知らないと後悔する!?空き家対策特別措置法の内容と対策

知らないと後悔する!?空き家対策特別措置法の内容と対策

総務省の2013年版「住宅・土地統計調査」によれば、2013年10月における国内の空き家は820万戸となり、5年前の統計調査と比べると63万戸も増加しています。
その後も少子高齢化と人口減少は進んでおり、空き家の増加には歯止めがかかっていません

そこで登場したのが、空き家特別措置法です。

空き家が増えている中、実は自分の実家が空き家のままになっているという方も多いのではないでしょうか。
空き家特別措置法によって、実家の空き家がどのようになってしまうか、不安に感じておられる方もいらっしゃると思います。

結論からすると、相続等で取得した空き家が、すぐに空き家特別措置法でどうにかなってしまうことにはなりません。
但し、空き家の所有者である以上、空き家特別措置法についてはしっかりと理解しておく必要があります。

そこでこの記事では、空き家特別措置法および関連法規の改正について詳しく解説いたします。
法律の内容を詳しくすることで、空き家の所有者として、今後どうすべきかを決めるのに役立てて頂ければと思います。
ぜひ、最後まで読んで頂き、ご参考ください。

家の売却について基礎から詳しく知りたい方は『家を売る方法』もご覧ください。

1.空き家対策特別措置法とは

空き家

空き家特別措置法は、「空家等対策の推進に関する特別措置法」の略称です。
空き家法とも呼ばれています。
空き家特別措置法は、2015年5月より施行された比較的新しい法律になります。

空き家特別措置法の目的は、適切な管理が行われていない空き家等がもたらす問題を解消するために制定されました。
空き家等がもたらす問題とは、防災、衛生、景観等の地域住民の生活環境に深刻な影響を与える問題のことを指しています。

空き家特別措置法では、空き家の所有者に対して、「周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、空き家等の適切な管理に努めるものとする」という努力義務を課しています。

つまり、空き家特別措置法とは、「空き家所有者の方は、地域に深刻な問題を与えないようにするために、しっかりと空き家を管理してくださいね」という法律になります。

そのため、空き家でもしっかりと管理されていれば、特段問題はありません
この法律の趣旨としては、第一義的には所有者等による自主的な空き家管理を前提としています。

但し、経済的事情等によって、空き家を管理することができない人もいます。
そこで空き家特別措置法では、所有者等が管理しきれない以下のような空き家を、自治体が特定空き家と呼ばれる空き家に指定することができます。

特定空き家に指定される可能性のある空き家

  1. 倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態の空き家
  2. 著しく衛生上有害となるおそれのある状態の空き家
  3. 適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態の空き家
  4. その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態の空き家

特定空き家に指定されると、市町村の行政が、除却、修繕、立木竹の伐採等の措置の助言又は指導、勧告、命令をすることができます。

従来、行政が空き家の所有者に対して強制力を持つことはありませんでしたが、特定空き家の指定によって、強制的に除去等をできるようになったというのが、この法律の特徴となります。

2.空き家放置のリスク

それではまず、空き家を放置した場合のリスクに関して解説したいと思います。
大別すると「所有者として責任を負うリスク」と「建物の価値が下落するリスク」です。
それぞれについて詳しく見ていきましょう。

2-1.所有者責任リスク

空き家の所有者の中には、別に空き家は放置しておいても、良いのではないかと思われている方もいらっしゃると思います。

しかしながら、空き家のような工作物の所有者には、民法で所有者責任が課されていますので、注意が必要です。

民法では、工作物責任と呼ばれる有名な規定があります。
その条文は第717条に以下のように定められています。

民法第717条

  1. 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
  2. 前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。
  3. 前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。

簡単に言うと、空き家所有者は、建物の崩壊などに起因する事故で、建物の設置または保存に瑕疵(かし)がある場合、自己に過失がなくても責任を負わなければならないという規定になります。
瑕疵とは通常有すべき品質を欠くことです。
過失とは「わざと」という意味になります。

この民法の工作物責任は無過失責任であるという点がポイントです。
無過失とは、「わざとじゃない」ということです。

例えば、空き家を放置して人に危害を与えてしまった場合、それがわざとやったことではなくても、所有者としては責任を負わなければいけないということになります。
無過失責任とは、非常に重い責任であるため、注意が必要です。

空き家は放置しておくと、以下のような問題を発生させます。

  • 地域景観の悪化
  • 害虫の発生、野良猫・野良犬などの集中、不法投棄などによる生活環境の変化
  • 雑草の繁茂、落ち葉の飛散、植栽の越境
  • 建物や屏等の倒壊、屋根材・外壁材等の飛散・落下
  • 隣接地への草の浸入や樹枝の越境
  • 火災の発生
  • 犯罪の発生・誘発
  • 不審者の不法滞在
  • 郵便受けの悪用

このような問題が発生すれば、場合によっては所有者として工作物責任を問われかねません。

建物という工作物を所有している以上、所有者には工作物責任が課されています。

空き家が放置される原因としては、所有者の問題意識の低さも大きな原因の一つです。
もし、他人に危害が加わるようなことがあったら、所有者にも責任が及ぶリスクがあるということを理解しておきましょう。

2-2.建物価値下落リスク

建物価値下落リスク建物は、空き家として放置しておくと、その価値を自然と落としていきます。
人が住まなくなった家は、手が行き届かなくなるため、想像以上に早く劣化していきます。

例えば、空き家を放置しておくと、以下のような劣化が発生するようになります。

  • 建物の密閉状態が続くことにより、湿気等の要因が重なってカビが異常繁殖する。
  • タンスやソファー等の家具が傷む。
  • フローリングのヒビ割れや畳の腐食が生じる。
  • 玄関周りの部分朽廃や、ドアに歪みが発生する。
  • シロアリが大量に発生する。
  • 風呂場や流し台の排水口内やトイレの滞留部の水が蒸発し、悪臭の原因となる。
  • ハチの巣ができる場合がある。
  • 窓周りのコーキングの劣化で雨が侵入することがある。
  • ネズミが配線をかじることで電気設備が故障し、火災が発生する場合がある。

このように、建物の劣化が進んでしまえば、いざ売却しようとしたときに、価値が下がってしまいます
価値を落とさずに売却するには、空き家になった時点から、なるべく時間をおかずに早めに売却することをお勧めします。

尚、慣れてくると、この家が空き家かどうかというのは、実は外部からすぐに分かるようになります。

空き家は庭の草木が繁茂し、まるでそこだけ時間が停まっている様な寂しい雰囲気を発します。
見慣れると、少し離れた位置からでも空き家であることが分かります。

空き家を狙っている犯罪者にとっては、空き家を見抜くことは容易です。

空き家は、放置しておくと建物の価値を落としますが、同時に犯罪者にとっても狙われやすい状態に変わってしまいます

劣化や犯罪を防ぐためにも、空き家を管理することはとても重要です。

3.空き家を保有するコスト

3-1.固定資産税及び都市計画税

空き家を保有することで発生するコストの中で最も大きいのは固定資産税および都市計画税(以下、「固定資産税等」と略)です。
都市計画税は都市計画で指定されている市街化区域内の土地と建物に課税されます。

固定資産税等は空き家特別措置法に深くかかわる部分ですので、少し詳しく解説します。

空き家を保有していると、固定資産税等が建物と土地に発生します。

固定資産税等は以下の計算式で計算されます。

固定資産税 = 課税標準額 × 税率

(税率)
固定資産税:1.4%
都市計画税:0.3%

課税標準額とは課税する対象となる金額のことを指します。
固定資産税等では、課税標準額とは別に、固定資産税評価額というものが登場します。

固定資産税評価額とは、市区町村が固定資産税等を徴収するための基礎となる価格を3年に1度評価した価額のことです。

建物の課税標準額は、建物の固定資産税評価額と同一となります。
建物については、固定資産税評価額に税率を乗じたものがそのまま固定資産税等となります。

ところが、土地については課税標準額が固定資産税評価額とは異なります。
土地の課税標準額は、土地の上に住宅が建っていると、課税標準額が固定資産税評価額から大きく減額されるという特例があります。
これを住宅用地の特例と呼びます。

住宅用地には、小規模住宅用地と一般住宅用地の2種類があります。

小規模住宅用地 ・・・ 住宅用地で住宅1戸につき200m2までの部分
一般住宅用地 ・・・ 住宅用地で住宅1戸につき200m2を超え、家屋の床面積の10倍までの部分

200m2となると、60.5坪です。
例えば、60坪の敷地に1戸の空き家が建っている場合は、その敷地は全て小規模住宅用地として扱われます。

課税標準額に関し、それぞれの敷地は以下のようになります。

(固定資産税)
小規模住宅用地 課税標準額は固定資産税の6分の1
一般住宅用地 課税標準額は固定資産税の3分の1

(都市計画税)
小規模住宅用地 課税標準額は固定資産税の3分の1
一般住宅用地 課税標準額は固定資産税の3分の2

住宅用地の特例は、上に建っている建物が空き家であっても適用されます。

例えば、土地の固定資産税に関しては、固定資産税の6分の1を乗じたものが課税標準額となります。

もし、土地の上に建っている建物が、工場や店舗、事務所ビルの建物であれば、この特例を適用することはできません。
あくまでも住宅が建っていることで、土地の固定資産税が安くなっているという特例になります。

ちなみに、住宅が建っていない土地のことを、固定資産税の中では、ひとまとめに商業地等という呼び名で呼びます。
商業地等は、更地も含みます。

商業地等の課税標準額は、一般的に固定資産税評価額の70%程度になります

つまり、空き家があることで固定資産税評価額の6分の1(固定資産税評価額の17%程度)が課税標準額だったものが、空き家を取り壊すことで固定資産税評価額の70%程度になってしまうため、空き家を取り壊すと土地の固定資産税が上がることになります。

この住宅用地の特例があるがゆえに、空き家を取り壊さないでいる人は多くいます。
住宅用地の特例は、空き家が増加してしまった原因の一つともされており、弊害となっています。

空き家特別措置法では、この弊害の是正を図ることも目的としています。
まずは、空き家があることで、土地の固定資産税が低く抑えられているという点を理解しておきましょう。

3-2.その他のコスト

その他、空き家を保有すると、以下のようなコストがかかります。

光熱費:通電および通水状態にあると、電気代や水道代の基本料金が発生します。
自治会費:自治会に加入したままだと自治会費が発生します。
損害保険:火災保険料等が発生します。
交通費:自分で管理をする場合は空き家までの往復交通費が発生します。

光熱費に関しては、通電および通水を止めれば発生しません。
自治会費も退会すれば、発生を防げます。

また、空き家が遠方にある場合、定期的に空き家の巡回を行うと交通費も発生します。

固定資産税等以外のコストはそれ程大きくはありません。
工夫次第では節約できるものも多いです。
無駄なコストは省くようにしましょう。

4.特定空き家に指定されたらどうなるのか

空き家特別措置法で実際に関わるのは、市町村の自治体です。
市町村は、所有者等が管理しきれていない危険な空き家を「特定空き家」として指定することができます

特定空き家に指定されるきっかけとしては、近隣住民からのクレームが元になっていることが多いです。
そのため、特定空き家に指定された時点で、既に近隣へ相当に迷惑をかけています。

空き家特別措置法で、市町村が行う具体的な流れは以下の通りです。

  1. 空き家の調査
  2. 特定空き家の指定
  3. 特定空き家の所有者に対する助言
  4. 特定空き家の所有者に対する指導
  5. 特定空き家の所有者に対する勧告
  6. 特定空き家の所有者に対する命令
  7. 行政代執行

特定空き家に指定されると、助言等が行われますが、これらは、助言、指導、勧告、命令の順番で厳しさのレベルが上がっていきます

特定空き家指定後に行われるのは、まずは「助言」です。
例えば「ゴミが不法投棄されているので、処分してください」という助言が来ます。

次に助言に従わないと、「指導」が来ます。
指導レベルとなると、具体的にいつどのように改善するかまで求められる可能性があります。
行政指導までは比較的優しい措置ですので、この段階までに必ず改善するようにして下さい。

仮に、指導を無視してしまうと「勧告」を受けることになります。
ここからは、具体的な行政措置が行われます。
勧告を受けると、固定資産税等の住宅用地の特例を受けられなくなります

つまり、勧告を受けてしまうと、空き家が建っているにもかかわらず、固定資産税等が上昇してしまいます。
土地は通常の更地並み課税となるので注意が必要です。

さらに勧告を無視すると、「命令」が下ります。
命令は、命令に背くと、50万円の罰金が科されます

勧告にも背き、罰金を払うと、最終的には行政代執行が行われます。
行政代執行では、建物の解体等も行われることがあります。

但し、解体費用は、もちろん所有者に請求されてしまいます。
この解体費用が支払われなければ、最終的には土地が差し押さえられて、売却されることになります。

つまり、空き家特別措置法では、行政の助言等に背き続けると、最終的には土地を失うこともあります。

土地を失うまでは、かなりの段階を踏んでいます。
助言や指導等の段階で改善のチャンスは2回も与えられており、具体的な措置は回避することもできます。

まずは、何よりも特定空き家に指定されないということが重要です。
空き家はしっかりと管理して、特定空き家に指定されないようにしましょう。

5.空き家を管理するポイント

空き家の管理には、2章でもお伝えしたように「所有者責任を問われないようにする」ことと、「建物の価値を落とさないようにする」ことの2つを意識して行うことがポイントです。
具体的にどうしたら良いのか、見ていきましょう。

5-1.所有者責任を問われないようにする

所有者責任を問われないようにするには、こまめに外観を確認することが重要です。
台風や地震の際、瓦等のモノが落下して第三者に危害を与えることを防ぎます。

外観のチェックポイントとしては、屋根、外壁、樋(とい)、門、庭になります。

屋根は瓦等がずれていないかチェックしてください。
トタン屋根の場合は、継ぎ目や端がめくれていないか確認します。

外壁については、モルタルやタイルにヒビが入っていないか確認します。
ヒビが入っていると、そこから雨水が侵入し、モルタルやタイルが浮いてしまい、最終的には落下してしまいます。
落下物を生じさせないためにも、ヒビ割れには注意をしてください。

樋については、金具が外れていると、樋そのものが落下する危険があります。
また門については、錆が発生していると門そのものが倒壊する可能性があります。
金具や錆については、定期的にチェックするようにして下さい。

庭は木枝の伸びや、ゴミの不法投棄、犬や猫の糞尿を確認します。
木枝は隣地に越境しないよう、マメに剪定してください。
また、猫の糞害は近隣に大きな迷惑を及ぼしますので、猫を寄り付かせないようにしましょう。

5-2.建物の価値を落とさないようにする

建物の価値を落とさない建物の価値を落とさないようにするには、こまめに内部を確認することが重要です。
具体的には、通気・換気と排水口の悪臭予防、和室の畳床湿気予防がポイントです。

通気・換気については、定期的に行うようにして下さい。
結露が発生すると、カビが増え、シロアリが増加する原因となります。

但し、換気扇を回しっ放しにするのは良くありません。
換気扇を回し続けると、雨の日に逆に湿気を取り込んでしまうため、逆効果になります。

また、排水口は定期的に水を流します。
排水口の下は、S字トラップと呼ばれるS字型の管があり、そこには封水と呼ばれる水が溜まっています。
封水は下水管の下から汚臭が逆流することを防いでくれます。

空き家では、封水の水が蒸発してしまうと、汚臭が立ち込めます。
そのため、定期的に水を流すことで、封水を維持します。
もし、通水を止めている場合には、ペットボトルに水を入れてきて、定期的に水を流すようにして下さい。

また、畳は湿気予防のために全て上げておきます。
通気・換気少ない空き家では、和室が湿気の影響を受けやすいです。
放っておくと、和室からカビが拡散してしまうため、注意が必要です。

6.空き家の売却と3,000万円特別控除

空き家が発生する原因の一つに相続があります。
空き家対策特別措置法の施行により、関連法規も一部変わっています。

そのうちの一つが、相続で得た空き家(以下、「相続空き家」と表現)の売却で発生する所得税等を減額してくれる措置になります。
この措置は、「3,000万円特別控除の特例」と呼ばれます。
本章では、この特例の効果や適用要件などを解説していきます。

6-1.譲渡所得と3,000万円特別控除の効果

個人が不動産を売却して得られる所得を、譲渡所得と呼びます。
売却時には、譲渡所得に税率を乗じて所得税および住民税を支払います。

譲渡所得とは、以下の計算式で表される所得です。

譲渡所得

譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用

譲渡価額とは売却額です。
取得費とは売却した不動産の購入額です。但し、建物は減価償却後の価額になります。
譲渡費用とは、売却に要した仲介手数料等の費用です。

ここで、取得費が不明の場合には、概算取得費というものを用いて計算します。
概算取得費は譲渡価額の5%です。

概算取得費を用いてしまうと、譲渡所得が大きくなるため、所得税等の負担が大きくなってしまいます。

相続空き家は、古くから持っている家が多く、所得費が不明で概算取得費を用いざるを得ないケースが良くあります。
そのため、取得費の分からない相続空き家は売却すると税金が高くなるため、売却の阻害要因となっていました。

そこで、空き家対策特別措置法と同時期に改正されたのが、相続空き家の3,000万円特別控除です。

相続空き家の3,000万円特別控除を適用すると、譲渡所得は以下のように計算されます。

3,000万円特別控除を適用した場合の譲渡所得

譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用 - 3,000万円

この特例を適用すると、譲渡所得が相当に小さくなるか、もしくはゼロ(マイナスの場合はゼロ)になります。

売却によって税金が発生することがほとんどなくなったため、売却が非常にしやすくなりました

6-2.家屋の要件

但し、全ての相続空き家に3,000万円特別控除が適用できるわけではありません。
売却する空き家には、以下のような条件が必要となります。

相続空き家の3,000万円特別控除適用要件

  1. 相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋であること
  2. 1981年5月31日以前に建築された家屋であること
  3. 区分所有建築物(マンション等)以外の家屋であること
  4. 相続の開始直前においてその被相続人以外に居住していた者がいなかったこと
  5. 相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付の用または居住の用に供されていたことがないこと

(取壊して売却する場合)
相続した家屋を取壊して土地のみを譲渡する場合には、取り壊した家屋について相続の時からその取壊しの時まで事業の用、貸付の用又は居住の用に供されていたことがないこと、かつ、土地について相続の時からその譲渡の時まで事業の用、貸付の用または居住の用に供されていたことがないこと

この特例は、取り壊した更地にした後でも適用できるという点がポイントになります。

6-3.譲渡の要件

さらに譲渡に関しても以下のような要件があります。

譲渡の要件

  1. 譲渡価額が1億円以下であること。
  2. 家屋を譲渡する場合、その譲渡時において、その家屋が現行の耐震基準に適合するものであること。

ここで、譲渡の要件の中に、家屋は現行の耐震基準を満たさなければいけないことになっています。

一方で、譲渡する家屋の要件の中に「1981年5月31日以前に建築された家屋」であるこという要件があります。

実は、現行の耐震基準の建物とは、1981年6月1日以降に確認申請を取得した建物が現行の耐震基準となります。

そのため、1981年5月31日以前の建物は、自主的に強固に作った建物を除くと、基本的には現行の耐震基準を満たしていないということになります。

3,000万円特別控除を適用するには、家屋の耐震改修を行って、現行の耐震基準を満たすようにしなければなりません。

ところが、1981年5月31日以前の建物は、そもそも築25年以上を経過しており、建物価格がゼロの建物となっていることが多いです。

たとえ、耐震改修を行っても、古い建物であるため、そこに価値を見出す買主はほとんどいません。
お金をかけてまで耐震改修を行うことは、正直、もったいないです。

よって、3,000万円特別控除の適用を受けるには、空き家を取壊して更地にして売却した方が良いです。

法律も、空き家の取り壊しへと誘導するよう意図的に設計させています。

3,000万円特別控除の改正は、空き家対策特別措置法の施行と同時期に行われたため、その目的は同じく空き家の解消です。

意図としては、「空き家は取り壊して売って下さい、そうしたら税金を安くしてあげます」というメッセージが込められています。

尚、空き家の取壊し費用は、譲渡所得を計算する上での譲渡費用に含むことができます。

木造の戸建住宅であれば、取壊し費用は概ね坪4~5万円程度です。
延床面積が30坪の戸建住宅であれば、取壊し費用は120万円~150万円程度となります。

取壊し費用は、譲渡所得を節税してくれる譲渡費用になりますので、領収書や契約書等はしっかりと保管するようにしておいてください。

6-4.特例適用のための注意点

3,000万円特別控除を適用するためには、相続の発生時期と売却の時期に以下のような制限があります。

相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。

適用の期限が設けられており、2023年(令和5年)12月31日までに売った場合に限られます。
期限が迫っている方は、早めに売却するようにして下さい。

また、家屋の要件の中には、「相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付の用または居住の用に供されていたことがないこと」というのもあります。

つまり、相続後に他人に貸してしまうと、特例が適用できません

相続空き家は他人に貸して有効活用したいところですが、1度でも他人に貸してしまうと特例が適用できなくなります。
また、更地にした後も、「相続の時からその譲渡の時まで事業の用、貸付の用または居住の用に供されていたことがないこと」ということが要件となっています。

空き家を取り壊した後に駐車場のような有効活用を行うこともNGとなります。

相続空き家は、安易に有効活用をしてしまうと、3,000万円特別控除の特例を使うことができなくなります。
相続空き家を有効活用する場合には、売却する可能性がないかどうかを併せて検討するようにしましょう。

その他の要件については、下記国税庁のページをご参照ください。
国税庁タックスアンサー「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」


7.空き家対策特別措置法への対応

最後に空き家対策特別措置法に対してどのように対処すべきかについてご紹介します。

空き家対策特別措置法は、行政が今までどうしようもできなかった危険な空き家に対して、除却、修繕、立木竹の伐採等の措置の助言又は指導、勧告、命令ができるようになったことが特徴です。

地域住民から、「あの空き家、どうにかして欲しい」とクレームが生じても、どうにもできなかったというのが、法律が施行される前の状況でした。

今後は、行政が問題のある空き家を特定空き家に指定することで、除却等の指導、勧告、命令ができるように変わっています。

そのため、空き家の所有者の方は、「特定空き家に指定されないよう、しっかりと空き家を管理すること」が重要です。

特定空き家に指定されない空き家であれば、従来同様、全く問題はありません。
空き家対策特別措置法は、第一義的に所有者等による自主的な管理を前提としています。

もし、空き家の管理が面倒である、経済的に負担である等の理由がある場合には、売却も有効な手段になります。

空き家対策特別措置法の施行によって、相続空き家を売却したときの所得税の見直しも行われ、空き家が売却しやすくなりました。

継続的な管理が無理であれば、売却するのも良いでしょう。

いずれにしても、空き家対策特別措置法によって、今すぐ空き家がどうかなってしまうわけではありません。
特定空き家に指定される前に、管理か売却か等の方針を立て、対応するようにして下さい。

まとめ

いかがでしたか?

空き家対策特別措置法について見てきました。

空き家対策特別措置法は、世の中から危険な空き家を無くすための法律です。
特定空き家に指定されてしまうと、助言等を受けることになります。
改善を怠ると、場合によっては固定資産税等の軽減措置を受けられなくなり、罰金も科されます

特定空き家に指定されないように、空き家はしっかりと管理することが重要です。
相続空き家であれば、3,000万円特別控除を適用することによって、空き家は売却しやすくなりました。

管理の継続もしくは売却によって、特定空き家となることを回避するようにしましょう。

(2019/10/28追記:「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」の適用期限の延長に伴い、一部表記を修正しております。)

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