と柱の間に気密パッキンを入れ、空気を通さないボードを用いる工法です。壁の外側で気密を確保します。
1-2.断熱性を高める工法
断熱性を高めるためには、断熱材を使用して熱の出入りを防ぐことが大切です。断熱性を高める工法は、断熱材を入れる場所によって内断熱と外断熱に分けられます。
内断熱は、断熱材を外壁や室内の壁の間、床、天井などに入れる工法です。一方、外断熱は構造材の外側を断熱材で覆う工法です。
外断熱は、建物全体を断熱材で包むため、内断熱よりも断熱性や気密性が高くなります。しかし、外壁が断熱材によって厚くなり、敷地面積や間取りを圧迫してしまうのが難点です。狭小地や間取りが複雑な場合は、外断熱の施工が難しい可能性があります。
2.高気密高断熱住宅の性能を表す数値
高気密高断熱住宅と認められるために、具体的な基準があるわけではありません。しかし、断熱性能を示すUA値とQ値、気密性能を示すC値のように、断熱性能や気密性能の指標は存在します。
各ハウスメーカーが高気密高断熱住宅について紹介する際は、「UA値〇〇以下」のように記載しています。気密性能や断熱性能を自身で評価できるよう、指標の意味を理解することが大切です。
ここでは、UA値、C値、Q値について解説します。
2-1.UA値
UA値(外皮平均熱還流率)=建物から逃げる熱(W/K)/外皮表面積(m²)=W/m²K
UA値(外皮平均熱貫流率)とは、室内から室外へ逃げる熱量を外皮全体で平均した値のことです。熱の出入りのしやすさを表し、UA値が低いほど熱が外に逃げにくいため断熱性が高いと判断できます。
国土交通省が定める省エネ基準やZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)住宅の基準では、UA値の基準が地域によって定められています。
参照元:国土交通省「 【参考】住宅における外皮性能」
参照元: ZEHの定義(改定版)<戸建住宅>
2-2.C値
C値(相当すき間面積)=家全体の隙間の合計(cm²)/建物の延床面積(m²)=cm²/m²
C値とは、住宅における相当隙間面積のことです。建物全体の隙間面積を延 床面積で割って算出されます。C値が小さいほど、隙間面積が小さいため気密性が高いと判断できます。
C値については、省エネ基準やZEH基準などで基準が定められているわけではありません。しかし、気密性能を示す指標として多くのハウスメーカーが使用しています。
2-3.Q値
Q値(熱損失係数)=建物から逃げる熱量(W/K)/建物の延床面積(m²)=W/m²K
Q値とは、熱損失係数のことです。住宅各部の熱損失量の合計と換気による熱損失量の合計を、延床面積で割って算出されます。Q値が小さいほど、熱損失量が少なく断熱性が高いと判断できます。
Q値も、C値と同様に国によって明確な基準が定められているわけではありません。延床面積で割るため、住宅の形状によっては断熱性を正しく評価できない可能性があります。そのため、断熱性を示す指標としてはUA値の方が多く用いられています。
ここまで、高気密高断熱住宅の詳細や性能を表す数値について解説しました。
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3.高気密高断熱住宅の5つのメリット
ここでは、高気密高断熱住宅のメリットについて解説します。
3-1.室内温度が快適で過ごしやすい
高気密高断熱住宅の大きなメリットは、1年中快適で過ごしやすいことです。
高気密高断熱住宅は、外気の影響を受けにくく、一定の温度を保ちやすいのが特徴です。夏の暑さや冬の寒さが室内に伝わりにくいため、夏は涼しく冬は暖かい住宅を実現できます。
3-2.電気代を節約できる
高気密高断熱住宅は、電気代を節約できるのもメリットです。
極端に寒くなったり暑くなったりしにくいため、冷暖房を強くかけることなく快適な室温をキープできます。
また、気密性が高く室内の空気が逃げにくいため、冷暖房効率がよいのもポイントです。
電気代の節約につながるため、お財布にも地球環境にもやさしい生活を送れるでしょう。
3-3.ヒートショックを予防できる
高気密高断熱住宅は、ヒートショックを予防できるというメリットもあります。
ヒートショックとは、温度差によって血圧が乱高下し、心臓や血管に負担がかかることです。たとえば、暖かい浴室から暖房の効いていない脱衣所に移動した際、ヒートショックになる可能性があります。ヒートショックは心筋梗塞や脳梗塞などを引き起こし、命を落とすこともある危険な状態です。
高気密高断熱住宅なら、家全体の温度を一定に保ちやすいため、ヒートショックのリスクを軽減できます。
3-4.洗濯物が乾きやすい
高気密高断熱住宅は、室内の湿度が低いため洗濯物が乾きやすいのもメリットです。
気密性が高いため、湿度が高い時期も湿気を遮断してくれます。また、冬でも室温が高く相対湿度が低くなるため、乾燥しやすいのが特徴です。
そのため、梅雨の時期や花粉が気になる時期も、生乾きを気にすることなく問題なく室内干しできるでしょう。
3-5.防音効果が高い
高気密高断熱住宅は、気密性が高いため防音効果が高いのもポイントです。
隙間が少ないため室内の音が外に漏れるのを防げ、屋外の音が入ってくるのを遮断できます。また、断熱材には防音効果を持つものもあり、断熱材が音を遮断・吸収してくれます。
小さな子どもやペットがいる家庭や、住宅が賑やかな大通りに面している場合でも、安心して快適に生活できるのが魅力です。
4.高気密高断熱は必要ない?3つのデメリット
一方、高気密高断熱住宅にはデメリットもあります。メリットとデメリットを比較検討したうえで、マイホームを高気密高断熱住宅にするか検討しましょう。
4-1.内部結露対策が必要
高気密高断熱住宅では、内部結露が発生しやすいのがデメリットです。
内部結露とは、室内の暖かい空気が壁の内部に入り込み、冷えて結露になってしまうことです。断熱材を敷く際に、隙間ができることで発生します。内部結露を放置すると、室内にカビが発生しやすくなったり、土台や柱が腐ったりするため注意が必要です。
内部結露を防ぐためには、断熱材を隙間なく敷く必要があります。また、断熱材の室内側に防湿気密シートを貼り、室内の空気が壁の内部に侵入しないようにするのも効果的です。
4-2.建設費用が高くなる
高気密高断熱住宅は、建設費用が高くなりやすいのも難点です。
高気密高断熱住宅の坪単価目安は、43〜75万円程度です。一般的な注文住宅よりも、坪単価が3〜5万円程度高くなる傾向にあります。これは、気密性や断熱性を高めるためには技術力が必要であり、断熱材の材料費もかかるためです。断熱材の種類やオプションによっては、さらに費用がかかる可能性があります。
しかし、高気密高断熱住宅にすることで電気代の節約につながるため、将来的にはお得になるとも考えられるでしょう。また、一定の条件を満たす省エネ性能の高い住宅を建てる場合は、補助金制度を利用できることがあります。
4-3.乾燥対策が必要
高気密高断熱住宅は、乾燥しやすい点にも注意しましょう。
空気が温まると、相対湿度が下がって乾燥を感じやすくなります。高気密高断熱住宅は冬も暖かいため、とくに、冬に乾燥しやすくなるのがデメリットです。
乾燥対策のためには、加湿器を設置する、暖房の設定温度を高くしすぎないなどの方法が有効です。また、洗濯物を部屋干しすることで加湿器代わりになります。
ここまで、高気密高断熱住宅のメリットとデメリット、またその対策をご紹介しました。事前に情報を集めたうえで、計画的にマイホームづくりにとりかかることで、後悔のない理想の間取り設計に繋げられるでしょう。
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5.高気密高断熱住宅で後悔しないためのポイント
以下では、高気密高断熱住宅で後悔しないためのポイントについて解説します。
5-1.ハウスメーカー選びにこだわる
気密性や断熱性の高い住宅を建てるためには、ハウスメーカー選びにこだわりましょう。
住宅の性能は、ハウスメーカーの施工技術や使用する断熱材の種類などに大きく左右されます。ハウスメーカーが提示するUA値やC値などの数値に加え、施工実績も確認しましょう。
また、ZEHに対応しているハウスメーカーを選ぶのも1つの方法です。
5-2.24時間換気システムを止めない
高気密高断熱住宅は気密性が高いため、換気が欠かせません。ハウスダストや化学物質が溜まりやすく、シックハウス症候群になってしまうリスクがあるためです。
住宅には、24時間換気システムが設置されています。換気システムを止めないようにして、常時換気できるようにしましょう。また、ときどき窓を開けて換気することも大切です。
高気密高断熱住宅の場合は、とくに第1種換気方式の24時間換気システムを選びましょう。第1種換気方式は、空気の出入り口にどちらもファンがついており、給気と排気の双方を機械で行えます。換気の効率がよく、空気の流れをコントロールしやすいのがポイントです。
5-3.部屋干しはなるべく早く乾かす
部屋干しをする際は、なるべく早く乾かすようにしましょう。
部屋干しをすると、湿度が10〜20%ほど上昇するといわれています。部屋干しは乾燥対策になる一方、長時間の部屋干しはカビやダニの発生につながるため注意が必要です。
洗濯物をなるべく早く乾かすためには、除湿器やサーキュレーターを活用するのがおすすめです。
5-4.冬場は換気を心がける
冬場は、とくに換気を心がけましょう。寒さのあまり換気が疎かになりがちですが、風邪やインフルエンザのウイルスを溜めないためには換気が欠かせません。24時間換気システムも搭載されていますが、窓を開けて手動で換気することも大切です。
また、冬場は室内と外気温の差で結露が発生しやすいため、定期的な換気で、結露やカビの発生を防ぎましょう。
6.高気密高断熱住宅に強みがあるハウスメーカー
最後に、高気密高断熱住宅に強みがあるハウスメーカーを4つ紹介します。
ハウスメーカー | 特徴 | 気密性や断熱性の基準(ハウスメーカーが算出した平均値) |
---|---|---|
一条工務店 |
外壁、天井、床などを高性能な断熱材で覆う「外内ダブル断熱構法」を採用している 外気温の影響を受けやすい開口部にも断熱性が高い住宅部材を採用し、高断熱を実現している |
UA値:0.25ワット(1平方メートルケルビンあたり) Q値:0.51ワット(1平方メートルケルビンあたり) |
スウェーデンハウス |
壁や床の継ぎ目に断熱材を入れ、その上を防湿気密フィルムで覆って高気密高断熱を実現している スウェーデンの現地工場における厳しい品質管理をクリアした断熱材を使用している |
C値:0.64平方センチメートル(1平方メートルあたり) Q値:1.18ワット(1平方メートルケルビンあたり) |
三井ホーム |
外壁の枠組に2×6材を使用し、従来の約1.6倍厚い断熱材を充填している 密閉度が高いプレミアム・モノコック構法を採用している 壁内に木材を多く使用しているため、木が持つ調湿機能が期待できる |
– |
アイフルホーム |
高性能断熱パネル「HQP-W」や「HQP」を使用している 開口部から熱が出入りしないよう、家全体の断熱性能のバランスに合わせたサッシを提案している C値の測定を標準で実施し、気密性能報告書を提供している |
C値:0.51平方センチメートル(1平方メートルあたり) UA値(3〜7地域):0.45ワット(1平方メートルケルビンあたり) UA値(1〜2地域):0.39ワット(1平方メートルケルビンあたり) |
参照元:一条工務店「高断熱構造『外内ダブル断熱構法』」
参照元:スウェーデンハウス「高断熱・高気密・計画換気」
参照元:三井ホーム「高断熱・高気密」
参照元:アイフルホーム「断熱仕様」
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まとめ
高気密高断熱住宅は、気密性や断熱性が高く、1年中快適な室温を保ちやすい住宅のことです。電気代の節約や省エネにつながるほか、部屋干しがしやすい、防音性能が高いなどのメリットがあります。
一方、通常の注文住宅よりも費用が高くなりやすい、内部結露や換気対策が必要であるなどのデメリットもあります。
高気密高断熱住宅で後悔しないためには、事前にデメリットや対策を理解したうえで、信頼できるハウスメーカーを選ぶことが大切です。ハウスメーカーが提示する性能の基準や施工実績をチェック、比較検討して、技術力の高いハウスメーカーに依頼しましょう。
ぜひ、本記事をご参考にしていただき、理想のマイホームを叶えてくださいね。
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