
親が亡くなって財産を相続した際、実家や土地など不動産が含まれている場合もあるでしょう。その財産(不動産)を今後利用する機会がないのであれば、売却することもひとつの方法です。そのまま放置していると維持費や固定資産税がかかるだけでなく、思わぬ税金がかかる場合もあり、金銭的な負担が後々大きなデメリットとなる可能性もあります。
この記事では、相続した不動産を売却するために押さえておくべきポイント、手続き方法や税金などについて詳しく説明します。相続した不動産の売却を考えている方はぜひ最後までお読みください。
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Contents
1.相続した不動産(家・土地)を売却するとかかる税金
相続した不動産を売却した際に課せられる税金には、以下のようなものがあります。
- 登録免許税
- 印紙税
- 消費税(建物の場合のみ。ただし、個人間での売買ではかからない)
- 譲渡所得税(譲渡所得にかかる所得税と住民税)
税金の未払いや申告漏れは、追徴課税のペナルティを受ける可能性があるので、しっかり確認しておきましょう。
1-1.相続登記の名義変更で発生する「登録免許税」
家や土地を相続する際は、登記簿の名義変更(相続登記)が必要となります。相続登記には「不動産価額×0.4%の登録免許税」がかかります。
登録免許税とは、不動産を取得したときの所有権登記や移転登記にかかる税金のことです。土地の売買にともなう登録免許税には、令和5年3月31日まで税率が軽減される特例が実施されています。ご自身の相続した不動産が対象になるか必ず確認しておきましょう。
なお、もしも相続した不動産に抵当権(住宅ローンなどの負債を担保する権利)がついていた場合は、相続放棄か債務の完済を行わなければなりません。
ただし、相続した不動産が居住用の住宅だった場合、団体信用生命保険(団信)に加入していることが多いでしょう。その場合は、残債は生命保険会社が賄います。団信に加入できずにローンを組んでいた場合のみ、不動産に抵当権がついたままになります。
抵当権が付いているかは「登記簿謄本(登記事項証明書)」に記録されています。相続が開始したらすぐに法務局のホームページから取得申請することをおすすめします。
1-2.売買契約書を作成する際にかかる「印紙税」
不動産を売る場合には、買主との間で不動産売買契約を結びます。その際、契約書には収入印紙を貼付することになっています。貼付する収入印紙の金額が、印紙税に当たります。
また、令和6年3月31日までは、不動産売買契約書に記載された契約金額が10万円を超える場合は印紙税が軽減される旨が、令和3年度の税制改正大綱で発表されています。必要となる際には、改めて確認しましょう。
印紙税の税率は、次の通りです。
契約金額 | 本来の税率 | 軽減税率 |
---|---|---|
10万円を超え 50万円以下のもの | 400円 | 200円 |
50万円を超え 100万円以下のもの | 1,000円 | 500円 |
100万円を超え 500万円以下のもの | 2,000円 | 1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下のもの | 1万円 | 5,000円 |
1,000万円を超え5,000万円以下のもの | 2万円 | 1万円 |
5,000万円を超え 1億円以下のもの | 6万円 | 3万円 |
1億円を超え 5億円以下のもの | 10万円 | 6万円 |
5億円を超え 10億円以下のもの | 20万円 | 16万円 |
10億円を超え 50億円以下のもの | 40万円 | 32万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 | 48万円 |
1-3.不動産売却での「消費税」
不動産売却では、消費税がかかるものと、かからないものがあります。
◇消費税がかかるもの:「建物」
建物の売買では消費税がかかります。不動産会社など課税対象者を通して売却する際には消費税がかかりますが、個人間で売買する場合は、消費税は非課税になります。
◇消費税がかからないもの:「土地」
土地の売却では、消費税はかかりません。ただし、建物や土地を不動産会社に仲介を依頼して売却する場合には、仲介手数料に消費税がかかるので留意しておきましょう。
1-4.不動産の売却益にかかる「所得税」「住民税」
相続した不動産を売却した際、買ったときの価格より高く売れた場合は、所得(譲渡所得)を得たことになるので、所得税と住民税がかかります。譲渡所得にかかるこれらの税金を総称して「譲渡所得税」と呼ぶことがあります(正式な税金の名称ではありませんが、以下通称として記載します)。
なお、「買ったときの価格」とは、亡くなった父母(あるいは祖父母)がその家を購入したときの金額です。売買契約書が残っているか、確認しておきましょう。
譲渡所得にかかる税金については、以下の記事を参照してください。
1-5.その他の「費用」について
譲渡所得税や印紙税のほかにも、書類取得に必要な「費用」があります。
例えば、住民票や不動産の登記事項証明書などの書類を取り寄せるためには、取得費用がかかります。住民票は1通300円、不動産の登記事項証明書は1通600円です(オンライン請求では500円、最寄りの窓口での受け取りは480円)。
また、不動産の相続登記を司法書士に委託する場合は報酬(手数料)を支払う必要があります(詳しくは司法書士報酬の平均値を参考)。依頼を検討している場合は相談をしてみましょう。
不動産売却にかかる税金については、こちらの記事もご覧ください。
2.相続した不動産を売却する前の手順
相続した不動産を売却するときは、不動産会社へ相談する前にやっておかなければならないことがあります。それは名義の確認と、相続した人の名義に変更することです。そのうえで必要書類を揃え、不動産会社に売却を依頼しましょう。
2-1.相続した不動産を売却する前に、相続登記が必要
家や土地を売却する場合は、売る人の名義に変更する必要があります。相続した不動産が、親名義のままになっていませんか?
まずは、相続人の名義に変更する「相続登記」の流れを確認しましょう。
相続登記の手続きは個人でもできますが、亡くなった方の戸籍謄本や除籍謄本、改製原戸籍謄本など、出生から亡くなった時点までのものをすべて揃える必要があります。また、遺産分割協議書など書類の作成もあるため、手間と時間がかかります。
専門家の力を借りたい場合は、司法書士に依頼しましょう。おおよその費用は、5万円~10数万円の司法書士報酬と、収入印紙代、交通費などの実費となります。
低額者10%の平均 | 全体の平均値 | 高額者10%の平均 | |
---|---|---|---|
北海道地区 | 28,320円 | 60,983円 | 97,843円 |
東北地区 | 35,457円 | 60,667円 | 99,733円 |
関東地区 | 39,212円 | 65,800円 | 103,350円 |
中部地区 | 37,949円 | 63,470円 | 116,580円 |
近畿地区 | 45,842円 | 78,326円 | 118,734円 |
中国地区 | 37,037円 | 65,670円 | 111,096円 |
四国地区 | 40,683円 | 65,578円 | 99,947円 |
出典:日本司法書士会連合会 司法書士報酬アンケート結果
2-2.共有名義にした場合、全員の同意を得ておこう
不動産を相続したとき、場合によっては兄弟姉妹で共有名義にするケースもあるでしょう。相続不動産を共有名義にすると、不動産全体を売却する際は共有名義者全員の同意が必要になります。そのため、この場合は名義者となっている兄弟姉妹全員の同意を得たうえで、不動産会社に売却を依頼します。
ちなみに、相続した不動産が売れた場合の代金は、共有名義者の持ち分通りに分配しなければなりません。売却にかかった経費も、持ち分の割合で分配して負担します。
2-3.不動産売却に必要な書類を揃えよう
不動産を売却する前に、必要書類を準備します。戸建て、マンション、土地によって必要な書類は異なるため、以下のリストで確認しておきましょう。
必要書類 | 一戸建て | マンション | 土地 | 交付場所 |
---|---|---|---|---|
登記簿謄本(登記事項証明書) | ✔ | ✔ | ✔ | 法務局窓口 オンライン申請 |
登記済権利証または登記識別情報 | ✔ | ✔ | ✔ | 法務局窓口 オンライン申請 |
土地測量図 境界確認書 |
✔ | ― | ✔ | 法務局窓口 オンライン申請 |
実印・印鑑証明書 住民票の写し 本人確認書類(運転免許証など) |
✔ | ✔ | ✔ | 市区町村役場 コンビニ (住民基本台帳カード・個人番号カード所持) |
売買契約書 | ✔ | ✔ | ✔ | 自分で用意 |
重要事項説明書 | ✔ | ✔ | ✔ | 自分で用意 |
固定資産税納税通知書 固定資産税評価証明書 |
✔ | ✔ | ✔ | 市町村役場都税事務所 (東京都在住者) |
物件の図面 設備の仕様書 (土地の場合) 土地測量図・境界確認書 |
✔ | ✔ | ✔ | 自分で用意 |
建築確認済証 検査済証 |
✔ | ― | ― | 市区町村役場 |
建築設計図書 工事記録書 |
✔ (任意) |
― | ✔ (任意) |
自分で用意 |
マンションの管理規約 使用細則 維持費関連書類 |
― | ✔ | ― | 自分で用意 |
耐震診断報告書 アスベスト使用調査報告書 |
✔ (任意) |
✔ (任意) |
― | 自分で用意 |
※1:2006年(平成18年)以前に購入した不動産には登記済権利証が交付され、2006年以降の場合は、12桁の英数字からなる登記識別情報が発行されています。
不動産売却時に必要な書類と取り寄せ方について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
3.相続した実家を売却する3つのメリット
誰も住まなくなった実家を売却すると、次のようなメリットが得られます。
- 維持費を払い続ける必要がなくなる
- 売却し現金化することで、遺産分割がしやすくなる
- 相続税の資金として利用できる
3-1.維持費を払い続ける必要がなくなる
相続した実家を売却すると、固定資産税など維持費を払い続ける必要がなくなるというメリットがあります。
相続した実家を空き家として長年放置してしまうと、「空き家対策特別法」により、自治体から「特定空き家」に指定されてしまうこともあります。特定空き家に指定されてしまうと、固定資産税の優遇措置からはずれ、最大6倍もの固定資産税が発生してしまいます。
空き家にするとしても、特定空き家に指定されないよう庭の手入れや外観保持などある程度の維持をし続けなければいけないため、維持・管理費は発生し続けます。売却することで、維持費を払い続ける必要がなくなる点は実家を売却するメリットです。
3-2.売却し現金化することで、遺産分割がしやすくなる
相続人が複数いる場合は、実家を売却し現金化することで均等に分割することができるというメリットがあります。
不動産を均等に分割することは難しく、遺産分割協議でトラブルになりかねません。実家を売却せず、共有名義で相続しても売却や活用をしたいときに全員の同意が必要になったり、固定資産税の負担でもめる要因にもなったりする可能性もあるでしょう。
相続した実家を売却し、利益を均等に相続人に配分することで、相続のトラブルを避けることが期待できます。
3-3.相続税の資金として利用できる
実家を売却して現金化することで、そのまま相続税の資金として活用できる点は大きなメリットです。
財産を相続した場合、一律に相続税をおさめなければいけません。現金や預金など金融資産を相続した場合は、そのまま相続税の納税資金として使えます。しかし、実家など不動産を相続した場合は、ある程度のまとまったお金が相続税の納税資金として必要になってきます。
実家を売却することで、相続税の資金を用意できる点はメリットと言えるでしょう。
以上のようなメリットはあるものの、実家を売却することで、家を維持してきた両親との思い出がなくなってしまうと申し訳ない気持ちになる方もおられます。また、家と土地の所有権を手放すことで、大きな資産がなくなってしまうというデメリットもあります。
しかし、長い眼で見てみると、実家の維持費は大きな出費となります。そこで、次のような状況の場合は、実家の売却を検討してみてもよいのではないでしょうか。
- 実家を継ぐ人がいない
- 遺された財産は現金よりも不動産のほうが多い
- 相続税が支払えない
実家を売却することで、税金の負担が軽くなり、スムーズに遺産分割できるようになります。売却に迷われている方は、将来的に固定資産税や都市計画税などの負担がどれくらいになるのか試算してみましょう。
相続した実家を売却する方法や手順、税金についてはこちらの記事もご覧ください。
4.相続した不動産を放置するリスク
相続した不動産を放置すると以下のようなリスクが生じるおそれがあります。
- 不動産の資産価値が下がる
- 「特定空き家」に指定され固定資産税が6倍になる
- 近隣トラブルの原因になる可能性
4-1.不動産の資産価値が下がる
相続した一軒家やマンションなどの不動産は、資産価値が時とともに下がっていきます。
相続した不動産が一戸建てなど建物の場合、時の経過によって資産としての価値が低下していくため「減価償却資産」と呼ばれます。建物が不動産の価値を保ち続けられる耐用年数は、国税庁によって法律で定められており、一戸建ての場合、約20~22年で0円になると言われています。
相続してすぐ売却すれば数千万円の価値がつくものでも、数10年も放置していたことで資産価値が低下し、売却しようにも売れないということにもなりかねません。相続した不動産は放置せず、賃貸や売却したり有効に活用することをおすすめします。
4-2.「特定空き家」に指定され固定資産税が6倍になる
相続した実家が一戸建ての場合、手入れなどを怠り放置すると次のような状態になるリスクがあります。
- 屋根、外壁、柱の老朽化による倒壊
- ゴミの不法投棄による衛生面の悪化
- 不法侵入などによる犯罪の温床化
- 景観の悪化
このような状態になってしまうと、空き家対策の法律「空家等対策の推進に関する特別措置法」で指定される特定空き家に指定されかねません。特定空き家に指定されてしまうと、実家が建っている土地の課税標準(固定資産税を計算する元となる固定資産税評価額)が6分の1に軽減される「住宅用地に対する課税標準の特例」が受けられなくなります。
つまり、手入れをしないで実家を放置していると、固定資産税が高くなってしまうのです。
空き家を所有する限り、固定資産税を払い続けなければいけないことに変わりはありません。不動産を放置する限り、固定資産税が6倍になってしまう可能性はリスクとしてついてまわります。
4-3.近隣トラブルの原因になる可能性
相続した一軒家やマンションの不動産を放置しておくと、近隣の住人とのトラブルの原因になる可能性もあります。
人が住んでいない長年放置された空き家は、経年劣化が進み倒壊の危険があったり、害虫や小動物が住みつき悪臭などの原因になることもあります。また、不法侵入や放火の対象になったりと周辺の治安悪化にもつながり周辺住民から行政へ苦情が入ることも考えられます。
マンションでも長期間人がいないことで、鳩やカラスなどが飛来しやすくなり巣を作ることでフンを落として階下や隣家に迷惑をかけることにもなりかねません。
相続した不動産を放置しておくと、トラブルの原因になりえることもあるというのは頭に入れておきましょう。
5.相続した不動産の売却時に利用できる特例
相続した不動産には、特に売却期限はありません。ただし、売却のタイミングによっては譲渡所得税を納めなければならなくなることがあります。
基本的には、不動産を売却して「買ったときよりも高く売れた場合」は譲渡所得税を納めなければなりません。相続した土地の生活環境が良く、地価が上がっている地域の場合は、売却益が出る可能性があります。その場合、次のいずれかの特例を利用することで節税できる可能性があります。
5-1.相続税の取得費加算の特例
相続で受け取った土地・建物・株式などを、相続したときから一定の期間内に売却した場合、相続税額の一定額を、譲渡所得を計算するときの取得費に加算することができる特例です。
この特例を利用する場合の売却期限は、【3年10ヶ月】 です。
5-2.空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例
2016年(平成28年)4月から始まったもので、親が住んでいた家を空き家にしていた場合、相続した年から一定の期間内に売却すれば、譲渡所得から3,000万円を差し引くことができる というものです(3,000万円の特別控除)。
この特例を利用する場合の売却期限は、【3年(相続した年から3年目の12月31日まで)】 です。
なお、「相続税の取得費加算の特例」と「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」は併用できません。
6.相続した不動産を売却する方法
相続した不動産を売却する場合は、売却のプロである不動産会社やコンサルティング会社に依頼するのが安心です。でも、不動産会社やコンサルティング会社のどちらを選べばいいのか迷うかもしれませんね。
不動産会社の場合は、複数の会社にコンタクトを取り、比較したうえで依頼先を選ぶことができるので、自分で納得のいく選択ができます。
不動産コンサルティング会社の場合は、相続登記から売買まで一括して依頼できるところがあります。また、相続した土地を活用したい、あるいは不動産投資に興味があるなど、売買以外の相談にも乗ってほしいときに利用するとよいでしょう。
ここでは、それぞれの会社に依頼する場合の特徴を説明します。
6-1.不動産会社に売却を依頼する
不動産を売却する際は、不動産会社に依頼するのが一般的です。売却の依頼は次の手順で行います。
(1)相続登記をする
(2)不動産会社を複数ピックアップし、コンタクトを取る
(3)信頼できる不動産会社に絞って、売却を依頼する
不動産会社を選ぶ際は、最初から1社に絞るのではなく、複数の会社に査定を依頼するのがおすすめです。
査定を依頼した場合、単に査定価格が高いという理由だけで会社を選ぶのはおすすめできません。その価格になった根拠を納得できるようていねいに教えてくれる会社であれば安心です。
そのうえで、担当者が自分と合うかどうか、信頼できるかどうかなどを見極めて、依頼する会社を選びましょう。
また不動産会社には、大手不動産会社もあれば、大手ではないが地域に密着した会社もあります。大手の場合は販売活動する手段も多く、広く活動してもらえます。地域密着型の場合はその地域での信頼度が高く、地域に特化した購入希望者の情報を持っている可能性があります。
複数の会社を選ぶ際には、大手と地域密着型のどちらも候補に入れておきましょう。
不動産会社を探すには、以下のような方法があります。
- 不動産売買の一括査定サイトで探す
- 新聞折込広告やポストに投函されるチラシで探す
- インターネットで検索して探す
- 売却物件のある地域に特化している不動産会社を探す
- 知人に紹介してもらう
不動産会社の比較ポイントや売却依頼先の選び方については、こちらの記事もご覧ください。
6-2.不動産コンサルティング会社に売却を依頼する
最近では、不動産売買のコンサルティングを専門にしている会社が増えています。不動産コンサルティングを行う会社には、相続財産に特化した会社、士業と組んで相続問題の解決や相続登記なども行っている会社、不動産投資専門の会社などがあります。
会社によって得意分野があるので、依頼する場合は「相続を扱っている会社であるかどうか」を確認しましょう。また、相続登記の手続きはコンサルティング会社で行ってくれるのかどうかも確認しましょう。
不動産会社と同じく、担当者と話をしてみて、自分に合っているかどうかを見極めることが大切です。
7.相続した不動産を売却した後の注意点
ここでは相続した不動産を売却した後の、注意すべき点について説明します。
7-1.利益が出た場合は確定申告が必要
相続した不動産を売却して利益が出た場合、税金がかかるため、確定申告が必要です。不動産を売却したことによる所得は「譲渡所得」のため、給料や配当金などの所得とは区分して税金を納める必要があります。
譲渡所得税の計算には、「課税譲渡所得金額」を計算します。課税譲渡所得金額は、次の計算式で求めます。
7-2. 「3,000万円の特別控除の特例」利用は確定申告が必要
家を売って利益がある場合は、最大3,000万円の特別控除が適用されます。この制度を「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」といいます。この特例の利用には、譲渡益にかかわらず確定申告が必要です。
参考:国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
(例)
- 取得費:4,000万円
- 譲渡価額:5,000万円
- 譲渡費用:200万円
- 特別控除額:最大の3,000万円とする
- 課税譲渡所得金額
=5,000万円-(4,000万円+200万円)-3,000万円
=-2,200万円
譲渡所得は-2,200万円のため、一見すると確定申告は不要に思えますが、特例を適用するために確定申告が必要です。
7-3.確定申告を行う時期
確定申告では、1月1日~12月31日までの所得を、翌年の2月16日~3月15日で申告します(社会情勢などにより変動があります)。ただし、電子申告(e-Tax)の場合は、翌年の1月から(2021年は1月4日から)確定申告ができるようになっています。
確定申告は、定められた期限までに申告することが大切です。申告期限を過ぎて確定申告をすると「延滞税」や「加算税」がかかるので、期限までに納付するようにしましょう。不動産売却における確定申告については、以下の記事を参照してください。
まとめ
いかがでしたか?この記事では、相続した不動産を売却するときにおさえておきたい知識について解説しました。
- 使わないことが分かっているなら相続不動産を売却することも検討する
- 相続した不動産を放置するとさまざまなリスクが起こる
- 売却を決めたら、まずは相続登記が必要
- 不動産を売却するとさまざまな税金がかかる可能性がある
- 不動産を売却する際に特例を利用すれば、節税することも可能
自分一人では不安という方は、相続が起きると分かった時点で、早めに不動産会社や不動産コンサルティング会社など、売却の専門家に依頼することをおすすめします。
この記事のポイント まとめ
不動産を売却する前後には、下記の税金がかかります。
- 売却前│登録免許税
- 売却時│印紙税
- 売却時│消費税
- 売却後│譲渡所得税(所得税・住民税)
詳しくは「1.相続した不動産(家・土地)を売却するとかかる税金」をご覧ください。
不動産を売却する前には、事前に済ませておくべきことが3つあります。
- 相続登記をして不動産の名義を変更する
- 共有名義の場合は、全員の同意を得ておく
- 不動産売却に必要な書類を揃える
詳しくは「2.相続した不動産を売却する前の手順」をご覧ください。
相続した不動産を売却すると以下のようなメリットがあります。
- 維持費を払い続ける必要がない
- 売却し現金化することで、遺産分割がしやすくなる
- 相続税の資金として利用できる
詳しくは「3.相続した実家を売却する3つのメリット」をご覧ください。