
2022年3月22日、国土交通省から最新の公示地価が発表されました。
全国的な不動産価格の高騰を受け、2年ぶりに全国全用途平均が0.6%上昇。特に東京圏、大阪圏、名古屋圏の三大都市圏がいずれも上昇に転じ、全国平均を押し上げました。
一方、コロナ禍の影響で伸び悩む商業地やエリアもあり、上昇と下落のまだら模様となっているのが現状です。
“地方圏の公示地価、2年ぶり上昇 半数が上昇・横ばいに”国土交通省が22日発表した2022年1月1日時点の公示地価の全国全用途平均は2年ぶりに上昇した。地方圏も2年ぶりに上昇した。新型コロナウイルスの影響が徐々に和らぐ中で、地点の半数が上昇・横ばいに転じるなど、全体的には回復傾向が見られた。一方、三大都市圏はいずれも上昇したものの、大阪圏の上昇率は比較的低かった。
ところで、みなさんは、地価公示の本当の意味をご存知でしょうか。土地の値段を公的に示す制度には、実は3種類もあります。
- 国土交通省が発表する「地価公示」
- 都道府県が発表する「地価調査」
- 国税庁が発表し、税金の算定の基礎となる「路線価」
似たようなものが色々あって、混乱してしまいますね。
しかも、このような公的な価格指標のほかに、実際の売買で成約した「実勢価格」も存在します。不動産業界で働いている人を除くと、これらの違いを明確に知っている人は多くないはずです。
そこでこの記事では、最新の地価公示の内容から、地価公示のしくみ、実勢価格を知る方法まで解説していきます。
ぜひ最後までお読みいただき、自宅周辺の地価相場をサクっと調べられるようになってくださいね。
Contents
1. 最新の公示地価の概要(2022年1月1日時点)
1-1. 高額地点ランキング
2022年3月22日、国土交通省が発表した公示価格上位順位表(全国)によると、地価の高額地点ランキング第一位は、今年も銀座の「山野楽器銀座本店」でした。
では、高額地点ランキングトップ10を見てみましょう。
順位 | 地点 | 価格(1平方メートルあたり) | 前年比変動率(%) |
---|---|---|---|
1 | 東京都中央区銀座4-5-6(山野楽器銀座本店) | 5,300万円 | △1.1 |
2 | 東京都中央区銀座5-4-3(対鶴館ビル) | 4,550万円 | △1.3 |
3 | 東京都中央区銀座2-6-7(明治屋銀座ビル) | 3,910万円 | △2.0 |
4 | 東京都中央区銀座7-9-19(ZARA) | 3,820万円 | △2.8 |
5 | 東京都千代田区丸の内2-4-1(丸の内ビルディング) | 3,670万円 | △1.3 |
6 | 東京都新宿区新宿3-24-1(NEWNO・GS新宿) | 3,630万円 | △0.5 |
7 | 東京都新宿区新宿3-30-11(新宿高野第二ビル) | 3,450万円 | △0.3 |
8 | 東京都中央区銀座6-8-3(銀座尾張町TOWER) | 2,820万円 | △3.8 |
9 | 東京都中央区銀座4-2-15(塚本素山ビルディング) | 2,820万円 | △1.7 |
10 | 東京都渋谷区宇田川町23-3(渋谷第一勧銀共同ビル) | 2,780万円 | △0.0 |
昨年に引き続き、東京の銀座が6か所ランクイン。山野楽器銀座本店は前年より1平米あたり60万円下落したものの、変動率は昨年マイナス7.1%からマイナス1.1%に縮小しました。その他のエリアも下落幅が大幅に改善され、回復軌道に入ったことがうかがえます。
1-2. 全国の地価の動き
今回の地価公示は、前年と同様、全国約26,000地点を対象に実施され、次のような結果となりました。
令和4年地価公示では、全国全用途平均・住宅地・商業地のいずれも2年ぶりに上昇に転じました。新型コロナウイルス感染症の影響が徐々に緩和される中で、全体的に昨年からは回復傾向が見られます。
全国平均:全用途平均・住宅地・商業地のいずれも2年ぶりに上昇に転じました。
三大都市圏:全用途平均・住宅地は東京圏、大阪圏、名古屋圏のいずれも2年ぶりに上昇に転じ、商業地は東京圏、名古屋圏は上昇に、大阪圏は横ばいに転じました。
地方圏:全用途平均・住宅地・商業地のいずれも2年ぶりに上昇に転じました。地方四市(札幌・仙台・広島・福岡)では全用途平均・住宅地・商業地のいずれも上昇を継続し上昇率が拡大しました。
引用:国土交通省報道資料より
国土交通省の発表の通り、2022年の公示地価は全国的に上昇に転じました。ただし、商業地と住宅地では回復に差が出ています。
特に、インバウンドの影響が色濃い大阪圏の商業地では、訪日客の客足が戻らず下落か横ばいにとどまっています。また、都心のオフィス街もコロナ禍によるリモートワークの拡大を受け、港区、千代田区、中央区は下落傾向にあります。
一方、住宅地は東京圏が0.6%上昇、名古屋は1.0%の上昇、地方四市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)は5.8%の上昇と、マンション需要と価格の急上昇が大きく影響し、大幅に値上がりしています。
不動産の売却を検討されている場合は、上記のような地価の情報も視野に入れながら、計画的に進めましょう。
2. 公示地価、地価調査とは
そもそも「公示地価」って何でしょうか?誰が何のために決めているのでしょうか?詳しく見ていきましょう。
2-1. 公示地価と地価調査の違い
「公示地価」と似たものに「地価調査」というものもありますが、こちらは公示地価ほど大きく新聞などで取り上げられないので、なじみがないかもしれませんね。それぞれの特徴を見てみましょう。
いつ時点の価格? | 発表の時期は? | 誰が発表する? | |
---|---|---|---|
公示地価 | 1/1 時点 | 3月下旬 | 国土交通省 |
地価調査 | 7/1 時点 | 9月下旬 | 都道府県 |
春に発表される公示地価と、秋に発表される地価調査を両方見れば、半年ごとの土地の値動きがわかるようになっています。
2-2. 公示地価を発表する目的
土地の適正価格は、とてもわかりにくいものです。そこで、地価公示制度は、土地の適正価格を公表することで、適正な地価の形成に役立てることを目的にしています。
土地の適正価格は、なぜわかりにくいのでしょうか?
土地は一つ一つ面積や形状も違いますから、すぐ近くでも同じ価値とは限りません。しかも、実際の土地の成約価格は、プライバシーや守秘義務の問題もあるので、あまり表に出てきません。さらに、土地の取引には特殊な事情があるケースも多いので、ますますわかりにくいのです。
特殊な事情というのは、急いで安く売ってしまう「売り急ぎ」や、急いで高く買ってしまう「買い進み」などです。また、親族間や関連会社間の売買では、相場とかけ離れた値段で取引されることも珍しくありません。
このようにわかりにくい土地の適正価格を、誰でもわかりやすく知ることができるようにした制度が、地価公示です。
地価公示法では、地価公示の目的として、次の2つを挙げています。
(1) 土地取引の指標とすること
適正な価格で土地取引を行えるように、取引価格の指標を示します。
(2) 公共用地買収の指標とすること
新しく道路や公共施設を作る場合には、国や地方公共団体が地主から土地を買い取る必要があります。
このとき、税金を使って高すぎる価格で買うと問題になりますし、安すぎる価格で買っても不公平です。そこで、公平な買収価格の指標として、地価公示によって公表された「公示地価」が利用されます。
公示地価のおかげで、「適正で公平な取引がしやすくなる」というわけです。
2-3. 公示地価の5つの特徴
ちなみに、公示地価には、次のような特徴があります。
(1) 公示地価の発表地点は全国で2万ヶ所以上
発表地点は前年度と同じ地点がほとんどですが、毎年見直しがあります。
(2) 1平米当たりの単価で表示
(3) 正常な価格
公示地価は、自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価格です。つまり、売り急ぎや買い進みなどの特殊な事情がない場合の価格です。
(4) 更地としての価格
公示地価の発表地点は、建物の敷地となっていることがほとんどですが、建物がなにも建っていない更地としての価格が公表されます。
(5) 不動産鑑定で決められる
それぞれの地点について不動産鑑定士が鑑定評価を行い、国土交通省の土地鑑定委員会が審査した上で、公示地価の価格が決定されます。
3. 公示地価の調べ方
それでは具体的に、自分の家の近くや、気になる場所の公示地価を知りたい場合の調べ方をお教えします。公示地価や地価調査はインターネットで簡単に調べることができます。
3-1. 国土交通省のウェブサイト「土地総合情報システム」

都道府県、市区町村で絞り込んで検索することができます。
ただし、発表直後はウェブサイトが表示されにくくなりますので、時間を置いて試してみてくださいね。
3-2.「全国地価マップ」

「全国地価マップ」では、公示地価、地価調査のほかに、税金の基礎となる「路線価」も検索できます。
ただし、公示地価などが最新情報に更新されるまで、ややタイムラグがあります。
都道府県、市区町村で絞り込むと、地図が表示されるので、目的の場所が探しやすくなっています。
路線価は、その土地が面している道路に設定されています。路線価が設定されていない道路もあります。
路線価には2種類あって、利用目的が違います。
- 「相続税路線価」は相続税や贈与税の算定の基礎になります。
- 「固定資産税路線価」は、土地に課税される固定資産税の算定の基礎になります。
最新の路線価については、こちらの記事も参考にしてみてください。
4. 実勢価格を調べる方法
もしあなたが土地の取引の参考にしようと考えているなら、実際の売買の相場である「実勢価格」が知りたいですよね。
公示地価と同じ価格水準で実際に取引されているものなのでしょうか?
4-1.「公示地価」を参考にできるか
公示地価は、適正な取引の指標とするためのものですが、公示地価と同じ水準で取引する“義務”はありません。その土地を欲しい人が多ければ、実際の取引価格は、公示地価より高い水準になります。
公示地価よりも実勢価格が高くなるケースとしては、「都心や駅前の商業地、人気住宅地」の場合です。反対に安くなるケースとしては、「郊外や、高齢化・過疎化しているエリア」の場合です。
ただし、公示地価より大幅に高くなったり安くなったりするケースが頻発しているというわけではなく、一般的には地価公示と実勢価格は同じくらいの水準になっています。
つまり、公示地価は相場を知るために、十分に参考になるデータと考えてOKです。
4-2.「路線価」から算出する方法
路線価は多くの道路に設定されているので、土地の相場を調べるときにはよく利用されます。ただし、税金の基礎である路線価は公示地価よりも安めなので注意してください。
公示地価と、税金の基礎となる「路線価」の価格には、一定の法則があります。
- 「相続税路線価」は、地価公示の約80%です。
- 「固定資産税路線価」は、地価公示の約70%です。
路線価はなぜ安いの?と思うかもしれませんが、これは私たち納税者にとって、うれしい水準です。
「相続税路線価」は相続税の算定の基礎、「固定資産税路線価」は固定資産税の算定の基礎でしたね。
つまり、公示地価よりも路線価が安めの水準に決められているので、相続税や固定資産税の納税額が高くなりすぎないように配慮されているのです。
路線価を土地の取引の参考にする場合には、公示地価の水準に修正すればいいので、次のように計算できます。
相続税路線価 ÷ 0.8 = 公示地価の水準
固定資産税路線価 ÷ 0.7 = 公示地価の水準
例1)相続税路線価が100と書いてあった場合、100千円という意味なので、
100,000円 ÷ 0.8 = 125,000円 / 平米
例2)固定資産税路線価が75,000と書いてあった場合、
75,000円 ÷ 0.7 = 約107,000円 / 平米
このように、路線価がわかれば、公示地価の水準に修正できるので、実勢相場の目ぼしがつきますね。
4-3. 公示地価や路線価を参考にする際の注意点
実勢価格を知るために、とても便利な公示地価や路線価ですが、取引の参考にするには限界もあります。注意点が4つありますので、順に説明していきます。
【1】公示地価は、調べたい土地のすぐ近くにあるとは限らないのが欠点
公示地価の発表地点は、全国で2万ヶ所以上とはいえ、すぐ近くにあるとは限りません。
しかも、都心や駅に近い住宅地では、公示地価の発表地点は比較的たくさんありますが、郊外の発表地点はかなり少なくなっています。
また、すぐ近くに公示地価の地点があっても、法律上の規制などの条件が異なれば相場も違うので、注意してくださいね。
【2】路線価は多くの道路に設定されているが、地積や形状は別途考慮する必要がある
路線価は多くの道路に設定されているので、ピンポイントで値段を調べやすいのが長所です。
でも、路線価は、そのエリアで「標準的な大きさ」で「標準的な形」の土地の値段を決めたものです。例えば、50坪くらいの敷地の一戸建てが建ち並ぶ住宅街であれば、50坪のほぼ長方形の土地が標準となります。
ところが、同じエリアでも、500坪の土地や、不整形な土地では、値段が違ってきます。相続税などを決めるときにも、「路線価×面積」がそのまま相続税評価額になるわけではありません。
間口や奥行、敷地の形状などを評価額に反映できるように、「補正」があります。
路線価には土地の個別性が反映されていないので、路線価を参考にするには限界があります。路線価だけでは、個別の土地の個性を反映した実勢価格はわかりません。
また、郊外などでは、路線価を調べようとしたら「倍率地域」と表示されてしまう場合があります。これは、個別に路線価が決められていないエリアなので、路線価を実勢価格の参考にはできません。
【3】エリアによって、実勢相場は公示地価を上回る場合も下回る場合もある
先ほど触れたように、公示地価よりも実勢価格のほうが高いエリアもあれば、安いエリアもあります。
実勢価格を調べたい場所が、公示地価と同じくらいで取引されることが多いのかどうか、地域に精通している不動産会社に聞かない限り、私たちにはわかりません。
【4】発表までタイムラグがあるので、最新の地価ではない
公示地価は1月1日時点の地価ですが、発表は3月下旬です。約3ヶ月のタイムラグがあるので、この間の経済情勢の変動や、地域経済に影響を与える要因の変化、最新の需給動向は反映していません。
公示地価や路線価を参考にする際には、上記4つの注意点を頭の隅に入れておくことをおススメします。
4-4. 売却を予定しているなら、正確な査定が必要
公示地価や路線価は、だいたいの土地価格を知るためにはとても便利ですが、本当に正確な価値を知りたい場合には向いていません。
不動産の売却を考えている場合には、なるべく正確な価値を知った上で、買い換えの予算を検討したり、売却益に税金がかかるかどうか検討することが大切です。
売り時を逃さないためには、最新の需給動向を踏まえて、売り出すタイミングも考える必要があります。
では、売却したい土地の一番近くにある不動産会社に行って、査定を依頼すればいいかというと、それが一番いいとは限りません。
いくつかの不動産会社に査定を依頼すると、不動産会社によって異なる査定額が出てくることがほとんどだからです。
その理由は、3つあります。
- 不動産会社には得意分野、得意エリアがあるから(土地の売買が得意、マンションが得意、賃貸が得意など)
- 見込み客(そのエリアで土地を探しているお客さん)を抱えている不動産会社があるから
- 地域の価格動向についての見立てが違うから
ですから、その地域に精通している複数の不動産会社に査定を依頼し、各社の査定額の根拠をヒアリングすることが最も重要です。
とはいえ、いくつもの不動産会社に一社ずつ査定依頼するのは大変です。
そこで、手間をかけずに、その地域に精通している複数の不動産会社と出会うために便利なのが「不動産売却 HOME4U(ホームフォーユー)」です。
HOME4Uには、厳選された全国の不動産会社が参画しており、お持ちの土地の住所や広さなど簡単な項目を入力するだけで、その土地の売却に最適で優良な不動産会社をシステムが自動的に検出してくれるので、不動産会社探しに余計な時間がかかりません。
売却を検討しているなら、売り時を逃さないよう、複数の不動産会社からきちんと査定を受け、査定額や根拠の違いを十分比較して、準備を進めてくださいね。
まとめ
いかがでしたか?
地価公示は、「土地の適正価格を誰でもわかりやすく知ることができるようにしている制度である」ということをお伝えしました。
公示地価や路線価は、実際の取引水準を知るための有力な手がかりになります。取引を行う予定のある方は、最新情報を上手に活用してください。
この記事のポイント まとめ
2022年は2年ぶりに公示地価が上昇に転じています。詳しくは「【2022年】最新公示地価│最新の実勢相場を押さえよう!」をご覧ください。