駐車場用地の売却には、駐車場のまま売る方法と更地にして売る方法があります。それぞれのメリット・デメリットなどを事前に把握しておくことで、より有利な条件での売却が叶うでしょう。
本記事では、駐車場用地の売却方法や流れ、かかる費用や利用できる税金の特例を解説します。
Contents
1.駐車場用地とは?
駐車場用地とは、自動車やバイク、自転車などの車両を一時的、あるいは長期的に駐車するための土地のことです。基本的に建物がなく、メンテナンスなどの維持費が少なくて済む土地の用途になっています。
このため、月極駐車場やコインパーキング、近隣施設の貸駐車場など、ローリスクな土地活用の方法として用いられることが多いです。
2.駐車場用地を売却する2つの方法
駐車場用地を売却する方法には、駐車場のまま売る方法と、更地にして宅地として売る方法の2つがあります。それぞれのメリット・デメリットを解説します。
2-1.駐車場のまま売却する
駐車場のまま売却する方法は、手間や費用が抑えられる点がメリットです。駐車場の設備を解体したり、土地を整地したりする必要がなく、買主への駐車場賃貸契約の継承も比較的容易な手続きで済みます。
一方で、駐車場のままでは需要が限られ、売却までに時間がかかりやすい点がデメリットです。
買主は駐車場経営を目的とする相手や、複数の車両を置く必要がある相手などに限られます。豊富な需要がある土地とは言えず、場合によっては想定より売却価格が低くなるケースもあります。
2-2.更地にしてから宅地として売却する
駐車場の設備を撤去して、更地にしてから宅地として売却する方法は、比較的買主が見つかりやすい点がメリットです。
宅地にすることで、住宅用地や商業施設用地などさまざまな用途に利用できるため、高い需要が見込まれます。また、駐車場のままよりも高値で売れる可能性もあるでしょう。
一方で、設備を撤去して更地にする費用がかかる点はデメリットと言えます。
また、現在契約している駐車場の賃貸借契約を解除し、利用者に立ち退いてもらう必要があります。契約解除の交渉が難航すれば、売却できるようになるまで時間がかかることも考えられます。
土地を高く売る方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
3.駐車場用地を売却する流れ
ここでは駐車場用地を売却する流れを、以下の6段階に分けて解説します。
3-1.相場価格を把握する
駐車場用地を売却する際には、事前に売却価格の相場を把握しておくことが大切です。相場がわかると、不動産会社が提示する査定額が適正かどうか判断しやすくなります。
また、相場に基づき、適切な売却価格を設定できるようにもなります。
相場を調べる際のポイントは、近隣エリアで売りに出ている、条件の近い駐車場の価格を確認することです。
不動産の価格は、立地や規模によって変動します。条件が近い駐車場の相場を参考にすることで、より現実的で売却しやすい価格設定が可能になるでしょう。
相場を調べるには、実際に売買が行われた土地の価格や条件を確認できる「不動産情報ライブラリ」や、資産評価システム研究センターが運営する「全国地価マップ」を利用する方法があります。
土地価格の調べ方については、以下の記事で詳しく解説しています。
3-2.不動産会社に査定を依頼する
駐車場用地の相場価格が把握できたら、不動産会社に土地の価格査定を依頼します。
査定において大切なのは、複数の不動産会社に依頼することです。査定結果は不動産会社によって異なることがあり、比較できる査定結果が少ないと、その金額が妥当か判断しにくいためです。
また、査定を依頼する際は、不動産会社の実績や担当者が誠実に対応するかどうかも確認しましょう。
査定方法には、物件の資料などから算出する机上査定と、不動産会社の担当者が実際に現地を訪れて駐車場の状態や環境をチェックする訪問査定の2種類があります。一般的には机上査定が行われ、必要に応じて訪問査定が実施されます。
3-3.媒介契約を締結する
査定結果を比較し、駐車場用地の売却仲介を依頼する不動産会社が決まったら、媒介契約を締結します。媒介契約には「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類があり、それぞれ以下のような違いがあります。
一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 | |
---|---|---|---|
複数の不動産会社との媒介契約 | 可 | 不可 | 不可 |
売主が自ら見つけた買主との取引 | 可 | 可 | 不可 |
契約の有効期間 | 指定なし | 3か月以内 | 3か月以内 |
売主への報告 | 任意 | 2週間に1回以上 | 1週間に1回以上 |
レインズ(※)への登録義務 | なし(登録は可能) | あり 契約から7営業日以内 |
あり 契約から5営業日以内 |
※不動産流通機構が運営する不動産業者間の物件検索システム
出典:「“<消費者の皆様向け>不動産取引に関するお知らせ” .国土交通省. (参照2024-08-30)」をもとに、お家のいろはが独自に作成
3-4.売却活動を開始する
不動産会社と媒介契約を締結したら、駐車場用地の売値を決め、実際に売却活動を始めます。
査定額はあくまで不動産会社が評価した参考額であり、そのまま売値になるわけではありません。査定額を参考にしつつ、売主の希望や売却時期、周囲との競合状況などを考慮して、最終的な売値を決めます。
買主はできる限り安く購入したいと考えるため、値下げ交渉をされる可能性もあります。値下げの可能性を考慮して、売値を多少高めに設定してもよいかもしれません。
またこの段階で、駐車場用地のまま売却するか更地にしてから売却するかを決定します。
3-5.売買契約を締結する
購入希望者が現れ、価格などの条件に合意したら、売買契約を締結します。
契約締結の際、買主は売主に手付金を支払います。手付金の額は、不動産の売却価格の10~20%程度が一般的です。また、不動産会社によっては、このタイミングで売主が仲介手数料の一部(一般的には半金)を支払う場合もあります。
万が一、買主の都合で契約を解除された場合、売主が受け取った手付金は放棄され、売主のものとなります。反対に、売主の都合で契約を解除する場合は、買主に手付金の2倍の額を支払わなければなりません。
3-6.決済・引き渡しを行う
売買契約が締結されたあとは、代金の残額の決済と駐車場用地の引き渡しを行います。
代金の決済は、金融機関の個室やブースに、売主・買主・不動産会社・司法書士が集まって行われます。買主はその場で売主に残金を支払い、売主は不動産会社に仲介手数料を支払います。
決済が行われたあと、司法書士が所有権移転登記を行い、引き渡しが完了します。
駐車場用地を更地にし、宅地として売り出す場合、売却活動開始から買主が見つかるまで3~6か月、駐車場利用者の立ち退きや解体工事に2~3か月ほどかかるため、ここまでに長い期間を要します。
また、駐車場のまま売却する場合は、買主がなかなか見つからず、時間がかかる傾向があります。いずれの売却方法も、完了まで長引く可能性があることを考慮しておくことが大切です。
4.駐車場用地を売却する際の費用と税金
ここでは、駐車場用地を売却する際の、以下の費用と税金を解説します。
4-1.印紙税
印紙税は、駐車場用地の売買契約書に課される税金です。売買価格に応じて定められた税額の印紙を契約書に貼り、消印することで納めます。
契約金額ごとの税額は以下のとおりです。
※2027年(令和9年)3月31日までに作成する契約書については、軽減税率が適用されます。
記載された契約金額 | 本則税額 | 軽減税額 |
---|---|---|
10万円を超え50万円以下 | 400円 | 200円 |
50万円を超え100万円以下 | 1千円 | 500円 |
100万円を超え500万円以下 | 2千円 | 1千円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 1万円 | 5千円 |
1,000万円を超え5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円を超え5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
5億円を超え10億円以下 | 20万円 | 16万円 |
10億円を超え50億円以下 | 40万円 | 32万円 |
50億円超 | 60万円 | 48万円 |
出典:「“No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置”. 国税庁. (参照2024-08-30)」
「“No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで”. 国税庁. (参照2024-08-30)」をもとに、お家のいろはが独自に作成
4-2.登録免許税
駐車場用地の所有権を売主から買主に変更する「所有権移転登記」を行う際に、登録免許税が課されます。税額は、土地の固定資産評価額に2.0%をかけて算出します。
出典:“No.7191 登録免許税の税額表”.国税庁.(参照2024-08-30)
4-3.仲介手数料
駐車場用地の売買契約が成立すると、仲介を行った不動産会社に仲介手数料を支払います。仲介手数料の上限額は、売却価格に応じて以下のように定められています。
売却価格 | 仲介手数料の上限 |
---|---|
200万円以下 | 売却価格 × 5% + 消費税 |
200万円超400万円以下 | 売却価格 × 4% + 2万円 + 消費税 |
400万円超 | 売却価格 × 3% + 6万円 + 消費税 |
出典:「 “宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額”. 国土交通省. (参照2024-08-28)」をもとに、お家のいろはが独自に作成
仮に、2,000万円で売却できた場合の仲介手数料は72万6,000円です。
2,000万円 × 3% + 6万円 = 66万円
66万円 + 6万6,000円(消費税) = 72万6,000円
4-4.譲渡所得税(所得税・住民税・消費税)
駐車場用地を売却して得た譲渡所得に対しては、譲渡所得税(所得税・住民税・消費税)が課されます。譲渡所得は、売却価格から取得費と譲渡費用を差し引いて算出します。
取得費は、売却する土地を購入した際の価格に、登記費用や印紙税などの諸費用を加えた金額です。一方の譲渡費用は、仲介手数料や印紙税などの売却時にかかった諸費用です。
所有期間5年超の土地を売却した譲渡所得は「長期譲渡所得」に、所有期間5年以下の土地を売却した譲渡所得は「短期譲渡所得」に区分されます。それぞれの譲渡所得への所得税と住民税の税率は、以下のように定められています。
区分 | 所得税 | 住民税 |
---|---|---|
長期譲渡所得 (所有期間5年超) |
15% | 5% |
短期譲渡所得 (所有期間5年以下) |
30% | 9% |
出典:「“土地や建物を売ったとき”. 国税庁. (参照2024-08-28)」
このほかに、2037年までは基準所得税額に対して2.1%の復興特別所得税も課されます。
また、駐車場用地にコンクリート舗装などを残し、駐車場のまま売却した場合は消費税が課されます。一方で、コンクリート舗装などを撤去して更地として売却した場合、消費税はかかりません。
4-5.宅地にする場合は解体費用
駐車場用地を更地にして宅地として売却する場合は、地面を舗装しているコンクリートやアスファルトの解体費用がかかります。
比較的高額なコンクリートの解体費用は、平米あたり5,000円~10,000円ほどが相場です。
仮に、5台前後の乗用車を駐車できる100平米程度の駐車場を解体する場合、50万円~100万円ほどかかることになります。
4-6.その他の費用や税金
その他にかかる費用や税金としては、測量費用と固定資産税が挙げられます。
売却に際して土地を測量して境界や面積を明確にする場合は、測量費用がかかります。土地の広さや隣地所有者の数などによっても異なりますが、相場は30万円~60万円ほどです。
また、土地にかかる固定資産税は、1月1日時点での所有者に課されるため、売主が1年分を納税します。そのため、固定資産税の税額を、土地代金の決済日から年末までの期間で日割りした額を買主から受け取ります。
5.駐車場用地を売却する際に利用できる特例4つ
ここでは、駐車場用地を売却する際に利用できる税金の特例について解説します。
5-1.公共事業のための5,000万円の特例
公共事業のための5,000万円の特例は、公共事業などのために土地を売却して得た譲渡所得に対し、最高5,000万円まで控除される制度です。
ただし、1つの事業に対する土地の譲渡が2年以上にわたった場合、最初の年の譲渡のみが特例の対象となります。
主な適用要件は以下のとおりです。
- 売却した土地が固定資産であること
- その年に公共事業に売却した土地に対し「収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例」の適用を受けていないこと
- 買い取りなどの申し出があった日から、6か月を経過した日までに売却すること
- 公共事業の施行者から、最初に買い取りの申し出を受けた者(相続または遺贈により土地を取得した者を含む)が売却すること
5-2.特定土地区画整理事業の2,000万円の特例
特定土地区画整理事業の2,000万円の特例は、特定の土地区画整理事業などのために土地を売却して得た譲渡所得から、最高2,000万円まで控除される制度です。
ただし、1つの事業に対する土地の譲渡が2年以上にわたった場合、最初の年の譲渡のみが特例対象になります。
主な対象事業などは以下のとおりです。
- 国、地方公共団体、独立行政法人都市再生機構などが行う区画整理事業
- 第一種市街地再開発事業
- 防災街区整備事業
- 古都保存法や都市緑地法などに規定される買取請求
- 保安林として指定された区域等内の保安施設事業 など
5-3.特定住宅地造成事業などの1,500万円の特例
特定住宅地造成事業などの1,500万円の特例は、地方公共団体が行う住宅建設や住宅地造成事業などのために土地を売却して得た譲渡所得から最高1,500万円まで控除される制度です。
主な適用要件は以下のとおりです。
- 宅地造成が土地区画整理法による土地区画整理事業であること
- 造成に係る全体の土地の面積が5ヘクタール以上であること
- 事業によって造成される宅地の分譲が公募により行われること など
5-4.土地などを譲渡したときの1,000万円の特例
土地などを譲渡したときの1,000万円の特例は、2009年(平成21年)および2010年(平成22年)に取得した土地を売却して得た譲渡所得から、最高1,000万円まで控除される制度です。
主な適用要件は以下のとおりです。
- 2009年(平成21年)に取得した土地は、2015年(平成27年)以降に譲渡すること
- 2010年(平成22年)に取得した土地は、2016年(平成28年)以降に譲渡すること
- 親子や夫婦など、特別な間柄にある者から取得した土地ではないこと
- 相続や遺贈、贈与、交換、代物弁済などにより取得した土地ではないこと など
6.駐車場用地を売却する際の注意点
ここでは、駐車場用地を売却する際の注意点を2つ紹介します。
6-1.駐車場の契約者と契約解除の手続きをする
駐車場用地を更地にし、宅地として売却する場合は、早めに駐車場契約者と契約解除の手続きを行いましょう。
特に、周囲に代替の駐車場が少ない地域では、期間に余裕を持って契約者に契約解除を告知することが重要です。
代替の駐車場が見つからない場合、契約者が新しい駐車場を見つけるまで待たなければならず、売却完了までに時間がかかる可能性があります。
法律上、駐車場の賃貸借契約は、貸主から一方的に解除することができます。とはいえ、契約者とのトラブルを避けるためにも、できる限り早めに告知を行うことをおすすめします。
6-2.駐車場を解体するかは慎重に検討する
駐車場を解体し、更地にして売却するかは、慎重に検討しましょう。
更地にするためにかかる解体費用は、接する道路の幅や近隣の環境によって大きく変わることがあります。解体費用が高額になるようであれば、土地の売却益が大きく減ってしまうかもしれません。
また、駐車場契約者との契約解除の交渉次第では、売却完了までの期間が長期化する恐れもあります。駐車場を解体してスムーズに売却するには、駐車場用地の売却経験が豊富な不動産会社の協力が必要です。
土地を早く売る方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
NTTデータグループが運営する一括査定サイト「不動産売却 HOME4U(ホームフォーユー)」では、厳選された全国の不動産会社の中から最大6社にまとめて査定依頼ができます。駐車場用地の売却経験が豊富な不動産会社も探しやすいため、ぜひご活用ください。
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まとめ
駐車場用地の売却には、駐車場のまま売却する方法と、更地にしてから宅地として売却する方法があります。
駐車場のまま売却する方法は、解体費用がかからないメリットがあるものの、買主が見つかるまでに時間がかかる可能性があります。
駐車場を更地にして宅地として売却する方法は、駐車場のまま売却する場合に比べ、早めの売却が期待できます。しかし、解体の費用や駐車場契約者との契約解除の手続きが必要になります。
駐車場用地の売却を成功させるには、こうした売却方法による違いや、かかる費用、税金に対する特例など、さまざまな点を考慮したうえで、駐車場用地の売却経験が豊富な不動産会社に相談しながら計画を進めるようにしましょう。