土地売却時の注意点のひとつに、減価償却ができないことが挙げられます。
しかし、土地売却の知識がない場合、そもそも減価売却とはどういうものなのか、また、経費の計上や特例は受けられないか、正しい情報がわからず悩む方が多いのではないでしょうか。
本記事では、土地売却における減価償却について、
- 減価償却とは何か
- 土地は減価償却できないのはなぜか
- 減価償却を計算する2つの方法
- 土地売却で経費として計上できるもの
- 土地活用で適用される節税特例
など、基礎知識から計算方法まで、一通り解説します。
減価償却の計算方法や節税対策などを知っていると、土地売却時の確定申告をスムーズに進められるようになります。ぜひ最後までお読みください。
土地売却について基礎から詳しく知りたい方は『【専門家が解説】土地を売る流れ』も併せてご覧ください。
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Contents
1.土地は減価償却ができない
土地は減価償却の対象になりません。
建物は減価償却できて、なぜ土地はできないのか、理由を詳しく解説します。
1-1.減価償却の基本的な考え方
そもそも減価償却とは、不動産などの固定資産を費用として計上する際、耐用年数に応じて適切に配分する会計上の手続きを言います。
不動産(建物)や室内設備などの資産は、購入したらすぐに資産価値がなくなるわけではなく、長く使用することで劣化し、資産価値が減少していきます。そのため、減価償却の計算が必要となります。
しかし土地の場合は、長く使用することで「土地の価値が減少していく」ということが起きないと考えられているため、減価償却ができないのです。
1-2.土地には「耐用年数」という考え方がない
土地は「耐用年数」という考え方が存在しません。
耐用年数とは、減価償却資産を利用することに耐えられる年数のことを言います。
建物は利用し続けるにつれて劣化するため、建築材料別で以下のような耐用年数が設けられています。
木造・合成樹脂造のもの | 22年 |
---|---|
木骨モルタル造のもの | 20年 |
軽量鉄骨造(骨格材肉厚3㎜以下) | 19年 |
軽量 鉄骨造(骨格材肉厚3㎜以上4㎜未満) | 27年 |
鉄骨鉄筋コンクリート造 | 47年 |
一方、土地の場合は劣化することがないため、耐用年数という考え方はありません。
2.減価償却の計算方法
減価償却の計算は、「定額法」と「定率法」の2つの方法があります。
定額法は耐用年数によって費用を均等に配分する計算方法で、定率法は初年度の費用がもっとも高額になり、翌年以降は減額していく方法です。
それぞれの計算方法について、詳しく解説します。
2-1.定額法を用いた計算方法
定額法は、毎年同じ金額の減価償却費となるように計算する方法です。
定額法は平成19年度に改正が行われたことにより、「旧定額法」と「定額法」の2つに区別されました。
したがって、平成19年3月31日までに取得した不動産の減価償却は、旧定額法を用いて計算します。
旧定額法による計算方法は以下の通りです。
■旧定額法の計算方法
旧定額法の償却率については、国税庁「No.2105 旧定額法と旧定率法による減価償却」をご確認ください。
対して、平成19年4月1日以降に取得した不動産の減価償却は、「定額法」を用いて計算します。
現行の定額法による計算方法は以下の通りです。
■定額法の計算方法
定額法の償却率は、e-Gov法令検索の「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」をご確認ください。
2-2.定率法を用いた計算方法
定率法とは、毎年の未償却残高に対して一定の償却率をかけることで減価償却する方法です。
定率法による減価償却費の計算方法は以下の通りです。
■定率法の計算方法
定率法を用いることで、定額法よりも早く減価償却費を計上することが可能です。
3.減価償却以外に計上できる経費
不動産売却では、減価償却のほかに取得費と土地活用にかかる費用を、経費として計上できます。
具体的にどのような費用を計上できるのか、詳しく解説します。
3-1.取得費
取得費として計上できると法律で定められているものは、土地を取得するために支払った税金と諸費用です。
土地を取得するための税金や諸費用には、以下のものが該当します。
■取得費に該当する税金・費用
- 登録免許税
- 不動産取得税
- 印紙税
- 立退料
- 造成費用
- 測量費
- 訴訟費用
- 使用開始するまでのローン利子
- ほかの土地の違約金
- 取り壊し費用
上記以外にかかった費用は、原則として土地の取得価格に該当しますので、取得費として計上できない点に注意してください。
取得費が不明な場合は、土地の売却価格の5%を費用として計上することができます。ただし、大まかな概算になってしまうため、実際の取得費用よりも高くなってしまう可能性があります。
3-2.土地活用にかかる経費
土地活用の場合は、以下の費用を経費として計上できます。
- 固定資産税
- 都市計画税
- 登録免許税
- 不動産取得税
- 印紙税
- 司法書士・税理士への報酬
- 管理委託料
- 仲介手数料
- 広告宣伝費
- 保険料
- 通信費
- 旅費交通費
- 情報収集費用
- ローン金利
税金を経費計上する場合は、所得税や住民税、法人税などは経費計上できないので注意してください。
また、土地活用で利益が出ている場合は確定申告や控除の手続きが必要ですので、忘れずに手続きを行いましょう。
4.土地活用で適用できる節税特例
土地は減価償却の対象になりませんが、以下2つの軽減措置の特例を適用することで節税が可能です。
4-1.不動産取得税の特例
不動産取得税の特例とは、住宅の取得及び流通促進を目的とし、住宅取得時の不動産取得税を軽減する軽減措置の特例です。
本来であれば、土地を取得した際に4%の不動産所得税が発生しますが、令和6年3月までは軽減措置が適用されるため、3%に軽減されます。
軽減措置を適用した場合の不動産取得税は、次の計算式で算出できます。
軽減額については、下記の金額のうち高い方を適用します。
- (土地1平米あたりの固定資産額 × 2分の1)×(住宅の課税床面積 × 2)× 3%
- 45,000円
4-2.固定資産税と都市計画税の軽減措置
土地に家を立てるなど、人が居住することを目的とした土地であれば、固定資産税が軽減される措置を適用できます。
軽減措置の条件は、小規模住宅用地と一般住宅用地でそれぞれ異なります。
固定資産税の課税標準額は以下の通りです。
住宅用地の種類 | 税率 |
---|---|
小規模住宅用地(200平方メートル以下) | 固定資産税評価額 × 6分の1 |
一般住宅用地(200平方メートル超) | 固定資産税評価額 × 3分の1 |
また、都市計画税は以下の課税標準額に軽減されます。
住宅用地の種類 | 税率 |
---|---|
小規模住宅用地(200平方メートル以下) | 固定資産税評価額 × 3分の1 |
一般住宅用地(200平方メートル超) | 固定資産税評価額 × 3分の2 |
例えば、500平方メートルの土地の固定資産税および都市計画税を計算する場合、200平方メートルまでの部分は小規模住宅用地として扱うため3分の1で算出し、残りの300平方メートルは一般住宅用地として3分の2で算出します。
それぞれの特例のそれぞれの特徴を把握し、うまく節税に結び付けましょう。
この記事のポイント
土地は経年によって価値が下がらないため、減価償却ができません。詳しくは『1.土地は減価償却ができない』をご覧ください。
減価償却の計算方法は、定額法と定率法の2種類があります。詳しくは『2.減価償却の計算方法』をご覧ください。
減価償却のほかに、取得費と土地活用にかかる経費が計上できます。詳しくは『3.減価償却以外に計上できる経費』をご覧ください。