マンションを売却しても税金がかからないケースがあるかどうか、疑問をお持ちではありませんか?
本記事では、マンション売却時に税金がかからないケースを明らかにしたうえで、税負担をおさえる方法を紹介します。
- マンション売却で税金がかからないケース
- マンション売却で損しないための税金の計算方法
- マンション売却で節税に利用できる控除や特例
Contents
1.マンション売却しても税金がかからないケースとは?
マンションを売却しても、場合によっては税金がかからないことがあります。
マンション売却時の税金は、「必ずかかる税金」と「利益が出たらかかる税金」に分けられます。
必ずかかる税金 | 利益が出たらかかる税金 |
---|---|
|
|
上記のうち、税金がかからないことがあるのが「譲渡所得税」です。
具体的には、以下のケースでは譲渡所得税が課税されません。
- 売却で利益が出ていないケース
- 特例適用で譲渡所得がゼロになるケース
詳しく見ていきましょう。
1-1.売却で利益が出ていないケース
マンションを売却したものの、利益が出なかった場合は「譲渡所得税」が課税されません。
マンションを売却した際の「譲渡所得」とは、売却価格からマンションの購入にかかった費用や、売却時の諸費用を引いたものを指します。
マンション売却で譲渡所得が出ない状態を「譲渡損失」といい、この場合は譲渡所得税が発生しません。
1-2.特例・控除適用で譲渡所得がゼロになるケース
譲渡所得が特例適用でゼロになるケースでは譲渡所得税が発生しません。
マンション売却で譲渡所得税に適用可能な特例・控除は以下の2つです。
- 3,000万円の特別控除
- 10年超のマイホームを売却するときの特例
上記の特例・控除を利用するためには、売却した翌年に確定申告をする必要があります。
条件を満たしたら自動的に適用されるものではないので注意が必要です。
詳しくは4章「マンション売却で節税に使える特例・控除」をご確認ください。
3.マンション売却の税金計算シミュレーション
マンション売却では、譲渡所得税を正しく計算しないと損をしかねません。
そこで本章では、マンション売却にかかる譲渡所得税の計算方法をご紹介したうえで、税金がどれくらいかかるかシミュレーションをしていきます。
2-1.譲渡所得税の計算方法
譲渡所得税は、譲渡所得(売却益)に税率をかけることで求められます。
ここでは2つのステップで譲渡所得税の算出方法を解説します。
- ステップ1.譲渡所得を計算する
- ステップ2.譲渡所得に税率をかける
ステップ1.譲渡所得を計算する
譲渡所得税の税額を決めるためには、まず以下の計算式で譲渡所得がいくらかを算出します。
譲渡所得 = 譲渡価額 – 取得費 – 譲渡費用
譲渡価額は、マンションの売却価格を指します。
取得費は、マンションの購入金額や、購入時にかかった諸費用です。
譲渡費用は、マンションの売却にかかった諸費用です。
このうち取得費の計算が最も複雑です。
マンションの購入代金をそのまま取得費とするのではなく、減価償却費を考慮する必要があるためです。
取得費の求め方(クリックすると解説が表示されます)
取得費は、マンションの購入金額や、購入時にかかった諸費用です。
取得費 = マンションの購入金額 + 購入にかかった諸費用
取得費のうち『購入にかかった費用』には、購入当時の仲介手数料や購入にかかった手数料、改良費などが含まれます。
『マンションの購入金額』の部分は、当時の建物購入金額から減価償却費相当額を差し引いて求めます。
減価償却とは、資産の価値を時間経過とともに減少させ、経費としていく会計上のルールです。
マンションの資産価値も時間経過とともに減少していくため、減価償却費(これまでに減少した価値)相当額を、購入金額から差し引き取得費とします。
なお、時間経過で価値が減少するのは建物部分で、土地の価格はそのまま取得費にできます。
減価償却費の計算方法には、『定額法』と『定率法』の2つがあります。
マンションの建物部分の減価償却費計算には、定額法を用いるのが一般的です。
以下が定額法の計算式です。
減価償却費 = 建物購入金額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数
償却率は、建物の耐用年数により異なり、耐用年数は建物の構造や用途により異なります。
居住用マンションのうち、鉄骨鉄筋コンクリート造又は鉄筋コンクリート造は耐用年数70年であり、償却率は0.015となります。
建物の購入金額などが不明な場合、取得費を計算できません。
相続で取得した不動産など、取得時期から長い期間が経過した不動産ほど、こうした取得費不明の状況に陥りやすくなります。
取得費が不明の場合は、不動産を売却した金額の5%を取得費にできます。
譲渡費用の求め方(クリックすると解説が表示されます)
譲渡費用は、売却するためにかかった仲介手数料や、売主が負担した印紙税、建物の解体費用などが含まれます。
これら諸費用の合計を求めましょう。
引っ越し費用や、維持のための修繕費、固定資産税などは、譲渡費用に含まれません。
ステップ2.譲渡所得に税率をかける
譲渡所得を求めたら、所有期間に応じた税率をかけて税額を求めます。
所有期間 | 分類 | 住民税 | 所得税 | 税率合計 |
---|---|---|---|---|
5年以下 | 短期譲渡所得 | 9% | 30.63% | 39.63% |
5年超え | 長期譲渡所得 | 5% | 15.315% | 20.315% |
たとえば、所有期間7年のマンションを売却し、譲渡所得が1,000万円発生した場合は、以下のように計算します。
譲渡所得税 = 1,000万円 × 20.315% = 2,031,500円
2-2.譲渡所得税の税額シミュレーション
今回はマンションを4,000万円で売却したと想定して、譲渡所得税のシミュレーションを行います。
【前提条件】
- 対象:自宅マンション
- 所有期間:20年
- 譲渡価額:4,000万円
- 取得費:3,500万円
- 譲渡費用:140万円
まずは、マンションの譲渡所得(売却益)を計算していきましょう。
譲渡所得 = 4,000万円 – 3,500万円 – 140万円 = 360万円
所有期間は5年を超えているため、税率は20.315%です。
譲渡所得に税率をかけてみましょう。
譲渡所得税 = 360万円 × 20.315% = 284,410円
以上、4,000万円でマンションを売却した場合の譲渡所得税を計算しました。
今回のシミュレーションでは譲渡所得がありましたが、譲渡所得がない場合や、控除によって税金がかからない場合もあります。
たとえば、譲渡所得が3,000万円以下のケース。この場合、「3,000万円特別控除」の特例適用により、譲渡所得税は0円になります。
確定申告時は譲渡所得の計算を大変に感じるかと思いますが、国税庁のe-Taxを利用すれば、指示通りに入力を進めるだけで譲渡所得や税金の計算をしてくれます。
確定申告を行う方は、ぜひe-Taxをご活用ください。
なお、確定申告については以下の記事で詳しく解説しています。
3.マンション売却でかかる税金
マンション売却で譲渡所得税以外にかかる税金は以下の3つです。
- 登録免許税
- 印紙税
- 消費税
詳しくみていきましょう。
3-1.登録免許税
マンションの売却時には、住宅ローンを完済する必要があります。
住宅ローンを完済すると、抵当権を解除します。
抵当権抹消登記の手続きを行う際に課税されるのが、登録免許税です。
登録免許税は不動産1件につき1,000円かかります。「建物」と「土地」で別々に支払うため、マンションの場合は基本的に2,000円です。
登記自体は司法書士が代行することが一般的で、報酬を支払うとともに登録免許税を司法書士に預け、代行して法務局に納税してもらいます。
3-2.印紙税
印紙税とは、不動産売買契約書を作成した際に課税される税金のことです。
法務局や郵便局で収入印紙を購入し、売買契約書に貼り付けて消印することで納税されます。
印紙を貼らないで売買契約書を作成した場合は過怠税が課税され、本来負担すべき印紙税額の3倍を負担しなければなりません。売買契約書は売却後の確定申告で税務署に提出するので忘れないようにしましょう。
印紙税額は、売買契約書に記載されている売買金額によって納税額が異なります。
契約金額 | 印紙税 | 軽減税率適用後の金額 |
---|---|---|
100万円以上500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円以上1,000万円以下 | 1万円 | 5,000円 |
1,000万円以上5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000万円以上1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円以上5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
5億円以上10億円以下 | 20万円 | 16万円 |
10億円以上50億円以下 | 40万円 | 32万円 |
50億円以上 | 60万円 | 48万円 |
※印紙税額は令和9年3月31日までの軽減措置の適用を受けた金額を表記しています。軽減措置期間以降は、印紙税額が変わるので確認が必要です。
3-3.消費税
投資・事業用のマンションを売却する場合は、消費税が課税されます。
その場合、建物部分のみ消費税の課税対象となり、申告と納税が必要です。
原則、2年前の課税売上高が1,000万円を超えている事業者のみが課税対象となります。
なお、個人がマイホームを売却する場合は、消費税は課税されません。
ただし個人であっても、仲介手数料と司法書士の報酬に対しては消費税はかかります。
4.マンション売却で節税に使える特例・控除
マンション売却時の税金を控除できる制度は4つあります。
- 3,000万円の特別控除
- 10年超のマイホームを売却するときの特例
- 特定の居住用財産の買換えの特例
- 取得費加算の特例
売却したマンションが制度利用条件を満たしていれば大きな節税対策になるでしょう。
ただし、売却後新たに住宅を購入した場合、当該制度を利用すれば住宅ローン控除が利用できません。買い替えの場合にはどちらの制度を利用したほうが有利なのか、よく検討する必要があります。
4-1.3,000万円特別控除
3,000万円の特別控除は、「居住用財産(マイホーム)」を売却した場合、譲渡所得から3,000万円の控除を受けられる制度です。
自宅マンションは居住用財産に当たるため、以下の条件にあてはまれば、控除を受けられます。
- 節税対策として本特例を受けるために購入したマンションではない
- 別荘や保養のためのセカンドハウスなどではない
- 売却した年、前年、前々年に本制度やその他の控除制度を受けていない
- 住まなくなった場合は住まなくなってから3年を経過した年の12月31日まで売却している
- 売却先が配偶者や親族など特別な関係ではない
条件を満たしたうえで売却すれば、3,000万円の特別控除を利用できます。ただし、自動的に控除されるのではありません。売却した翌年に確定申告し、3,000万円の特別控除を利用する旨を申告する必要があります。
4-2.10年超のマイホームを売却するときの特例
10年を超えて所有していたマイホーム売却で、発生した譲渡所得税に軽減税率を適用できる特例です。
譲渡所得税率は、所有期間5年以内は「39.63%」、5年を超えて所有していた場合「20.315%」となります。しかしこの特例が適用されれば、「14.21%」まで税率が下がります。
本特例を受けるためには以下の条件を満たす必要があります。
- 日本国内にある10年以上居住したマイホームを売却する
- マイホームを新築する期間だけ仮住まいとして居住した家や、別荘などの趣味や娯楽のために所有する家ではない
- 売却先が配偶者や親族など特別な関係ではない
本特例は先述した3,000万円の特別控除とも併用が可能です。
ただし、売却金額が6,000万円以内の部分までしか適用されない点に注意しましょう。
6,000万円を超える部分は、通常の20.315%で計算されます。
4-3.譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例
譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例は、マイホームの買い替えにともなって、譲渡損失が発生した場合に適用できる2つの特例です。
損益通算:譲渡損失を他の所得と合算できる特例です。
たとえば、給与所得500万円の方が譲渡損失300万円の取引をした場合、給与所得から300万円を控除し、その年の所得を200万円にできます。
繰越控除:損益通算で相殺しきれなかった譲渡損失を、最大3年にわたって繰越できる特例です。
たとえば、損益通算を適用しても、譲渡損失200万円分が相殺しきれなかった場合は、この200万円を翌年の損失として計上できます。
4-4.取得費加算の特例
取得費加算の特例は、相続した不動産を売却した場合に、相続税の一部を取得費に加算できる特例です。
取得費が大きくなることで譲渡所得は減り、譲渡所得税の負担が抑えられます。
なお、小規模宅地の特例と併用する際は、小規模宅地の特例で計算された金額が基準となり本特例の効果が小さくなる可能性があります。
5.マンション売却時の税金をおさえるコツ
マンション売却は状況により譲渡所得税の課税が避けられないケースもありますが、そのようなときこそ税金をおさえる対策を検討し、実行したいものです。
本章では、税金をおさえるコツを3つご紹介します。
- ふるさと納税を利用する
- 所有期間5年以上で売却する
- 取得費を正しく計算し譲渡所得税を減らす
5-1.ふるさと納税を利用する
売却益が出たことにより発生する税金「所得税」と「住民税」は、ふるさと納税を利用して節税が可能です。
ふるさと納税を利用すれば、自分の住まいがある自治体に納税する税金を任意で選択した自治体に寄付することで、所得税の還付や住民税の控除を受けられます。
マンション売却時の譲渡所得は金額が大きくなりますが、その分ふるさと納税の限度額も上がります。
5-2.所有期間5年以上で売却する
マンション売却による税金をおさえたいなら、所有後5年が経過してから売却することをおすすめします。
譲渡所得税の税率は不動産の保有期間によって異なり、5年を超えて保有した不動産を売却する場合には税率が大きく減少するからです。
所得税 | 住民税 | 合計 | |
---|---|---|---|
保有期間5年以下 | 30.63% | 9% | 39.63% |
保有期間5年超 | 15.315% | 5% | 20.315% |
保有期間5年以下の税率を短期譲渡所得、5年超の税率を長期譲渡所得といいます。
いずれの税率も内訳は「所得税」「住民税」「復興特別所得税」です。
保有期間の長い長期譲渡所得と比べて、短期譲渡所得の税率は2倍近いため、その分金額も高額となります。したがって、不動産を取得して早期売却するにしても、5年以上保有したほうが大きな節税効果を期待できるでしょう。
5-3.取得費を正しく計算し譲渡所得税を減らす
譲渡所得税を減らすポイントのひとつが、取得費を正しく計算することです。
取得費を間違えると、支払う譲渡所得税が高くなるおそれがあります。
取得費は、マンションの所有期間や耐用年数といった「減価償却」を考慮する必要があるため、計算が複雑です。
取得費を間違えて税金を高く計上しないように注意しましょう。
取得費の計算方法は、「3.マンション売却の税金計算シミュレーション」で詳しく解説しています。
マンション売却を検討中の方は、一括査定サイト「不動産売却 HOME4U(ホームフォーユー)」をご活用ください。
「不動産売却 HOME4U」は、全国にある不動産会社の評判や口コミを見て複数社に査定依頼できる一括査定サイトです。
厳選された優良企業2,300社の中からお客様の条件にあった会社を「不動産売却 HOME4U」がピックアップし、その中から最大6社までご自身で選択することができます。
査定を依頼する会社を探すなら、「不動産売却 HOME4U」がおすすめです。
まとめ
今回は、マンション売却時に税金がかからないケースと節税の方法をご紹介しました。
マンションを売却しても、以下のケースでは税金がかかりません。
- 売却で利益が出なかった
- 特例適用で譲渡所得がゼロになった
控除制度を利用する場合は、売却した翌年の確定申告で申告が必要となるので忘れないよう注意しましょう。
なお売買契約をするタイミングで「印紙税」や「登録免許税」が必要となります。また、「消費税」は状況によって非課税になるケースもあるので、事前に不動産会社に確認をしておくとよいでしょう。