「建ぺい率」とは、建物を上から見て、土地のうち何割が建物を占めているか、といった敷地面積に対する「建築面積」の割合を指します。
建ぺい率は土地によって制限が定められており、建ぺい率が大きいほど、建物に使える面積は広くなるため、土地自体は同じ大きさでも、建ぺい率によって家自体の面積が変わることがあります。
同じように、家自体の面積に影響する制限には、「容積率」や「高さ制限」といったものがあり、それぞれの言葉の意味は下記のとおりです。
用語 | 意味 |
---|---|
建ぺい率 | 敷地面積に対する建物面積の割合 |
容積率 | 敷地面積に対する延床面積の割合 |
高さ制限 |
|
新築住宅を建てる際には、土地によってさまざまな制限が生まれるため、慎重に土地を選んだり、住宅プランを練ったりする必要があります。
- 建ぺい率とは
- 容積率とは
- 高さ制限とは
「専門用語は難しそう…」と感じるかもしれませんが、要点を押さえておけば、より納得感のいく土地購入や住宅プラン作成が叶うはずですよ。理想のマイホームのために、ぜひ参考にしてください。
家を買うと決めたときに、まずやるべきことが知りたい方は「家を買う」の記事もご覧ください。
Contents
1.「建ぺい率」とは防災・風通しのための制限
1-1.建ぺい率の意味
建ぺい率とは敷地面積に対する建築面積の割合を指します。
敷地面積:建物が建っている土地全体の面積
建築面積:建物の外壁や柱の中心線で囲まれた面積
建築面積は、建物を真上から見た時の面積と考えるとわかりやすいでしょう。
せっかく家を建てるのだから、「土地の広さを最大限活かして家を建てたい」という方も多いでしょうが、空地のない建ぺい率が高い家は、防災・風通しの面で好ましくないといわれています。
そのため、建築基準法により建ぺい率に制限があるのです。
1-2.建ぺい率の計算方法
建ぺい率の計算方法
建築面積÷敷地面積×100
例えば、100平米の土地に建築面積50平米の家を建てる場合は、以下のように計算できます。
例
50平米÷100平米×100=建ぺい率50%
仮に建ぺい率30%の100平米の土地があった場合、計算方法は「建築面積=100平米÷100×30%」となり、建築面積は最大でも30平米。土地の3割しか建物を建てられません。
しかし、庭や駐車場を広く作れる、ほかの住宅との距離感が保たれ開放感があるといったメリットがあります。
建ぺい率はその土地によって30〜80%で定められています。
新たに土地を購入する際には建ぺい率を把握して、どのような建物を建てられるか、どれぐらいの家の広さでどのような居住環境が実現できるのかについても考えてみましょう。
1-3.用途地域別の「建ぺい率」一覧と調べ方
建ぺい率はそれぞれの土地に対して個別に決められている訳ではなく、「用途地域」という13種類のエリア指定によって決められています。
用途地域は、計画的な市街地を形成することを目的に定められており、用途地域ごとに特徴が異なります。
用途地域 | 建ぺい率(%) | 特徴 |
---|---|---|
第一種低層住居専用地域 | 30・40・50・60 | 低層住宅のための地域。小規模店舗や事務所兼自宅は建築可能 |
第二種低層住居専用地域 | 30・40・50・60 | 主に低層住宅のための地域。150平米までの店舗は建築可能。 |
田園住居地域 | 30・40・50・60 | 営農環境と住環境の調和を図る地域。 |
第一種中高層住居専用地域 | 30・40・50・60 | 中高層住宅のための地域。病院や大学などを建築可能。 |
第二種中高層住居専用地域 | 30・40・50・60 | 主に中高層住宅のための地域。1,500平米までの店舗を建築可能。 |
第一種住居地域 | 50・60・80 | 住居の環境を守るための地域。3,000平米までの店舗やホテルを建築可能。 |
第二種住居地域 | 50・60・80 | 主に住居の環境を守るための地域。店舗やホテル、カラオケを建築可能。 |
準住居地域 | 50・60・80 | 主に幹線道路沿いの地域。自動車関連施設などの建築が可能。 |
近隣商業地域 | 80 | 周囲の住民が日用品の買物などをするための地域。小規模な工場も建築可能。 |
商業地域 | 60・80 | 銀行、映画館、飲食店、百貨店などが集まる地域。 |
準工業地域 | 50・60・80 | 主に軽工業の工場やサービス施設等が立地する地域。 |
工業地域 | 50・60 | どんな工場でも建てられる地域。学校、病院、ホテルなどは建築不可。 |
工業専用地域 | 30・40・50・60 | 工場のための地域。住宅、店舗、学校、病院、ホテルなどは建築不可。 |
住宅を建てる際には、住居系の地域で建てるケースがほとんどですが、住居系地域の中でも建ぺい率は異なるため、注意しましょう。
なお、各土地の建ぺい率は以下の2つの方法で調べられます。
- インターネットで確認する
- 役所に問い合わせる
例えば東京都港区の港区都市計画情報提供サービスでは、用途地域が色別に記載されており、土地を選択することで建ぺい率について簡単に調べられます。
自治体によってはインターネットで検索できない場合もあるため、その場合は直接役所に問い合わせてみてください。
1-4.建ぺい率が緩和されるケース:立地や建物の防火構造が条件を満たす
立地や建物の防火構造が条件を満たす場合には、建ぺい率が緩和されます。
先述のとおり、建ぺい率の制限目的は、防災の観点にもあります。
建ぺい率は建物同士の距離に影響を与えるため、火災の際にほかの建物に延焼するのを防止する役割があるのです。
建ぺい率が80%のエリアで、防火地域内にある耐火建築物は建ぺい率が100%に緩和
また、建ぺい率が80%以外のエリアの場合、以下の要件のどちらかを満たすことで建ぺい率が+10%、いずれも満たすことで+20%の緩和が受けられます。
- 防火地域内にある耐火建築物(同等以上の延焼防止性能を有するものを含む)または、準防火地域内にある耐火建築物・準耐火建築物(同等以上の延焼防止性能を有するものを含む)
- 特定行政庁の指定した角地にある建物
なお、角地の規定は自治体によって異なるため、実際に角地の条件を満たすかを事前に確認しましょう。
参照:国土交通省「 『建築基準法の一部を改正する法律案』の概要(平成30年3月6日閣議決定)」
以上が、建ぺい率に関する基礎知識です。
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2.「容積率」とは快適な人数で住むための制限
2-1.容積率の意味
容積率とは、敷地面積に対する延床面積の割合を指します。
敷地面積:建物が建っている土地全体の面積
延床面積:建物の床面積の合計の面積
容積率は、よく「敷地面積に対する3次元空間の割合」と表現されることもあります。
容積率の制限がある理由は、その土地に適した人数で快適に暮らすためです。
例えば、1か所のエリアに階層の多い住宅ばかりが密集し、住人が多すぎる状態になると、単純に下水や周辺道路の利用人数も増え、インフラの処理が追い付かなくなります。
こうした観点の一定の住みやすさを確保するために、容積率の制限があるのです。
2-2.容積率の計算方法
容積率の計算方法
延床面積÷敷地面積×100
例えば、100平米の土地に延床面積100平米の家を建てる場合は、以下のように計算できます。
例
100平米÷100平米×100=容積率100%
仮に容積率200%の100平米の土地があった場合、計算方法は「延床面積=100平米÷100×200%」となり、建てられる最大の延床面積は200平米です。
1-2で解説した建ぺい率と組み合わせて考えてみましょう。
建ぺい率60%・容積率200%の100平米の土地がある場合、以下のように計算できます。
100平米÷100×建ぺい率60%=建築面積60平米
100平米÷100×容積率200%=延床面積200平米
しかし、実際には建てられる建物の高さが決められているケースもあるため、どのエリアであっても容積率の限界まで建てられる訳ではないことに注意しましょう。
2-3.用途地域別の「容積率」一覧と調べ方
容積率も建ぺい率同様、それぞれの土地に対して個別に決められている訳ではなく、「用途地域」という13種類のエリア指定によって決められています。
用途地域は、計画的な市街地を形成することを目的に定められており、用途地域ごとに特徴が異なります。
用途地域 | 容積率(%) | 特徴 |
---|---|---|
第一種低層住居専用地域 | 50・60・80・100・150・200 | 低層住宅のための地域。小規模店舗や事務所兼自宅は建築可能 |
第二種低層住居専用地域 | 50・60・80・100・150・200 | 主に低層住宅のための地域。150平米までの店舗は建築可能。 |
田園住居地域 | 50・60・80・100・150・200 | 営農環境と住環境の調和を図る地域。 |
第一種中高層住居専用地域 | 100・150・200・300・400・500 | 中高層住宅のための地域。病院や大学などを建築可能。 |
第二種中高層住居専用地域 | 100・150・200・300・400・500 | 主に中高層住宅のための地域。1,500平米までの店舗を建築可能。 |
第一種住居地域 | 100・150・200・300・400・500 | 住居の環境を守るための地域。3,000平米までの店舗やホテルを建築可能。 |
第二種住居地域 | 100・150・200・300・400・500 | 主に住居の環境を守るための地域。店舗やホテル、カラオケを建築可能。 |
準住居地域 | 100・150・200・300・400・500 | 主に幹線道路沿いの地域。自動車関連施設などの建築が可能。 |
近隣商業地域 | 100・150・200・300・400・500 | 周囲の住民が日用品の買物などをするための地域。小規模な工場も建築可能。 |
商業地域 | 200・300・400・500・600・700・800・900・1000・1100・1200・1300 | 銀行、映画館、飲食店、百貨店などが集まる地域。 |
準工業地域 | 100・150・200・300・400・500 | 主に軽工業の工場やサービス施設等が立地する地域。 |
工業地域 | 100・150・200・300・400 | どんな工場でも建てられる地域。学校、病院、ホテルなどは建築不可。 |
工業専用地域 | 100・150・200・300・400 | 工場のための地域。住宅、店舗、学校、病院、ホテルなどは建築不可。 |
住宅を建てる際には、住居系の地域で建てるケースがほとんどですが、住居系地域の中でも容積率は異なるため、注意しましょう。
なお、各土地の容積率は以下の2つの方法で調べられます。
- インターネットで確認する
- 役所に問い合わせる
例えば東京都港区の港区都市計画情報提供サービスでは、用途地域が色別に記載されており、土地を選択することで容積率について簡単に調べられます。
自治体によってはインターネットで検索できない場合もあるため、その場合は直接役所に問い合わせてみてください。
2-4.容積率が制限・緩和されるケース
土地や建物によっては、指定されている容積率が制限、もしくは緩和されるケースがあります。
容積率が緩和される場合は問題ありませんが、制限を受ける場合は、建てられる建物が小さくなってしまうため、事前に制限を受ける土地かどうかを確認しましょう。
【制限されるケース】前面道路の幅員が狭い
土地の前面道路(土地に接する道路)の幅員が一定基準以下の場合は、容積率が制限されてしまいます。
具体的には前面道路が12m未満の場合は、容積率は以下の計算式で求めます。
前面道路の幅×0.4(非住居系では0.6)×100%=容積率
前面道路が4.5mの場合の計算式は以下のとおりです。
4.5×0.4×100%=180%
つまり、指定容積率が200%のエリアであっても、前面道路が4.5mの場合の容積率は180%に制限されてしまいます。
また、前面道路が4m未満の場合は土地部分を道路に提供するセットバックが必要です。
セットバックを行うことで敷地面積が小さくなるため、結果として建ぺい率・容積率が制限されてしまいます。
土地を購入する際には道路との関係も重視して確認しましょう。
参照:国土交通省「 建築基準法制度概,P55」
【緩和されるケース】容積率緩和の特例を利用する
容積率緩和の特例を利用することで、本来の容積率よりも大きい建物を建てられます。
住宅を建てる際には、容積率に算入されない箇所があるため、どの箇所が容積率に算入されないのかを踏まえて建築プランを考えましょう。
容積率緩和の特例を利用できる箇所は以下のとおりです。
箇所 | 概要 |
---|---|
地下室 | 住宅として使用する床面積の1/3以下であれば不算入 |
ロフト、屋根裏収納 | 天高140cm以下かつ設置している直下の床面積の1/2までであれば不算入 |
車庫、ガレージ | 建物の床面積の1/5までであれば不算入 |
バルコニー、ベランダ | 外壁から2mまでは不算入 |
地下室を設けることで、住宅の延床面積を増やせますが、エリアによっては建築が困難であったり、多くの費用がかかったりするケースもあるため、建築時には費用についても確認する必要があります。
また、ほかの箇所においても容積率緩和を受けるためには細かな条件があるため、ハウスメーカーと相談してみましょう。
しっかりとした実績があるハウスメーカーであれば、こうした緩和テクニックで適切に対応してくれるはずなので、安心してくださいね。高い実績や豊富な知識を持ったハウスメーカーを探すなら、HOME4U 家づくりのとびら プラン作成依頼サービスをご活用ください。
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4.建ぺい率・容積率の注意点
建ぺい率・容積率には以下のような注意点があります。
これから土地を探す方は特に注意して、土地探しを行ってくださいね。
それぞれについて解説します。
4-1.異なる2つの用途地域にまたがる場合は「面積の比率」に注意
敷地が異なる2つの用途地域にまたがる場合は、面積の比率に注意しましょう。建ぺい率・容積率は、どちらかのエリアの建ぺい率が適用される訳ではなく、面積割合に応じて計算されます。
仮に建ぺい率が150%のエリアに150平米、200%のエリアに50平米ずつ属する200平米の土地がある場合、計算式は以下のとおりです。
どちらのエリアにどのぐらいの割合が属しているかがポイントになります。
4-2.違反建築物は資産価値が落ちる
定められた建ぺい率・容積率をオーバーした建物の場合、違反建築物として扱われ、金融機関の融資を受けるのが困難になります。
建築時には建築確認や完了検査があるため、特に問題にはなりませんが、建築後に増改築をする場合などは注意しましょう。
違反建築物は資産価値が落ちることに加え、融資が受けにくいため、将来売却をする際に売却できない危険があります。
5.建ぺい率・容積率以外に知っておくべき4つの高さ制限
建ぺい率・容積率について解説しましたが、注文住宅を建てる際には、建物の高さに関する制限についても考慮する必要があります。
ここからは建物の高さに関する代表的な4つの規制について解説します。
それぞれの規制内容を理解したうえで、土地を購入しましょう。
5-1.絶対高さ制限
絶対高さ制限とは、第一種低層住居地域、第二種低層住居地域、田園住居地域に設けられている制限です。
低層住居専用の地域であるため、10mもしくは12mを超える建物は建てられません。仮に容積率があまっている場合であっても絶対高さ制限によって建てられる高さが定められているため、建物を上に伸ばすことが難しく、容積率を十分に活かせないケースがあります。
5-2.高度地区制限
高度地区制限とは、建築物の最高限度もしくは最低限度の高さを決める制限です。
最高限度の場合は日照や採光、通風の確保を目的としており、最低限度の場合は、有効な土地活用を目的としています。
なお、高度地区の制限は全国共通の規定がある訳ではなく、自治体によって決められています。
5-3.斜線制限
斜線制限とは建物の高さを規制するための制限です。道路境界線や隣地境界線といった一定の地点から斜めに線を引き、その範囲内に収まるように建物を建てなければなりません。
斜線制限のなかでも、「北側斜線」「道路斜線」「隣地斜線」と種類が分かれています。
隣地斜線は高さ住居系の場合20mを超える建物にしか適用されないため、戸建て住宅の場合はあまり気にする必要はありませんが、北側斜線、道路斜線には注意しましょう。
斜線制限を受ける場合は、建物の3階部分の面積が削られるなど建築プランに影響が出ます。
5-4.日影規制
日影規制とは、周囲の日照を確保するために、冬至の日を基準に一定時間以上日の当たらない場所を作らないようにする規制です。
3階建て住宅や天井の高い住宅を建てる場合に規制を受ける可能性があるため、土地を検討する段階でハウスメーカーに相談しましょう。
まとめ
本記事では、土地の建ぺい率や容積率の計算方法や各種制限の種類について解説しました。
土地は建ぺい率と容積率によって建てられる建物の大きさが変わります。また、絶対高さ制限や斜線制限によって建築プランに影響が出るため、土地の制限を理解したうえで土地を選びましょう。
気になる土地が見つかった際には、必ずハウスメーカーに建築プランを作成してもらい、理想の住宅が建てられるかを事前に確認する必要があります。
この記事のポイント
建ぺい率とは、敷地面積に対する建築面積の割合を指します。
建物を真上から見た時の面積と考えるとわかりやすいでしょう。
住宅の防災・風通しに配慮し、制限されています。
建ぺい率の詳細や計算方法、緩和されるケースなどは「1.「建ぺい率」とは防災・風通しのための制限」をご覧ください。
容積率とは、敷地面積に対する延床面積の割合を指します。
「敷地面積に対する3次元空間の割合」と表現されることも多いです。
その土地のインフラを整える意味で制限されます。
「2.「容積率」とは快適な人数で住むための制限」では、容積率の詳細や計算方法、制限・緩和されるケースについて解説しています。
100平米÷100×建ぺい率60%=建築面積60平米
100平米÷100×容積率200%=延床面積200平米
詳細は「2-2.容積率の計算方法」でお伝えしています。
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(ハウツー)
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