不動産売却などの際に行う、ホームインスペクションの費用は、建物の種類によって異なります。また、インスペクションの実施を検討する際は、メリット・デメリットを把握することも大切です。
本記事では、建物の種類別インスペクションの費用相場や依頼の流れ、メリット・デメリットなどを解説します。
不動産売却の流れについて把握したい方は「【図解】不動産売却の流れと期間│必要書類や税金」をご覧ください。
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Contents
1.ホームインスペクションとは、建物の劣化状況や不具合などを確認する検査
ホームインスペクション(住宅診断)とは、住宅診断士(ホームインスペクター)が第三者的な立場から、建物の劣化状況や不具合、補修が必要な箇所を確認する検査です。診断結果によっては、必要な補修や費用についてのアドバイスも受けられます。
インスペクションを行うことで、買い手に建物の状態を知らせ、購入するかどうかを判断する材料にしてもらうことができます。また、売り手にとっても、買い手に安心感を与えることで、高値でスムーズに売却できる可能性が高まります。
2.ホームインスペクションの費用の相場
ホームインスペクションの費用相場について、以下の4つの建物種別ごとに解説します。
※インスペクションの費用は、建物の規模によって変動します。この章でお伝えする費用相場は、おおむね100平米ほどの建物を目安にしています。
2-1.新築一戸建ての場合
新築一戸建てのホームインスペクションには、「新築工事中ホームインスペクション」と「完成検査ホームインスペクション」の2種類があります。
新築工事中ホームインスペクションでは、基礎や構造、防水、断熱など、完成後には確認できなくなる建物の重要部分を検査します。費用は1回あたり6万円前後ですが、工事中に複数回行うことが多く、総額は30万~65万円が相場です。
一方の完成検査ホームインスペクションは、新築工事完了時や建売住宅購入時に実施され、室内においては内装や設備、室外では床下の給排水管や小屋裏の換気ダクト、電気配線などの不具合を確認します。
また外部の基礎や外壁、屋根などの検査も行います。費用の相場は6~7万円が一般的です。
2-2.中古一戸建ての場合
中古の一戸建ては、経年劣化やメンテナンス不足、新築時の施工不良などの理由によって、新築住宅以上に不具合が発生するリスクが高いと言えます。そのため、特に入念なインスペクションを行う必要があります。
中古住宅のインスペクションは、一般的に一次検査(基本調査)と二次検査(詳細調査)に分けて行われます。一次検査では、目視によって屋根や外壁、基礎の劣化状況、建物の傾きなどを確認します。二次検査では、壁や小屋裏などを部分的に破壊して検査を行います。
一次検査の費用相場は5~7万円で、二次検査は7~13万円です。さらに詳細な検査を行う必要がある場合は、追加料金が発生することもあります。
2-3.新築マンションの場合
新築マンションのホームインスペクションは、申し込みや契約を行った一つの住戸に対して実施されます。建物完成時の内覧会にホームインスペクターが同行し、インスペクションを行う検査会社もあります。
検査箇所は、主に内装や設備、床下の給排水管、天井裏の換気ダクトや電気配線、コンクリート躯体などで、目視による一次検査が主体になります。
壁などを破壊して内部を検査する二次検査は、ほかの住戸に影響が及ぶことを考慮し、実施しないことが一般的です。費用は4~5万円が相場になっています。
マンションは一戸建てに比べて床下や天井裏、外壁や屋上などにおいて検査できる範囲が限られるため、費用が低くなる傾向があります。
2-4.中古マンションの場合
中古マンションのホームインスペクションも、主に目視による一次検査が実施されます。壁などを破壊して内部を検査する二次検査は、基本的には実施されません。
検査は、新築マンションと同様、内装や設備、床下の給排水管、天井裏の換気ダクトや電気配線、コンクリート躯体などを中心に行われます。費用相場は4~6万円で、一戸建てに比べ検査箇所が少ないため多少安くなっています。
ただし、中古マンションは経年劣化による不具合が発生する可能性が高いため、入念な検査が必要です。不具合の程度によっては、追加の検査費用が必要になることもあります。
3.ホームインスペクションの調査内容
ホームインスペクションの検査内容は、検査会社によって異なります。ただし、既存住宅(中古住宅)においては、国土交通省が策定した「既存住宅インスペクション・ガイドライン」を指針として、検査内容を定めている事業者が多く見られます。
当該ガイドラインでは、以下の範囲を検査対象とすることを推奨しています。
- 現場で足場などを組むことなく、歩行やその他通常の手段によって移動できる範囲
- 戸建住宅における小屋裏や床下については、小屋裏点検口や床下点検口から目視が可能な範囲
- 共同住宅(マンションなど)においては、専有部分および専用使用しているバルコニーから目視可能な範囲
これらの範囲に対し、以下の観点において、対象部位に劣化現象などが起きていないか確認することを検査の基本としています。
検査の観点 | 対象部位など | 検査対象とする劣化事象など |
---|---|---|
(1)構造耐力上の安全性に問題のある可能性が高いもの | 小屋組・柱・梁・床・土台・床組などの構造耐力上主要な部分 | 蟻害・腐朽・腐食・傾斜・躯体のひび割れ・欠損など |
(2)雨漏り・水漏れが発生している、または発生する可能性が高いもの | 外部(※):小屋根・外壁・屋外に面したサッシなど 内部:小屋組(※)・天井・内壁 |
雨漏りや漏水など |
(3)設備配管に日常生活上支障のある劣化などが生じているもの | 給排水:給水管・給湯管・排水管 換気:換気ダクト |
給排水:給排水管の漏れや詰まりなど 換気:ダクトの脱落や接続不良など |
※一戸建てにおける対象部位
出典:「 “既存住宅インスペクション・ガイドライン”. 国土交通省. (参照2024-09-25)」をもとに、お家のいろはが独自に作成
検査方法については、目視や、一般的に普及している計測機器(スケールや精密水平器など)を用いた、建物を破壊しない方法で行うとしています。
このガイドラインを基本に、インスペクションの対象範囲を広げている検査会社もあります。
そのため、インスペクションを依頼する際は、各社の検査内容をしっかりと比較し、どの範囲まで検査を行うのかを確認することが重要です。
4.ホームインスペクションを依頼する流れ
ホームインスペクションの依頼の流れは以下のとおりです。
4-1.問い合わせ
ホームインスペクションの検査会社に電話やホームページのフォームなどを通じて問い合わせを行います。この際に建物の状況を伝え、診断内容や費用を確認します。
4-2.インスペクションの申し込み
インスペクションを行う希望日時を決め、申し込みを行います。
4-3.必要書類の送付
建物の平面図や立面図など、検査会社から指定された書類を準備し、送付します。当日に書類を手渡しする場合もあります。
4-4.ホームインスペクションの実施
依頼した日時に、依頼者立ち会いの下、現地でインスペクションを行います。通常、インスペクション実施後にその場で結果を聞くことができます。
4-5.報告書を受け取る
検査会社から、後日検査報告書が送られてきます。不明点があれば問い合わせをします。
4-6.料金の支払い
検査会社の指定日までに料金を支払えば、インスペクションは完了です。
検査の申し込みから実施までは、おおむね3日から1週間ほどかかります。また、検査当日の所要時間は、新築一戸建てで3時間ほどです。中古一戸建ての場合は、一次検査が3~5時間、二次検査も実施すると1時間ほど追加になります。
また、マンションの場合は、新築・中古ともに2~3時間ほどで完了します。
5.ホームインスペクションの費用を払うのは誰?
ホームインスペクションの費用を誰が負担するかについては、明確な取り決めはありません。しかし、住宅の不具合によるリスクを回避したいと考える買い手がインスペクションを依頼し、費用も負担するケースが多く見られます。
一方で、物件を売却しやすくするため、不動産会社や売り手が費用を負担してインスペクションを行う場合もあります。ただし、売り手側が行うインスペクションは、信頼性について買い手に疑問を持たれる恐れがあります。
これを避けるため、できる限り売り手と利害関係のない中立の立場の検査会社に依頼し、検査内容や結果を詳細に買い手に伝え、信頼性を高めることが大切です。
ホームインスペクションを行う際は、瑕疵保証保険への加入も検討してみましょう。瑕疵保証保険とは、住宅購入後に隠れた欠陥(瑕疵)が見つかった場合、その補修費用を一定期間保証する保険です。
加入には、保険会社が定める建物状況調査が必要ですが、この調査はインスペクションと同時に実施できます。
各検査を別々に行うより費用を抑えられる可能性もあります。瑕疵保証保険が付加されることで、買い手の安心感が増し、物件の売却が進む効果も期待できます。
6.ホームインスペクションを実施するタイミングは?
ホームインスペクションを実施するタイミングは、買い手の希望で行う場合、物件購入の申し込み後から契約前の段階が適しています。
契約前に行うことで、建物の修繕が必要になった場合でも、買い手はその費用を資金計画に含めることができます。
また、購入の申し込み後にインスペクションを実施することで、検査中にほかの購入希望者に物件を買われる心配がなくなります。
一方、売り手側でホームインスペクションを実施する場合は、物件を売り出す前がおすすめです。インスペクションを行った物件として売り出すことで、買い手に安心感を与えスムーズな売却が期待できます。
さらに、不具合が見つかった場合でも、修繕費用を売り手側で負担することを想定した売却金額に設定できます。
7.ホームインスペクションのメリット・デメリット
ここでは、買い手と売り手それぞれの立場から見た、ホームインスペクションのメリット・デメリットを解説します。
7-1.【買い手】ホームインスペクションのメリット
買い手にとってのホームインスペクションのメリットは、主に以下の2点が挙げられます。
- 物件を安心して購入できる
- 購入後の予想外の出費を防げる
物件の見えない部分に不具合や劣化があるかもしれないという点は、買い手にとって大きな不安です。そこで、インスペクションによって物件の状態が把握できれば、安心して購入の判断ができます。
また、インスペクションを行うことで、修繕が必要な箇所が事前にわかります。これにより、物件購入後に予想外の高額な修繕費用がかかることを防げます。
7-2.【買い手】ホームインスペクションのデメリット
買い手にとってのホームインスペクションのデメリットには、以下の2つが考えられます。
- 費用を負担する必要がある
- 売買が不成立になることがある
買い手側からインスペクションを希望した場合、その費用は買い手が負担する必要があります。不具合が見つかり、原因究明のための詳細な検査が必要になった場合は、費用が高額化する恐れもあるでしょう。
また、インスペクションの結果、大きな不具合が発見され、売買が不成立になる可能性もあります。ただし、この点は入居後のリスクを回避できるとして、メリットとも捉えられます。
7-3.【売り手】ホームインスペクションのメリット
売り手にとってのホームインスペクションのメリットは、主に以下の2つがあります。
- 迅速かつより高額な売却ができる
- 売却後のトラブルを未然に防げる
インスペクションを行うことで、買い手は物件の状態を確認でき、購入に対する不安を解消できます。その結果、迅速かつより高い価格での売却が期待できるでしょう。
また、インスペクションを実施することで、売り手と買い手の間で事前に物件の不具合を共有できます。そのため、引き渡し後に未知の不具合が発覚し、トラブルになることを防げます。
7-4.【売り手】ホームインスペクションのデメリット
売り手にとってのホームインスペクションのデメリットとしては、以下の2つが考えられます。
- 売り出し前に行うと費用がかかる
- 不具合の修繕を負担する可能性がある
売り出し前にインスペクションを行う場合、費用は売り手の負担になります。築年数が古い物件や、規模が大きな物件の場合、費用がかさみ、思わぬ出費となる恐れがあります。
また、インスペクションの結果、不具合が見つかった場合は、買い手から修繕を求められる可能性があります。売り手が修繕費用を負担することになると、利益が減少するリスクがあるでしょう。
ホームインスペクションを実施したあとに家の売却を検討しているなら、まずはどれくらいの金額で売却できるか知る必要があります。そこで、不動産会社に価格査定を依頼してみましょう。
ただし、できるだけ高く売却するには、複数の不動産会社の査定結果を比較することが重要です。
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- 「家を売りたいけど、どうしたらいいか分からない方」は、まず不動産会社に相談を
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まとめ
ホームインスペクションの費用相場は、新築一戸建ての工事中に実施する場合で30万~65万円、完成後に行う場合は6~7万円です。
中古一戸建ての場合、目視による一次検査は5〜7万円、壁や天井の一部を破壊して内部を検査する二次検査は7~13万円が相場になっています。
新築マンションの相場は、一次検査のみで4~5万円、中古マンションも一次検査のみで4~6万円です。新築一戸建ての工事中のインスペクションを除けば、比較的手頃な費用で実施できると言えます。
信頼できるホームインスペクション会社を見つけるためには、複数の会社に費用や調査内容などの詳細を確認することが大切です。