「不動産売却の手数料」とひとくちにいっても色々ありますが、一般的には仲介手数料とそれ以外の費用に分けて考えます。
仲介手数料とは不動産会社に支払うものですが、不動産は取引金額が何千万円もになるため、これから不動産売却を予定している方の中には、仲介手数料の相場や計算方法をあらかじめ知りたい方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、「不動産売却の手数料」について、わかりやすく解説します。
この記事をお読みいただければ、仲介手数料の計算方法や相場、支払いのタイミング、さらには時折見かける「無料」や「半額」がある理由など、手数料に関する基本事項をご理解いただけます。
ぜひ最後までご覧いただき、スムーズな不動産売却にお役立てください。
不動産売却について基礎から詳しく知りたい方は『不動産売却の基礎』もご覧ください。
Contents
1.仲介手数料はいくらかかる?相場は?
最初にメインとなる不動産売却の手数料の計算式や相場について解説します。不動産売却の手数料は「仲介手数料」を指します。
1-1.上限額の計算式
仲介手数料は、不動産会社が受領できる金額の上限額が規定で定められています。
不動産会社は、規定の上限を超えて仲介手数料を受領することができません。
仲介手数料の上限額は、以下の速算式を用いて計算することが可能です。
上限額は、取引額によって計算式が異なる点がポイントとなります。
取引額(※1) | 仲介手数料(別途消費税) |
---|---|
200万円以下 | 取引額の5% |
200万円超から400万円以下 | 取引額の4%+2万円 |
400万円超 | 取引額の3%+6万円 |
※1:取引額=売却額
一般的に、不動産の価格は取引額が400万円を超えることが多いですが、この場合、仲介手数料は「取引額の3%+6万円」となります。
仲介手数料には、別途消費税が生じます。
例えば、売却した不動産が4,500万円の場合、仲介手数料は以下の通りです。
【売却額が4,500万円のときの仲介手数料(消費税率が10%の場合)】
仲介手数料 = 取引額 × 3% + 6万円
= 4,500万円 × 3% + 6万円
= 135万円 + 6万円
= 141万円
税込仲介手数料 = 仲介手数料 × (1 + 10%)
= 141万円 × 1.1
= 155.1万円
仲介手数料の計算の元となる「取引額」自体は、消費税抜きの価格です。
個人がマイホームを売却する際は、消費税は生じませんので、マイホームの売却金額がそのまま取引額となります。
下の記事では、このような速算式となる理由など、仲介手数料について詳しく解説しています。
1-2.仲介手数料の相場
個人がマンションや戸建てを売却したときの仲介手数料は、上限額がそのまま相場となっていることが一般的です。
そのため、仲介手数料の相場は、マンションや戸建ての売却平均額から推定することもできます。
公益財団法人東日本不動産流通機構の「Market Watch(2020(令和2)年04月度)」では、2020年4月におけるマンションと戸建ての平均価格を開示しています。
主要都府県の平均価格を元に計算した仲介手数料は以下の通りです。
平均価格は400万円超であるため、仲介手数料は「取引額の3%+6万円」で計算しています。
都道府県 | マンション 平均価格 |
マンション 仲介手数料 |
戸建て 平均価格 |
戸建て 仲介手数料 |
---|---|---|---|---|
東京都 | 4,129万円 | 130万円 | 3,785万円 | 120万円 |
神奈川県 | 2,752万円 | 89万円 | 2,994万円 | 96万円 |
埼玉県 | 1,992万円 | 66万円 | 1,882万円 | 62万円 |
千葉県 | 1,688万円 | 57万円 | 1,881万円 | 62万円 |
愛知県 | 1,999万円 | 66万円 | 2,337万円 | 76万円 |
大阪府 | 2,387万円 | 78万円 | 1,607万円 | 54万円 |
兵庫県 | 1,906万円 | 63万円 | 1,894万円 | 63万円 |
福岡県 | 1,702万円 | 57万円 | 1,746万円 | 58万円 |
東京都は、突出して中古住宅の売却価格が高いため、仲介手数料の平均も100万円を超えています。
他の都府県は、仲介手数料の平均価格は100万円を下回っています。
仲介手数料の相場としては、東京都が120万円~130万円程度、他の都道府県は50万円~90万円程度です。
売却計画を立てるために、仲介手数料を詳しく知りたい方は、不動産会社の査定を受けてみましょう。
査定額がわかれば、およその仲介手数料を不動産会社に教えてもらえます。
最大6社の不動産会社にまとめて査定依頼ができる不動産売却 HOME4U(ホームフォーユー)を利用すれば、より信頼できる査定額を選びやすくなります。
2.仲介手数料はいつ支払う?
仲介手数料は、売買契約締結時に50%、引渡時に50%を支払うのが一般的です。
不動産の売却の流れは以下の通りです。
仲介手数料は成功報酬なので、売買契約が成立しないと不動産会社に報酬の請求権が生じないものとなっています。
不動産の売却の流れは、最初に査定を行い、依頼したい不動産会社が見つかったら媒介契約を締結します。
媒介契約とは、不動産会社に仲介を依頼する契約のことです。
仲介手数料は成功報酬なので、媒介契約をしても着手金や前金等の金銭は一切発生しないことになります。
もし不動産会社が買主を見つけることができなかったら、不動産会社は仲介手数料や、今までかかった費用も請求できないということです。
買主が決まったら売買契約を締結し、その後、1ヶ月ほど時間を空けた後に引渡(残金決済)となります。
仲介手数料は成功報酬ですが、成功か否かが判断されるタイミングは売買契約の時点です。
本来、不動産会社には売買契約時点で仲介手数料の100%の請求権が生じますが、不動産会社には引渡までやってもらう仕事が多数ありますので、50%分の支払を引渡まで留保する形となっています。
そのため、仲介手数料の支払のタイミングは、商習慣として売買契約締結時に50%、引渡時に50%となっているのです。
3.「無料」や「半額」があるのは何故?
不動産会社によっては、仲介手数料を無料や半額としている会社もあります。
仲介手数料を無料や半額でも営業できる不動産会社がある理由は、両手仲介を前提としたサービスを行っているためです。
不動産会社が行う仲介には、両手仲介と片手仲介の2種類があります。
両手仲介とは、売主から売却を依頼された不動産会社が、自ら買主を見つけることで買主からも仲介手数料を取る形式の仲介のことです。
一方で、片手仲介とは、売却を依頼した不動産会社以外の不動産会社が買主を見つけてくる仲介のことを指します。
両手仲介では、不動産会社は売主からも買主からも仲介手数料を取ることができるため、手数料収入は2倍です。
それに対して、片手仲介では、仲介手数料を売主からしか受領できず、手数料収入は1倍となります。
仲介手数料を無料としている不動産会社は、割り切って両手仲介でも買主からしか手数料を取らない形式を採用しています。
不動産会社としては、2倍の収入を得るチャンスを捨てることになりますが、戦略的に売主からの依頼を増やすことで買主からの手数料収入を増やせば良いと考えているためです。
仲介手数料が無料や半額というのは、一見するとメリットもありますが、実は危険なデメリットがあります。
それは、不動産会社が両手仲介に固執するあまり、売却額が安くなる可能性があるという点です。
不動産の取引では、売主は高く売りたい、買主は安く買いたいという背反する希望があります。
両手仲介で不動産会社が間に立つと、不動産会社は売主と買主の双方の代理の立場となってしまいます。
売主と買主は相反する利益を求める立場であるため、理論上、双方の代理に立つことはできません。
例えば、売却を依頼した不動産会社が買主を見つけてきたときに、「あと200万円値引きしてくれたら買います」と言ってきたら、不動産会社は売買を成立されるために売主に値引きをお願いすることになります。
売主が依頼した不動産会社は、本来、売主のために高く売ることに尽力すべきですが、これでは売主に値引きを要請するというおかしなお願いをする形になってしまいます。
しかしながら、不動産会社は買主の希望を叶えれば両手仲介が成立するため、無理にでも買主の要求も通そうとします。
よって、両手仲介では、依頼した不動産会社に「飼い犬に手をかまれる」ような状態となることがあり、最終的には安く売ることに繋がりやすいのです。
仲介手数料を無料や半額としている不動産会社は、最初から両手仲介を前提としているため、不動産会社に売却額の値引きを要請される可能性が高くなります。
仲介手数料が無料や半額の不動産会社を選ぶ場合には、デメリットも十分に理解した上で選ぶことが重要です。
4.「+6万円」って何?
仲介手数料では、速算式の「3%+6万円」の「+6万円」とは何かという質問を受けることが多いです。
この章では、「+6万円」の理由について解説します。
仲介手数料は、国土交通省の告示では以下のように定められています。
- 取引額が200万円以下の場合は取引額の5%
- 取引額が200万円超から400万円以下の場合は取引額の4%
- 取引額が400万円超の場合は取引額の3%
媒介報酬は上記の「1.」~「3.」の合計金額以内とする。
国土交通省の告示の定義の中では「+6万円」というものは、登場してきません。
しかしながら、「「1.」~「3.」の合計金額以内」という表現が「+6万円」を生み出す理由となっています。
国土交通省の告示の定義は、以下のようなグラフで表現できます。
縦軸が料率のパーセントを表し、横軸が取引額です。
仲介手数料は、「「1.」~「3.」の合計金額以内」ですので、上グラフの階段の面積の合計額なります。
階段部分の面積の合計額は、以下のように3つの部分を色分けすることで求めることが可能です。
最初に黄色部分の面積を求めます。
黄色部分は、横軸が取引額なので仮に「X万円」とします。
黄色部分の縦軸は3%となるため、黄色部分の面積は「X万円×3%」です。
次に赤部分の面積を求めます。
赤部分は、横軸が200万円、縦軸が2%(=5%-3%)です。
よって、赤部分の面積は4万円(=200万円×2%)となります。
最後に、青部分の面積を求めます。
青部分は、横軸が200万円、縦軸が1%(=4%-3%)です。
よって、青部分の面積は2万円(=200万円×1%)となります。
黄色と赤、青の3つの面積を合計する以下のようになります。
仲介手数料 = 黄色部分 + 赤部分 + 青部分
= X万円×3% + 4万円 + 2万円
= X万円×3% + 6万円
以上のことから、400万円超の取引では、仲介手数料の速算式は「取引額の3%+6万円」となるのです。
5.その他の費用はどれくらい?
不動産の売却では、仲介手数料以外にも以下のようなその他の費用が生じます。
(1)印紙税
(2)抵当権抹消関連費用
(3)引っ越し代
- (1)印紙税
-
印紙税は、売買契約書に貼り付ける印紙のことです。
印紙税は、取引額が「1,000万円超5,000万円以下」なら1万円、取引額が「5,000万円超1億円以下」なら3万円です。
仲介手数料の計算と同様に、取引額には消費税は含みません。
▶関連記事:不動産売買契約書の印紙代はいくら
- (2)抵当権抹消関連費用
-
住宅ローンが残っている不動産を売却する場合、抵当権を抹消するための費用が必要です。
抵当権とは、銀行がお金を課した際に設定した担保権を指します。
抵当権を抹消するには、「抵当権抹消の登録免許税」と「司法書士手数料」の2つが必要です。
抵当権抹消の登録免許税は、不動産1個につき1,000円ですので、土地1つ、建物1つなら2,000円となります。
司法書士手数料は、0.8万円~3.5万円と幅がありますが、平均は1.5万円程度です。
- (3)引っ越し代
-
引っ越し代は、3人家族で500km未満の引っ越しであれば、2月~4月の繁忙期は20万円程度が相場です。
繁忙期以外となると、15万円程度が相場となります。
また、ハウスクリーニングやホームステージングなどの各種サービス、物件によっては必要になる解体やリフォームでも費用発生します。
~税込みで売却した場合はどうしたら良い?~
仲介手数料の計算の元となる取引額は消費税を除いた金額です。
不動産を税込みで取引した場合、消費税を除いた金額で仲介手数料を計算する必要があります。
不動産の売却では、マイホームのような居住用財産以外の物件では、建物価格に消費税が課税されます。
土地に関しては、どのような不動産を売却しても消費税は課税されません。
例えば、アパートのような収益物件を消費税込みで売却した場合、仲介手数料を求めるために税抜の取引額を計算することが必要です。
税抜の取引額を求めるには、建物消費税を求める必要があります。
建物消費税額を求めるためには、売却する不動産の土地価格と建物価格の内訳を按分して定めることが必要です。
土地価格と建物価格を案分するには、売却する不動産の固定資産税評価額を用いることが一般的となります。
例えば、売却する不動産の固定資産税評価額が、土地が1,500万円、建物が1,000万円とした場合、土地と建物の価格の割合は土地が60%、建物が40%ということです。
消費税率が10%とした場合、建物のみに対して消費税がかかります。
建物の価格割合が40%だとすると、全体価格の40%に対して10%、つまり4%の消費税が生じていることになります。
つまり、建物の価格割合が40%のケースでは、全体の税込金額の割合が104%となり、そのうち4%(=40%+10%)が消費税ということです。
税込みで不動産を取引した場合には、消費税を除いた金額で仲介手数料を計算することを忘れないようにしましょう。
まとめ
いかがでしたか。
不動産売却の手数料について解説してきました。
仲介手数料は、物件価格が400万円超の場合、「取引額の3%+6万円」が上限額です。
仲介手数料の相場も上限額となっている点、基本事項としておさえておいてください。
仲介手数料の支払いのタイミングは、一般的には売買契約時に50%、引渡時に50%です。
その他、不動産の売却では印紙税、抵当権抹消関連費用、引っ越し代等も必要です。
その時になって困らないよう、売却活動を始める前の段階で、準備を進めておくことをおススメします。
この記事の情報を活かし、売却活動をスムーズに進めていただければ幸いです。
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