住宅ローン控除(減税)とは、住宅ローンの残高に応じた金額が「所得税」や「住民税」の一部から控除される制度です。
一般的に住宅ローンは借入額が大きく、返済負担も少なくありません。
住宅ローンを借りるなら住宅ローン控除を十分に活用し、家計負担の軽減を目指したいところです。
ただし、控除額や控除期間は、購入する物件の種類によって異なります。
そこで、この記事では以下の内容を解説します。
- 住宅ローン控除の基礎知識
- いくら戻ってくるか(計算方法やシミュレーション)
- 控除金額や申請の流れ、注意点
事前に住宅ローン控除制度の概要を押さえておくことで、家づくりの資金計画を立てやすくなりますよ。
ぜひ最後までご覧になり、お得なマイホーム購入の参考にしてください。
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住宅ローンの基本パターンについて押さえておきたい方は「注文住宅の住宅ローンの流れ」の記事もご覧ください。
Contents
1.住宅ローン控除とは
住宅ローン控除とは、個人が住宅ローンを借り入れてマイホームを購入したときに、最長で13年にわたり住宅ローン残高の0.7%にあたる所得税および、一部住民税の控除が受けられる制度です。
住宅ローンは数千万円の借り入れになることが多く、返済の負担を感じる方も多いのではないでしょうか。
住宅ローン控除を利用すれば節税により可処分所得が増えるため、家計の負担を軽減できます。
2.住宅ローン控除はいくら戻る?【2022年度以降】
住宅ローン控除の利用を希望しているなら、どのくらいの金額が還付されるかは一番気になるところではないでしょうか。
ここからは、住宅ローン控除額の計算方法を解説しながら、いくらくらい控除されるのかシミュレーションしていきます。
2-1.住宅ローン控除の計算方法
住宅ローン控除は、その年の納税額自体から控除が行われる「税額控除」です。
そのため、納税額の基となる所得額から控除が行われる「所得控除」と比較して、節税効果が高いといわれます。
住宅ローン控除の計算式は、以下のとおりです。
住宅ローン控除=年末時点の住宅ローン残高×0.7%
例えば、年末時点の住宅ローン残高が3,000万円の場合をシミュレーションしてみましょう。
年末時点の住宅ローン残高3,000万円×0.7%=住宅ローン控除21万円
控除額は21万円です。
仮にその年の所得税が15万円とすると、15万円の還付金を受けられ、実質所得税額の支払いは0円となります。2-3で詳細を解説しますが、残り7万円は住民税控除にあてられるケースもあります。
なお、住宅ローン控除制度では、住宅の種類ごとに借入限度額が決まっており、年間の最大控除額が決まっています。ローン残高が多い場合も、上限を超えた控除額にはなりません。
次から見ていきましょう。
2-2.最大控除額は住宅の種類で異なる
住宅の種類ごとに決められた最大控除額は、以下のとおりです。
住宅種類 | 借入限度額※ | 年間控除額 |
---|---|---|
長期優良住宅・低炭素住宅 | 5,000万円 4,500万円 |
35万円 31万5,000円 |
ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 3,500万円 |
31万5,000円 24万5,000円 |
省エネ基準適合住宅 | 4,000万円 3,000万円 |
28万円 21万円 |
その他の住宅 | 3,000万円 住宅ローン控除適用なし |
21万円 ― |
※上段:居住開始年が2022年~2023年/下段:居住開始年が2024年~2025年
住宅種類 | 借入限度額 | 年間控除額 |
---|---|---|
長期優良住宅・低炭素住宅・ZEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅 | 3,000万円 | 21万円 |
その他の住宅 | 2,000万円 | 14万円 |
借入限度額 | 年間控除額 |
---|---|
2,000万円 | 14万円 |
新築の省エネ基準適合住宅を2024年に購入した場合、住宅ローン控除における年間借入限度額は3,000万円です。
よって、年間控除額は最大21万円(3,000万円×0.7%)となります。
仮に、5,000万円の住宅ローン残高があったとしても、35万円(5,000万円×0.7%)の控除は受けられません。
なお、環境に配慮した住宅は設備にお金がかかり、一般的に初期費用が高くなります。
環境にやさしい住宅ほど最大控除額は増えますが、住宅価格が上がる可能性が高いです。
購入するにあたっては、ライフプランに基づいた住宅購入予算を立てたうえで物件を選択することが重要です。
2-3.所得税で控除額が残る場合
2-1のシミュレーションのように、住宅ローン控除額によっては、所得税を控除しても控除額が残るケースがあります。
その場合は、残った控除額を「住民税」から差し引くことが可能です。
住民税の控除額は、以下の式で計算します。
住民税の控除額=所得税における住宅ローン控除額-所得税額
また、差し引く金額は、以下のいずれか小さい額のほうです。
以下のうちいずれか小さい額のほう
- 所得税で控除しきれなかった住宅ローン控除額
- 前年分の所得税の課税所得金額の5%(上限97,500円)
以下の場合の住民税控除額をシミュレーションしてみましょう。
- 所得税15万円
- 住宅ローン控除額21万円
- 前年分の課税所得金額:450万円
21万円-15万円=6万円(所得税で控除しきれなかった控除額)
450万円の5%=22.5万円(前年分の所得税の課税所得金額の5%)
上記計算では所得税で控除しきれなかった控除額が適用されるため、住民税の控除額は6万円となります。
なお、所得税の控除を受けるには申告をしなければなりませんが、住民税は所得税で申告した内容を市区町村が把握できる仕組みがあるため申告不要です。(4章で解説)
初めての家づくりだと、こういった減税制度の使い方やお金の流れが掴みづらく、不安に思う方もいるかもしれません。
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3.住宅ローン控除を受けるための条件
住宅ローン控除を受けるには、いくつかの条件があります。
物件購入後に住宅ローン控除対象外だとわかっても、買い直すことは容易ではありません。
住宅ローン控除を利用したいと考えているなら、条件をクリアした物件選びやローンの借り入れをすることが重要です。
以下より、物件の種類ごとの条件や、申請者自身の条件について見ていきましょう。
出典:国税庁「No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」 「No.1211-3 中古住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」「No.1211-4 増改築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」
3-1.物件別の条件(新築・中古・増改築)
3-1-1.新築住宅
新築住宅に関する住宅ローン控除の条件は、以下のとおりです。
- 新築工事完了や物件の引き渡しから6ヵ月以内に入居し、控除を受ける年の12月31日まで継続して居住している
- 住宅の床面積が50平米以上で、床面積の2分の1以上が自身の居住用である
- 対象となる住宅に10年以上の住宅ローンがある
- 2つ以上の住宅を所有しているときには、主として控除を受ける人の居住用の住宅と認められている
- 贈与によって取得した住宅ではない
3-1-2.中古住宅
中古住宅とは、買取再販(宅地建物取引業者がリフォームを行い販売した住宅)以外の既存住宅を指します。
中古住宅に関する住宅ローン控除の条件は、新築住宅の条件よりも3つ多いです。
- 新築住宅の住宅ローン控除の条件
- 建築後、使用されたことがある家屋
- 1982年1月1日以降に建築された
- 業者が耐震改修工事をしたか、現行の耐震基準を満たしている
3-1-3.増築・リフォーム
増築・リフォームの住宅ローン控除の条件には、新築住宅の条件よりも2つ多いです。
- 新築住宅の住宅ローン控除の条件
- 控除を受ける人が所有しており、自己が居住する家屋に行う増改築等である
- 補助金等を除く増改築等の額が100万円を超えており、その2分の1以上が自己の居住部分の工事費
なお、増築またはリフォームとして認められる工事は以下に限ります。
- 増改築、建築基準法に規定する大規模修繕または大規模模様替え工事
- マンションなどの専有部分の床または階段、壁の半分以上に行う一定の修繕・模様替え工事
- 家屋やマンションなどの専有部分のうち居室、調理室、浴室、便所、洗面所、納戸、玄関または廊下の一室の床または壁の全部について行う修繕・模様替え工事
- 現行の耐震基準に合わせた耐震改修工事
- 一定のバリアフリー改修工事
- 一定の省エネ改修工事
3-2.申請者自身の条件
申請者自身の条件は、住宅ローン控除を受ける年の合計所得金額が2,000万円以下であることです。
合計所得が2,000万円以上の場合は、住宅ローン控除の対象外となるため注意してください。
合計所得には、給与所得のほか不動産所得や譲渡所得、雑所得などが含まれます。
複数の収入がある方は、事前に合計所得金額を確認しておくとよいでしょう。
合計所得が2,000万円を超える年は住宅ローン控除を受けられませんが、控除適用期間中に所得が2,000万円を下回ったときには再び控除の対象となります。
合計所得が2,000万円前後の方は、所得金額に気を配ることも控除を受けるうえで重要なポイントです。
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4.住宅ローン控除を申請する流れ
住宅ローン控除を受けるには、確定申告による適用の申請が必要です。
- 必要書類を準備する
- 【1年目】確定申告時に申請する
- 【2年目以降】確定申告または年末調整で手続きする
- 手続きを忘れた場合、5年以内に申告を行う
必要書類や申請の流れを事前に確認し、スムーズな申告手続きを目指してください。
以下より上記ポイントを1つずつ解説します。
出典:国税庁「マイホームを持ったとき」
4-1.必要書類を準備する
住宅ローン控除の申請では、いくつかの書類を用意しなければなりません。
必要書類と入手場所は以下のとおりです。
書類の種類 | 入手場所 |
---|---|
確定申告書 | 税務署または国税庁ホームページ (オンライン申告の場合は不要) |
(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書 | 税務署または国税庁ホームページ |
住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書 | 住宅ローンを借り入れている金融機関 |
家屋の登記事項証明書 | 法務局窓口またはオンライン申請システム |
住宅の工事請負契約書の写し又は売買契約書の写し | 工務店または不動産会社 |
源泉徴収票 | 勤務先 |
「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」は、住宅ローンを借り入れている金融機関から郵送されます。
郵送時期は金融機関によって異なりますが、通常10月中旬以降に発送がスタートします。
万が一届かない場合や紛失してしまった場合は、金融機関に問い合わせてください。
「源泉徴収票」は、12月の年末調整終了後に勤務先が発行します。
そのため、一般的には12月の給与明細とともに受け取ることが多いです。
それ以外のタイミングで受け取りたい場合は、会社に申請を行い発行してもらってください。
4-2.【1年目】確定申告時に申請する
住宅ローンの借り入れから1年目の住宅ローン控除申請は、確定申告により行います。
給与所得者など確定申告による納税をしていない方も、申請のための確定申告が必要です。
個人事業主など確定申告による納税を行っている方は、納税とあわせて住宅ローン控除の申請ができます。
医療費控除やふるさと納税の控除などがある人は、まとめて申告してください。
納税とあわせて申請をするなら、入居した年の翌年の2月16日~3月15日(休日の場合は翌営業日)に確定申告を行います。
納税がなく控除など還付金のためだけの確定申告なら、入居した翌年の1月1日から可能です。
確定申告は、以下のいずれかの方法で行います。
- 税務署窓口で提出
- 郵送による提出
- オンライン申請システム(e-Tax)
e-Taxでの申請なら、自宅にいながら申告ができるため手続きの負担を軽減できます。
利用にあたっては、利用者識別番号や電子証明書の取得が必要です。
オンラインでの申告を検討しているなら、事前に登録を済ませてください。
4-3.【2年目以降】確定申告または年末調整で手続きする
2年目以降は、確定申告または年末調整で手続きをします。
個人事業主など確定申告による納税をしている方は、あわせて申告をしてください。
確定申告書に「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書」および「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」を添付して提出すれば、手続きは完了です。
給与所得者など勤務先の源泉徴収により納税を行っている方は、年末調整で手続きをするため確定申告の必要はありません。
税務署から送られる「年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書兼給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書」と金融機関から発送される「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」を勤務先に提出すれば、手続きは完了です。
4-4.手続きを忘れた場合
住宅ローンの控除は、確定申告の期限内に手続きをする必要があります。
しかし、期限を過ぎてしまっても5年以内に申告を行えば、遡って還付を受けられます。
申告漏れに気が付いたら、速やかに手続きを行いましょう。
2年目以降の年末調整を忘れてしまったときには、再度年末調整を行ってもらう必要がるため勤務先に相談してください。
年末調整のやり直しができない場合には、確定申告により控除を受けることもできます。
「源泉徴収票」および「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」を用意し、手続きを進めてください。
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5.住宅ローンの還付金はいつ受け取れる?
住宅ローン控除の還付金は、申告方法によって以下のタイミングで支払われます。
申告方法 | 受け取り |
---|---|
税務署窓口や郵送 | 1ヵ月~1ヵ月半後に指定した口座に振込 |
e-Tax | 約3週間後に指定した口座に振込 |
年末調整 | 一般的に12月または1月の給与に上乗せ |
年末調整による申告の場合、いつ還付金が支払われるかは勤務先によって異なります。
受け取るタイミングを知りたい場合は、勤務先に確認してください。
6.住宅ローン控除額を計算する際の注意点
住宅ローン控除は、その他の控除と比較して節税効果が高い制度といわれます。
金額によっては家計への影響も大きいため、住宅ローン借入時に控除額をシミュレーションする場合もあるでしょう。
しかし、住宅ローン控除額を計算するにあたっては、いくつかの注意点があります。
- 控除額、控除期間は変わる可能性がある
- 繰り上げ返済が適さない場合がある
上記をしっかりと確認し、住宅ローン控除を上手に活用してください。
6-1.控除額、控除期間は変わる可能性がある
注意点の1つ目は、控除額や控除期間は変わる可能性がある点です。
住宅ローン控除は、住宅の種類によって最長10年または13年の控除が受けられます。
しかし、繰り上げ返済などにより、借入期間が住宅ローン控除適用期間の残りよりも短くなると、控除期間も短くなります。
また、控除額が年々少なくなることも知っておきたいポイントです。
住宅ローン控除は、年末の住宅ローン残高を基に計算されます。
通常、住宅ローン残高は毎年減少します。そのため、控除額は1年ごとに少なくなっていくケースが多いことは押さえておくべきです。
6-2.繰り上げ返済が適さない場合がある
注意点の2つ目は、住宅ローン控除適用期間中の繰り上げ返済です。
繰り上げ返済を行うと住宅ローン残高が減少するため、その年に受けられる住宅ローン控除額は小さくなります。
そのため、繰り上げ返済を躊躇する方もいるでしょう。
しかし、住宅ローン控除適用期間中は絶対に繰り上げ返済をしない方がよいかというと、そうともいい切れません。金利によっては、住宅ローン控除の還付金を受け取るよりも、繰り上げ返済によるローン残高の圧縮をした方が有効なケースもあります。
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まとめ
住宅ローン控除は、住宅ローン残高に応じて所得税および一部住民税が控除される制度です。
購入する住宅の種類によって最長10年もしくは13年にわたり、年末の住宅ローン残高×0.7%の所得税還付(上限あり)を受けられます。
住宅ローン控除を受けるには、1年目に確定申告による申請をする必要があります。
2年目以降は確定申告もしくは、年末調整で手続きが可能です。
申告を忘れた場合も、5年以内であれば遡って還付を受けられるため、必ず手続きを行ってください。
なお、住宅ローン控除額や控除期間は、借り入れ状況によって変わります。
特に繰り上げ返済をした場合は、控除額が大きく変わるケースもあるため注意が必要です。
事前にしっかり費用シミュレーションを行い、将来を見通した資金計画を立てておきましょう。