相続で空き家となってしまった実家の処分を考えたり、古い自宅を建て替えようとする時、多くの方が「家の解体」について調べます。
そこでまず、皆さんが気になるのは「解体費用がいくらくらいなのか」ですよね?
では、「家の解体費用」とは、いったいどのように決められるのでしょうか?
家や実家の売却について初歩的なことから知りたい方は『家を売る手順や方法は?』『実家を売却する手順』をご覧ください。
解体費用を決める要素は、主に次の3点になります。
- 建物の構造
- 坪数
- エリア(都道府県・市区町村)
例えば、「木造2階建ての約28.70坪の住宅」という一見同じような家でも、秋田県では「854,480円(税抜)」、東京都では「1,387,832円(税抜)」という具合に、なんと約1.6倍の違いがあるのです。 (出典:「解体工事の匠」)
しかも、この1.6倍の差は、単に「東京だから高い」というものではありません。
隣接する物件の有無や、庭木があるのか等、様々な項目によっても異なるのです。
このページでは、相場をご紹介しながら、実際の解体工事が終わった時に「安く済んでトラブルもなくて良かった」と思えるようにするために必要な情報をお伝えします。
「トラブル」と聞くと少し身構えてしまいますが、難しいことはありません。
おさえるべき項目は、
- 相場
- 業者選びのポイント
- 節約する方法
この3つだけです。
費用を払ってから「しまった!」といったことがないよう、一緒に紐といて行きましょう。
空き家の売却について基礎から詳しく知りたい方は『空き家を売却する方法は?』もご覧ください。
Contents
1.家の解体費用は壊す費用以外にもかかる費用がある
家の解体費用は、単に「壊すための費用」と「壊した廃材の処分の費用」だけではありません。 以下のようなものが加算されます。
- 足場養生
- 地下ブロック撤去
- 道路面ブロック撤去
- 樹木撤去処分
- 門扉/カーポートゲート撤去
- 重機回送費
など。
でも、安心してください。ひとつひとつの項目名を覚える必要はありません。
庭に樹木がないお宅もあれば、カーポートのついたお宅もあるでしょう。 つまり、「その家の状況に応じて、費用は一軒一軒異なる」ということを、ここでは押さえておけば大丈夫です。
2.実際の費用はどれくらい?
それでは、実際に費用がいくらかかるのかを見てみましょう。
構造 | 坪数 | 所在地 | 費用(税抜) | |
---|---|---|---|---|
事例1 | 2階建て木造住宅 | 26.50坪 | 東京都 | 1,160,000円 |
事例2 | 2階建て店舗 | 55.00坪 | 大阪府 | 1,895,000円 |
事例3 | 2階建てアパート | 56.00坪 | 東京都 | 3,756,440円 |
「事例1」は、このページを見ている方の代表例のひとつです。 「2階建て木造住宅」を首都圏(大都市圏)で解体すると、「100万円以上はかかるかな」というイメージが持てますよね。
「事例2」は、店舗のケースです。 店舗は住宅に比べると壁の枚数が少ない等、構造上の違いがあるため、坪数が住宅の2倍だからといって、解体費用も2倍になるわけではありません。
「事例3」は、賃貸物件オーナーさんの場合です。 やはり、壁の仕切りが多く、各部屋に水回りの設備やガス等の設置がありますので、店舗と同じような坪数でも、解体費用は2倍におよびます。
こちらのサイトでは、複合条件で自分の条件に近い見積もりを調べることもできます。
解体工事の匠 http://kaitai-takumi.com/price/
たとえば、「木造住宅で22坪の東京の物件」の事例を探すと、次のステップになります。
(1)該当する構造を選択します。
(2)該当坪数を選びます。
(3)右レーンのエリアから「関東」を選びます。
(4)さらに右レーンから「東京都」を選びます。
(5)するとこのような見積もり事例が表示されます。
どうでしょう?よりイメージがわいたと思います。
3.業者選び、3つの重要ポイント!
相場のイメージもつき、いよいよ解体業者を探す段階まで来ました。
ここで大切なのは、次の3つのポイントです。
- 実際に現場で立ち会って見積もってもらうこと。
- 複数社から見積もりを取って比較すること。
- 見積書はかならず「書面」でもらうこと。
各項目の詳細はこの後説明しますが、なぜ大切かというと、これらを踏まえておかないと、追加料金がどんどん発生していったり、近隣とトラブルになりかねないからです。
特に近隣トラブルは、訴訟になるケースもあり、経済的にも精神的にも消耗することになりますので、とても重要なのです。
それでは一つ一つ見て行きましょう。
3-1.実際に現場で立ち会って見積もってもらうこと。
まず実際に会うことで、その業者さんが「お願いしても大丈夫かどうか」という人柄を見ることができます。
解体の過程で何か起きた時、きちんと誠意を持って対応してもらえるかどうか等、想定しながら話してみてください。
また、疑問点や心配なことがあれば、その場で直接聞いてみましょう。 ただその場に立ち会うだけでなく、コミュニケーションを取ってみることが重要です。
さらにもし近所でその業者さんが解体工事を行っている現場があるようでしたら、行ってみるのも見定めの一つの方法です。 特に工事中は近隣に迷惑をかけることもありますので、日々の作業後にきちんと掃除をしているか等、作業の様子を見れば良い業者さんかどうかわかります。
【1点目】
業者さんには物件の中まで入ってもらい、「アスベスト(石綿)が使われているかどうか」を聞いてください。 アスベスト(石綿)は、健康被害を及ぼす物質のため、環境省では処理マニュアルが定められています。 (参考:環境省「廃棄物処理法における廃石綿等の扱い」)
処分費用も量に応じますが、数百万円かかる場合もあります。 工事が始まってから、高額な追加料金が請求されないよう、家の中までしっかり見た上で見積もってもらいましょう。
【2点目】
工事中、騒音や振動などでご迷惑をかけることになる近隣へのご挨拶まわりに、一緒に同行してもらえるか、聞いてみましょう。
なぜかというと、近隣から苦情はたいてい業者に直接入るからです。 挨拶まわりすら面倒くさがるようでは、苦情が来た場合の対応が印象の良いものとは想像できないですよね。
近隣の方も「この曜日やこの時間は工事をしてほしくない」など、希望があるかもしれません。 そういったことを、予め業者さんとともにご挨拶をしながら聞き取りをすることで、業者さんも近隣の方の生活状態や人となりを把握することができます。
また、意外と思うかもしれませんが、相続した実家を解体する場合、「実は長い間、親が近隣とのトラブルを抱えていて、工事の騒音などをきっかけに近隣の方の長年の恨みが噴出して訴訟を起こされ慰謝料を請求される」といったこともあるのです。
このようなことを未然に防ぐためにも、信頼のおける業者さんとともに誠意をもった挨拶まわりを行い、近隣の要望にできるだけ添う方法がないか、業者さんと打ち合わせることが大切です。
ですから、業者選びがとても重要なのです。
3-2.複数社から見積もりを取って比較すること。
何度も立ち会うのは面倒ですが、可能な限り立ち会って、複数の業者さんに見積もってもらいましょう。
業者さんによっては、工法の違いから、見積もり金額が違うこともあります。
できるだけ細かい内訳で見積もりを出してもらい、他社とあまりに違いがある場合などは、理由を聞いてみたりするのも良いと思います。
そこできちんと答えてくれるのか、あいまいな答えしか返ってこないのかで、信頼に足る業者さんかどうかの見定めにもなります。
複数社の営業マンに来てもらうのは大変ですが、良い業者さんを見つけるためですので、ここはきちんと時間を費やしましょう。
3-3.見積書はかならず「書面」でもらうこと。
現場で立ち会って見積もってもらうと、その場で見積もり金額を口頭で出してくる業者さんもいます。
でも、それでお願いして、工事のあとでそれ以上の請求が来てしまったら、「言った言わない」のトラブルになるだけです。
見積書は、「できるだけ内訳の細かいもの」を「書面で」必ずもらってください。 見積書にない項目があとから勝手に上乗せされないよう、「工事範囲」と「工事金額」を明確にしておくことが大切です。
見積書のサンプルです。
このようなサンプルは、こちらで見ることができます。
また、次のような「解体費用の一括見積サイト」もあります。
【特長】 ・最大5社へ一括見積りが依頼できる。 ・匿名見積もり依頼が可能。 ・工務店・ハウスメーカーを介さないので最安値が出やすい。
【特長】 ・東京・名古屋に拠点。 ・来社相談(対面)が可能。 ・他社の見積書をチェックしてくれる(悪徳業者を見分けるサポートサービス)。
金額の安さだけで業者さんを選ぶと、後で思わぬ出費が生じたり、トラブルが起こる可能性もありますので、ぜひ実際に営業マンと対面して、「金額も信頼も納得できるな」と思える業者さんを選んでください。
4.解体費用を節約する方法
業者さんに見積もってもらった解体費用ですが、「もう少し安くなると良いな…」と誰もが思うものです。
少しでも解体費用を節約する方法はないでしょうか?
あります!ズバリ「値引き交渉」です!
この交渉をするためにも、「3.業者選び、3つの重要ポイント」の章でお伝えした通り、「複数の会社から見積もりを取る」ことが重要です。
「全体的にはA社が安かったのでA社と契約しようと決めたが、とある項目はB社の方が安かった」というような場合は、「この項目はもう少し安くできたりしないですかね?」といったことが言えるかもしれません。
ただし、業者さんにより安くできる項目とできない項目があります。 あくまでも交渉ごとなので、信頼関係を損なわずに相手に気持ちよく応じてもらえるような話し方や態度になるよう、心がけたいですね。
また、不幸にも最近の日本では、地震、台風、竜巻、水害などにより、家を解体せざるをえない状況になってしまうケースもあります。
このような場合には、国や自治体からの援助を受けられる可能性があります。 ただし、補助金や助成金の制度が設けられたとしても、一定の期間をもって終了となるケースが多いようですので、対象となってしまった場合には、速やかに自治体に相談してください。
2016年4月の熊本県の地震についても、2016年6月1日現在ではまだ制度化はされていませんが、もし制度化前に自費で解体してしまっている場合でも、一定の条件に合致し、それを証明する写真や領収書などがあれば補助を受けられる可能性があるようです。
最新情報は自治体に直接お問い合わせください。 参考:熊本市ホームページ
5.注意点
「古い実家を相続したけど売れそうもないから、更地にして売ろうか…」と考えている方は要注意です。
更地にすると税金が高くなるからです。 正確に言うと、建物があることによって受けることができていた「住宅用地の特例(土地にかかる税金が安くなる特別措置)」が受けられなくなり、結果として税金が高くなるのです。
固定資産税の計算事例は下記の通りです。
土地の状態 | 固定資産税 |
---|---|
空き地(更地で建物もない状態)の一例 土地:3,800万円と想定 |
140,000円 |
建物があった場合の一例 土地:3,800万円と想定 建物:1,000万円と想定 |
106,300円 ※建物があった方が安い! |
更地にして売り手がすぐにつけば良いですが、そのような保証がない場合には、「土地だけ買いたいという人が出てきた場合には、家の解体費用は自分が負担します」といった条件を不動産会社に相談しながら、家をそのままにして売りに出す方がおすすめです。
また、「市街化調整区域」ですと、いったん更地にしてしまうと新たに建物が建てられなかったりします。
いずれにしても良心的な不動産会社であれば、希望に沿った売り方の提案を出してくれるかもしれませんので、解体せずにうまく売る方法がないかまずは相談してみましょう。
実践した人の9割以上が「やって良かった」と答えている“家を高く売る3つの簡単テクニック”を見る
6.まとめ
では、おさらいしてみましょう。
- 見積もりは現場に立ち会って書面でもらう!
- 見積もりは複数社から取り寄せて比較する!
- 金額だけでなく、信頼できる業者かどうかを見定める!
- 解体後の計画が確定していない場合には、安易に更地にしない!
- 値引き交渉に挑戦したり、自治体の補助金が受けられないかリサーチする!
大切なおうちの解体です。 信頼できる業者さんに納得の費用で、かつ、トラブルなくお願いできるよう、しっかりとポイントをおさえておきましょう!