土地の個人売買はできる?メリット・デメリットや流れ、起こりうるトラブル

土地の個人売買はできる?メリット・デメリットや流れ、トラブルの回避法

土地の個人売買は可能ですが、適切な価格設定や売買契約書作成に注意が必要です。特に面識のない相手との取引は慎重に検討すべきでしょう。

本記事では、土地の個人売買におけるメリットやデメリット、売却の流れ、必要書類、税金などについて詳しく解説します。

また、起こりうる主なトラブルも紹介しますので、土地の個人売買を検討中の方はぜひ参考にしてください。

土地の相続についてもお考えの方は、併せて『土地相続の手続きの流れ!費用や税金を抑えられる特例、相続放棄の方法も』をご覧ください。

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1.土地は個人売買できる

土地の売買を不動産会社の仲介なしに、個人で行うことは可能です。不動産売買の手続きは極端に複雑というわけではないため、本記事を読んでいただければ十分把握できるでしょう。

特に、相手が親族や友人などの親しい間柄で、金額に納得しており、土地についても十分に理解しているなら、大きなトラブルは起きにくく、不動産会社に仲介を依頼する必要性は薄いと言えます。

一方で、面識のない相手との個人売買は慎重に考えるべきです。土地売買は金額が大きく、土地の状況や取引条件などを正確に伝えるのが難しいためです。話の食い違いで相手に損失を与えれば、損害賠償を求められる恐れもあります。

親しい相手以外と土地を売買する際は、事前に不動産会社に相談したうえで個人売買を行うかどうかを検討することをおすすめします。

2.土地を個人売買するメリット

土地の個人売買には、次のような3つのメリットがあります。

2-1.仲介手数料が節約できる

土地を個人で売買すると、不動産会社に支払う仲介手数料を節約できます。

仲介手数料の上限は宅地建物取引業法により定められています。下表は仲介手数料の上限額の早見表です。

売買価格 仲介手数料 税込仲介手数料(消費税率10%)
200万円 10万円+消費税 11万円
400万円 18万円+消費税 19.8万円
500万円 21万円+消費税 23.1万円
1,000万円 36万円+消費税 39.6万円
2,000万円 66万円+消費税 72.6万円
3,000万円 96万円+消費税 105.6万円
4,000万円 126万円+消費税 138.6万円
5,000万円 156万円+消費税 171.6万円
6,000万円 186万円+消費税 204.6万円
7,000万円 216万円+消費税 237.6万円
8,000万円 246万円+消費税 270.6万円
9,000万円 276万円+消費税 303.6万円
1億円 306万円+消費税 336.6万円

例えば、3,000万円の土地の仲介手数料は税込みで105.6万円となり、決して少ない額ではありません。個人売買ならばこの出費を節約できるため、より多くの収益を得ることができます。

また、仲介手数料には原則的な計算方法と速算式があります。原則的な計算方法は下表のとおりです。

取引価格 仲介手数料の上限
400万円超 物件価格(税抜) × 3% + 6万円 + 消費税
200万円超~400万円以下 物件価格(税抜) × 4% + 2万円 + 消費税
200万円以下 物件価格(税抜) × 5% + 消費税

とはいえ、売買価格400万円以上の場合は、「200万円以下の部分」「200万円以上400万円以下の部分」「400万円超の部分」を分けて計算し、3つを合計して仲介手数料を求める必要があります。

このように計算するのは手間がかかりますが、以下の速算式を使えば、簡単に計算することができます。

売買価格400万円以上の場合の計算式(消費税率10%の場合)
(売買価格 × 3% + 6万円)× 1.1

なお、原則的な計算方法と速算式の答えは同じ金額になります。

2-2.相手が知り合いなら売却がスムーズ

個人売買で土地を売る相手が親族や友人といった知り合いなら、売却がスムーズに進むことが期待できます。すでに信頼関係ができているため、土地や取引条件についての説明に納得してもらいやすいためです。

一方で、面識のない相手が買主の場合、相手が慎重に取引をしようと契約内容を納得するのに時間がかかりやすくなります。この点を鑑みても、特に土地を早く売却したい方にとって、知り合いを相手とする個人売買は大きなメリットになるはずです。

2-3.売買条件の調整がしやすい

個人売買では、売主と買主が直接交渉できるため、売買条件を調整しやすいです。

売買価格や引き渡し時期、支払い方法といった細かい条件を、お互いの合意によって決めることができるからです。

一方、不動産会社に仲介を依頼した場合、例えば土地の価格を市場相場に基づいて査定するケースが多く、その価格が売主と買主が希望する価格と必ずしも一致するとは限りません。

3.土地を個人売買するデメリット

土地の個人売買には金銭面のメリットがある一方で、十分に気をつけたいデメリットも存在します。

3-1.適正な価格設定が難しい

適正な価格設定が難しい

土地の個人売買には、相場に対する適正な価格設定が難しいというデメリットがあります。

どれくらいの価格が適正であるか、また土地の面積や形状、周辺環境によってどのように価格調整すべきかなどは、個人では判断しにくいためです。

価格設定が適正でないと、相場に対して高過ぎるためになかなか売れなかったり、反対に安過ぎて思ったように利益を得られなかったりする恐れがあります。

3-2.売買契約書の作成が難しい

土地の売買契約書の作成は、未経験者にとっては非常に難しい作業です。契約書には土地の条件や売買の取り決めなど、買主と合意する内容を正確に記載しなければなりません。

土地売買についての専門知識がないと、必要な内容を漏れがないように正しく記載することは難しいでしょう。万が一契約書の内容に不備があれば、契約後に買主とのトラブルに発展する恐れもあります。

3-3.売買条件を曖昧にするとトラブルに発展する恐れがある

売主と買主の間で条件が曖昧なまま契約を進めると、契約後に「聞いていた内容と違う」といった認識の相違が起こりやすくなります。

特に売買価格、引き渡し条件、支払い時期などの重要事項が不明確なままだと、双方の認識の違いによりのちにトラブルにつながる恐れがあるのです。

4.土地を個人売買するときの流れ

土地を個人売買するときの流れ

ここからは、土地を個人売買する際の流れを、図の流れに沿って解説します。

  1. 売りたい土地の相場を調べる
  2. 売買条件の合意
  3. 売買契約書の作成
  4. 売買契約の締結
  5. 引き渡し
  6. 確定申告

(1)売りたい土地の相場を調べる

土地を個人売買する際は、まず売りたい土地の相場を調べます。調べるには、公的な情報を参考に検討する方法と、不動産会社に査定してもらう方法の2パターンがあります。

公的な土地の価格情報の1つに、国土交通省が毎年土地の正常な価格を調査・公表している地価公示があります。公的調査であるため、信頼性の高い指標だといえるでしょう。

ただし、価格が公示されるのは地域の標準地のみで、売却しようと考えている土地そのものの価格ではありません。実際の土地の価格はそれぞれの条件によって変わるため、公示価格はあくまで参考価格といえます。

一方の不動産会社の査定でわかるのは、売却希望の土地そのものの価格です。不動産会社に依頼する手間はかかりますが、相場に照らし合わせた適正価格であり、売却価格を検討するうえで最も参考になるでしょう。

土地の価格を把握したいのなら、NTTデータグループが運営する一括査定サイト「不動産売却 HOME4U(ホームフォーユー)」の利用がおすすめです。

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(2)売買条件の合意

売買についての各種条件を買主に伝え、合意を得ます。代表的な条件には以下のようなものがあります。このほかにも、できるだけ詳細な条件について合意を得ておきましょう。

  • 土地の売買価格
  • 代金の支払い方法と期限
  • 手付金の額と支払い方法と期限
  • 引き渡しの条件
  • 固定資産税の精算
  • 抵当権の有無と抹消
  • 解約の条件 など

(3)売買契約書の作成

買主と合意した内容を漏れなく記載した不動産売買契約書を作成します。行政機関などによって契約書のひな型が公開されているため、それらを参考に作成するとよいでしょう。記載内容について不安がある場合は、契約締結前に司法書士や不動産会社に確認してもらうと安心です。

(4)売買契約の締結

契約書の内容に不備がないかを売主と買主の双方が確認し、問題なければ契約を締結します。契約書に署名と捺印を行い、双方が1通ずつ保管します。

その場で手付金を現金で受け取る約束になっていれば、金額を確認のうえで受領し、領収書を渡します。そして再度、残金の支払い方法と期日、土地の引き渡し日を確認します。

(5)引き渡し

買主から残金が支払われたら土地の引き渡しを行います。残金が自身の口座へ入金されたことを確認し、速やかに所有権移転に必要な書類を買主へ渡します。

たとえ買主が親族や友人などの親しい相手でも、残金の支払い前に土地を引き渡すことはおすすめしません。引き渡し後に納得できない点を主張され、残金が支払われないというトラブルに発展する恐れがあるためです。相手とどれだけ親しくても、引き渡しは必ず残金支払い後に行いましょう。

(6)確定申告

土地を売却し譲渡所得が発生したら、翌年の2月16日から3月15日の間に確定申告を行います。譲渡所得がマイナスだとしても、確定申告を行うことで特例が適用され、税金を軽減できる場合もあります。税務署などに相談し、特例が受けられるようなら確定申告を行いましょう。

確定申告に必要な書類や譲渡所得については、このあと詳しく解説します。

5.土地の個人売買の必要書類

土地の個人売買をする際には以下の書類が必要です。なかには用意に時間がかかるものもあるため、早めに手配するようにしましょう。

5-1.契約するとき

売買契約を締結する際には以下の書類が必要です。

書類名 備考
売買契約書 2通用意
本人確認書類 免許証、マイナンバーカードなど顔写真入りが望ましい
固定資産税・都市計画税納税通知書 固定資産税を日割り精算するため

5-2.引き渡しをするとき

土地を買主に引き渡す際は、以下の書類も一緒に渡します。

書類名 備考
登記識別情報または登記済証 売主が保管していたもの
測量図 売主が保管していたもの
土地の形状や面積、隣地との境界が表された図面
筆界確認書 売主が保管していたもの
隣接する土地の所有者と、お互いに境界について承諾した書類
越境物の覚書 売主が保管していたもの
所有物が境界を越えていることを、双方の土地所有者で合意した書類
印鑑証明書・住民票 市区町村の役場で取得
売主が複数人の場合は全員分
固定資産評価証明書 市区町村の役場で取得
本人確認書類(提示のみ) 免許証、マイナンバーカードなど
所有権移転登記を行う司法書士に提示
抵当権抹消に必要な書類 金融機関が発行
弁済証明書、抵当権の登記済証、登記事項証明書、抹消手続き委任状など

住民票や印鑑証明、各種証明書には、受け取る側で有効期限が定められている場合があります。取得してから時間が経過した書類には注意しましょう。

5-3.確定申告

土地を売却して得た譲渡所得を確定申告する際には以下の書類が必要です。

書類名 備考
確定申告書 税務署や国税庁のホームページで取得
土地を売ったときの売買契約書の写し 売主が所有
譲渡費がわかる領収書など 土地売却時の印紙税、測量費、建物解体費など
土地を買ったときの売買契約書の写し 売主が所有
土地の取得費がわかる書類 土地購入時の仲介手数料、不動産取得税、印紙税など
土地の登記事項証明書 法務局にて取得

6.土地の個人売買でかかる税金

土地を売買すると、各種税金の支払いが発生します。ここでは、売主側が支払う主な税金である譲渡所得税、印紙税、登録免許税について解説します。

6-1.譲渡所得税

土地を売却して利益を得ると、譲渡所得税が課税されます。譲渡所得税は、所得税・住民税・復興特別所得税の総称です。

譲渡所得は、土地を売却して得た収入から、土地を取得した際の費用と譲渡の際にかかった費用を差し引いて算出します。

計算式:譲渡所得 = 譲渡収入金額 - (取得費 + 譲渡費用)

譲渡所得がプラスになった場合は、土地を売却した翌年に確定申告を行い納税します。譲渡所得がマイナスの場合は、本来確定申告をする必要はありません。ただし、条件を満たす場合は損益通算や繰越控除の特例によって税金を軽減できる可能性があるため、確定申告を行うことをおすすめします。

税金の特例については以下の記事で詳しく解説しています。

6-2.印紙税

土地の売買契約書は課税文書であるため、印紙を購入して契約書に貼ることで印紙税を納税します。税額は記載される契約金額に応じて法律で定められています。

ただし不動産売買契約書については、2027年(令和9年)3月31日まで軽減措置が設けられています。仮に契約金額を3,000万円とする場合、印紙税は本則では2万円のところ、1万円に軽減されます。

具体的な税額は国税庁のサイトで確認できます。

6-3.登録免許税

土地に借り入れの抵当権が設定されている場合は、売却前に残債を返済して抵当権抹消登記を行います。この手続きには不動産1件につき1,000円の登録免許税がかかります。支払いは登記申請の際に法務局の窓口にて現金や印紙で支払います。

土地売買による所有権移転登記では、土地の固定資産評価額に2.0%をかけた登録免許税が課されます。この税金は一般的に土地の買主が負担します。

不動産売却に関する各種税金については以下の記事で詳しく解説しています。

7.土地を個人売買する際、起こりうるトラブル3選

土地を個人で売買する際には、いくつかのトラブルが起こりやすくなります。ここでは、知っておきたい代表的な3つのトラブルについて解説します。

7-1.贈与税の対象となる可能性がある

土地を個人売買で低い価格で購入した場合、税務署から「贈与」とみなされ、贈与税の対象となることがあるため、注意が必要です。

例えば、家族間や親しい知人同士で土地を低い価格で売買した場合は、このような課税のリスクがあります。

土地の個人売買を行う際は、不動産ポータルサイトで近隣の土地や条件が似た土地の価格を確認したり、不動産会社に査定を依頼したりして、適正価格を把握したうえで、売買価格を決めることが大切です。

7-2.契約不履行責任を問われる恐れがある

個人間の売買では、契約内容が不明確なまま進めると、後から「聞いていた条件と違う」というトラブルに発展する可能性があります。

その際、売主または買主が「契約不履行」として責任を問われることがあるのです。

それを防ぐためには、できるだけ詳細な条件について合意し、買主と合意した内容を漏れなく記載した不動産売買契約書を作成しましょう。

また、あらかじめ土地の状態を確認しておくことも重要です。具体的には土地の境界を確認したり、土地の利用に制限がかかっていないか調べたりしましょう。

土地の境界については、公的な土地の測量図や境界標を確認し、買主と一緒に実際の境界線を確かめると安心です。土地の利用制限は、自治体の都市計画課や建築基準法に基づいた情報を調べるとよいでしょう。

7-3.住宅ローンの審査が厳しくなる

個人売買で土地を購入する際、金融機関によっては住宅ローン審査が通常よりも厳しくなることがあります。

不動産会社が仲介する場合と比べて、土地の価値や適正な売買価格が確認しにくいためです。

住宅ローンを利用する予定の買主は、金融機関に事前に相談し、どのような条件でローンが組めるかを確認したほうがよいでしょう。

このようなトラブルを未然に防ぐためには、次章で紹介する専門家などに相談してください。

8.土地を個人売買する際の相談先

ここでは、土地の個人売買を行う際の相談先について解説します。

8-1.司法書士に相談する

土地の個人売買における契約や登記のトラブルを防ぐには、司法書士への事前の相談が効果的です。

司法書士は土地の売買に関する法律や手続きに精通しているため、契約書の作成や登記について的確なアドバイスが受けられます。手続きを依頼すれば、個人売買によるトラブルの可能性を大きく減らすことができるでしょう。

司法書士に土地売買に関する登記を依頼した場合の報酬相場は以下です。

登記内容 報酬相場
所有権移転
(契約書作成を含む)
43,000円~64,000円
抵当権抹消 14,000円~19,000円

出典:「“報酬アンケート結果(2018年(平成30年)1月実施)”. 日本司法書士会連合会. (参照2024-06-11)」をもとに、お家のいろはが独自に作成

8-2.不動産会社へ相談する

土地の個人売買によるトラブルを防ぐには、不動産会社に相談するのもおすすめです。契約書作成や登記に関するアドバイスが受けられるだけでなく、土地を売却するために重要な価格査定も依頼できます。

相場からかけ離れた価格設定にすると、土地がなかなか売れなかったり、本来得るはずだった利益を逃がしたりするかもしれません。不動産会社に査定してもらえば、こうした失敗を防ぎやすくなります。

すでに行っている不動産会社との売却活動が思うように進まない場合は、媒介契約を見直して改善を図る方法もあります。不動産会社を選ぶ際は複数社に査定を依頼し、どれくらい親身に対応してくれるかを比較することが大切です。

複数社へ査定を依頼するなら、NTTデータグループが運営する一括査定サイト「不動産売却 HOME4U」の活用をおすすめします。

「土地を売りたい」と悩んでいる方へ
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まとめ

土地の売買を個人で行うことは可能です。ただし、適正な価格の設定や売買契約書の作成が難しいという側面もあり、特に親しくない相手と個人間で取引することは慎重に考えたほうがよいでしょう。

親しい相手との売買なら、本記事でお伝えした手順や必要書類を参考にすることで、円滑に取引できるかもしれません。しかし、金額の大きな契約であることに変わりないため、少しでも不安があれば司法書士や不動産会社に相談することをおすすめします。