土地の分筆にかかる費用や期間は、境界の状況によって大きく変わります。
また、分筆の目的が売買か相続かで、必要書類や誰が費用を支払うかが変わってきます。
本記事では、土地の分筆にかかる費用相場や手続きの流れと期間、誰が費用を負担すべきかなどを解説します。
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Contents
1.土地の分筆にかかる費用
土地の分筆にかかる費用はおよそ50万円からで、境界の状況によっては100万円程度かかる可能性もあります。
その内訳は登記に必要な登録免許税が1筆1,000円、土地家屋調査士への報酬が平均およそ42万円、所有権に関する変更がある場合の司法書士報酬が平均5万円ほどとなっています。
1-1.分筆登記にかかる登録免許税
分筆をするには、法務局へ登記を行う必要があります。
その際に、土地1筆あたり1,000円の登録免許税を納めます。
分筆して4つの土地に別れた場合は、4筆の登記が必要になるため、4,000円の登録免許税になります。
1-2.土地家屋調査への報酬
分筆を行う際は、土地家屋調査士へ作業や手続きを依頼し、報酬を支払います。
依頼を受けた土地家屋調査士は、境界測量や隣地所有者・役所と境界協議を行い、その上で境界確認書を作成し法務局へ登記を申請します。
日本土地家屋調査士会連合会の資料によると、報酬額の平均は422,909円(税抜)です。
ただし金額には幅があり、隣地との境界が明確な土地なら、10~20万円程度で済むこともあります。
一方で境界が不明確な場合は、隣地所有者に立ち会ってもらい境界確定を行うことになり、金額は数十万円から条件によっては100万円以上かかる可能性もあります。
また土地の広さや隣接地の所有者の数、公道など自治体の立ち会いも必要か、などで報酬額が変わることもあります。
1-3.司法書士への報酬(所有権に関する変更がある場合)
分筆と合わせて土地の所有権を変更する場合は、所有権移転登記を行います。この登記は土地家屋調査士が行えないため、司法書士へ依頼します。
例えば、AとBが共有している土地を、Aが単独で所有する土地とBが単独で所有する土地に分ける場合、分筆登記とは別に所有権移転登記が必要になります。
所有権移転登記には、不動産評価額の4/1000が登録免許税としてかかります。
所有権移転登記を司法書士に依頼する際は、別途5万円程度の報酬がかかります。
司法書士の報酬額は、土地や建物の固定資産評価額やその数、共有者の人数などによって変わります。
2.土地を分筆する流れと期間
土地の分筆にかかる期間は、隣地との境界が明確かどうかで大きく変わります。
境界が明確な土地であれば、10~20日ほどで分筆は終わるでしょう。
境界が不明確な場合は、隣地所有者の立ち会いの元、境界の確認と同意を得る境界確定が必要になるため長期化します。
隣地所有者が一般の方なら2~3か月、隣地が道路や河川などで国や県、市町村が所有者だと、3~6か月が分筆にかかる期間の目安です。
この章では、分筆が完了するまでの手続きについて、以下4ステップで解説します。
2-1.土地家屋調査士に依頼する
土地の分筆は、土地家屋調査士に依頼して行うのが一般的です。
分筆は測量や隣地所有者との折衝など、専門的な知識や道具が必要な作業です。土地所有者などが個人で行うことは困難でしょう。
確定測量が必要な場合、分筆の期間が長期化することも考えられるため、早めに依頼することをおすすめします。
2-2.土地の境界を調査する
土地の分筆には隣地との境界が明確になっている必要があります。
土地家屋調査士は、法務局や役所に足を運び、資料による調査を行います。
その後に行う現地での調査と合わせて、隣地との境界が明確であるかを判断します。
土地家屋調査士の都合にもよりますが、この作業は数日で終わります。
2-3.境界確認書を作成する
境界が明確でない場合は、境界確定測量を行います。境界確定測量は、早くて2か月、長いと半年近くかかる場合もあります。
境界確定測量では、測量の後、隣地所有者に境界の位置を確認してもらう必要があります。
無事、境界について隣地所有者の了承をいただければ、境界標などを打ち込み、境界確認書(あるいは筆界確認書)を作成します。
隣地との境界が確定して初めて、分筆の手続きを始めることができます。
分筆には、地積測量図の作成から、土地を分割する地点への境界標設置が必要です。
2-4.法務局へ登記申請を行う
地積測量図の作成し分割地点を定めたら、登記申請書を作成し、法務局に登記申請を行います。
法務局による審査で問題がなければ登記が行われ、登記済証が発行されると登記は完了です。この工程には1~2週間ほどの時間がかかります。
なお、登記申請書の作成から法務局への登記申請に関しても、土地家屋調査士が行います。
3.土地の分筆に必要な書類
土地の分筆登記に必要な主な書類は、以下のとおりです。売買による分筆だけでなく、相続時の分筆で必要になる書類も紹介します。
書類 | 説明 |
---|---|
登記申請書 | 法務局に登記を申請するための書類です。登記目的や土地所有者の住所、氏名、代理人の情報などを記入します。 |
地積測量図 | 土地の形状や面積、境界の位置などを詳細に記入した図面です。紙のサイズや文字の太さ、記載事項などが法令で詳細に定められています。 |
地形図 | 公図などに分筆線を入れて作成した図面です。法的に必須の書類ではありませんが、申請時に添付する土地家屋調査士もいます。 |
境界確定資料 | 境界確定の際に隣地所有者と取り交わした、筆界確認書や境界の同意書などです。 |
相続によって分筆登記を行う際は、以下の書類も追加で必要になります。
書類 | 説明 |
---|---|
遺産分割協議書 | 複数の相続人がいる相続において、どのように遺産を分割したかを記した書類です。申請人が、分筆する土地を継承したことを証明します。 |
戸籍謄本・除籍謄本(被相続人) | 被相続人が亡くなるまでの戸籍の過程を示すもので、相続の発生を証明します。 |
戸籍謄本(相続人) | 相続人と被相続人の関係を示すもので、分筆の申請人が相続人であることを証明します。 |
住民票・印鑑証明書(申請人) | 遺産分割協議書に記されている相続人の、氏名や住所、印影を証明します。 |
4.土地の分筆費用は誰が払う?
土地の分筆費用は、誰が払うべきなのでしょうか。
分筆の手続きそのものにかかる費用と、その後に行う名義変更の司法書士報酬に分けて解説します。
4-1.分筆手続きにかかる費用
分筆手続きにかかる、登録免許税や土地家屋調査士報酬といった費用は、分筆を希望した方が支払うケースが多く見られます。
例えば、売買において売主が「分筆してコンパクトな土地にした方が売りやすい」「分筆して一部の土地だけ売りたい」と考えたなら、その売主が費用を負担すべきでしょう。
また、土地の一部分だけ分筆して買いたいと買主が希望した場合は、買主が費用を負担するのが妥当と考えられます。
ただし、分筆登記を申請できるのは、その土地の所有者(または表題部所有者)に限られます。
そのため登記にかかる費用は、まず所有者が負担するのが基本となります。
買主との合意の上で、買主側が費用を負担する場合には、売却金額の調整で清算するのが一般的でしょう。
4-2.分筆に伴う司法書士への報酬
例えば、AさんとBさんで共有している土地を分筆し、それぞれ単独の所有権を登記する場合、土地家屋調士では対応できないため司法書士に依頼する必要があります。
この場合、司法書士への報酬(所有権移転登記にかかる登記費用も含む)は、基本的には折版と考えるのが妥当かと思います。
ただ、一方の都合を押し通して分筆を行う場合などでは、それによって利益を得る方が負担するケースもあります。
また、相続する土地が共有名義にならないよう、単独の登記をする場合もあります。
この場合は、不動産を取得する相続人が負担するケース、相続人全員で負担するケース、相続財産から捻出するケースが考えられます。
4-3.分筆後に売却するための費用
土地の売却でかかる以下の費用について、誰が支払うかを確認していきましょう。
- 仲介手数料
- 仲介手数料は、不動産の売買を仲介してもらう不動産会社に支払う費用です。
売主が依頼した不動産会社には売主が支払い、買主が不動産を紹介してもらった不動産会社には買主が支払います。 - 売買契約書の印紙税
- 不動産売買契約書には印紙税がかかります。
不動産売買契約書は、一般的に売主と買主がそれぞれ保管できるように2通作成されます。
印紙税も2通分かかりますが、売主と買主それぞれ1通分ずつ支払います。 - 実測費用
- 実測費用は、土地の実際の面積と登記簿が異なる場合に、測量を行い面積を明確化するための費用です。売主が費用負担をするのが一般的ですが、買主と双方で負担する場合もあります。
ただし、分筆登記の時点では境界が確定し、新たに正しく登記されている状態なので、売却時に測量を行うことは少ないでしょう。 - 抵当権抹消費用
- 抵当権抹消費用は、住宅ローンなどを利用した際に、土地に登記された抵当権を抹消する費用です。抵当権は土地所有者によって登記されるため、売主側が抹消費用を負担するのが一般的です。
- 所有権移転登記費用
- 所有権移転登記費用は、土地の所有権を買主に移転するための費用で、登録免許税や司法書士への報酬などがかかります。買主が負担するのが一般的ですが、売主と折半することもあります。
分筆した土地の売却を決めている方は、不動産会社に査定を依頼してみましょう。売却にかかる費用の多くは売却金額によって変わるため、査定額を知ることでより明確な資金計画が立てられます。
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5.分筆を行う上での注意点
ここでは分筆を行う際に気をつけたい、3つの注意点について解説します。
5-1.分筆ができない場合もある
以下のような場合は、分筆や分割を制限される可能性があります。
- 分筆後の面積が0.01平米未満になる
- 土地の分け方が著しく不合理である
- 隣地との境界確定ができない
極端に土地の面積を小さくしたり、細長い形や三角形など不合理な形にしたりすることは、意図的に土地の評価を下げて税額を抑えようとすると疑われ、意図した分筆ができない可能性があります。
また、隣地所有者が境界確定に協力してくれない場合、基本的には分筆ができない恐れがあります。
5-2.再建築ができなくなる場合もある
建物を建てる土地は、原則として幅員4メートル以上の道路に、2メートル以上接している必要があります。
これを接道義務と言い、接道義務を満たさない土地では再建築ができません。
分筆の影響で接道義務を満たさない形状になってしまう場合、土地家屋調査士が分筆前に指摘してくれるかと思いますが、前提知識として覚えておきましょう。
5-3.売却価格に影響する
誰しもが考えるように、一般的には広い土地より狭い土地の方が、安く売買されます。
ただ、土地の価格を決める要素は様々で、土地の形状や日当たり、道路との接面状況なども関係します。
例えば、元々は正方形に近い形状の土地が、分筆後に細長い形状に代わってしまうと、土地が使いにくくなってしまいます。
使いにくい土地は、需要が低く、売却価格も低くなりやすいでしょう。
また凹凸が多かったり道路から進入しにくかったりするなども、土地の評価を下げてしまいます。
まとめ
土地の分筆にかかる費用の総額は50万円からが相場で、場合によっては100万円程度かかることもあります。
費用の中では土地家屋調査士に支払う報酬が最も多く、特に境界が不明確な土地で境界確定を行う場合に高額になる傾向があります。
この境界確定は半年近く期間がかかることもあり、できるだけ早く分筆したい方は特に、余裕をもって行動を起こすようにしましょう。
分筆にかかる費用は、売買では分筆を希望した人が払うケースが多く見られます。
また相続において複数の相続人がいる場合は、分割して払うことを検討してもよいでしょう。
分筆は土地をどのような形で分けるかによって、制限を受けたり売却価格が下がったりする恐れがあります。
分筆を計画する際は、早めに不動産会社や土地家屋調査士に相談することをおすすめします。
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