不動産査定書とは?査定書を読むときのチェックポイント

不動産査定書には大きく分けて2つの種類があり、それぞれ入手する目的には大きな違いがあります。また、査定書にはさまざまな項目が記載されていますので、あらかじめどのような内容が書かれているのかを把握しておくことが大切です。

今回は、不動産査定書を読み解くポイントや注意点、入手に必要な書類を詳しく解説します。
不動産売却について基礎から詳しく知りたい方は『不動産売却の基本』『不動産売却の流れと期間』をご覧ください。

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1.不動産査定書とは?無料と有料の2種類がある

不動産査定書とは?
不動産査定書とは、不動産の査定額や査定根拠など、査定の結果がまとめられた書類です。
不動産査定書には以下の様に2つの種類があり、自身の状況に合わせて適切な査定書を取得する必要があります。

  • 無料:不動産会社が出す査定書
  • 有料:不動産鑑定士が出す査定書

1-1.【無料】不動産会社が出す査定書

不動産会社が出す査定書は、一般的な不動産売買で必要になります。
この査定書は、「売却における不動産の価値を把握するため」「売り出し価格の参考とするため」などに使われます。

不動産会社の行う査定は無料ですが、売却のシーンでしか利用されません。
査定について詳しくは『不動産査定とは│査定方法や基本的な流れを解説』をご覧ください。

1-2.【有料】不動産鑑定士が出す査定書

不動産鑑定士が出す査定書(鑑定評価書)は、財産分与時や裁判などに使われる、不動産の価格を根拠づける書類です。
不動産会社の行う査定に比べて、不動産を厳格に調査するため、より精度が高く、情報の多い査定書となっています。

費用は、不動産の価値により異なりますが少なくとも20万円前後の費用がかかります。

公的な場で活用できる鑑定士による査定書ですが、企業が保有する不動産の売買時や、相続税対策として使われる場合もあります。

基本的に不動産の売買をする際は、まず不動産会社に依頼して間違いないでしょう。
なお、以降の章では、不動産会社の査定書についての解説となります。

2.不動産査定書のテンプレート

不動産査定書には遵守すべきフォーマットなどはなく、不動産会社によっても内容に多少の違いがあります。
決まりがないとはいえ、『売却の参考としてもらう』という目的は同じなので、ほとんど似た項目が書かれます。

以下は不動産査定書のテンプレートの一例です。(クリックするとPDFを表示します。)
査定書のひな形

様々な不動産査定書の中では、少なくとも以下の項目は共通して書かれています。
これらは重要な部分なので、よく確認する様にしましょう。

【共通している基本的な項目】

  • 査定額
  • 査定額の根拠
  • 事例地情報

3.不動産査定書を依頼する方法

不動産査定書が欲しい方は、不動産会社に物件の査定を依頼しましょう。
査定書にかかれるコメントや査定額は不動産会社により異なるので、できる限り複数の不動産会社から査定書をもらうようにしましょう。

不動産会社査定を依頼するには、不動産会社の店舗やWEBサイトを利用する方法と、一括査定サービスを利用する方法があります。

一括査定サービスは、一度の入力で複数の不動産会社に査定依頼を送れるWEBサービスです。
短時間で不動産会社の比較でができるため、「査定書を比較したい」「依頼したい不動産会社が決まっていない」ような方におすすめです。

一括査定を利用するなら、NTTデータグループが運営する「不動産売却 HOME4U(ホームフォーユー)」をおすすめします。

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4.不動産査定書依頼前に用意すべき書類

不動産査定書の作成に必要な書類
不動産会社に査定書を依頼する際は、いくつかの書類が必要です。
査定するにあたって必ず用意すべき書類と、査定の精度を上げるためにあるといい書類にわけて紹介します。

【必ず用意する書類】

書類の種類 内容
本人確認書類
  • 運転免許証やパスポートなど
登記簿謄本・
登記事項証明書
  • 不動産の状況や権利関係について示す書類
公図
  • 土地の地番、接道状況などを示す書類
地積測量図、
境界確認書
  • 土地、一戸建ての査定時に必要
  • 土地の形状や面積、隣地との関係性を示す書類
  • 境界が確定しているか確認する書類
固定資産税納税
通知書
  • 固定資産税の正確な金額を知るための書類
登記済権利証・
登記識別情報
  • 登記変更をするときに必要な書類

【査定精度をあげるためにあるといい書類】

書類の種類 内容
リフォーム履歴
がわかる
書類
  • リフォームを行ったときの書類
  • メモ書き等でも可
建設住宅性能
評価書
  • 建物の性能を示す評価書
インスペクションの報告書
  • 建物状況調査の結果報告書
瑕疵担保保険の
付保証明書
  • 物件の保証書的役割を果たす書類
建築確認済証
  • 建物が法律に従って建てられているかを示す書類
建物図面・
設計図
  • 設計内容、工事の内容がわかる書類
購入時の
売買契約書・
重要事項
説明書・
間取り図
  • 物件の面積や告知事項などがわかる書類
  • 購入時パンフレットでも可
管理規約・
修繕履歴がわかる書類
  • マンションの売買時に必要
  • 売却活動スタートまでには提出が求められる

4-1.必ず用意する書類

本人確認書類
不動産を売却できるのは原則として所有者本人のみであるため、査定依頼時には本人確認書類の提出を求められることがあります。共有名義の不動産を売却する際には、所有者全員分の証明書が必要となるので注意が必要です。

所有者の本人確認書類としては、運転免許証やパスポートなどが利用できますので、あらかじめコピーをとっておきましょう。また、登記上の住所と現住所が異なる場合には、住民票が必要となる場合があります。

登記簿謄本・登記事項証明書
登記簿謄本は不動産の特徴や権利関係に関する情報が記載されており、売買を進めるうえで重要な書類の1つとなります。現在では登記事項証明書と呼ばれており、不動産の管轄エリアの法務局で取得するか、インターネットで申請をして入手することができます。

なお、登記は土地と建物それぞれについて行われるため、一戸建ての売却の場合はそれぞれの登記事項証明書を取得しておく必要があります。

公図
公図とは、土地の地番、接続した道路・水路・隣接地などの状況を示す書類です。土地や一戸建ての売買では、接続地との関係性も重要な情報となるため、査定時に提出を求められるケースが多いです。

登記事項証明書と同じように法務局で管理されていますので、併せて取得手続きを済ませるのがおすすめです。

地積測量図・境界確認書
土地の詳細な情報を確認できる書類です。不動産会社によっては必須でない場合もありますが、いずれも売買契約を進める中で必要になってくる書類ですので、査定依頼前に用意しておけると安心です。

これらの書類も法務局で管理されていますので、ほかの書類と併せて取得手続きを済ませておきましょう。

固定資産税納税通知書
固定資産税通知書は固定資産税の確認、登記費用の算出などに必要な書類です。固定資産税は毎年1月1日時点での状況をもとに計算されますので、最新のものを用意しておくことが大切です。

手元にない場合には、市区町村役所の窓口で「固定資産税評価証明書」を取得し、代わりとして提出することもできます。

登記済権利証(登記識別情報通知書)
不動産査定時に、本人確認書類として提出が求められる場合があります。どちらも所有者として権利を取得したタイミングで法務局から渡されるため、紛失などをしていなければ新たに取得する必要はありません。

なお、登記済権利証と登記識別情報通知書は同じものであり、平成17年(2005年)3月の不動産登記法改正より前に取得している場合は登記済権利証、それ以降の取得であれば登記識別情報通知書が渡されることとなっています。査定時には提示を求められないことも多いですが、売買契約後には必要となりますので、早い段階で用意しておくことが大切です。

4-2.査定精度を上げるためにあるといい書類

リフォーム履歴がわかる書類
過去にリフォームを行っている場合には、履歴がわかる書類を用意しておきますと査定結果に反映される可能性があります。特に直近5年以内に実施されていれば、前向きな判断材料となる確率が高いです。

リフォーム時の工事請負契約書や図面などがあれば便利ですが、資料が見つからない場合は自作のメモ書きなどでも役立つ場合があります。

建設住宅性能評価書
建築住宅性能評価書とは、国土交通大臣に登録された第三者評価機関が明確な基準に則って住宅の性能を評価した結果の書類です。構造の安全性、耐久性、防犯性といった10項目にわたって客観的な評価を確認できる書類ですので、査定の精度を向上させるだけでなく、実際に売却を進めるうえでも有利に働きます。

インスペクションの報告書
インスペクションとは、専門的な知識を保有した住宅診断士によって、住宅の劣化状況、欠陥の有無、改修の必要性などを診断してもらうサービスのことです。第三者の専門家による客観的な診断が行われるため結果の信頼性が高く、査定精度が向上するのはもちろん、中古住宅を売却するうえでも重要な強みとなります。

前述の住宅性能評価とはチェック箇所などに異なる特徴があるため、どちらも用意できる場合には両方提出すると良いでしょう。

瑕疵担保保険の付保証明書
瑕疵担保保険とは、売却後に一定の不具合が見つかった場合に、修繕費の一部を賄うことができる保険です。付保証明書には、物件の保証書としての性質があるため、売却時には有利に働きます。

建築確認済証
建物が新築されるときに、建築会社からもらえる書類です。建築基準法に従って正しく建築されていることを示す書類ですので、一戸建ての査定依頼時には用意しておくと良いでしょう。

建物図面・設計図
建物の具体的な工事内容、設計内容を示す書類です。一戸建ての査定依頼時に用意しておきますと、不動産会社に現状を把握してもらいやすくなります。

購入時の売買契約書・重要事項説明書・間取り図
購入時の書類には、物件に関する詳しい情報が記載されているとともに、買い主へ伝えるべき重要事項も盛り込まれています。そのため、査定依頼時に用意しておく、より正確な状況を結果に反映してもらいやすくなります。

また、売却活動を行ううえで不動産会社も参考にしやすくなるため、手続きをスムーズに進めやすいといったメリットもあります。

管理規約・修繕履歴がわかる書類
中古マンションの売買では共用部分の管理状態や修繕履歴も査定時の重要なチェックポイントとなります。そのため、管理規約や修繕履歴、修繕積立金の記載書類なども用意しておくと、査定の精度が高まります。

また、これらの書類は、いずれにしても売却活動を進める段階までには用意しておく必要がありますので、早いうちに揃えておくのがおすすめです。書類が手元にない場合は、管理組合に連絡をして入手できます。

5.不動産査定書をチェックするときのポイント

不動産査定書をチェックするときのポイント
不動産査定書は、売買を依頼する不動産会社を見極めるうえで重要な資料となります。チェックするときは、以下の点を重視してみましょう。

不動産査定書のチェックポイント

  • 査定結果の算出根拠がはっきりしているか
  • 低めの価格も確認しておこう
  • 仲介手数料などの費用もチェックしておこう
  • 不明な点は担当者にすぐ確認しよう

5-1.査定結果の算出根拠がはっきりしているか

複数の査定書を比較するときには、査定額だけでなく算出根拠の明確さにも目を向けることが大切です。根拠の明確さや妥当性は、不動産会社がどのくらい信頼できる基準を持っているのかを端的に見極めるポイントとなります。

また、不動産売却の難易度については、「流通性比率」を通して確かめることが可能です。1.00を基準として、それよりも低ければ売りにくいと判断されたことになります。

1.00とは異なる数値になっていた場合には、その根拠についても確かめておくと良いでしょう。また、流通性比率が記載されていない場合は、不動産会社に直接照会しておくことが大切です。

なお、物件に特別なアピールポイントがあれば、事前に伝えておくことが重要です。例えば、「5年以内にリフォームを行った」「耐震補強されている」といったポイントがあれば、査定価格にはプラスに反映される可能性があります。

この場合、事前に伝えたアピールポイントが反映されているか、反映されていない場合その理由をきちんと提示してもらえるかといった点が判断基準となります。

5-2.低めに提示された価格も確認しておこう

査定額については、高めの価格も重要である一方で、低く提示された価格もチェックしておくことが大切です。これは、特に「住宅ローンが残っている不動産を売却するとき」に重要な観点となります。

なぜなら、住宅ローン残債のある不動産を売るときには、引き渡しまでにローンを完済することが絶対条件となるためです。返済には売却代金を充てることとなりますが、売却額がローン残債に満たない場合は、差額を自己資金で補わなければなりません。

そのため、万が一のケースを考慮して、「最低予想価格でも住宅ローンを完済できるか」を確かめておくことが大切です。

5-3.仲介手数料などの費用もチェックしておこう

仲介手数料とは、不動産の売買契約が成立したときに不動産会社へ支払う成功報酬のことです。金額の上限は宅建業法で決められているものの、下限については特に決まりがありません。

支払う金額は不動産会社によって差が生じることもありますので、事前に確認しておくことが大切です。ただ、一概に「仲介手数料が安いほうが良い」というわけではありません。

不動産会社によって、売却活動のサポート内容にも特色がありますので、サービスの仕組みにも目を向けながら総合的に判断することが大切です。例えば、売却に備えてハウスクリーニングやホームステージングを行っていたり、引き渡し後に設備の不具合が見つかった場合の保証をしてくれたりと、サービス内容はさまざまです。

費用とサポート体制の両面を意識しながら、自分に合った不動産会社を選びましょう。

5-4.不明な点は担当者にすぐ確認しよう

不動産売却においては、売り主と担当者の間できちんと意思疎通を図り、納得した状態で手続きを進めることが大切です。そのため、会社のレベルや実績だけでなく、担当者の力量にもしっかりと目を向ける必要があります。

そこで重要となるのが、疑問点に対する受け答えです。査定書の内容に不明な点があれば、遠慮をせずに確認してみましょう。

「親身になって疑問に答えてくれる」「安心してコミュニケーションを図れる」「明確な考えを提示してくれる」といった担当者であれば、信頼して売却を任せられる可能性が高いです。

紛失してしまった場合には再発行ができないため、不動産会社に相談をして、必要な手続きについて教えてもらいましょう。

まとめ

不動産査定書には無料のものと有料のものがあり、不動産売却を検討するうえでは、不動産会社が作成する無料のもので十分に役立ちます。

査定額ももちろん大切ではありますが、実際に売却をするうえでは、査定額の根拠や売却プランの妥当性のほうが重要となります。査定書の読み方を正しく理解して、最適な不動産会社を見極められるように準備しておきましょう。

この記事のポイント まとめ

1.不動産査定書とは?

不動産査定書とは、対象となる不動産の査定額や、関連する情報がまとめられた書類のことです。

詳しくは1章「不動産査定書とは?」で解説しています。

2.不動産査定書を入手する方法

不動産査定書の入手方法は、以下のようなものが挙げられます。

  1. 不動産会社に無料で作成してもらう方法
  2. 不動産鑑定事務所に有料で作成してもらう方法

詳しくは2章「不動産査定書を入手する方法」で解説しています。

3.不動産査定書に書かれている内容

不動産査定書には、以下の内容が記載されています。

  1. 査定額
  2. 査定額の根拠
  3. 事例地情報

詳しくは3章「不動産査定書に書かれている内容」で解説しています。