土地売却にかかる費用はいくら?節税につながる特例やシミュレーションも

土地売却にかかる費用はいくら?節税につながる特例やシミュレーションも

土地の売却に際しては、さまざまな費用や税金がかかります。一方で、譲渡所得に対する控除も複数あり、それぞれを把握したうえで売却を進めることが大切です。

本記事では、土地の売却にかかる費用や税金、それぞれの金額のシミュレーション、さらに譲渡所得に対する控除の特例について解説します。

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1.土地を売却する際にかかる費用と税金

ここでは、土地を売却する際にかかる費用と、発生する税金について解説します。土地売却にかかる具体的な費用をまとめると、以下のようになります。

費用名 金額
仲介手数料(上限額) ・売却価格200万円以下:売却価格 × 5% + 消費税
・売却価格200万円超400万円以下:売却価格 × 4% + 2万円 + 消費税
・売却価格400万円超:売却価格 × 3% + 6万円 + 消費税
印紙税(抜粋) 契約金額が1,000万円を超え5,000万円以下の場合:1万円
契約金額が5,000万円を超え1億円以下の場合:3万円
登録免許税 1筆1,000円(抵当権抹消登記の場合)
譲渡所得税
(所有年月によって長期譲渡所得と短期譲渡所得に分けられる)
・所得税
 長期:譲渡所得 × 15%
 短期:譲渡所得 × 30%

・住民税
 長期:譲渡所得 × 5%
 短期:譲渡所得 × 9%

・復興特別所得税:基準所得税額 × 2.1%

1-1.仲介手数料

仲介手数料とは、不動産の売買契約が成立した際に、売主と買主を仲介した不動産会社に支払う手数料です。契約が成立しない場合には、支払う必要がありません。仲介手数料は、上限額が以下のように定められています。

売買価格 仲介手数料の上限
200万円以下 売却価格 × 5% + 消費税
200万円超400万円以下 売却価格 × 4% + 2万円 + 消費税
400万円超 売却価格 × 3% + 6万円 + 消費税

出典:“宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額”. 国土交通省. (参照2024-08-28)」をもとに、お家のいろはが独自に作成

例として、売買価格が3,000万円の契約の場合、仲介手数料は次のようになります。

3,000万円×3% + 60,000円 = 960,000円
960,000円 + 消費税(10%) = 1,056,000円

仲介手数料については、以下の記事で詳しく解説しています。

1-2.印紙税

印紙税とは、経済的な取引のために作成した売買契約書や領収書などに課される税金です。不動産の売買では、売買価格に対応する税額の収入印紙を売買契約書に貼り、消印することで納税します。

なお、2027年(令和9年)3月31日までに作成される、記載金額が10万円を超える不動産売買契約書については、印紙税の軽減措置が適用されます。

不動産売買契約書に対する、軽減前の本則税額と軽減後の税額は以下のとおりです。

契約金額 本則税率 軽減税率
10万円を超え50万円以下 400円 200円
50万円を超え100万円以下 1,000円 500円
100万円を超え500万円以下 2,000円 1,000円
500万円を超え1,000万円以下 1万円 5,000円
1,000万円を超え5,000万円以下 2万円 1万円
5,000万円を超え1億円以下 6万円 3万円
1億円を超え5億円以下 10万円 6万円
5億円を超え10億円以下 20万円 16万円
10億円を超え50億円以下 40万円 32万円
50億円超 60万円 48万円

出典:「“No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置”. 国税庁. (参照2024-08-28)」
“No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで”. 国税庁. (参照2024-08-28)」をもとに、お家のいろはが独自に作成

印紙税については、以下の記事で詳しく解説しています。

1-3.登録免許税

売却する土地に住宅ローンの抵当権が残っている場合、抵当権抹消登記を行う必要があります。抹消登記に際しては、不動産1個につき1,000円の登録免許税が課されます。

なお、住宅ローンによる抵当権は、土地だけでなく建物にも設定するのが一般的です。このため、土地と建物それぞれの抹消登記を行う必要があり、不動産が2個になるため登録免許税は2,000円となります。

抵当権抹消登記については、以下の記事で詳しく解説しています。

1-4.譲渡所得税

土地の売却によって得た譲渡所得には、譲渡所得税(所得税・住民税・復興特別所得税)が課されます。譲渡所得の額は、土地の売却価格から取得費と譲渡費用を差し引いて算出します。

取得費は、売却する土地を購入した際の価格に、登記費用や印紙税、仲介手数料などの諸費用を加えたものです。一方の譲渡費用とは、売却時にかかった仲介手数料や印紙税などです。

譲渡所得は、所有期間が5年超なら長期譲渡所得に、5年以下なら短期譲渡所得に区分されます。所得に対する所得税と住民税の税率は、それぞれ以下のように定められています。

区分 所得税 住民税
長期譲渡所得
(所有期間5年超)
15% 5%
短期譲渡所得
(所有期間5年以下)
30% 9%

出典:「“土地や建物を売ったとき”. 国税庁 . (参照2024-08-28)」

また、2037年までは、各種控除を差し引いた基準所得税額に2.1%の復興特別所得税が課されます。

土地売却時にかかる税金にについては、以下の記事で詳しく解説しています。

2.土地の状況によってかかる費用

次に、土地の状況によってかかる費用について解説します。

2-1.土地の測量費用

土地の売却を行うにあたって、隣の土地との境界を明確にするために測量を行う場合には、測量費用が発生します。測量を行うと、境界が不明確なまま売却したことが原因で買主と隣地所有者との間にトラブルが発生するリスクを軽減できます。

また、古くから所有する土地では、登記簿上の記録と実際の面積が異なるケースがあり、適正な売却価格の設定が難しくなる場合もあります。こうした問題を解決するためにも、測量を行います。

測量は土地家屋調査士に依頼して行い、費用の相場は30万~80万円となっています。ただし、隣地所有者の数が多い場合や、道路と接しているなどの理由で自治体職員の立ち会いがある場合では、100万円以上かかることもあります。

2-2.更地にする場合は古家の解体費用

土地の上にある古家を解体して更地にする場合、解体費用がかかります。

土地の立地が良かったり、建物がかなり古かったりする場合は、建物がないほうが早く売れる可能性があるため、解体を行うことがあるのです。

解体費用は、建物の構造によって変動します。建物面積の1坪あたり単価と、建物規模による解体費用相場は以下のとおりです。

建物構造 坪単価 建物坪数ごとの費用相場
木造 3~4万円 30坪:90万円~120万円
50坪:150万円~200万円
鉄骨造 4~6万円 30坪:120万円~180万円
50坪:200万円~300万円
鉄筋コンクリート造 5~8万円 30坪:150万円~240万円
50坪:250万円~400万円

※1坪は約3.3平米

2-3.水道引き込み工事費用

土地に水道管が引き込まれていない場合や、引き込まれている水道管がすでに老朽化している場合、公共の水道管から敷地内に水道を引き込む工事を行うことがあります。この工事費用は一般的に売主が負担します。

水道引き込み工事の費用は、公共水道管(水道の本管)から敷地までの距離によって変わり、距離が離れているほど高額になります。一般的な費用の相場は、30万円から50万円ほどです。

ただし、土地と道路の高低差が大きい場合や、経路が複雑、地質が硬く掘削が困難な場合には、さらに高額になることもあります。

3.土地売却にかかる費用と税金のシミュレーション

土地の売却にはさまざまな費用がかかります。ここでは、具体的にどの程度の金額がかかるのか、費用や税金をシミュレーションしてみましょう。

売却の条件は、以下とします。

  • 売却価格:3,000万円
  • 所有期間:8年
  • 取得費:2,000万円
  • 譲渡費用:500万円
  • 売却日:2024年4月1日

3-1.譲渡所得を算出する

まず、土地の売却で得た譲渡所得を算出します。譲渡所得は、土地の売却価格から取得費と譲渡費用を差し引いた残りです。

2,000万円で取得した土地を3,000万円で土地を売却し、譲渡費用が500万円かかった場合、譲渡所得は以下のように計算され、500万円となります。

譲渡所得 = 3,000万円(売却価格) - (2,000万円(取得費) + 500万円(譲渡費用)) = 500万円

譲渡所得については、以下の記事で詳しく解説しています。

3-2.譲渡所得税額を算出する

次に、譲渡所得税(所得税・住民税・復興特別所得税)を算出します。土地の所有期間が8年のため、長期譲渡所得の税率が適用されます。土地の売却で得た譲渡所得の500万円に、所得税と住民税の税率をかけると以下のようになります。

所得税:500万円 × 15% = 75万円
住民税:500万円 × 5% = 25万円

また、基準所得税額(所得税)である75万円に2.1%の復興特別所得税が課されるため、これを算出すると税額は15,750円となります。

復興特別所得税:75万円(基準所得税額) × 2.1% = 15,750円

算出した所得税・住民税・復興特別所得税の合計が、譲渡所得500万円に対する譲渡所得税になり、合計の税額は101万5,750円です。

75万円(所得税) + 25万円(住民税) + 15,750円(復興特別所得税) = 101万5,750円

ただし、要件を満たして「居住用財産の3,000万円控除」が適用されると、譲渡所得から最高で3,000万円が控除されます。このシミュレーションの場合は譲渡所得が500万円のため、差し引き後の譲渡所得は0円となり、譲渡所得税がかからなくなります。

3-3.印紙税を算出する

土地の売買のために交わす不動産売買契約書に課される印紙税は、2027年(令和9年)3月31日まで軽減税率が適用されます。軽減税率適用後の3,000万円の売買契約書の印紙税は1万円です。

3-4.抵当権抹消登記の費用を算出する

住宅ローンを借りる際に土地に設定された抵当権を抹消登記する費用として、土地1個につき1,000円の登録免許税がかかります。

4.土地を売却する際の税金を抑えられる8つの特例

土地の売却による所得に対しては、譲渡所得税が課されます。ただし、以下に挙げる特例が適用される場合には、税額を抑えることが可能です。

4-1.公共事業などのための5,000万円特例

公共事業などのために土地を売却した場合、譲渡所得から最高5,000万円まで差し引く特例が適用されます。

主な適用の要件は、以下のとおりです。

  • その年に、公共事業に売却した土地に対して「収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例」の適用を受けていないこと
  • 買い取りなどの申し出があった日から、6か月を経過した日までに売却すること
  • 公共事業の施行者から、最初に買い取りの申し出を受けた者(相続または遺贈により土地を取得した者を含む)が売却すること

なお、同じ公共事業のために2年以上にまたがって土地を売却した場合、最初の年のみ特例が適用されます。

4-2.居住用財産の3,000万円特例

居住用財産の3,000万円特例は、マイホームを売却して得た譲渡所得から、最高3,000万円まで控除される制度です。この特例は、マイホームの所有期間に関係なく適用を受けられます。

主な適用の要件は、以下のとおりです。

  • 自ら住む家屋や、その家屋がある敷地、借地権も一緒に売却すること
  • 売却した年の前年および前々年に、この特例または「マイホームの譲渡損失についての損益通算および繰越控除の特例」を受けていないこと
  • 要件が定める期間に特定の他の特例を受けていないこと
  • 売主と買主が親子や夫婦など、特別な関係でないこと

売却した土地にあった家屋を取り壊した場合は、次の2つの要件をすべて満たすことで特例の適用を受けられます。

  • 家屋を取り壊した日から1年以内に譲渡契約を締結し、住まなくなった日から3年目の12月31日までに売却すること
  • 家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、土地を貸駐車場などとして使用していないこと

4-3.被相続人の居住用財産(空き家)に係る3,000万円特例

被相続人の居住用財産(空き家)に係る3,000万円特例は、被相続人が住んでいた家屋や土地を相続などで取得して売却した場合に、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる制度です。

主な適用の要件は、以下のとおりです。

  • 2027年(令和9年)12月31日までに売却すること
  • 相続開始の日から3年を経過する年の12月31日までに売却すること
  • 相続の開始直前まで被相続人の居住用家屋の敷地として使われていたこと

この特例には、このほかにも多くの要件が定められています。特例の適用を受ける際は、売却する土地が要件を満たすかどうか、管轄の税務署に事前に確認しましょう。

4-4.特定土地区画整理事業などのための2,000万円特例

特定土地区画整理事業などのための2,000万円特例は、特定の土地区画整理事業などに協力するために土地を売却した場合に、譲渡所得から2,000万円が控除される制度です。

対象となる事業は、特定土地区画整理事業のほかに以下のようなものがあります。

  • 第一種市街地再開発事業
  • 防災街区整備事業
  • 古都保存法や都市緑地法等に規定する買取請求
  • 保安林として指定された区域等内の保安施設事業

4-5.特定住宅地造成事業などのための1,500万円特例

特定住宅地造成事業などのための1,500万円特例は、地方公共団体などが行う住宅建設や宅地造成事業のために土地を売却した場合に、譲渡所得から1,500万円が控除される制度です。

主な要件は、以下のとおりです。

  • 宅地造成が土地区画整理法による土地区画整理事業であること
  • 造成に係る全体の土地の面積が5ヘクタール以上であること
  • 事業によって造成される宅地の分譲が公募により行われること

4-6.取得した国内にある土地を売却したときの1,000万円特例

取得した国内にある土地を売却したときの1,000万円特例は、2009年(平成21年)および2010年(平成22年)に取得した土地を売却した場合に、譲渡所得から1,000万円を控除できる制度です。

主な要件は、以下のとおりです。

  • 2009年(平成21年)に取得した土地は2015年(平成27年)以降に譲渡すること
  • 2010年(平成22年)に取得した土地は2016年(平成28年)以降に譲渡すること
  • 親子や夫婦など、特別な間柄にある者から取得した土地ではないこと
  • 相続や遺贈、贈与、交換、代物弁済などによって取得した土地ではないこと

4-7.そのほかの特例

ほかにも、土地の譲渡所得に対する特例には以下のようなものがあります。

農地の保有化などのための特別控除

農業委員会の斡旋などによって農地を地域の担い手に売却した場合に、譲渡所得から800万円を控除できます。ほかに「農業経営基盤強化促進法」や「特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律」に基づく売却も対象です。

低未利用土地を譲渡した場合の特別特例

都市計画区域内にある低未利用土地を、500万円(市街化区域などにある土地は800万円)以下で売却した場合に、その譲渡所得から100万円を控除できます。低未利用土地とは、利用が難しい空き地や、空き家・空き店舗のある土地のことです。

5.土地売却を成功させるコツ

最後に、土地の売却を成功させるコツを2つご紹介します。

5-1.土地の相場価格を調べておく

土地の売却を成功させるには、土地の相場価格を調べておくことが大切です。相場より大幅に高い価格で売り出すと、購入希望者に検討の初期段階で候補から外される恐れがあります。

反対に価格が低すぎても、土地に問題があるのではないかと疑われ、購入希望者が集まりにくくなるかもしれません。

相場を把握し、適正な価格で売り出すことで購入希望者が集まりやすくなり、スムーズな売却が期待できます。

5-2.複数の不動産会社に査定を依頼する

土地の売却額を知るためには、複数の不動産会社に査定を依頼しましょう。

同じ土地の査定でも、不動産会社によって評価方法や基準が異なるため、査定額に差が生じる場合があります。そのため、複数の査定結果を比較することで、土地の価値をしっかりと査定する不動産会社を選べるようになるのです。

また、複数の不動産会社を比べることで、土地がある地域に精通し、経験豊富な不動産会社を見つけることもできます。ベストな不動産会社をパートナーにできれば、土地売却の成功に大きく近づくはずです。

まとめ

土地を売却する際には、仲介手数料のほか、印紙税や登録免許税、譲渡所得税などの税金がかかります。また、土地の状況によって追加で発生する費用もあります。

一方で、土地の売却で得た譲渡所得に対してはさまざまな特例制度があり、適用を受けると税額を抑えることができます。

しかし、売却にかかる費用や特例をすべて把握することは、難しいでしょう。そこで、信頼できる不動産会社を見つけ、アドバイスを受けながら売却を進めることをおすすめします。

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