不動産売却で確定申告をする必要があるものの、具体的な方法がわからずに悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
確定申告は自分でもできますが、税理士に依頼することでより簡単に済ませられます。この記事では確定申告を税理士に依頼する費用相場や手順を解説します。
この記事を読めば税理士に依頼する費用負担がわかり、確定申告を自分で行うべきか税理士に依頼するべきかを判断できます。
不動産売却を基礎から詳しく知りたい方は『不動産売却の基本』も併せてご覧ください。
Contents
1.不動産売却時の確定申告を税理士に依頼した場合の費用相場
不動産を売却して利益が出た場合、売却した翌年の2月16日から3月15日の間に確定申告をする必要があります。
確定申告は自分でもできますが、税理士に依頼することでより簡単に済ませられます。
手続きが複雑で申告方法がわからない方や、忙しく時間が割けない方は税理士に依頼しましょう。
依頼費用は税理士によって異なります。
おおよそ10万円が相場ですが、不動産の売却価格によっても異なるため、目安の金額は以下の表を参考にしてください。
売却価格 | 費用相場 |
---|---|
1,000万円以下 | 5〜9万円 |
3,000万円以下 | 9〜12万円 |
5,000万円以下 | 12〜15万円 |
8,000万円以下 | 15〜18万円 |
1億円以下 | 18〜20万円 |
上記は確定申告のみを依頼する場合の金額目安です。
税理士と顧問契約を締結する場合は、別途月額費用などがかかります。
なお、税理士によって費用の内訳は異なります。依頼する際はどのような費用が含まれているのかを確認しましょう。たとえば、以下のような費用が含まれているのが一般的です。
- 書類作成費
- 交通費
- 通信費
- 諸経費 など
諸条件によって税理士事務所のホームページなどに記載されている価格から変動する場合もあるため、事前に確認しておくことをおすすめします。
2.追加費用が発生する場合
税理士に依頼する際は、基本料金以外に追加費用が発生する場合もあります。
例えば、特別控除等の特例を適用する場合です。
不動産売却時には、譲渡所得税等を控除できる特例制度が用意されています。
こうした特例を活用すると不動産売却にかかる税金を抑えられますが、税理士が行う申請手続きが増えるため、追加費用が発生します。
具体的にかかる追加費用の目安は、以下の表を参考にしてください。
利用する特例 | 追加費用 |
---|---|
居住用財産の3,000万円控除の特例 | 2万円 |
被相続人の居住用財産(空家)の3,000万円控除の特例 | 3万円 |
居住用不動産を譲渡したことによる税率軽減の適用 | 1万円 |
特定土地区画整理事業のために売却した場合の2,000万円の特例 | 3万円 |
公共事業のために売却した場合の5,000万円控除の特例 | 3万円 |
居住用財産の譲渡損失の繰越控除 | 2万円 |
居住用不動産の譲渡損失の損益通算 | 3万円 |
3.税理士への依頼費用は安くできる
確定申告を税理士に依頼するとまとまった費用がかかりますが、以下の方法で安く抑えられます。
- 複数の税理士から見積もりを取る
- できることは自分でする
それぞれについて解説します。
3-1.複数の税理士から見積もりを取る
税理士費用を安く抑えるためにも、複数の税理士から見積もりを取りましょう。
同じ作業内容でも税理士によって金額が異なるためです。
見積もりを依頼する際は、基本料金だけでなく費用の内訳まで明示してもらい、最終的にかかる費用で比較しましょう。
また、年明けや確定申告の時期は税理士が忙しく、依頼を受けてもらえないもしくは相場よりも高い価格を提示される場合があります。
費用を安くするためにも、確定申告が必要になると判明した段階で税理士に相談しましょう。
なお、4〜5月は法人の決算期である場合が多く、税理士が忙しい傾向にあります。一般的に6〜11月が税理士の閑散期と言われているため、その時期に相談するのがおすすめです。
3-2.できることは自分でする
税理士に確定申告を丸投げするのではなく、できる作業を自分で行うことで費用を安くできる可能性があります。
税理士から受け取る見積もりの内訳を確認すると、書類作成費や交通費、通信費などの項目があります。いずれかを削減できないか、以下のようなアプローチで交渉してみましょう。
- 必要書類は自分で用意する
- 経費のデータを自分で入力する
- 面談は対面で行わずにオンラインで実施する
- 書類のやり取りは郵送ではなくメールやクラウドストレージを活用する
税理士によっては確定申告でミスが生じないように個人での作業を断られるケースもありますが、まずは相談してみましょう。
4.不動産売却の確定申告を自分でする方は多い
税理士に確定申告を依頼する費用がもったいないと感じる方は、自分で確定申告をしましょう。
不動産売却の確定申告は一般の方でも行えます。
不動産投資と収益物件の情報サイト「健美家」の調査によると、確定申告を自分で行った人は58.8%、税理士に依頼した人は24.8%でした。
多くの方が自分で確定申告を行っていることがわかります。
ただし、この調査の対象は不動産投資をしている方であるため、一般的なマイホーム売却等の経験者とは税金や経費に対する関心度合も異なります。
あくまでも『専門家でなくても確定申告を自分で行う方は多い』という、一つのデータとしてとらえてください。
なお、会社員の方にとって馴染みの薄い確定申告ですが、それほど難しいものではありません。
わからない単語などを調べながら進めれば問題なく行えます。
確定申告の方法はインターネットで簡単に調べられることに加え、税務署の窓口や無料相談会でも教えてもらえるため、費用を抑えたい方は自分で申告してみましょう。
5.確定申告を税理士へ依頼するときの手順
確定申告を税理士に依頼すると決めた方は、以下の手順で進めましょう。
- 見積書の作成依頼
- 確定申告書の作成・書類送付
- 内容確認
- 資料返却・報酬支払
それぞれについて解説します。
5-1.見積書の作成依頼
不動産の売却で確定申告が必要と判明した際は、税理士に見積書の作成を依頼しましょう。
できるだけ複数の税理士に相談して、費用を比較するのがおすすめです。
なお、確定申告書類を作成するまでに時間がかかるため、余裕を持って依頼する必要があります。
年が明けると税理士は確定申告作業で忙しくなり対応できない可能性もあるので、なるべく年末までには依頼しておきましょう。
5-2.確定申告書の作成・書類送付
依頼する税理士が決まった後は、確定申告書の作成に必要な以下の資料を送付します。
- 登記簿謄本
- 売買契約書
- 不動産を購入した際の各種領収書
- 不動産を売却した際の各種領収書
- 通帳の写し
- 源泉徴収票
これらの資料を見て税理士は確定申告書類を作成します。
上記以外にも提出を求められる場合があるため、必要に応じて書類を準備しましょう。
なお、書類は直接会って渡す場合もありますが、データで送るもしくはコピーを作成して郵送するのが主流です。
5-3.内容確認
税理士が確定申告書類を作成した後は自分で内容を確認し、問題がなければ税務署へ書類を提出します。
税理士に提出してもらうのが一般的ですが、自分で提出する場合もあるため税理士に確認しましょう。
また、税金の納付がある場合は金額と納税時期を確認し、以下から納付方法を選びます。
- 指定した金融機関の預貯金口座から振替納税
- e-Taxによる口座振替
- インターネットバンキングやATMを利用して納付
- クレジットカードを利用して納付
- スマートフォンアプリを利用して納付(上限30万円)
- QRコードによりコンビニエンスストアで納付(上限30万円)
- 現金で納付
参考:国税庁.”【税金の納付】”.(参照2024-01-19)
納付期限を過ぎると延滞税などのペナルティが課されるため注意しましょう。
5-4.資料返却・報酬支払い
確定申告が完了すると税理士に預けていた書類が返却されます。
このタイミングで税理士に費用を支払うケースが一般的です。費用の支払いが終わった時点で一連の手続きが完了します。
6.譲渡所得が計算できれば自分で確定申告できる
確定申告を税理士に依頼する手順について解説しましたが、譲渡所得の計算さえできれば自分で確定申告するのも難しくありません。
確定申告を自分で行う際は以下の流れで進めていきますが、中でも3番目の申告書の作成(譲渡所所得や譲渡所得税の計算)が最も大変に感じるためです。
- 確定申告に必要な書類を準備する
- 申告書や付表、計算書等を準備する
- 申告書を作成する
- 提出する書類を確認する
- 申告書を提出する
- 納税するまたは還付を受ける
譲渡所得は売却で得た利益のことで、単純な売却金額とは違います。
売却金額から、購入にかかった費用や、売却にかかった費用などを差し引いても求めます。
この際、減価償却の計算も必要になるため、一見煩わしく感じるでしょう。
ただ、譲渡所得の計算はWEB上の記事や動画を見ながら行えば誰にでもできますし、譲渡所得さえ計算できれば税金の算出もさらに簡単です。
申告書の書き方で悩まれる方もいますが、e-Tax(電子申告)を利用すると、初めての方でも直感的な操作で申告書を作成できます。
また、確定申告時期になると行われる無料相談会や、税務署の窓口でも作成、申告の指南を受けられます。
以下では、譲渡所得と譲渡所得税の計算について簡単に解説いたします。
これらの内容が理解できそうなら、自分で確定申告をしてみることを検討してみましょう。
説明の後には、より詳しい記事へのリンクも用意しております。
6-1.譲渡所得の計算
不動産売却における譲渡所得とは、売却によって得た利益を指します。
譲渡所得は以下の様に計算します。
それぞれの用語の意味は以下の通りです。
- 譲渡価額:売却価格、売却金額
- 取得費:購入時の諸費用の合計から減価償却費を差し引いたもの
- 譲渡費用:売却時の諸費用
譲渡価格は、売却価格や売却金額と同じものです。
大まかには、譲渡価格から経費を差し引いた金額が譲渡所得になります。
まず取得費は、売却した不動産を購入するためにかかった金額です。
不動産自体の購入費や、購入にかかった仲介手数料、登記費用などが取得費になります。
ただし、建物は経年劣化するため、当時と今とで価値が異なります。
そのため、建物の購入費は減価償却相当分を差し引いた金額を取得費とします。
減価償却については、困惑しやすいためこの記事での解説を省略します。
譲渡費用は、売却するためにかかった費用です。
例えば仲介手数料や、印紙税などが譲渡費用にあたります。
例えば、譲渡価格3,000万円、取得費2,200万円、譲渡費用300万円であれば、譲渡所得は2,500万円になります。
6-2.譲渡所得税の計算
譲渡所得税は不動産の売却益(譲渡所得)に課される税金であり、計算式は以下の通りです。
譲渡所得税は所得税(復興特別所得税含む)と住民税で構成されています。
計算式は単純ですが、税率は所有期間によって異なる点に注意しましょう。
売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えている場合は「長期譲渡所得」、5年以下の場合は「短期譲渡所得」に該当します。
それぞれの税率は以下の表の通りです。
譲渡所得の区分 | 税率 |
---|---|
短期譲渡所得(所有期間5年以下) | 39.63%(所得税30.63%+住民税9%) |
長期譲渡所得(所有期間5年超え) | 20.315%(所得税15.315%+住民税5%) |
※2037年(令和19年)までは、復興特別所得税として所得税額×2.1%が課されます。
短期譲渡所得と長期譲渡所得で税率が2倍ほど異なります。不動産の売却を検討するうえで重要なポイントとなるため所有期間は必ずチェックしましょう。
長期譲渡所得の判定タイミングは「不動産を購入してから1月1日を6回迎える」と、考えるのがわかりやすいのでおすすめです。
譲渡所得と譲渡所得税の詳しい計算方法は『 不動産売却にかかる税金とは?控除や譲渡所得の計算方法 』の記事をご覧ください。
6-3.各種特例の適用について
「居住用財産の3,000万円特別控除」や「譲渡損失の損益通算」などの特例の適用を受けるには、確定申告時に申請する必要があります。
申請を怠ると控除が適用されないため注意しましょう。
たとえば、マイホームを売却した際の譲渡所得が1,000万円の場合、居住用財産の3,000万円特別控除の適用を受けると非課税になります。
しかし、控除が適用されるかどうかは確定申告で判定されるため、まずは確定申告をしなければなりません。
稀に「非課税枠の範囲だと思い確定申告をしなかった」というケースがありますが、この場合控除は適用されずまとまった額の税金を納めることになります。
損をしないためにも必ず確定申告時に申請しましょう。
- 「不動産を売りたいけど、どうしたらいいか分からない方」は、まず不動産会社に相談を
- 「不動産一括査定」なら複数社に査定依頼でき”最高価格(※)”が見つかります ※依頼する6社の中での最高価格
- 「NTTデータグループ運営」のHOME4Uなら、売却に強い不動産会社に出会えます
この記事のポイントまとめ
不動産売却時の確定申告を税理士に依頼した場合の費用相場は約10万円です。しかし、不動産の売却価格や依頼する税理士によって費用が異なる点に注意しましょう。
詳しくは「1.不動産売却時の確定申告を税理士に依頼した場合の費用相場」をご覧ください。
税理士に依頼する際は、基本料金以外に追加費用が発生する場合もあります。たとえば特別控除の適用を受ける場合です。特別控除の申請では各種書類の作成などで手続きが増えるため、追加費用が発生します。
詳しくは「2.追加費用が発生する場合」をご覧ください。
確定申告を税理士に依頼するとまとまった費用がかかりますが、以下の方法で安く抑えられます。
- 複数の税理士から見積もりを取る
- できることは自分でする
詳しくは「3.税理士への依頼費用は安くできる」をご覧ください。
不動産売却の確定申告を自分で行う方は数多く存在します。実際に不動産投資と収益物件の情報サイト「健美家」の調査によると、確定申告を自分で行う方の割合は58.8%です。
ただし、この調査の対象は不動産投資を行う方であるため、居住用不動産の売却と比べると乖離が生じる可能性がある点にはご留意ください。
詳しくは「4.不動産売却の確定申告を自分でする人は多い」をご覧ください。
確定申告を税理士へ依頼するときの手順は以下の通りです。
- 見積もりの作成依頼
- 確定申告書の作成・書類送付
- 内容確認
- 資料返却・報酬支払
詳しくは「5.確定申告を税理士へ依頼するときの手順」をご覧ください。
譲渡所得さえ計算できれば一般の方でも確定申告できます。
確定申告の手続きの仕方は無料相談会や税務署の窓口でも教えてもらえるためです。また、e-Tax(電子申告)を利用すると、初めての方でも直感的な操作で確定申告ができます。
費用を抑えて確定申告をするためにも、譲渡所得の計算方法を理解しましょう。
詳しくは「6.譲渡所得が計算できれば自分で確定申告できる」をご覧ください。