不動産を売却する際の価格の決め方は?流れや売り出し価格を決めるポイント

不動産の売り出し価格の決め方とは?流れや売り出し価格を決めるポイント

不動産の売却を成功させるために重要なのが「売り出し価格」です。

不動産はそれぞれ特徴が異なり、不動産市場の動向も影響するため、売り出し価格を決めることは簡単ではありません。

この記事では、売り出し価格の決め方や流れ、押さえておくべきポイントについて解説します。

この記事を読むとわかること
  • 不動産売却価格の決め方と価格の種類
  • 売り出し価格を決めるまでの流れ
  • 売り出し価格を決める際のポイント
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1.不動産の売却価格の決め方と価格の種類

不動産売却に関する価格は、「売り出し価格」を含めて5種類あります。

それぞれの価格は不動産売却のステップが進むごとに登場するため、何を意味する価格であるかや、どのように決まるのかを知っておくことが大切です。

ここでは、不動産が売れるまでの価格について個別に解説します。

不動産売却の基本的な流れについて把握したい方は、以下の記事もご覧ください。

1-1.「相場価格」は過去の売却実績を参考にした予想価格

「相場価格」は、売却する土地や建物が不動産市場でどれくらいの価値を持つものかを示すもので、市場価格ともいえます。

不動産会社が査定して売主に示す価格を査定価格といいますが、その不動産の価値を示すという意味では、査定価格と相場価格は同じです。

相場価格は不動産会社でなくてもある程度は調べることができますが、不動産の状態がそれぞれ異なることに加え、不動産市況の影響も受けるため、実際には簡単ではありません。正確な相場価格を知るためには、不動産会社に査定を依頼する必要があります。

また、不動産会社が相場価格を算出する方法はいくつかあります。

比較的多く用いられるのが「取引事例比較法」です。これは、同一エリアか周辺エリアにおける類似不動産の取引事例を基に、不動産の持つさまざまな要素をプラスあるいはマイナス評価しながら査定する方法です。

とはいえ、不動産会社が提示する相場価格(査定価格)が会社によって異なることは珍しくありません。不動産会社によって評価基準が異なるためです。

特に、一戸建てや土地は、マンション以上に相場価格に違いが出やすい傾向があります。

1-2.「売却希望価格」は売主が希望する売却価格

「売却希望価格」は、売主が希望する売却価格です。

不動産売買においては、誰にいくらで売却するかは売主が自由に決められます。不動産の価格は需給関係で決まることが一般的ですが、買主さえ見つかれば、売却価格に制限はないのです。

また、状況によっては、住宅ローン残債から売却希望価格が決まるケースもあります。不動産を売却するためには住宅ローンを完済し、金融機関が設定した抵当権を抹消する必要があるためです。

この点については、「2-2.住宅ローン残債を把握する」で詳しく解説します。

1-3.「売り出し価格」は実際に売り出されるときの価格

「売り出し価格」は、販売活動を始めるにあたって、実際に不動産を売り出す価格です。

売却希望価格を売り出し価格とすることもできますが、実際には、相場価格と売却希望価格、売却にかけられる期間などを考慮しながら決めることが多いといえます。

相場価格と比較し、売り出し価格が高ければ高いほど売却しづらくなり、販売期間も長期化しやすくなります。そのため、販売開始時の市場動向や売主の状況を含めて、適切な価格を判断することになるでしょう。

1-4.「購入希望価格」は買主が希望する購入価格

「購入希望価格」は買主が購入を希望する価格です。

買主は、準備できる自己資金や住宅ローン借入金額に基づいて購入予算を決めています。予算の範囲内で購入できる不動産を探し、最終的には不動産購入申込の時点で購入希望価格を決定します。

不動産購入申込は売買契約とは異なり、売主に対して正式にその不動産を購入したいという意思表示をすることです。「不動産購入申込書」あるいは「買付証明書」という書面で行い、この際に価格面や引き渡し時期などについての交渉が入る場合があります。

つまり、売り出し価格に対して、交渉のために買主が提示する価格が購入希望価格なのです。ただし、買主の購入希望価格に応じるか否かは、売主が判断します。

1-5.「成約価格」は売主と買主が合意して取引する価格

「成約価格」は、最終的に売主と買主が合意する価格であり、売買契約書に記載される売却価格です。

売り出し価格がそのまま成約価格となることもあれば、売主が売却活動中に価格を変更する場合や、買主からの価格交渉に応じて成約価格を下げる場合もあります。

参考に、売り出し価格と成約価格にどれくらいの差があるのかを、価格に違いが出やすい中古戸建てを例に見てみましょう。

次の図は、2019年から2023年において、中古戸建ての売り出し価格と成約価格をまとめたものです。

売り出し価格 成約価格 乖離率
2019年 3,827万円 3,115万円 約18.6%
2020年 3,753万円 3,110万円 約17.1%
2021年 4,057万円 3,451万円 約14.9%
2022年 4,360万円 3,753万円 約13.9%
2023年 4,294万円 3,848万円 約10.3%

“首都圏不動産流通市場の動向(2023年). 公益財団法人東日本不動産流通機構”. 2024-01-22. (参照2024-06-26)をもとに、お家のいろはが独自に作成

年によって差があるものの、売り出し価格に対して成約価格は、10%以上乖離しています。

つまり、それだけ値引きされていることがわかります。

2.売り出し価格を決める流れ

売り出し価格を決める流れ

成約価格に影響するのは売り出し価格です。ここでは売り出し価格を決める流れについて解説します。

2-1.類似物件の価格を調べる

売り出し価格を決めるためには、まず条件が類似する物件の価格を調べることから始めましょう。

類似物件を把握することで、不動産会社の査定価格に差がある場合も適正価格を判断しやすくなるため、売り出し価格を間違うリスクを減らせます。

類似物件の価格を調べるときに活用できるサイトが、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」です。

同サイトでは、過去の不動産取引価格や公示地価の推移、防災情報などを地域ごとに調べることができます。

過去の成約情報は、所在地や最寄り駅、土地・建物の面積、築年数などの条件を設定し、調べることが可能です。

ただし、過去の取引事例がすべて登録されているわけではないため、類似物件が見つからない場合もあります。

2-2.住宅ローン残債を把握する

住宅ローン残債は売り出し価格に影響するため、しっかりと把握する必要があります。

不動産を売却するためには、住宅ローンを完済しなければなりません。この際に考えられる状況としては、「オーバーローン」と「アンダーローン」の2パターンがあります。

オーバーローンとは、住宅ローン残債が売却価格を上回る状態、つまり不動産の価値より住宅ローン残債のほうが高い状態です。一方のアンダーローンは、住宅ローン残債が売却価格を下回る状態です。

相場価格から予測される売却収入から考えたとき、アンダーローンの状態であればよいですが、オーバーローンの場合、売却にあたって資金計画を考えなければなりません。

不動産を売却するには、仲介手数料や抵当権抹消費用などもかかります。オーバーローンの場合、これらの費用を含めて、住宅ローンを完済するための道筋を考えることが重要です。

2-3.不動産会社に査定を依頼する

類似する物件の売り出し価格と住宅ローン残債を把握したあとは、不動産会社に査定を依頼します。

不動産は一つひとつ異なるため、専門知識なしに適正価格を把握することは難しいといえます。

そのため、不動産会社に査定を依頼し、面積や築年数などの基本情報だけでなく、建物の状態や周辺環境を含めて不動産の価格を総合的に判断してもらう必要があるのです。

売り出し価格は、売主の希望を踏まえ、不動産会社の査定価格を参考にしながら決めていくことになります。

3.売り出し価格設定時の4つのポイント

それでは、実際に売り出し価格を決める際にはどういった点に注意すればよいのでしょうか。ここでは売り出し価格設定時のポイントについて解説します。

3-1.最低売却価格を決めておく

売り出し価格を設定する際は、併せて最低売却価格も決めておくことが大切です。

利便性の高い駅近くの物件や築浅物件といった需要が高い物件ではない場合、問い合わせや反響が少なければ、価格変更が必要になることもあります。

また、物件の購入希望者が現れても、そのまま合意とはならず、価格交渉が入ることもあります。

売却までにかけられる期間や状況などを考慮しながら、いつまで交渉に応じ、どこまで売り出し価格を下げられるかを事前に決めておきましょう。

特に売却に時間をかけられない場合は、最低売却価格を決めずにいると気持ちが焦って低すぎる価格で売却してしまうリスクがあるため、注意が必要です。

3-2.高過ぎる価格に設定しない

相場と比べて高過ぎる価格に設定しないことも大切です。

不動産の場合、売り出し直後が最も問い合わせや反響が集まりやすい傾向があります。

高過ぎる価格を設定すると、このような販売機会を失い、売却期間が長期化する可能性があります。

一方、売り出し価格が高過ぎると、物件に興味を持つ方がいても、売り出し直後の値下げ交渉は難しいと判断され、問い合わせを躊躇する恐れがあります。

また、価格帯が一段上がると検索結果に表示される回数が減るかもしれません。

不動産ポータルサイトで物件探しをする際、多くの方は、購入予算の上限価格を決めて検索します。

ポータルサイトの価格帯は500万円刻みになっているケースが多く、例えば、本来の相場が3,100万円の物件を3,600万円で売り出している場合、4,000万円までの予算で探している方の検索結果には表示されますが、3,500万円までの予算で探している方の検索結果には表示されません。

つまり、価格帯が一段高くなると、検索結果に表示される回数が減り、販売期間にも影響する可能性があるのです。

高値売却と高過ぎる価格設定は異なります。

物件の需要にもよりますが、高値売却を狙う場合、一般的には相場価格の5%、高くても10%程度高い価格設定にすることが多い傾向です。相場価格が4,000万円の物件であれば、4,200万円~4,400万円となります。

3-3.早く売りたいのなら適正価格で

売却に時間をかけられず、早く売りたい場合は、相場価格に近い適正価格で売り出すことが大切です。

購入希望者から価格交渉が入る可能性に備えて、相場より高い価格設定にする方法もありますが、売り出し直後は問い合わせや反響が最も多いタイミングです。

このタイミングで1件でも多くの問い合わせを獲得するためには、相場に近い価格で売り出すようにしましょう。売り出し直後に複数の購入希望者が見つかれば、値下げ交渉が入る可能性も少なくなります。

3-4.複数の不動産会社に査定を依頼する

売り出し価格を決めるうえで欠かせないのが、複数の不動産会社に査定を依頼することです。

不動産の状態や特徴は一つひとつ異なります。そのため、不動産会社によって査定価格に差が出ることは珍しくありません。

不動産の適正な価値を知るためには、1社だけでなく、複数の不動産会社の査定価格を比較するようにしましょう。1社の査定価格のみを基準に売り出し価格を決めると、「実はもう少し高値をつけることができた」といった場合、後悔につながりかねません。

また、複数の不動産会社に査定を依頼することで、査定価格だけでなく、どういった販売活動をするかなど、不動産会社と担当者の実績や対応を比較することも可能です。

最終的に不動産を買主に引き渡すまでの期間、担当者との関係は続きます。相談しながら手続きを進めることを考えると、担当者との相性も要チェックです。

適正な査定価格を知るには、所有する不動産が所在するエリアに精通し、販売実績が豊富な不動産会社を選択することが大切です。

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まとめ

売り出し価格は、最終的な売却収入となる成約価格に影響するため、慎重に設定しなければなりません。

不動産ポータルサイトなどである程度の相場価格を把握することはできても、専門知識なしに不動産の価格を正しく評価することは難しいでしょう。

そのため、複数の不動産会社に査定を依頼することが重要です。

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