賃貸物件を高く売却するコツとは?手順・税金について徹底解説!

賃貸物件を高く売却するコツとは?手順・税金について徹底解説!

一棟賃貸マンションや区分所有マンション、アパート、戸建て賃貸、店舗、ビルなどの賃貸物件の売却を予定している方は、少しでも高く売りたいと考えている人も多いのではないでしょうか。

賃貸物件の主な買主は「投資家」ですので、投資家を意識した売り方を意識することが必要です。すなわち、投資家が検討しやすい資料の準備や管理方式の切り替え、修繕対応等を実施しておくことが高く売却するコツです。

例えば、ほぼ空室の物件の場合は、入居者を立退かせてから売却した方が売却価格は高くなります。また、入居者や管理会社などの第三者も関わっているため、入居者等への対応の仕方を知ることも必要となります。賃貸物件を高く売るには、状況に応じて売り方を変えることが必要です。

この記事では賃貸物件の売却について解説します。賃貸物件を高く売る方法や、売却の手順、消費税、賃貸物件を買換えたときに使える税金特例についても紹介します。ぜひ最後までご覧ください。

マンションの売却について基礎から詳しく知りたい方は『マンション売却で失敗・損しないための注意点』『マンション売却の流れ』も併せてご覧ください。

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1. 賃貸物件の価格の決まり方

最初に賃貸物件の価格の決まり方について解説します。

1-1. 収益価格は賃料と利回りで計算される

賃貸物件は、投資家が主な購入者となります。投資家は、投資採算性を重視して購入の可否を判断するのが基本です。

不動産の価格の中で、投資採算性を反映した価格は「収益価格」と呼ばれます。収益価格は、賃料から固定資産税等の費用を差し引いた純収益を利回りで割ることで求められます。

【賃貸物件の価格】

収益価格 = 純収益÷利回り
     = (賃料-費用)÷利回り

収益価格は、賃料の高い物件ほど分子が大きくなり価格が高くなります。また、築年数が浅い物件のような修繕費がほとんどかからない物件も、分子が大きくなり価格が高くなります。一方で、都市部の物件のように利回りが低い物件は分母が小さくなり価格が高くなるという関係です。

なお、金利が低い時期は、投資家が要求する利回りも低くなります。利回りが低くなると、分母が小さくなるため、収益価格は高くなります。近年は、マイナス金利政策もあり、総じて低金利の状態です。

区分マンション 利回り・価格の推移(登録)

〔出典〕PDF国土交通省(令和3年1月28日):「不動産価格指数、住宅は前月比 0.4%上昇、商業用は前期比 1.7%下落」

ここ数年、賃貸物件は高く売れる傾向が続いていました。2020年以降の新型コロナ流行の影響が懸念されましたが、上記調査などから一棟マンション・アパートの価格には大きな影響は見られないといえるでしょう。売りどきのチャンスをよく見極めて売却するようにしましょう。

1-2. ほぼ満室物件の価格

賃貸物件は、収益価格をベースに取引されることが最も高く売却できるパターンです。よって、賃貸物件は、「満室」または「ほぼ満室」の状態で売却することが基本です。ほぼ満室の物件は、正常な賃貸物件とみなされますので、収益価格をベースに取引されます。

できれば満室であることが望ましいですが、アパートなどは1~2室が空室であっても売却はできます。

1-3. ほぼ空室物件の価格

賃貸物件で入居率が1~2割程度しかなく、ほぼ空室物件の場合には価格が非常に安くなります。ほぼ空室物件は正常な賃貸物件とは言い難く、収益価格では取引されません。ほぼ空室物件は、「売主で空室にしてから売却する」ことが高く売るコツになります。

理由として、ほぼ空室物件の価格は、相当に老朽化が進んだ物件であることが多いです。老朽化が進んだ物件は、取り壊しを前提とした価格で取引されることが通常です。取り壊しを前提とした価格は、取り壊した後の状態が更地となるため、価格は更地価格から取り壊し費用を控除した価格水準で取引されます。

【取り壊しを前提とした価格】

取り壊しを前提とした価格 = 更地価格-取り壊し費用

さらに取り壊し前提の場合でも、中途半端に入居者が残っている状態だと、買主が購入後に立ち退きを行う必要がでてきます。よって、入居者が残っている場合には、上記の取り壊しを前提とした価格から、立ち退き料の減額を見込んだ価格となります。

【立ち退きも必要となる価格】

立ち退きも必要となる価格 = 更地価格-取り壊し費用-立ち退き料

立ち退き料については、交渉してみないとどれくらいかかるか分からないため、中途半端に入居者が残った物件の購入は買主にとって大きなリスクです。そのため、ほぼ空室物件の場合は、売却そのものが非常に困難となります。仮に売却できたとしても、立ち退き料の部分が減額要因となるため、価格は相当に低いです。

以上から、ほぼ空室の物件は、売主で空室にしてから売却することが高く売るコツとお分かりいただけるでしょう。

1-4. 管理方式と価格の関係

売却価格は管理方式とも関係があります。アパート等の管理方式には、主に「管理委託」と「パススルー型サブリース」、「家賃保証型サブリース」の3つがあります。

管理方式 概要
管理委託 管理会社に管理の委託契約をし、建物オーナーと入居者が直接賃貸借契約を締結する方式。空室に応じて収入は変動する。
パススルー型サブリース 管理会社に賃貸し、入居者は管理会社が転貸する方式。入居中の賃料から一定料率分を差し引かれた賃料が建物オーナーに入金される。空室に応じて収入は変動する。
家賃保証型サブリース 管理会社に賃貸し、入居者は管理会社が転貸する方式。満室想定賃料から一定料率分を差し引かれた固定賃料が建物オーナーに入金される。空室が発生しても収入は変動しない。
管理委託とは
管理会社に管理を委託する方式です。建物オーナーは空室リスクを負いますが、管理会社に支払う管理委託料は家賃の5%程度となります。
パススルー型サブリースとは
転貸方式による管理です。一棟全体を管理会社に賃貸し、入居者と管理会社が転貸借契約を締結します。パススルー型サブリースは空室によって賃料が変動する方式なので、建物オーナーは空室リスクを負います。
賃料に関しては、入居中の転貸借の賃料から約5%を差し引いた賃料が建物オーナーに振り込まれます。そのため、パススルー型サブリースと管理委託の収益性は同じであり、売却価格も同じです。
家賃保証型サブリースとは
こちらも転貸方式による管理ですが、空室に応じて賃料が変動しないタイプの管理方式です。賃料に関しては、満室想定賃料の15~19%程度差し引かれた賃料が建物オーナーに入金されます。
一方、家賃保証型サブリースの場合、売却価格は大きく下がります。家賃保証型サブリースの収益性は、パススルー型サブリースや管理委託の収益性よりも低いため、その結果、売却価格も安くなります。
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2. 賃貸物件を高く売却する4つの方法

賃貸物件を高く売却する4つの方法

この章では、賃貸物件を高く売却するための4つの方法について解説します。

2-1. 賃貸中のまま売却する

賃貸物件は、賃貸中のまま売却するのが基本です。適正な賃料の物件であれば、賃貸中の売却が最も高く売れます。

アパートのような複数戸ある物件で空室がある場合には、1章でも説明したように、満室にしてから売却するのがおススメです。空室があると、買主が空室リスクを過度に見込む原因となってしまうため、値引き要求もされやすく、高値での売却がしにくくなります。

賃貸物件を売却する場合には、極力満室にした状態で売却するのが鉄則と心得てください。空室がなかなか埋まらないような状況であれば、フリーレントを使ってでも埋めた方が良いといえます。

<フリーレントの注意点>

フリーレントとは、例えば入居後3ヶ月間は賃料を免除するといったサービスになります。

フリーレントを使う際は、賃料は下げずに募集することがコツになります。賃料が高いままフリーレントを使って埋めておけば、買主が購入する頃には賃料が発生しているため、満室前提の物件として高く売却することが可能です。

【アパート空室対策まとめ】タダでできることからリフォームまで

2-2. 空室にしてから売却する

ほぼ空室の物件であれば、逆に残りの入居者を立退かせ、空室にしてから売却する方が高く売れます。例えば10戸中、1~2戸しか埋まっていないような物件であれば、立ち退かせてから売却した方が良いです。経済的に余力があれば、さらに取り壊して更地にした方が望ましいといえます。

購入後、買主が立ち退きをしなければならないような物件は、売却自体がそもそも難しいです。「絶対に売れない」ということではありませんが、ほぼ空室の物件は価格が非常に低くなると理解しておいた方が良いでしょう。

一方で、賃貸物件の中でも「戸建て賃貸」や「ファミリータイプの区分所有マンション」に関しては、あえて空室になったタイミングで売却するという手法もあります。

「戸建て賃貸」や「ファミリータイプの区分所有マンション」は、元々が家族世帯向けの物件になります。家族世帯は、単身世帯とは異なり「借りる」よりも「買う」方のニーズが高いです。よって、家族世帯向けの物件では、空室の状態で売りに出すと投資家だけではなく、自分で住むことを目的に購入する方も現れます。以上の理由から、空室の家族世帯向けの物件は、投資や自用目的等の複合的なニーズがあるため、高く売却することができるようになります。

<注意点>

家族世帯向けの物件を空室にして売る場合、無理に立ち退かせる必要はありません。
立ち退き料が無駄になってしまいますので、自然退去したタイミングで売りに出すのが良いでしょう。

2-3. 管理方式を切り替えてから売却する

家賃保証型サブリースの場合、管理委託もしくはパススルー型サブリースに切り替えてから売却した方が高く売れます。既に管理委託、またはパススルー型サブリースの場合には高く売れる状態になっていますので、そのまま売却して大丈夫です。

家賃保証型サブリースの場合には、まずは今のサブリース会社にパススルー型サブリースへの切り替えを打診するようにしてください。家賃保証型サブリースは、築年数が古くなると家賃保証をするサブリース会社のリスクが高くなりますので、家賃保証型からパススルー型への切替え提案は比較的受け入れられやすい内容となります。

<注意点>

パススルー型へ切替える際は、料率も交渉してできるだけ下げた方が高く売れます。

パススルー型サブリースでは、建物オーナーに振り込まれる賃料は入居中の転貸借の賃料から一定料率分が差し引かれた金額です。料率は5%が相場ですが、実際の物件では3%~8%程度と幅があります。切替え後の料率は3%程度にしておくと高く売却できますので、料率についてもしっかりと交渉した方が良いでしょう。

2-4. 修繕を行ってから売却する

賃貸物件では、買主である投資家は修繕履歴を非常に気にします。そのため、適切な修繕を行ってから売却するのも高く売る方法の一つです。

建物には、設備や外壁、屋根等に適切な時期に実施すべき修繕がありますが、メンテナンスを怠っているような物件は、ネガティブに評価されます。
例えば、築15目のアパートで一度も給湯器を交換していないような物件を売りに出すと、「購入後すぐに修繕費が発生しそうな物件」というような印象を与えてしまいます(給湯器には、一般的に築10年目くらいに交換時期の目安があります)。

<注意点>

修繕を実施する場合には、賃貸物件の元施工会社に修繕計画表を提出してもらい、適切な時期を過ぎても未実施の内容を優先的に修繕するようにしてください。全てを行う必要はありませんが、売却前に負担できる範囲で少しでもやっておくとかなり印象が変わります。

逆に、修繕を行えばアピール材料にもなりますので、不動産会社に対してもチラシ等で訴えてもらうことを忘れないようにしましょう。

3. 賃貸中のまま売却する手順

この章では、売却を考える賃貸物件を、賃貸中のまま売却する手順について解説します。

賃貸中のままの売却では、事前に入居者の同意を得る必要はありません。売却後に通知だけすれば良いので、借主には黙ったまま売却しても大丈夫です。また、管理会社に対しても、特に同意を得る必要もありません。入居者や管理会社に売却を反対することはできませんので、気にせず売却活動を始めてください。

3-1. レントロールと修繕履歴を作成しておく

レントロール修繕履歴の作成は、賃貸物件を高く売るための準備になります。

レントロールとは、賃貸物件の全ての入居者の賃貸条件を載せた以下のような一覧表です。レントロールがあると一目で賃貸状況が分かるため、投資家が検討しやすくなります。

部屋番号 入居者 賃貸面積 間取り 賃料 賃料単価 契約年月日 契約期間 敷金
101 ○○○○ 65.00㎡ 3LDK 80,000円 1,231円/㎡ 2016/5/1 2年 160,000円
102 ○○○○ 65.00㎡ 3LDK 80,000円 1,231円/㎡ 2015/1/1 2年 160,000円
103 ○○○○ 70.00㎡ 3LDK 83,000円 1,186円/㎡ 2009/4/4 3年 249,000円
104 ○○○○ 40.00㎡ 2DK 50,000円 1,250円/㎡ 2012/6/8 2年 100,000円
105 空室 40.00㎡ 2DK 0円 0円/㎡
201 ○○○○ 65.00㎡ 3LDK 81,000円 1,246円/㎡ 2013/1/3 2年 162,000円
202 ○○○○ 65.00㎡ 3LDK 82,000円 1,262円/㎡ 2016/1/1 2年 164,000円
203 空室 70.00㎡ 3LDK 0円 0円/㎡
204 ○○○○ 40.00㎡ 2DK 52,000円 1,300円/㎡ 2018/4/1 2年 104,000円
205 ○○○○ 40.00㎡ 2DK 51,000円 1,275円/㎡ 2017/3/1 2年 102,000円

また、購入希望者は修繕の実施状況を気にしますので、修繕履歴の提出も求められる可能性が高いです。修繕履歴は、実施した時期と内容を一覧にした簡単な表で構いません。修繕履歴をすぐに出せる物件は、それだけでも良い印象を与えますので、売却活動に入る前にしっかり作っておくようにしてください。

3-2. 価格査定を依頼する

繰り返しますが、売却においては入居者や管理会社に対する事前通知や同意は不要です。売却は所有者の意思で自由にできることですので、売却を決めた段階で価格査定の依頼を行ってください

賃貸物件の売却は、賃貸物件の扱いに慣れた不動産会社に依頼した方が良いでしょう。賃貸物件の売却で実績豊富な不動産会社は、既に多くの投資家とのパイプがあります。投資家から「こんな物件があったら紹介してください」と言われていることが多いため、実績豊富な不動産会社に依頼すると早く高く売れる可能性が高いです。

そのため、賃貸物件の価格査定であれば「不動産売却 HOME4U(ホームフォーユー)」を依頼することをおススメします。

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多くの投資家とコネクションのある不動産会社に依頼することは、高く売ることに直結します。賃貸物件を早く高く売るためにも、「不動産売却 HOME4U」を是非ご利用ください。

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3-3. 売却活動を開始する

査定後、不動産会社に売却を依頼したら、売却活動の開始です。満室で賃貸中の物件の売却は、買主は中を見ることはできませんので、売主として中を見せるような対応も必要ありません。賃貸物件の売却活動では、売主はレントロールや修繕履歴を購入希望者へ渡し、その後、質疑に対して回答していくことが主な売却活動の内容です。

レントロールや修繕履歴は、通常は秘密保持契約書(CA)を差し入れてもらって開示します。CAの準備や買主に資料を渡す対応等は不動産会社が行います。

なお、細かいところまで質問してくる購入希望者は、真剣に検討している証拠ですので、親切に対応するようにしてください。

3-4. 売買契約を行う

購入希望者が現れ、価格に合意したら売買契約の締結です。

売買契約と引渡の間は、通常、1ヶ月程度の時間が空くため、注意が必要です。また、売主が負担する仲介手数料は、売買契約時に50%、引渡時に50%を支払うことが通常ですので、仲介手数料を適切なタイミングで準備することも忘れないようにしてください。

3-5. 引渡時に精算を行う

賃貸物件の売却では、引渡日を起点として諸費用の精算を行います。精算とは、売主が既に支払い済みの金銭や受領済みの金銭に関し、引渡日以降の負担や利益を買主に移転させるための調整です。

賃貸物件で行う精算項目は以下のような項目となります。

  • 固定資産税及び都市計画税
  • 賃料
  • 駐車場代等のその他の収入
  • 共益費(事務所や店舗の場合)
  • 付加資料料(事務所や店舗の場合)
  • 管理費及び修繕積立金(区分所有のマンションの場合)
  • 敷金

通常、戸建ての売却では精算項目は固定資産税及び都市計画税程度ですが、賃貸物件では精算項目が多岐にわたるのが特徴です。賃料や共益費等は翌月分を当月末にもらっていることが多いので、引渡日以降の賃料を買主へ渡す形になります。

また、敷金返還義務は売主から買主へ移行します。よって、売主が入居者から預かっている敷金については、売買代金から敷金の額を減額することで買主へ引き継ぐことになります。

3-6. 賃貸人の地位承継通知を行う

賃貸物件の売却では、売却後に買主との連名で入居者に対して「賃貸人の地位承継通知書」という書面を送ることが通常です。

賃貸人の地位承継通知書とは、「新しい賃貸人は○○さんに変わりました。来月以降の家賃の振込先はこちらに変更してください。」という内容の書面です。借主はこのタイミングでオーナーが変わったことを突然知ることになります。

借主が一番不安に思うことは、預けた敷金は返ってくるのかという点です。借主の不安を和らげるためにも、賃貸人の地位承継通知書には、敷金返還義務は新しいオーナー(買主)へ引き継がれたことを明記しておきましょう。

4. 空室にしてから売却する手順

この章では、ほぼ空室物件を売る場合の空室にしてから売却する手順について解説します。

4-1. 立ち退きを行う

空室にするには残っている入居者を立退かせる必要があります。

賃貸借契約には、普通借家契約と定期借家契約の2種類がありますが、普通借家契約の場合には立ち退きが必要です。普通借家契約と定期借家契約の違いは更新の有無ですので、過去に1度でも更新している契約であれば、その契約は普通借家契約ということになります。

普通借家契約の場合には、立ち退きには「正当事由」と「立ち退き料」の2つが必要です。正当事由とは、例えば「その家にどうしてもオーナーが自分で住む必要がある」といった理由が該当します。単純に「高く売りたいから」というのは正当事由には該当しません。

例えばアパート等の場合には、建物が耐用年数に達しており、腐朽、破損が甚だしく、早晩朽廃を免れない状態であることが明らかであるときは立ち退かせる正当事由に該当します。ただし、老朽化している物件でも、今にも壊れそうな物件というのは多くはありません。築年数が古いという理由だけで立ち退きを要求するのは、正当事由として弱いことになります。そこで、弱い正当事由を補完するために必要となるのが「立ち退き料」です。

立ち退き料については、明確な相場というものは存在しません。立ち退き料には「移転先の賃料と今の賃料との差額1~2年分程度」といった求め方は存在しますが、移転先の賃料が今の賃料より高いとは限らないため、この算式はあまり機能していないのが実態です。

傾向として、アパート等の住居系の賃貸物件の立ち退きの場合には、立ち退き料は引越代程度で決着することが多いです。1室あたり、50万円~100万円を見込んでおき、交渉するのが良いでしょう。

4-2. 価格査定を依頼する

空室にしてから売却する場合であっても、査定は「不動産売却 HOME4U」がおススメです。理由としては、「不動産売却 HOME4U」なら幅広いタイプの物件で最適な不動産会社を見つけることができるからです。

特に、「戸建て賃貸」や「ファミリータイプの区分所有マンション」等の家族世帯向けの物件を空き家にしてから売る場合には、賃貸物件を得意とする不動産会社よりも中古住宅の売却を得意とする不動産会社の方が販売力は高いです。「不動産売却 HOME4U」なら、全国の2,300社の不動産会社が登録されていますので、中古住宅の売却を得意とする不動産会社も多く参画しています。空き家の状態の賃貸物件でも高く売ってくれる不動産会社を見つけることができますので、ぜひ「不動産売却 HOME4U」をご利用ください。

4-3. 売却活動の開始から引渡まで

売却活動から引渡までの流れは、賃貸中のまま売却する場合と基本的には同じになります。

空き家の状態であれば、購入希望者が中を見る内覧の対応も不動産会社に任せてしまって大丈夫です。ただし、空き家なら賃料や敷金等の精算はありません。賃貸人の地位承継も不要ということになります。

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5. 個人が賃貸物件を売却するときの消費税

個人が賃貸物件を売却する場合、課税事業者であれば建物価格に消費税が生じます。

まず、不動産を売却すると土地には消費税は生じませんが、建物に消費税が生じるのが原則です。しかし例外的に、個人がマイホームやセカンドハウスといった非事業用の不動産を売却する場合には建物に消費税は課税されません。賃貸マンション等の賃貸物件であれば事業用建物ですので、原則通り、建物に消費税は発生します。

一方で、消費税を納税する義務があるかどうかは別の話です。消費税は、課税事業者と呼ばれる事業者が顧客から預かった消費税(預り消費税)から、事業者が支払った消費税(支払消費税)を差し引いた差額を国に納税する仕組みです。

消費税を納税する義務がある事業者のことを課税事業者と呼び、基準期間における課税売上高が1,000万円を超える事業者を指します。基準期間は、法人なら原則前々事業年度、個人事業主なら前々年です。事業者は個人や法人の別を問わず、賃貸物件を保有している個人も事業者に該当します。

例外として、事業者の中に消費税を納めなくても良い事業者がおり、その事業者のことを免税事業者と呼びます。免税事業者とは基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者のことです。

よって、個人であっても売主が課税事業者の場合には、賃貸物件の売却時において消費税を納税する必要があります。

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6. 賃貸物件を売却したときに発生する税金

この章では、賃貸物件を売却したときに発生する税金について紹介します。

6-1. 譲渡所得と税率

個人の方が不動産を売却した際、譲渡所得が発生すると、所得税および住民税、復興特別所得税が生じます。

譲渡所得とは、以下の計算式で表されるものです。

譲渡所得 = 譲渡価額※1-取得費※2-譲渡費用※3

※1 譲渡価額とは売却価額です。
※2 取得費とは、土地については購入額、建物については購入額から減価償却費を控除した価額になります。
※3 譲渡費用は、仲介手数料や印紙税、測量費など、売却に要した費用のことを指します。

賃貸物件に関わらず、不動産を売却したときは、譲渡益が生じたときに税金が発生し、譲渡損失が生じたときは発生しないというのが基本的なルールです。取得費は購入額ではなく、建物が減価償却された後の金額となります。

減価償却とは、建物の取得価格を毎期一定の方法で減価させる会計上の手続きです。よって、賃貸物件の取得費は下図のように経年とともに毎年減っていくイメージとなります。

賃貸物件を売却したときは、「譲渡価額」が「取得費+譲渡費用」を上回っていれば譲渡益が発生し、「譲渡価額」が「取得費+譲渡費用」を下回っていれば譲渡損失が発生するという関係です。

税金は、譲渡所得に税率を乗じて求めます。

税金 = 譲渡所得×税率

譲渡所得にかかる税率は、不動産を譲渡した1月1日時点における所有期間によって決まります。譲渡所得にかかる税率は以下の通りです。

所得の種類 所有期間 所得税率 住民税率
短期譲渡所得 5年以下 30% 9%
長期譲渡所得 5年超 15% 5%

上記の税率でそれぞれ計算し、さらに2037年までは「所得税」に対して一律2.1%をかけた金額が「復興特別所得税」として納税額にプラスされます。

6-2. 特定事業用資産の買換え特例

特定事業用資産の買換え特例とは、個人が2020年12月31日までに賃貸物件等の事業用の土地や建物を譲渡して、一定期間内に特定の土地建物等の資産に買い替えた場合、譲渡所得の一部に課税の繰り延べ(先送り)が受けられる特例です。

一定の期間とは、原則として、譲渡した年またはその前年もしくは翌年に事業用資産を取得し、取得の日から1年以内に事業の用に供した場合または供する見込みである場合に該当します。
買換え時点で課税されるのは譲渡益の一部だけであり、買換え時において節税することが可能です。

特定事業用資産の買換え特例では、適用するために譲渡資産と買換え資産の組み合わせがいくつか決まっています。賃貸物件の売却で特定事業用資産の買換え特例が最もよく使われる組合せは以下の通りです。

(譲渡資産)
所有期間が10年を超える土地、建物

(買換え資産)
国内にある面積300㎡以上の土地等で、特定施設(事務所、事業所、工場、作業場、研究所、営業所、店舗、住宅等(福利厚生施設は除く))の敷地の用に供されているもの、および建物

課税対象となる譲渡所得金額は、譲渡資産の譲渡価額と買換え資産の取得価格の大小によって計算方法が異なります。譲渡資産の譲渡価額が買換え資産の取得価格を下回る場合の課税対象所得の計算式は以下の通りです。

(譲渡資産の譲渡価額が買換え資産の取得価格を下回る場合)
イ 課税される収入金額 = 譲渡した資産の譲渡価額×課税割合
ロ 課税される収入金額に対応する取得費と譲渡費用
            = (譲渡した資産の取得費+譲渡費用)×課税割合
ハ 課税対象所得 = イ-ロ

本来なら譲渡時には譲渡益の部分が全て課税対象となりますが、特例を使うと買換え時はオレンジで囲った部分のみが課税対象の所得となります。

一方で、譲渡資産の譲渡価額が買換え資産の取得価格を上回る場合の課税対象所得の計算式は以下の通りです。

(譲渡資産の譲渡価額が買換え資産の取得価格を上回る場合)
イ 課税される収入金額 = (譲渡した資産の譲渡価額-買換え資産の取得価格)+買換え資産の取得価額×課税割合
ロ 課税される収入金額に対応する取得費と譲渡費用
           = (譲渡した資産の取得費+譲渡費用)×イの収入金額÷譲渡した資産の譲渡価額
ハ 課税対象所得 = イ-ロ

課税対象の所得部分をイメージ図で示すと、オレンジで囲った部分が対象となります。

課税割合は、譲渡資産と買換え資産の場所で異なります。
「譲渡資産と買換え資産の場所」と「課税割合」の関係は以下の通りです。

  1. 地方(東京23区及び首都圏近郊整備地帯等を除いた地域)から東京23区への買換えは「30%」
  2. 地方(東京23区及び首都圏近郊整備地帯等を除いた地域)から首都圏近郊整備地帯等(東京23区を除く首都圏既成市街地、首都圏金庫整備地域、近畿圏既成都市区域、名古屋市の一部)への買換えは「25%」
  3. 上記1及び2以外の買換えは「20%」

特定事業用資産の買換え特例は、賃貸物件の買換えでは良く利用される特例です。利用時には税務署や税理士に確認の上、要件を確かめて適用するようにしてください。

〔参考〕国税庁:「事業用の資産を買い換えたときの特例

まとめ

いかがでしたか。この記事では、賃貸物件の売却について、以下の内容を解説してきました。

  • 賃貸物件は賃料と利回りの関係で価格が決まる
  • ほぼ満室の物件であれば賃貸中のまま売却することが適しているが、ほぼ空室の物件であれば立ち退きを行って売却した方が高く売れる
  • 売却の方法としては、家賃保証型サブリースの場合には管理方式を切り替えから売却するすると高く売ることが可能
  • 修繕対応が不十分な場合には、修繕しておくと買主の評価が上がる
  • 賃貸中のまま売却する場合、レントロールと修繕履歴を準備しておくのが望ましい
  • 空室にしてから売却する場合、立ち退きが必要。立ち退きは、借地借家法を理解した上でしっかり準備して行うようにする
  • 賃貸物件については、売却時の税金を節税できる特例は少ない。買換えを行うケースでは、特定事業用資産の買換え特例を利用できる場合があるため、利用できそうであれば、税金特例も検討する

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