【分かりやすい!根抵当権とは?】抵当権との違いや抹消方法まで解説

根抵当権(ねていとうけん)は、融資を受けた際に土地や家に設定される抵当権の一種です。根抵当権による融資は、少ない手続きで、繰り返し資金を借りられるといったメリットがあります。一方で、注意したいリスクもあり選ぶ際には十分な注意が必要です。

本記事では、根抵当権と通常の抵当権の違いや、メリット・デメリット、一般消費者がどのような場合に根抵当権を使うかなどを解説します。

不動産の売却を検討されている方は、『不動産売却の基本』『【図解】不動産売却の流れと期間』も併せてご覧ください。

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1.根抵当権とは

根抵当権とは、不動産を担保にして融資を受けた際に、その不動産に対して設定される抵当権の一種です。

通常の抵当権と同様に、融資の返済が滞ると金融機関は根抵当権を設定した不動産を差し押さえます。その後、競売などで不動産を売却し、その利益で融資の元本や損害金を回収します。

1-1.反復した融資が可能な抵当権

根抵当権は、契約時に定めた借り入れ上限額(極度額)の範囲で、「何度でも反復して融資を受けられる」という特徴を持った抵当権です。

たとえ当初借りた融資を返済したとしても、新たな契約を結ぶことなく再び極度額まで資金を借りられるのです。

また融資を返済している途中でも、極度額の範囲内で追加の融資を受けることもできます。仮に極度額3,000万円の根抵当権で、既存借り入れの残債が1,000万の場合、追加で2,000万円まで融資が受けられます。

1-2.通常の抵当権との違い

通常の抵当権と根抵当権の大きな違いは、融資の目的が限定されるかどうかにあります。通常の抵当権による融資は、契約時にその使い道を厳格に定めます。
一方の根抵当権での融資では、使い道が幅広く決められることが一般的です。

例えば、通常の抵当権が使われる代表的なシーンに、住宅ローンの融資があります。
住宅ローンでは融資の使い道を、契約時に定めた建物や土地の取得に限定しています。
そのため、返済が終われば役目を終え、効力をなくします。
抵当権は、一度切りの融資に使われるということです。

根抵当権でも融資の目的を決めますが、それは事業用途などの比較的大きな括りであり、その範囲内であれば自由に融資を使えます。
将来に再度借り入れる可能性もあるため、返済が終わっても抹消しない限り根抵当権は残り続けます

抵当権と根抵当権の主な違い
抵当権 根抵当権
主な利用シーン 住宅の購入など 事業資金の借入など
担保される債権 一つの債権 複数の債権
解除の方法 ・借入金の完済
・抹消登記
・債権者・債務者双方の合意
・借入金の完済
・抹消登記

2.根抵当権のメリット

根抵当権には、反復して融資を受ける際の手続きが不要なこと、登記にかかる費用を抑えられることの、2つのメリットがあります。

2-1.反復して融資を受ける場合の手続きが不要

通常の抵当権で新たな融資を受けるには、その時点での担保を評価し、再度抵当権を設定する必要があります。

一方で根抵当権は、極度額まで何度でも融資する前提で設定されていますので、抵当権の再設定を含めた様々な手続きが省略できます。
反復した融資を必要とする事業などでは、企業や事業者側の資金調達の手軽さだけでなく、金融機関側の手続きの簡略化にも寄与しています。

2-2.登記にかかる費用を抑えられる

根抵当権では、登記にかかる費用を抑えられるメリットもあります。

通常の抵当権と根抵当権のどちらも、担保になる不動産にその権利を登記する必要があります。しかし通常の抵当権は、借り入れのたびに登記することになり、その都度登記費用がかかります。

仮に、1,000万円の抵当権を設定する登記費用と、融資の契約書に貼る印紙代を合わせると、およそ11~16万円の費用がかかります。

項目 費用の目安
登録免許税 4万円
※借入額(あるいは極度額)×0.4%
司法書士報酬 5~10万円
印紙代
(金銭消費貸借契約書用)
2万円
※契約金額が1千万円超え
5千万円以下の場合

さらに通常の抵当権の融資では、新たな借り入れをする際に以前の抵当権を抹消しなければなりません。抹消登記は、登録免許税が不動産1件につき千円、司法書士報酬が1万4千円から2万円かかります。

すべてを合計したおよそ12万円弱の費用が、通常の抵当権では融資を受けるたびに必要です。

根抵当権は初めに登記をするだけで何度でも融資が受けられるため、登記費用は1回で済むことになります。

3.根抵当権のデメリット

限度額内で手軽に何度も、しかも諸費用を抑えながら借り入れできる根抵当権の融資は、とても利便性が高いように見えます。
しかし以下のようなデメリットもあり、利用の際には十分な注意が必要です。

  • 抵当権より抹消しにくい
  • 他の金融機関からの融資を受けにくくなる

3-1.抵当権より抹消しにくい

根抵当権の抹消には金融機関側の合意が必要であり、このため通常の抵当権と比べて抹消がしにくくなる場合があります。

まず、根抵当権の抹消には元本確定という手続きが必要になります。
元本確定は、債務の額(返済する金額)を確定させて、それ以上借入できない状態にすることです。

また、「残った債務を不動産の売却で補い、根抵当権を解除したい」といった債務者側の要望を、金融機関が聞き入れないケースもあります。
抵当権が残っている不動産を購入する人はほとんどいないため、根抵当権が抹消されない限り、思うように売却をできません。

3-2.他の金融機関からの融資を受けにくくなる

根抵当権を設定すると、その不動産に対して他の金融機関からの融資を受けにくくなります。後から設定した根抵当権では、万が一返済が滞った場合に、融資した資金を回収できなくなる恐れがあるからです。

返済が滞ると、金融機関は不動産を差し押さえ、競売にて売却し債務の回収を図ります。
ただ、競売などで得たお金は、早く設定された抵当権者から順に分配されます。

もし、先に設定されていた根抵当権の残債が多ければ、後から設定した根抵当権者には資金が十分に回ってこないかもしれません。

こうしたことから、すでに根抵当権が設定してある不動産に対しては、他の金融機関は融資に消極的になると考えられます。

4.根抵当権が必要になるケース

一般消費者が、根抵当権を設定するような融資を利用することは少ないでしょう。
しかし、まれに根抵当権を使う融資が必要になることがあります。ここでは、根抵当権を利用する以下3つのケースを紹介します。

  • 企業や経営者が融資を受ける場合
  • 注文住宅を購入する場合
  • リバースモーゲージを利用する場合

4-1.企業や経営者が融資を受ける場合

根抵当権が使われるケースでもっとも多いのは、企業や経営者が融資を受ける場合でしょう。企業は、事業の拡大とともに融資が必要になる機会が増え、しかもスピーディーに資金を調達したい場面もよくあります。

繰り返し、しかも素早く融資が受けられる根抵当権は、そうした企業や経営者のニーズに適しています。また、何度融資を受けても登記の費用が1回で済む点も、資金を借りる機会の多い企業のメリットになっています。

4-2.注文住宅を購入する場合

注文住宅は、工程が進むごとに着工金や上棟金といった名目で、代金を分割して支払います。
また、土地を購入して家を建てる場合は、先行して土地の支払いも発生します。

このため注文住宅を購入する際には、本来一括で融資される住宅ローンを、分割で融資する(分割融資)場合があります。
分割融資では、複数回の融資を受けることになるため、根抵当権が設定されます。

分割融資の行われ方

分割融資と同じく、家の完成前の支払いに利用できる融資に、つなぎ融資があります。
こちらは無担保ローンのため、土地や建物に抵当権を設定する必要がなく登記費用がかかりません。そのため根抵当権は設定されず、住宅引き渡しの際には、通常の抵当権で住宅ローンが融資されます。
ただし、分割融資に比べると利息が高めです。

4-3.リバースモーゲージを利用する場合

リバースモーゲージとは、自宅を担保にして生活資金を借りるローン商品です。
60歳以上など年齢制限のある商品が多いこと、毎月の返済が利息のみのため支払いの負担が低めなことなどが特徴です。

このリバースモーゲージを利用すると、自宅に根抵当権が設定されます。契約者が亡くなると相続人に一括返済が求められ、難しい場合は根抵当権によって自宅を差し押さえたうえで自宅売却するなどして返済に充てます。

今後の生活資金等を考えるなら、自宅の売却も検討してみましょう。
不動産会社の査定を受け、売却における自宅の価値を知ったうえで、リバースモーゲージと比較してはいかがでしょうか

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5.根抵当権を抹消する方法

根抵当権の抹消手順

根抵当権の融資を利用する予定がなくなった場合は、早いうちに抹消しておくことをおすすめします。

根抵当権の抹消は、以下の手順で行います。

5-1.根抵当権者の同意を得る

まずは、根抵当権を抹消したいことを根抵当権者である金融機関に伝え、同意を得ましょう。

根抵当権の抹消には、根抵当権者と根抵当権設定者、双方の合意が必要なためです。

5-2.元本確定をする

金融機関から抹消の合意を得たら、元本確定をします。
元本確定とは、債務(いつまでにいくら返済するのか)を確定させることで、今後の借り入れもできなくなります。

要は、通常の抵当権と同じような状態になり、完済することで根抵当権の効力も消えます。

5-3.根抵当権の抹消手続きを行う

元本確定後、残債を返し終えたら根抵当権の抹消登記を行います。
まずは、金融機関から抹消登記に必要な以下の書類を受け取ります。

  • 登記原因証明情報(解除証書、弁済証書など)
  • 登記識別情報(登記済証)または根抵当権設定契約書
  • 金融機関の資格証明書または登記事項証明書
  • 抹消登記手続き委任状

その後、抹消登記を司法書士に委任する場合は、この書類を司法書士に引き渡します。
自分で抹消登記をする場合は、申請書を作成し、上記の書類に加え本人確認書類と印鑑を用意したうえで、法務局にて手続きを行います。

まとめ

根抵当権による融資は、契約時に定めた極度額の範囲内なら、何度でも借り入れが可能です。
さらに、追加融資を受ける手続きが簡単で、通常の抵当権に比べ登記費用も抑えられるといったメリットがあります。

一方で、根抵当権は抹消しにくい場合があるほか、他の金融機関からの融資が受けにくくなるといったデメリットもあります。

一般の方が根抵当権を使うケースはまれで、利用するのは頻繁に融資を必要とする企業や事業主がほとんどです。
ただ、リバースモーゲージや注文住宅購入時の分割融資では、一般の方でも根抵当権が必要になる場合がありまます。
その際は、慎重に考えていきましょう。

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