相続や住み替え目的の売買などで不動産の所有者が変わる際には、家の名義変更が必要です。名義変更していない不動産は、売却はもちろん、担保にして借り入れができず、場合によっては所有権を失うリスクもあります。
この記事では、名義変更が必要なケースのほか、手続きの流れ、必要書類、費用をわかりやすく解説します。
- 不動産の名義変更が必要なケース
- 不動産の名義変更の流れと必要書類
- 不動産の名義変更にかかる費用
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Contents
1.不動産の名義変更とは?
不動産の名義変更とは、法務局の登記簿に記録されている不動産の所有権を、新たに不動産を取得した所有者に移転することをいい、法律上は「登記」とも呼ばれています。
登記することで所有権を第三者に主張することができます(民法第177条)。
これを「登記の対抗力」といい、例えば、売主が売却した土地や建物を二重譲渡したり、抵当権を設定したりした場合でも、後から権利を取得した第三者に対し所有権を主張することが可能です。
なお、不動産の登記制度により、所有権などの権利の取得や消滅を誰でも閲覧でき、不動産の内容や権利関係を公示することで不動産取引の安全が図られています。
2.不動産の名義変更が必要なケース4つ
不動産の名義変更が必要となるのはどのような場合でしょうか。ここでは4つのケースについて解説します。
2-1.不動産を売買するとき
不動産を売買するとき、売主から買主へ名義変更が必要です。
登記手続きは原則、売主(登記義務者)と買主(登記権利者)が共同で行いますが、実務上は、新たに権利を取得する買主が所有権移転登記の手続きを行うのが一般的です。
そのため、代金決済や引き渡しと同日に手続きを行います。
なお、名義変更の手続きは自分で行うこともできますが、登記申請には専門的な知識や書類が必要となるため、通常は司法書士に依頼します。
2-2.不動産を相続したとき
不動産を相続したときも、亡くなった方(以下「被相続人」)から不動産を承継した相続人に名義変更の手続き(相続登記)が必要です。
相続が発生した場合、遺言書があれば基本的にその内容に従って相続遺産の分割が行われます。遺言書がなければ、相続人間で遺産分割協議を行い、不動産を含めたすべての相続財産の分割方法を話し合って決めます。
例えば、実家の土地と建物は配偶者、マンションは長男と長女が相続すると決まった場合、遺産分割協議を登記原因として、被相続人から配偶者あるいは長男と長女に名義変更を行うことになります。
このとき、単独ではなく複数人で1つの不動産を相続する場合、共有者名とともにそれぞれの共有持分が「持分二分の一」のように記載されます。
相続登記は、2024年(令和6年)4月1日より義務化されました。義務化以前に発生した相続についても相続登記の対象です。
相続によって不動産を取得した相続人は、相続で所有権を取得したことを知った日(通常は被相続人が亡くなった日)から3年以内に相続登記しなければなりません。
遺産分割協議によって不動産を取得した場合、遺産分割が成立した日から3年以内に登記する必要があります。正当な理由なく登記申請しなかった場合、10万円以下の過料の対象となるため、注意しましょう。
2-3.不動産の贈与を受けたとき
不動産の贈与を受けた場合も名義変更が必要です。
贈与とは、無償で自分の財産を譲り渡す意思表示をし、相手がこれを承諾することで成立する契約です。
贈与が成立した場合、贈与した方(贈与者)から贈与された方(受贈者)に所有権の移転登記をします。
なお、不動産を贈与した場合、贈与を受けた方は贈与税の対象となります。贈与税は1月1日から12月31日までの1年間に受けた贈与に対して課される税金で、110万円の基礎控除額があります。
贈与税の対象となる価格は時価ではなく、土地は相続税評価額、建物は固定資産税評価額です。ほかの贈与も含めて贈与した不動産の評価額が1年間で110万円以下であれば贈与税はかかりません。
2-4.離婚に伴い財産分与をするとき
夫婦が離婚に伴い財産分与するときも名義変更が必要です。
財産分与とは、夫婦が共同生活のなかで形成した財産を公平に分配するために、当事者の一方が他方に対して財産の分与を請求できる制度です。
夫婦が共同で築いた財産は、原則としてその貢献度は平等とみなされ、お互いが2分の1の権利を有することになります。
不動産については、婚姻期間中に夫婦共同の共有名義で購入した場合だけでなく、夫婦一方の名義で購入した不動産も財産分与の対象です。
不動産の財産分与は税制上、財産分与した方から受けた方に売買があったものと同じ扱いになります。そのため、不動産を購入したときの価格より低い価格で財産分与を行った場合は、譲渡所得税がかかります。
3.不動産の名義変更の流れと必要書類
不動産の名義変更はどのように進めていくのでしょうか、必要書類も含めて解説します。
3-1.不動産売買の場合
不動産売買の名義変更は次のような流れで進めます。
- 売買契約締結
- 決算・引き渡し
- 登記申請書の作成・法務局で申請
- 登記完了・登記識別情報の発行
不動産売買の取引は、一般的に売買契約を締結後、売買代金の決済と引き渡しが同時に行われます。
したがって決済、引き渡しの完了後、不動産を管轄する法務局で所有権移転登記の申請手続きを行います。
登記申請書を作成し、必要書類とあわせて申請することで手続きは完了です。申請後、法務局の審査から登記が完了し登記識別情報が発行されるまで1~2週間程度(郵送の場合は2~3週間)かかります。
登記手続きに必要な書類は以下のとおりです。
売主 |
|
買主 |
|
司法書士に依頼する場合は委任状のほか、売主・買主の本人確認書類が必要です。
3-2.不動産相続の場合
不動産を相続する方法はいくつかありますが、ここでは遺産分割協議に基づき名義変更する場合の流れを解説します。
- 必要書類の収集
- 遺産分割協議
- 遺産分割協議書の作成
- 登記申請書の作成・法務局で申請
- 登記完了・登記識別情報通知書の交付
相続登記の申請では、相続人の範囲を特定する(他に相続人がいないかを確認する)ため、まずは戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)などの書類を集める必要があります。
それにより相続人が確定し、遺産分割協議で不動産の分割方法を話し合い、相続人全員で合意した内容を遺産分割協議書にまとめます。
相続登記に必要な書類は次のとおりです。
亡くなられた方 |
(出生から死亡まで、在籍していた全ての戸籍・除籍謄本が必要) |
法定相続人 |
|
作成するもの |
|
相続関係説明図は、被相続人と相続人の関係を一覧をまとめた表で家系図のようなもので、作成・提出は任意です。
3-3.不動産贈与の場合
不動産を贈与する場合の名義変更の流れは次のとおりです。
- 贈与契約書の締結
- 登記申請書を作成・法務局で申請
- 登記完了・登記識別情報通知書の交付
必要書類は以下のとおりです。
贈与する方 (贈与者) |
|
贈与される方 (受贈者) |
|
司法書士に依頼する場合は、それぞれの本人確認書類が必要です。
3-4.財産分与の場合
財産分与における名義変更の流れは次のとおりです。
- 必要書類の収集
- 財産分与契約書などの作成
- 登記申請書の作成・法務局で申請
- 登記完了・登記識別情報通知書の交付
必要書類は以下のとおりです。
財産分与する方 |
|
財産分与を受ける方 |
|
その他 |
|
財産分与後のトラブルを避けるために、対象となる財産やどのように分けるかを財産分与契約書の書面で作成します。
財産分与を含め、離婚に際して取り決めたすべての内容を記載した離婚協議書でも代替可能です。
4.不動産の名義変更にかかる費用
不動産の名義変更にかかる費用には、登録免許税と司法書士に依頼した場合の報酬があります。
登録免許税は登記手続きの際に必要となる税金で、固定資産税評価額に税率をかけて算出します。
なお、固定資産税評価額とは、固定資産税を算出するために基準となる価格で、東京23区については東京都が、それ以外は各市区町村が決めます。
ケース | 登録免許税 |
---|---|
不動産を売買した場合 | 固定資産税評価額×0.015 (2026年3月31日まで軽減税率) ※本則:0.02 |
不動産を相続した場合 | 固定資産税評価額×0.004 |
不動産を贈与した場合 | 固定資産税評価額×0.02 |
財産分与の場合 | 固定資産税評価額×0.02 |
出典:“No.7191 登録免許税の税額表”. 国税庁. (参照2024-07-04)をもとに、お家のいろはが独自に作成
司法書士へ支払う報酬は自由化されており依頼先によって変わります。売買に伴う登記手続き(所有権移転登記)であれば、5~10万円が相場です。
また相続登記の場合は、相続登記の申請費用のほか、遺産分割協議書や相続関係説明図の作成、戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)などの必要書類の収集に追加費用がかかる場合があります。
一般的には、相続登記の申請で6~13万円、遺産分割協議書の作成なども含めて依頼する場合、9~15万円が相場です。
贈与もしくは財産分与の場合も、贈与契約書や財産分与契約書の作成を依頼するかで報酬が異なり、契約書の作成を含めて3~9万円が相場になっています。
その他、戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)や印鑑証明書、住民票、固定資産評価証明書などの実費が必要です。
5.不動産の名義変更を行わないとどうなる?
相続登記は義務化されましたが、売買や贈与で不動産を取得した場合、法律上の登記義務はありません。しかし名義変更を行わないことにより、さまざまなリスクが発生します。
名義変更していない不動産を売却することや、担保にして金融機関から借入することが難しくなります。第三者への対抗要件(権利を主張するための要件)を備えていないため、所有権そのものを失う可能性もあります。
また、相続で複数の法定相続人が不動産を承継した場合、共有者が多ければ権利関係が複雑になるだけでなく、新たに共有者に相続が発生すればさらに共有者が増え、名義変更が難しくなる恐れがあります。
したがって、新たに不動産を取得した場合、早めに名義変更することが大切です。
名義変更しても活用する予定がなく、固定資産税などの負担がかかる不動産は、売却を検討するのも一案です。
不動産を高く早く売却するためには、複数の不動産会社を比較検討し、信頼できる会社に依頼することが重要です。
最適な不動産会社を選ぶためにも、一度に最大6社に査定を依頼できる不動産一括査定サイト「不動産売却 HOME4U(ホームフォーユー)」の活用をおすすめします。
まとめ
名義変更が必要なケースとして、「売買」「相続」「贈与」「財産分与」の4つを紹介しました。名義変更せずにいるとさまざまなリスクがあるため、所有者移転登記が必要です。
所有権移転登記には、登録免許税や必要書類の実費のほか、司法書士に依頼する場合、報酬が必要となります。
また、相続税の支払いのために不動産を売却しなければならない場合などは、名義変更と不動産売却を相続税の申告期限に間に合わせることが重要です。
相続した不動産の有効活用が難しい場合は、売却を検討してみるのもよいでしょう。NTTデータグループが運営する「不動産売却 HOME4U」をぜひご活用ください。
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