住宅ローンは借り方次第で、審査の通りやすさや融資額などが変わります。
住宅ローンにおける連帯債務とは、借り方の一つであり、審査が通りやすくしたり、融資額を多くしたりできる方法です。
ただし、連帯債務にはデメリットもあります。
他の借り方との違いや注意点をよく知り、検討していきましょう。
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Contents
1.住宅ローンの連帯債務型とは?
連帯債務とは、複数人で債務を負う方法です。
簡単に例えると、ある借金を複数人で負担している状態です。
住宅ローンには連帯債務で契約するプランがあり、これを住宅ローンにおける「連帯債務型」と呼んでいます。
この章では、連帯債務型の住宅ローンをより深く理解するために、以下3つの項目に分けて詳しく解説していきます。
1-1.収入合算ができる借り方の一つ
連帯債務型とは、夫婦や親子などの関係ある2人が、共同で住宅ローンを借りる方法です。
住宅ローンは単独かつ保証人無しで借りることもできますが、この場合1人の信用に頼るため、多額の融資を受けるのは比較的難しくなります。
一方の連帯債務型では、2人の収入を合算して審査を受けられるため、審査に通りやすくなったり、融資額を多くしたりできます。
連帯債務型では、2人で審査に臨みますが、基本的に主な債務者は住宅ローンを申し込んだ方になります。
主な債務者をそのまま主債務者と呼び、もう一方を連帯債務者と呼びます。
なお、収入を合算して住宅ローンを借りる方法には、他に「連帯保証型」があります。
連帯債務型と連帯保証型は非常に混同しやすいため、「1-3.連帯保証型との違い」で改めて解説します。
1-2.連帯債務型が利用できる人
住宅ローンについてのルールは各金融機関により異なります。
連帯債務型を利用できる方の条件についても同様に各社異なるため、それぞれの金融機関へ事前に確認しておきましょう。
参考までに、住宅金融支援機構の「フラット35」では、収入合算を利用できる方について、以下の要件を定めています。
- 申込人の親や子、配偶者などであること
- 申込み時の年齢が70歳未満であること
- 申込人と同居すること
- 連帯債務者となること
上記は、要するに連帯債務者となるための条件となります。
全てを満たしていても、「主債務者の問題でそもそも住宅ローンを受けられない」といった場合もあるので注意しましょう。
なお、連帯債務型で住宅ローンを組むということは、「2人の力で不動産を購入する」ことになるため、不動産の所有権は共有した状態になります。
お互いが持つ所有権の割合を持分と呼び、融資額に対するそれぞれの貢献度に応じて持分が決まります。
連帯債務型は、共有不動産になることが前提とも言えるため、それに納得できる方でなければ利用すべきではないでしょう。
1-3.連帯保証型との違い
連帯債務は、複数人の債務者が同じ債務を持つことを言います。該当する全員が同じく債務者であるということです。
一方の連帯保証は、あくまで債務者の債務を保証することを言います。
連帯して債務を負っているという点では同じのため、住宅ローンでは「連帯債務型」「連帯保証型」のどちらでも収入合算して審査を受けられます。
2つの住宅ローン契約方法は大きく変わりがありませんが、以下3点においては違いがあります。
- 団体信用生命保険
- 住宅ローン控除
- 所有権
団体信用生命保険(以下、団信)は、債務者が死亡した場合などに、住宅ローンの残債が返済される保険です。
連帯保証人は、住宅ローンの債務を負わないため、団信に加入できません。
連帯債務者も基本的には団信に加入できませんが、「連生団信」というプランが選択できる金融機関では、連帯債務者も団信に加入できます。
住宅ローン控除は、住宅ローンの債務者が受けられる減税制度です。
連帯保証人は、債務者でないため住宅ローン控除を受けられませんが、連帯債務者は住宅ローン控除を受けられます。
不動産の所有権については、連帯債務型で購入した場合、債務者同士で所有権を共有した状態になります。お互いが力を合わせて購入した不動産だからです。
一方の連帯保証型は、債務者は一人であるため、原則的に所有権は単独のものとなります。連帯保証人が何らかの事情で住宅ローン返済を請け負うまでは、債務者一人で購入した不動産と考えられるためです。
2.連帯債務型とペアローンの違い
ペアローンは2人で住宅ローンを借りる方法です。連帯債務型や連帯保証型は、あくまで1つのローンを借りる方法ですが、ペアローンは2人が別々のローンを借りるため2つのローンを組みます。
この章では、ペアローンとはどんなローンかについてと、ペアローンが利用できる人について解説します。
2-1.1つの不動産に対して2つの住宅ローンを借りる方法
ペアローンは、1つの不動産に対して2つの住宅ローンを借りる方法です。夫婦などのペアである2人が、それぞれ別の住宅ローンを借りて、各自が責任を持って自分のローンを返済します。
ただし、同時にお互いが相手のローンの連帯保証人にもなります。もし、一方がローンの返済ができなくなった場合、ペアを組むもう一方に相手のローンを返済する責任が発生します。
ペアローンは異なる2つのローンですので、ペアを組む2人とも団信に加入できます。
連帯債務型の住宅ローンで団信に入れるかは、金融機関やプランによるので、2人とも団信に入れるペアローンとの大きな違いになっています。
また、住宅に対する減税制度のローン控除も、2人とも各自が借りたローンの残りの額に対して受けられます。
2-2.ペアローンが利用できる人
ペアローンを利用できるのは、主に「夫婦」や「親子」といった関係の2人です。
金融機関の中には、「婚約者」や「同性パートナー」※でも、利用可能としているところもあります。
※公的な書類の提出が必要になる場合があります。
ただし、ペアのそれぞれが、年齢や収入、勤続年数、健康状態といった条件をクリアし、住宅ローンの審査を通過する必要があります。
3.住宅ローン組み方別のメリット・デメリット
住宅ローンの組み方は、単独のものを除けば、「連帯債務型」「連帯保証型」「ペアローン」に分けられます。
それぞれの違いを簡単にまとめると以下の様になります。
この章では、それぞれの方法におけるメリットとデメリットについて、詳しく解説していきます。
3-1.連帯債務
連帯債務は、住宅ローンを借りた時点から、債務者と連帯債務者が同じようにローンを返済する責任を負う借り方です。
この連帯債務には、次のようなメリット・デメリットがあります。
メリット
連帯債務では、住宅ローンを借りた時点から、債務者と連帯債務者が同じようにローンを返済する責任を負います。
お互いが債務者となるため、債務者の収入と連帯債務者の収入が合算でき、ローンの審査を通りやすくしたり、借りられる金額を増やしたりできます。
さらに、債務者と連帯債務者の両方が、住宅ローン控除を受けられるというメリットもあります。
また、連帯債務で借りるローンはあくまで1つなので、ペアローンのように2つのローンを借りる方法に比べると、事務手数料などの諸費用が1つで済む利点もあります。
デメリット
連帯債務では、主債務者しか団信に加入できないことがあります。
団信とは、加入者が亡くなった場合などにローン返済が不要になる保険です。
連帯債務者が亡くなって収入が減ってしまうと、残された債務者の収入だけではローンの返済が苦しくなる可能性もあり注意が必要です。
なお、金融機関によっては、主債務者と連帯債務者の両方が加入できる「連生団信」を用意しています。
通常の団信よりも保険料が高くなりますが、万が一のときの返済が心配な方は、扱っている金融機関を探してみましょう。
3-2.連帯保証
連帯保証は、債務者が返済できなくなった場合に、連帯保証人が返済の責任を負う住宅ローンの借り方です。この連帯保証には、次のようなメリット・デメリットがあります。
メリット
連帯保証では、連帯保証人の収入を合算することで、債務者のみで申し込むより多くの額の住宅ローンを借りられる可能性があります。
また、連帯保証はローンが1つであるため、2つの住宅ローンを組むペアローンに比べ、事務手数料や登記費用などの諸費用を抑えられます。
連帯債務者と異なり、連帯保証人は購入する物件の所有権を取得しないのが一般的です。
債務者が不動産の持ち主となり、権利関係がすっきりするため、ある意味ではメリットと言えます。
デメリット
連帯保証では、住宅ローン控除を受けられるのは債務者のみで、連帯保証人は控除を受けられません。これは、連帯債務やペアローンのように、2人が控除を受けられる借り方と大きな違いです。
また、団信に加入できるのも債務者のみです。万が一、連帯保証人が亡くなるなどした場合でも、住宅ローンの返済が債務者に残ります。
3-3.ペアローン
1つの不動産に対し、2人がそれぞれで住宅ローンを申し込むペアローンには、以下のようなメリット・デメリットがあります。
メリット
ペアローンでは、2人の収入を合わせた総額に対して融資の上限額が設定されるため、1人で申し込むより多額の住宅ローンを借りられます。
また、2人とも住宅ローン控除を受けられるうえに、両者が団信に加入できるのも大きなメリットです。
さらに、ペアローンは各自の借入条件を自由に決められ、金利タイプや返済期間をそれぞれ選べます。
例えば、一方は固定金利を選んで支払い額を安定させ、もう一方は金利の低い変動金利を選び支払額を抑えるといったことが可能です。
デメリット
ペアローンでは、2つの住宅ローンを借りるため、事務手数料や契約書の印紙税、登記費用などの諸費用も2契約分かかります。
また、ペアローンでは2人とも団信に加入できますが、一方が死亡などしたときに保険で返済されるのは亡くなった方のローンだけです。もう一方のローン返済は継続される点に、注意が必要です。
4.住宅ローンの連帯債務型が向いている人の特徴
住宅ローンの連帯債務型が向いているのは、次のような特徴を持つ方になります。
4-1.単独では審査が不安
連帯債務型の住宅ローンは、債務者の単独では住宅ローンの審査が通るか不安な方に、向いています。
連帯債務者の収入を合算し、返済能力を上げることで審査に通過しやすくなるためです。
さらに、連帯債務型で収入を合算することで、より多くの額を住宅ローンで借りられるため、購入できる建物や土地の予算枠を広げたい方にも適しています。
4-2.収入が減少する可能性が少ない
連帯債務は多額の借入が可能になりますが、それだけ返済額も増えます。もし、連帯債務者が病気や出産などで収入が減ると、返済が困難になる恐れがあります。
そのため、連帯債務型の住宅ローンは、収入が減少する可能性が少ないお仕事の方に向くといえます。
例えば、共働きをやめる予定がない方や、子育てに専念するため一時的に休職しても、職場復帰が可能なお仕事に就いている方なら、収入が減少することは少ないでしょう。
また、契約社員や期間社員などではなく、安定した雇用が期待できる正社員の方にも適しているといえます。
4-3.契約時の諸費用を抑えたい
連帯債務型は、住宅ローンの諸費用を抑えたい方にも向いています。連帯債務型は、利用する住宅ローンが1つのため、登記費用や事務手数料、印紙税などの諸費用も1つ分で済みます。
これに対し、ペアローンは住宅ローンが2つになるため、諸費用も2つ分かかります。このため、連帯債務型の方が諸費用を抑えられることになります。
5.連帯債務型ではリスクの把握と対策が大切
連帯債務型を利用する際は、リスクを十分に把握し、対策を取っておくことが重要です。
連帯債務型は、多額の借入が可能になる半面、返済額も大きくなりがちです。もし、連帯債務者が仕事を辞めて収入が減少すると、返済が困難になる可能性があります。
そのため、無理のない返済額になるよう借入額を調整することが大切です。
さらに、連帯債務者が亡くなった場合には、収入が途絶え、返済が負担となり破産する恐れもあります。
こうしたリスクに備え、連帯債務者に万が一があった際にもローンが返済される、連生団信に加入できる住宅ローンも検討しましょう。
また、将来、債務者と連帯債務者が離婚してしまうかもしれません。住宅ローンの返済義務は、離婚後も債務者と連帯債務者の両者に継続されます。
「家を出ていく方が、居住しない家の返済義務があることに納得できず、トラブルに発展」といったケースもあります。
離婚を見据えて新居の購入をする方はいないかと思いますが、そうしたリスクがあるということをお互いが認識したうえで、住宅ローンの借り方を決めましょう。
まとめ
連帯債務は、債務者と連帯債務者の収入を合算し、より多くの額の住宅ローンを借りられるようにする借り方の一つです。
連帯保証とは異なり、連帯債務者も住宅ローン控除が受けられ、建物や土地の所有権に持分を持ちます。
また、2人がそれぞれ住宅ローンを組むペアローンに比べ、諸費用を抑えられるメリットもあります。
一方で、連帯債務者が団信に加入できない住宅ローンもあり、連帯債務者が亡くなって収入が減ると返済が困難になる恐れがあります。
他にも、連帯債務者が仕事を辞めると返済の負担が大きくなることや、離婚後も連帯債務者に債務が継続するといった注意点があります。
連帯債務はメリットだけでなく、デメリットや他の借り方との違いも十分把握したうえで選択するようにしましょう。
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