マンションを売却するなら、マンション特有の契約の注意点を知っておくことが重要です。
マンションは堅牢な建物であることから戸建てのような躯体の劣化は少ないのですが、設備は多いため、売買契約をする上では設備の取り扱いについて意識する必要があります。
では、具体的にどのようなことに注意をすればいいのでしょうか。
そこでこの記事では、マンションを売却する際の売買契約時に向けて、事前に知っておくべき注意点を具体的にご紹介していきます。
この記事をお読みいただければ、トラブルを上手に回避するポイントや契約書で見るべき点などの知識を得ることができますので、ぜひ最後までおつきあいいただき、スムーズなマンション売却の実現のためにお役立てください。
Contents
1.中古マンション売却の流れ
まず初めに、まだ売却活動を始めていらっしゃらない方のために、マンション売却の流れをご紹介します。
(1)自宅の価格査定
最初に売却するマンションの査定を受けます。
マンション売却でできるだけ高く売るためには、複数の不動産会社の査定価格をしっかり比較検討した上で、適正な売り出し価格で売却活動を開始することが大切です。
査定の際は、最大6社の不動産会社にまとめて査定依頼ができる不動産売却 HOME4U(ホームフォーユー)をご活用ください。
(2)媒介契約の締結
売却を依頼することが決まったら、不動産会社と媒介契約を締結します。
媒介契約とは不動産会社に仲介を依頼したときに結ぶ契約のことです。
媒介契約には、「一般媒介」「専任媒介」「専属専任媒介」の3つの種類があります。
これから媒介契約を結ぶにあたり詳しい情報をお求めの方は、「高く!早く!手間なく不動産売却 3つの媒介契約をとことん比較!」を参考になさってください。
(3)売却活動の開始
媒介契約を締結したら売却活動の開始です。
一般的にマンションの販売期間は3ヶ月程度となります。
(4)契約条件の交渉
購入希望者が現れると、買主からの正式な意思表示として買付証明書を受領します。
買付証明書の受領によって、契約条件の交渉が正式にスタートします。
買付証明書には、一般的に「購入希望価格」や「支払い条件」、「契約時期」、「決済時期(引渡のこと)」、「その他の条件」等の希望が書かれています。
買付証明書の中で、最も重要な記載内容は「購入希望価格」です。
購入希望価格が売り出し価格よりも安ければ、値引き交渉をしているという意思表示になります。
買付証明書の希望内容が、売主として応諾できる範囲であれば、このまま売買契約へと移行します。
一方で、買付証明書の中に売主としてどうしても許容できない条件が含まれていれば、申出を謝絶し、引き続き他の買主を探すことになります。
買付証明書を受領したからといって、それをもって売買契約が成立するわけではありません。
買付証明書は、あくまでも購入希望者の「買いたい」という正式な意思表示に過ぎず、買付証明書を受領した後で正式な条件交渉をスタートする形になります。
(5)売買契約の締結・引っ越し
売主と買主との間で、条件が整ったらその内容を契約書に反映し、売買契約を締結します。
条件交渉の結果、売り出し価格よりも値下げすることになったら、その値下げした金額で売買契約を締結します。
売買契約の書面については、不動産会社から事前確認があるのが慣例となっています。
契約書の内容に不明点等がある場合には、事前確認のタイミングで確認を行ってください。
契約内容が固まったら、契約当日に読み合わせを行い、双方、契約書に押印して売買契約は終了です。
なお、売買契約では買主から手付金を受領します。
手付金は売買代金の10%程度が相場です。
また、住みながら売る場合には、売買契約時点ではまだ住んでいても構いません。
引っ越しは、売買契約締結後から引渡までの間に行います。
(6)引渡(残代金受領)
引渡は、通常、売買契約の1ヵ月後くらいに行います。
住みながら売却活動をしていた場合は、引渡までに引っ越しを済ませます。
引渡では、手付金を除いた残代金(売買代金の90%)を受領し、固定資産税等の精算も行います。
以上、大まかな流れをご紹介しましたが、初めてのマンション売却に向けて、より詳しい情報をお求めの方は、「はじめてのマンション売却!よくある疑問と手順、早く高く売るコツを解説」も、あわせてご参照ください。
2.売買契約にあたっての準備
この章では、売買契約にあたっての準備について解説します。
2-1.契約不適合責任について知る
マンションの売却では、契約不適合責任について知ることが重要です。
契約不適合責任とは、「契約の内容に適合しない場合の売主の責任」のことです。
はじめて聞いた方もいらっしゃるかもしれませんが、契約不適合責任は民法改正によって2020年4月から取り入れられた売主の責任です。
契約不適合責任は、簡単にいうと、「契約の内容とは異なるものを売却したとき、売却後に売主が追完請求や契約解除、損害賠償等を追及される売主の責任」になります。
追完請求とは、不動産の場合は修繕の請求が該当します。
例えば、窓サッシから雨が浸入してくるようなマンションがあった場合、その事実を隠したまま売却すると、契約の内容とは異なるものを売却したことになり、契約不適合責任を問われることになります。
一方で、売買契約書に、買主の了解の上で売買契約書に「窓サッシから雨が浸入してくる」ことを記載して売れば契約不適合責任は問われません。
重要なことは、もしマンションに何らかの問題を抱えている場合は、それをしっかりと買主に告げ、売買契約書にも記載して売るということです。
契約不適合責任は、売却物と契約書の内容とが一致していなかったら、売主が責任を取るという極めてシンプルな考え方を採用しています。
2-2.付帯設備表および告知書を正直に書く
マンションの売却にあたっては、付帯設備表および告知書を正直に書くことが重要です。
付帯設備表と告知書は、売却を依頼すると、最初に不動産会社から記載を求められる書類です。
付帯設備表とは設備の撤去の有無や不具合状況を売主自身が書く書類です。
告知書とは、設備以外の問題について売主が記載する書類となります。
告知書には、雨水の浸入等の物件に関する問題や、騒音・振動・臭気、過去の事件や事故等、売主しか知りえない問題について記載します。
告知書の内容に関しては、売買契約書に反映されます。
付帯設備表と告知書は、契約不適合責任を回避する重要な資料となりますので、正直にしっかりと書くようにしましょう。
2-3.場合によってはインスペクションを行う
売却物件が古く、不安を感じているような状況なら、事前にインスペクションを行うことも効果的です。
インスペクションとは、主に柱や基礎、壁、屋根などの構造耐力上主要な部分や、外壁や開口部などの雨水の浸入を防止する部分についての専門家による建物状況調査のことです。
インスペクションの費用は5万円程度となります。
インスペクションを行えば、売却物件がどのような状態にあるかを明らかにすることが可能です。
売却物件の状態が明らかになれば、その状態を売買契約書に反映すれば良いので、契約不適合責任を回避することができます。
マンションが古く、色々な箇所に不具合が潜んでいる可能性が高い物件であれば、インスペクションを実施することをおススメします。
3.売買契約書でチェックすべき6つの注意点
「契約書は難しくて理解できるか心配…」という方もいらっしゃることでしょう。
そこでこの章では、売買契約書でチェックすべき6つの注意点について解説します。
3-1.手付金および手付解除期限を確認する
マンション売却では、まず、手付金および手付解除期限を確認することがポイントです。
マンション売却では、売買契約時に買主から手付金を受領します。
手付金には、まず売買契約が成立したことを証拠だてる性質(証約手付)があります。
また、手付金は、当事者の一方的な都合で契約を解除できる解約手付としての性質も持ち合わせていることが特徴です。
買主は手付金を放棄し、売主は手付金の倍返しをすれば、双方の一方的な都合で契約を解除することができます。
売主は倍返しとなっていますが、既に買主から手付金を受領しているため、買主から預かっている手付金に加え、自らも同額の手付金を支払うことで契約が解除できることになります。
したがって、実質的には「双方が手付金の額を支払えば売買契約は解除できる」という仕組みになっています。
手付金で契約が解除できる期限は、売買契約書に定められていることが一般的です。
例えば、売買契約から引渡までの期間が1ヶ月程度だとすると、手付解除できる期限は売買契約日から2週間程度で設定されていることが多いです。
売買契約をしても、手付解除できる期限までは、買主がいつでも手付解除をできる期限ですので、売主の立場としては不安定になります。
手付解除できる期限を過ぎれば、買主から手付解除されることはありませんが、売主自身も手付解除できなくなります。
売買契約は手付解除できる期限を迎えると安定しますので、契約の際は必ず手付解除できる期限を確認するようにしましょう。
3-2.ローン特約およびローン特約解除期限を確認する
マンションの売買契約では、ローン特約およびローン特約解除期限を確認することもポイントです。
ローン特約とは通称で、売買契約では「融資利用の場合」または「融資利用の特約」といった名称で条文が入っています。
ローン特約とは、買主が住宅ローンを利用するケースで、銀行の住宅ローンの本審査に通らなかった場合は契約をノーペナルティで解除できるという条項です。
ノーペナルティなので、買主は手付金を没収されずに契約を解除できることになります。
つまり、ローン特約によって契約が解除されると、売主は手付金を買主へ返還することが必要となります。
なぜローン特約のような条文が入っているかというと、銀行の住宅ローンの本審査には買主が購入するマンションの売買契約書が必要だからです。
そのため、買主は「住宅ローンの本審査にまだ通っていない人」ということになります。
ローン審査に通らないということは、買主の都合ではなく、どちらかというと銀行の都合です。
銀行のせいでマンションが購入できなくなったことから、買主には非がないと考えられるため、手付金は返還することになっています。
ローン特約についても売買契約書には「融資未承認の場合の契約解除期限」といった名称で解除できる期限を設けています。
ローン特約の解除期限も、一般的には手付金と同じく2週間程度で設定されているのが一般的です。
ローン特約による解除期限までは、契約解除があり得るので、やはり売主の立場は不安定になります。
しかも、ローン特約で解除されてしまうと、売主は手付金を返金しなければならないため、うかつに手付金も使えないことになります。
散見される失敗例として、マンションの売主が受け取った手付金を、解除期限を待たずに、次に購入する物件の手付金に充てて使ってしまうケースがあります。
売主が購入物件の手付金を使った後に、売却物件でローン特約が発生すると、買主に返金する手付金がないという状況となってしまいます。
そのため、ローン特約の解除期限までは、手付金には手を出さないことをおススメします。
尚、ローン特約による解除を防ぐには、売買契約前に住宅ローンの「仮審査」に通っている人のみと契約するとローン特約による解除の可能性を大幅に下げることができます。
仮審査に通っている人のみと契約することは、売主の立場を安定させる重要なポイントですので、買主の条件とすると良いでしょう。
3-3.精算の内容を確認する
マンション売却では、何をどこまで精算するのか精算の内容を確認することが重要です。
精算とは、売買代金以外の金銭の支払いによって、負担や立て替えを調整することを指します。
一般的に、不動産の売買では、固定資産税および都市計画税の精算が行われます。
固定資産税および都市計画税の1年間の納税義務者は、1月1日時点の所有者です。
そのため、例えば2月に引渡を行ったとしても、残りの11ヶ月分の固定資産税も売主が納税します。
そこで、買主に残り11ヶ月分の固定資産税および都市計画税を買主が売主に支払うことで、実質的な負担を買主へ移転するものが精算金となります。
マンションの場合は、管理費や修繕積立金も売主に先払いが生じています。
そのため、マンションの売却では管理費や修繕積立金も精算することが一般的です。
場合によっては駐車場代や駐輪場代、借地権マンションなら地代まで精算することもあります。
ただし、精算金に関しては、必ずしなければならないものではなく、あくまでも売主と買主の合意の上で行うものであることが特徴となっています。
何をどこまで精算するかは、売主と買主の取り決め事項であり、お互いの合意の上で精算項目を決めることが必要となります。
3-4.付帯設備の引渡条件を確認する
マンション売却では、付帯設備の引渡条件を確認することが重要です。
マンションは設備の数も多く、特に古い物件の場合には何らかの損傷や不具合があることが当たり前となっています。
そこで、設備まで売主が契約不適合責任を負うと、中古住宅の取引を大きく阻害してしまうことになるため、設備に関しては契約不適合責任を負わないとする契約が通常のスタイルとなります。
一般的な契約書では、「付帯設備の引渡し」という条項に、「付帯設備の故障や不具合については、修補・損害賠償その他一切の責任を負わないものとする。」と記載されることが多いです。
設備まで契約不適合責任を負ってしまったら、売主の責任は非常に重くなりますので、必ず設備は契約不適合責任を負わなくなっていることを確認するようにしてください。
なお、たとえ売買契約書上で設備の契約不適合責任を負わない形にしたとしても、付帯設備表に知っている不具合は正直に告知することが必要です。
売主が知っている不具合を通知せずに買主に売却した場合、契約書で契約不適合責任を免責したとしても、責任追及は逃れられないことになっています。
したがって、まずは準備段階でしっかりと付帯設備表に不具合を書き込むことが契約不適合責任を回避する最も重要な対策となるのです。
3-5.契約不適合責任の通知期間について確認する
売買契約書では、契約不適合責任の通知期間について確認することもポイントです。
通知期間とは、買主が売主に対し契約不適合責任を請求できる期限のことを指します。
契約不適合責任は無期限で負う責任ではなく、あくまでも売主と買主の合意を基に期限を定めるものです。
売主としては、売却後に負う責任の負担を減らすためには、通知期間はできるだけ短い方が良いことになります。
2020年3月までは、売主には瑕疵(かし)担保責任という責任が課されていました。
瑕疵担保責任も売却後に売主が負う責任でしたが、瑕疵担保責任の責任期間は3ヶ月というのが一般的な契約でした。
契約不適合責任はまだスタートしたばかりの制度ですが、過去のマンション売買の慣例からすると、通知期間は3ヶ月が妥当な期間と考えられます。
売買契約書においては、通知期間が3ヶ月よりも長く設定されていないか、必ずチェックするようにしましょう。
3-6.容認事項の内容を確認する
売買契約書では、容認事項の内容をしっかり確認することも大切です。
容認事項とは、買主に「この物件はこういうものである」ということを容認して買ってもらうために記載する内容です。
具体的には売買契約書の最後に付される「特約条項」または「特記事項」と呼ばれる部分に列記していきます。
記載する内容は、具体的にはあらかじめ告知書で買主に伝えていた内容です。
契約不適合責任とは、「契約の内容に適合しない場合の売主の責任」のことでした。
契約不適合責任で最も大切なことは、売買契約書の内容が売却物件と相違がないという点です。
せっかく告知書に事実を包み隠さず書いたにも関わらず、その内容が容認事項に書き漏れがあっては意味がありません。
最終的に重要なのは告知書ではなく契約書への記載です。
売買契約書においては、容認事項の欄に告知書で伝えた内容がきちんと反映されているかを必ず確認することがポイントとなります。
マンションを売却するにあたり、誰もが「少しでも高く売りたい」と考えます。
高く売るためには、最初に行う「査定」にちょっとしたコツがあるのをご存知ですか?
それは、「査定は一社だけでなく、複数の不動産会社から受ける」ということです。
なぜかというと、査定額というものは、不動産会社によって異なり、場合によっては数百万円の差が出るケースもあるからです。
一社からしか査定を受けないと、もっと高く売れるかもしれない可能性を自ら逃してしまうことになります。
とはいえ、様々な不動産会社に一社ずつコンタクトを取るのは、手間も時間もかかりますよね。
そんな時に便利なのが、「不動産売却 HOME4U(ホームフォーユー)」です。
物件の所在地や大まかな広さなど簡単な項目を入力するだけで、複数の不動産会社にまとめて査定依頼ができます。
システムがマンション売却を得意とする不動産会社を自動的にピックアップしてくれるので、不動産売却が初めての方でもスムーズに利用できるのが特徴です。
ぜひ複数の不動産会社をしっかり比べて、少しでも高く売れるよう、準備を進めてください。
まとめ
いかがでしたか。
マンション売却において、売買契約時には、まず「契約不適合責任」を理解し、付帯設備表および告知書を正直に書く、ということを励行してください。
また、契約書においては、「手付金および手付解除期限を確認する」、「ローン特約およびローン特約解除期限を確認する」、「精算の内容を確認する」、「付帯設備の引渡条件を確認する」、「契約不適合責任の通知期間について確認する」、「容認事項の内容を確認する」の6つをぜひ実践してください。
この記事でご紹介した注意点をしっかり押さえ、スムーズに売買契約を交わせるよう心の準備していただければ幸いです。
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