マンションを所有すると、毎年納めなければならないのが固定資産税です。資産価値が高いほど固定資産税も上がるため、マンションを所有する際には毎年どのくらいかかるのかを知っておく必要があります。固定資産税がかからないケースはほとんどないからです。
マンションの固定資産税の金額や支払いの目安は以下のとおりです。
項目 | 目安 |
---|---|
マンションの固定資産税の金額 | 年間10万〜30万円 |
固定資産税を支払うタイミング | 一括払い:4~6月 分割払い:4月・7月・12月・翌年2月の4回払い |
固定資産税の支払い方法 | 現金払い 口座振替 インターネット決済:クレジットカード、スマートフォン決済アプリなど |
本記事では、マンションの固定資産税の計算方法や目安、軽減措置などについて解説します。
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Contents
1.マンションの固定資産税の目安は年間10~30万円
マンションの固定資産税の目安は、年間10万円〜30万円と言われています。しかし、立地の良い東京都心のマンションなどは、年間40万円〜70万円かかることがあります。
固定資産税とは、毎年1月1日時点で土地や家屋などの固定資産を所有する方が、固定資産の所在する市町村(東京23区は東京都)に納付する地方税です。
自治体は固定資産の評価額をもとに税額を算出しています。対象となる固定資産の種類は以下のとおりです。
固定資産の種類 | 具体例 |
---|---|
土地 | 田、畑、宅地、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野など |
家屋 | 住宅、店舗、工場、倉庫など |
償却資産 ※事業用の資産 |
会社等(事業者)が所有する構築物(広告塔やフェンスなど)、 飛行機、船、車両や運搬具(鉄道やトロッコなど)、備品(パソコンや工具など)など |
出典:「“固定資産税”. 総務省. (参照2024-06-17)」をもとに、お家のいろはが独自に作成
税率は原則として1.4%ですが、自治体は必要に応じて1.4%ではない税率を条例で定められるため、正確な税率を知りたい場合は市区町村のホームページなどで確認しましょう。
1-1.固定資産税は年4回の分割払い
固定資産税の納税通知書は、市区町村によって多少異なりますが、毎年4~6月に送付されます。
納期は第1期~第4期まであり、こちらも市区町村によって納付月が異なりますが、第1期の納付月は、4月~6月頃が一般的です。
第1期に1年分の税額を一括払いすることもできます。
固定資産税の税額は市区町村が計算したのちに納税通知書にて知らされるため、納税者が自分で計算する必要はありません。
なお、土地と家屋の固定資産税評価額は3年ごとに評価替えが行われます。
前回の評価替えは2021年度(令和3年度)に実施されました。3年後である2024年度(令和6年)は評価替えの年にあたるため、すべての土地・家屋の価格が見直されます。
1-2.都市計画税の税率は原則として0.3%
都市計画税の税率は原則として0.3%ですが、固定資産税と同様に、市区町村の判断で税率を定められます。市街化区域内に所在する土地および家屋が課税対象です。
ただし、原則を超える税率を設定できる固定資産税とは異なり、都市計画税の場合は0.3%を超える税率にすることはできません。
納税義務者は、毎年1月1日時点で市街化区域内の土地または家屋の所有者として、固定資産課税台帳に登録されている方です。
都市計画税は、固定資産税と同じ納税通知書に記載されています。
なお、市街化区域とは、すでに市街地として栄えている地域や、将来的に整備して市街化を進める地域を指します。
都市計画事業または土地区画整理事業に要する費用に充てるために、目的税として課されるのです。
2.マンションにかかる固定資産税の計算方法
固定資産税とは、土地や家屋などの固定資産に課税される地方税であり、住宅の場合は土地と建物それぞれについて発生します。
固定資産税額の基本的な計算式は以下のとおりです。
土地・建物それぞれの固定資産税評価額に税率1.4%をかけて、固定資産税額を算出します。
マンションの所有者も、土地と建物の両方について固定資産税を納付しなければなりません。マンションの場合は、土地・建物の持分の評価額に応じて税額が決定します。
マンションは木造戸建てと比較すると耐用年数が長いため、固定資産税評価額が下がりにくいのが特徴です。そのため、築年数や購入金額が同じだったとしても、マンションのほうが一般的な戸建てより固定資産税が高くなりやすい傾向があります。
3.新築マンションで適用される固定資産税の軽減措置
マンションの場合、土地と建物の両方に固定資産税が課されます。
新築マンションの土地部分については「住宅用地の特例」、建物部分については「新築住宅に係る税額の減額措置」を適用できます。
土地と建物にかかる固定資産税について、それぞれの軽減措置を解説しましょう。
3-1.土地部分については「住宅用地の特例」
「住宅用地の特例」とは、住宅が建つ土地にかかる固定資産税が、更地にかかる固定資産税と比較して最大6分の1に減額される特例です。
土地の面積によって、軽減される割合に違いがあります。
区分 | 面積区分 | 課税標準額 |
---|---|---|
小規模住宅用地 | 住宅1戸あたり200平米以下の土地 | 評価額×1/6 |
一般住宅用地 | 住宅1戸あたり200平米を超える部分 | 評価額×1/3 |
出典:「“住宅用地と住宅用地の特例とは”. 黒石市. (参照2024-06-17)」をもとに、お家のいろはが独自に作成
「住宅用地の特例」については、特に適用期限が設けられていません。
3-2.建物部分については「新築住宅に係る税額の減額措置」
新築マンションは一定の要件を満たす場合、固定資産税の軽減措置として「新築住宅に係る税額の減額措置」を受けられます。2026年(令和8年)3月31日までに新築された住宅が対象です。
新築マンションにおける「一般的住宅特例」と「認定長期優良住宅」の条件や適用期間は以下のとおりです。
一般的住宅特例 | 認定長期優良住宅 | |
---|---|---|
条件 | ・床面積が50~280平米 ・3階建て以上の耐火・準耐火構造住宅 |
・認定長期優良住宅である新築住宅 ・3階建て以上の耐火・準耐火構造住宅 ・床面積が50~280平米 ・住宅以外の部分がある場合は住宅部分の床面積の割合が全体の1/2以上 |
適用期間 | 5年間1/2に減額 | 7年間1/2に減額 |
出典:「“新築された住宅に対する固定資産税の減額措置”. 大阪市. (参照2024-06-05)」
「“認定長期優良住宅に対する税の特例(所得税、登録免許税、不動産取得税、固定資産税)P3”.国土交通省. (参照2024-06-05)」をもとに、お家のいろは独自に作成
適用を受けるための主な要件は、床面積が50平米以上(貸家は40平米以上)280平米以下であることです。
新築マンションの軽減措置が受けられる期間は5年間で、固定資産税の課税評価額が2分の1に減額されます。耐震性や耐久性などに優れた「認定長期優良住宅」に該当するマンションの場合、固定資産税の軽減措置は7年間です。
適用期間が経過したあとは軽減措置を受けられなくなるため、固定資産税額は「本来の額に戻る」ことになります。そのため固定資産税の額面自体は増えますが「増税」というわけではありません。
4.新築マンションにかかる固定資産税のシミュレーション
それでは、実際に購入1年目の新築マンションにかかる固定資産税をシミュレーションしてみましょう。
購入金額が3,000万円、4,000万円、5,000万円のケースでそれぞれ計算します。
固定資産税額の計算式はこちらです。
なお、今回のシミュレーションでは、わかりやすくするために、土地と建物ともに固定資産税評価額を購入価格の7割で計算します。また、専有面積はいずれも50平米と設定します。
税額の減税措置としては以下の2つを使用します。
- 土地:「住宅用地の特例」によって評価額を課税標準の1/6に減額
- 建物:「新築住宅に係る税額の減額措置」によって評価額を課税標準の1/2に減額
※土地の固定資産税評価額の目安は公示価格の7割
※新築時の建物の固定資産税評価額の目安は、家屋の建築費の5~7割程度
4-1. 3,000万円の新築マンションにかかる固定資産税シミュレーション
まず、3,000万円の新築マンションを購入した場合の固定資産税を計算していきましょう。
購入条件は以下のとおりです。
評価額:土地700万円 建物1,400万円
評価額にそれぞれの減税措置と税率1.4%をかけて計算します。
土地:700万円×1/6×1.4%=約1万6,300円
建物:1,400万円×1/2×1.4%=9万8,000円
合計:約11万4,300円
一般的なマンションの場合、「新築住宅に係る税額の減額措置」を5年間受けられるため、購入1年目の固定資産税額は軽減されます。長期優良住宅のマンションの場合はさらに延長され、7年間減額措置が適用されます。
4-2. 4,000万円の新築マンションにかかる固定資産税シミュレーション
次は4,000万円の新築マンションを購入した場合の固定資産税を計算していきます。
購入条件は以下のとおりです。
評価額:土地1,050万円 建物1,750万円
以下のように計算しましょう。
土地:1,050万円×1/6×1.4%=2万4,500円
建物:1,750万円×1/2×1.4%=12万2,500円
合計:14万7,000円
建物の購入価格が高くなると評価額も上がるため、固定資産税も増加することになります。
4-3. 5,000万円の新築マンションにかかる固定資産税シミュレーション
最後に、5,000万円の新築マンションを購入した場合の固定資産税を計算していきます。
購入条件は以下のとおりです。
評価額:土地1,400万円 建物2,100万円
固定資産税の計算式に数字を入れて計算していきます。
土地:1,400万円×1/6×1.4%=約3万2,600円
建物:2,100万円×1/2×1.4%=14万7,000円
合計:約17万9,600円
「住宅用地の特例」によって土地の評価額が課税標準の1/6に減額されるため、減税効果が高いといえます。
建物の固定資産税額の割合と比較すると、税額をより低く抑えられます。
5.中古マンションにかかる固定資産税の計算方法
マンションは年数が経過するほど資産価値が低くなるため、固定資産税は年々下がっていきます。
ここでは、中古マンションにかかる固定資産税の計算方法を見ていきましょう。
5-1.建物の減額措置期間の終了直後は固定資産税が高くなる
新築マンションの建物は、「新築住宅に係る税額の減額措置」によって評価額が課税標準の1/2に減額されます。一般的なマンションの場合は5年間、長期優良住宅に該当するマンションならば7年間減税措置を受けられます。
そのため、減額措置期間が終了すると、固定資産税が以前よりも高くなるケースがあります。
ただし、建物の評価額は年数の経過とともに下がっていくため、固定資産税額も年々低くなっていきます。この減額の割合を「経年減点補正率」と呼び、中古マンションの評価額を調べる際に使用します。
補正率は建物の種別や構造ごとに定められており、木造の建物よりもマンションなどRC造建物のほうが緩やかに減価していきます。
5-2.年数別|中古マンションの固定資産税額シミュレーション
それでは、実際に中古マンションの固定資産税額を計算してみましょう。
中古マンションの固定資産税額は、以下の計算式で算出します。
ここでは、3,000万円の新築マンションを購入したケースにおける、数年後の固定資産税を計算していきましょう。
新築時の土地の固定資産税評価額が700万円、同じく新築時の建物の固定資産評価額が1,400万円の一般的なマンションを想定し、建物の「新築住宅に係る税額の減額措置」が終了した6年目からの税額をまとめました。
マンションの年数ごとの固定資産税の推移は以下のとおりです。
経過年数(年) | A:土地の評価額 700万円×1/6×1.4% |
B:建物の評価額1,400万円×補正率×1.4% ※カッコ内は補正率の割合 |
固定資産税額(A+B) |
---|---|---|---|
6年目 | 約1万6千円 | 約16万円(0.8335) | 約18万円 |
10年目 | 約1万6千円 | 約14万円(0.7397) | 約16万円 |
15年目 | 約1万6千円 | 約12万円(0.6225) | 約14万円 |
20年目 | 約1万6千円 | 約10万円(0.5054) | 約12万円 |
25年目 | 約1万6千円 | 約8万円(0.3992) | 約10万円 |
30年目 | 約1万6千円 | 約6万円(0.3059) | 約8万円 |
出典:「“経年減価補正率表”. 法務局. (参照2024-06-17)」をもとに、お家のいろはが独自に作成
土地は劣化しないため評価額が変わらず、「住宅用地の特例」については期限が定められていないため、減税状態が続きます。
一方、建物は築年数が経過するほど劣化するため、古くなるほど補正率の数値が小さくなり、評価額が下がります。そのため、固定資産税額は築年数が古くなるにつれて低くなります。
6.マンションの固定資産税が上がる・下がる要因は?
築年数が経過しているのに、マンションの固定資産税が以前より上がることがあります。
ここでは、マンションの固定資産税が上がる・下がる要因について解説します。
6-1.マンションの固定資産税が上がる要因
マンションの固定資産税が上がる要因には以下の3つが挙げられます。
- 建物にかかる固定資産税の軽減措置期間が終了
- 税額を段階的に上げていく措置(負担調整措置)が取られている
- 評価替えによる増額
新築マンションの建物には「新築住宅に係る税額の減額措置」が適用されるため、課税標準額が1/2となり、本来より低い税額が算出されます。その後、軽減措置期間が終了すると元の税額に戻るため、税金が上がったように感じられるのです。
しかし、本来の税額に戻ったに過ぎず、実際に税金が上がったわけではありません。
また、税額を段階的に上げていく措置(負担調整措置)が取られている場合も、固定資産税額が上がります。負担調整措置とは、地価上昇による課税標準額の急激な上昇を抑制するための措置のことです。
この措置を導入すると、評価額が上がっていなくても税額が上がることになります。
3年ごとに行われる評価替えで地価が上昇した場合も、固定資産税が上がります。土地の固定資産税は周辺の地価に応じて変動するため、地価が上がれば税額が高くなるのです。
6-2.マンションの固定資産税が下がる要因
マンションの土地については「住宅用地の特例」により、固定資産税の軽減措置が適用されています。
新築マンションの建物部分についても、「新築住宅に係る税額の減額措置」によって、一般的なマンションならば5年間、長期優良住宅に該当するマンションならば7年間の軽減措置を受けられます。
土地と新築住宅にかかる固定資産税の軽減措置を受けること以外で、固定資産税が下がる要因は以下の2点です。
- リフォーム減税の対象となる工事を行う
- 建物の経年劣化により評価額が下がる
国土交通省では住宅リフォームにおける減税制度を実施しており、固定資産税も対象です。そのため、一定の要件を満たせば固定資産税額が下がる可能性があります。
対象となるリフォームは以下のとおりです。
対象リフォーム(2026年3月まで) | 減額される割合 |
---|---|
耐震 | 翌年度分の固定資産税が1/2 |
バリアフリー | 翌年度分の固定資産税が1/3 |
省エネ | 翌年度分の固定資産税が1/3 |
長期優良住宅化 | 翌年度分の固定資産税が2/3 |
出典:「“住宅をリフォームした場合に使える減税制度について”. 国土交通省. (参照2024-06-05)」をもとに、お家のいろはが独自に作成
工事が完了した年の翌年度分に限り、固定資産税が減額されます。
建物の経年劣化による固定資産税評価額の減額も、固定資産税が下がる要因のひとつです。課税の対象となる標準額が下がると税額も低くなります。
7.固定資産税のおトクな納税方法は「スマートフォン決済アプリ」と「電子マネー」
固定資産税にはさまざまな納付方法があります。
以下が代表的な納付方法です。
納付方法 | 決済手数料 | ポイント付与 |
---|---|---|
現金払い | なし | なし |
口座振替 | なし | なし |
ペイジー(Pay-easy) | なし | なし |
クレジットカード | あり | あり |
スマートフォン決済アプリ(スマホ決済) | なし | あり |
電子マネー | なし | あり |
上記の中で「おトク」に支払えるのは、決済手数料がかからず、ポイントまで付いてくる「スマートフォン決済アプリ」と「電子マネー」です。
近年はキャッシュレス化が進んでいるため、「スマートフォン決済アプリ」や「電子マネー」を活用できるとほかの場面でも便利でしょう。
まとめ
マンションの固定資産税は、建物部分に「新築住宅に係る税額の減額措置」が適用されている間は評価額が1/2に減額されるため、固定資産税額を抑えられます。
しかし、一般的なマンションの場合は5年間、長期優良住宅のマンションは7年間のみの適用であるため、減額措置期間が終了すると本来の税額に戻ります。したがって、以降はそれまでより多く税金を納めなければなりません。
マンションを所有している限り毎年納税することになります。
住み替えのために新居を購入するときは固定資産税をどのくらい納めることになるかも検討してみましょう。
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