不動産売却に消費税はかかる?非課税の取引と課税取引の違い

不動産の売却にはいくつかの税金がかかります。
その中の一つである消費税は、売却する不動産の種類や状況によって、かかる場合とかからない場合があります。
それぞれのケースを把握しておかなければ、申告漏れとなり、追加納税が発生する恐れがあるため注意が必要です。

そこでこの記事では、不動産売却における消費税の基本的な仕組みや、非課税取引と課税取引の違いについて詳しく説明します。不動産売却における消費税について理解を深め、安心して確定申告に臨めるようにしましょう。

この記事を読むとわかること

  • 不動産売却における消費税の課税対象
  • 非課税となる不動産取引の種類
  • 消費税の確定申告と中間申告の方法

1.消費税の原則!課税される取引とは

消費税は、消費税が消費される物やサービスに対して課される税金です。
課税の対象は、以下の様に決められています。

  • 国内で行われる取引
  • 事業者が「事業」として行うもの
  • 対価を得て行うもの
  • 資産の譲渡、資産の貸付、役務の提供

不動産の売却は「国内で行われる」「資産の譲渡」であり、「売却金額という対価」が伴います。
あとは、「事業者が事業として行うもの」であるかが、消費税の課税対象であるかを考えるうえで重要になります。
例えば、個人が行うマイホームの売却は、事業として行うものではないため非課税の取引となります。

また「事業者」のうち、前々年度の課税売上高が1,000万円以下の事業者は「免税事業者」となるため、消費税が免除されます。
この点は、次章以降で解説いたします。

2.不動産売却で消費税が非課税のもの

不動産売却において、すべての取引が消費税の対象となるわけではありません。ここでは、消費税が非課税となる具体的な3つのケースを解説します。

2-1.非事業用不動産

自宅や別荘などの「非事業用不動産」の取引には、消費税が発生しません。自宅や別荘は、個人の生活や趣味など、事業とは無関係な用途で使用されるからです。
課税事業者であっても、非事業用不動産の取引には消費税がかかりません。

一方、事務所や賃貸に出しているマンションの売却などは「事業用不動産の売却」に当たるため、売却には消費税の課税対象となります。

2-2.土地

日本の消費税法に基づいて、土地の譲渡は非課税取引です。
消費税法基本通達第6章には、土地の譲渡が非課税であることが明確に記されています。理由は、消費税が消費される物やサービスに対して課される税金である一方、土地は消費されるものではなく、長期間にわたって所有され続ける資産だからです。

ただ、駐車場の売却などで消費税が発生する場合があります。
例えば、立体駐車場やコインパーキングの設備を含む土地を売却する場合、建物や設備部分に消費税が課されます。

駐車場を更地として売却すれば「非課税」となります。

2-3.免税事業者による売却

「免税事業者」による不動産売却は、消費税が<<免除となります
免税事業者とは、前々年度の課税売上高が1,000万円以下の事業者を指します。
開始まもない事業においては、消費税が発生しないと言えます。

免税事業者に該当するかどうかは、不動産を売却する前に確認しておくことが大切です。
例えば、基準期間において年間売上高が1,000万円以下の個人事業主が所有する「賃貸用不動産」を売却する場合、消費税は課されません。

条件に該当するかどうかを確認するために、不動産の売却前に「売上の見直し」や「税理士・税務署への確認」を行うことをおすすめします。

3.不動産売却で消費税の課税対象になるもの

ここまでで説明したように、不動産売却では条件によって消費税の有無が異なります。ここでは、不動産売却において、課税対象となる2つのものを解説します。

3-1.事業用不動産の売却(建物部分)

事業用として使用される不動産は、建物部分のみが消費税の対象となります。商業ビルや賃貸アパートなどの売却が主な該当例です。
また、事業として売却する不動産も課税の対象です。投資目的の不動産転売や、不動産会社が売り手となっている不動産は、自身が居住のために使用している不動産ではないためです。

なお、事業用不動産の売却でも、土地部分には消費税が課税されません。

3-2.仲介手数料などの各サービスにかかる費用

不動産売却に伴うさまざまなサービスにかかる費用には消費税が課されます。具体的な例としては、以下のとおりです。

  • 不動産会社への仲介手数料
  • 司法書士への報酬
  • 住宅ローンの一括返済手数料

なお、上記についてはサービスを提供している事業者側が消費税の納税を行うため、サービスにかかる費用に消費税額を上乗せして支払います。

それぞれの費用について、詳しく見ていきましょう。

不動産会社への仲介手数料

不動産会社への仲介手数料には、消費税が課されます。

仲介手数料は、宅地建物取引業法で上限額が決められており、税抜きの売買価格に対して以下の計算式で求めます。

仲介手数料の計算式(※売買価格が400万円超えの場合の速算式)

売買価格 × 3% + 6万円 = 仲介手数料

例えば、税抜き5,000万円で売却した不動産の場合は以下の通りとなります。

仲介手数料 = 5,000万円 × 3% + 6万円 = 156万円
消費税 =156万円 × 10% = 15.6万円

したがって、仲介手数料の総額は、156万円 + 15.6万円 = 171.6万円となります。

司法書士への報酬

不動産売却に伴う登記手続きなどを行う司法書士への報酬は、消費税の課税対象です。
不動産売却時は、抵当権抹消登記を司法書士に依頼することが多いですが、この場合は1~2万円の報酬がかかり、10%の消費税を上乗せして支払います。

住宅ローンの一括返済手数料

売却に際して住宅ローンを一括返済する場合の「一括返済手数料」も、消費税の課税対象です。
手数料額は金融機関により異なりますが、多くの場合で1~3万円ほどです。

ネット銀行や、インターネットバンキングでの支払いでは、手数料が無料のケースもあります。

4.消費税は確定申告による納税が必要

不動産売却において発生した消費税は、確定申告による納税が必要です。
一般的なマイホームの売却においては、個人が消費税を申告する必要はありません。
課税事業者として不動産を売却した場合のみ、消費税の申告と納税が必要となります。

4-1.消費税が発生する取引をした年の翌年に確定申告

不動産売却で消費税が発生した場合、取引が行われた年の翌年に確定申告及び納税が必要です。
例えば、2024年12月31日までに売却した場合は、2025年の2月17日~3月17日までに確定申告書を税務署に提出して納税します。

確定申告は、税務署に確定申告書を提出する方法と、e-Taxで電子申告する方法があります。

4-2.税額48万円を超える場合は中間申告

年間の消費税納税額が48万円を超える場合には、中間申告が必要となります。中間申告とは、年度途中で納税を行う手続きです。

これは、納税額が高額な場合に、一度に納税する負担を軽減するための制度です。中間申告の際の手続きは以下のとおりです。

  1. 中間申告の対象となる期間を確認
  2. その期間中に発生した消費税額を計算
  3. 確定申告と同様に、申告書を作成し税務署に提出

消費税の中間申告を適切に行うことで、年間を通しての納税負担をフラットにできます。消費税の確定申告や中間申告については、専門家のサポートを受けることも一つの方法です。

適切な手続きを行い、納税の負担を軽減するために、税理士や不動産の専門家に相談することをおすすめします。

4-3.仕入税額の控除について

購入に伴って支払った消費税(仕入税額)は、売上に対する消費税(売上税額)から控除できます。仕入税額控除の対象は以下のとおりです。

不動産取得時や改修工事等に支払った消費税売却準備に伴う諸費用に含まれる消費税また、仕入税額控除を受けるためには、一定の要件を満たす必要があります。

帳簿の保存 取引の内容を正確に記録した帳簿を保存することが求められる
請求書等の保存 取引先から受け取った請求書や領収書を保存しておく必要がある

消費税の仕入税額控除の適用を受けるには、また、控除対象となるのは事業用の仕入れや経費に対する消費税であり、適用対象期間内に支払った消費税に対して控除が適用されます。取引の詳細を正確に記録した帳簿と、請求書や領収書を保存する必要があります。

消費税の仕入税額控除の適用対象期間とは、消費税の課税期間のことを指します。この課税期間は、事業年度に対応するものであり、法人の場合は事業年度、個人事業主の場合は暦年(1月1日から12月31日)となります。

なお、2023年10月1日からインボイス制度(消費税の適用において、仕入税額控除を受けるためには、適格請求書“インボイス”を保存することが必要となる制度)が始まっています。そのため、インボイスが発行されない取引については、仕入税額控除の対象外です。

詳しくは、「“インボイス制度がはじまりました!”.国税庁」をご覧ください。

まとめ

事業用不動産の売却や不動産会社への仲介手数料などが消費税の対象である一方、非事業用不動産や土地の売却、免税事業者による売却には消費税が課されません。

また、消費税が発生した場合には翌年の確定申告が必要となり、税額が48万円を超える場合は中間申告も求められます。

不動産売却における消費税の扱いについて、この記事で解説した基本的な仕組みや課税対象・非課税対象となるケースについてしっかり理解したうえで、万全の準備で確定申告に臨みましょう。

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