土地の分筆とは、登記上の土地を分ける手続きのことです。「土地を売却しやすくする」「相続した土地が共有になるのを防ぐ」などの目的で行います。ただ注意をしないと建築が制限されたり、売却しにくくなったりする恐れがあります。
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Contents
1.土地の分筆とは
土地の分筆とは、登記上の1つの土地を複数に分ける手続のことです。
登記では土地を1筆、2筆と数えるため、土地を分ける手続きを分筆(ぶんぴつ)と呼びます。
登記とは、不動産の情報を公に示す制度のことです。
地番ごとの土地に関する情報を、各地の法務局の登記簿へ記載することで公示します。
分筆をすると、登記されている1つの土地が複数に分かれ、地番も元の土地から枝分かれします。
例えば、地番が1丁目23番の土地を2筆に分筆すると、1丁目23番1と1丁目23番2という地番になります。
分筆は、一般的に土地家屋調査士へ依頼して行います。
また、分筆にあたり所有者を変更する場合は、司法書士へ所有権移転の登記も依頼します。
分筆とは反対に、登記上の複数の土地を1つにまとめる、合筆(がっぴつ、ごうひつ)もあります。
合筆は、複数に分かれている土地を管理しやすくするなどの目的で行われます。
2.土地を分筆する目的
土地の分筆には、主に次のような目的があります。
それぞれについて詳しく紹介いたします。
2-1.土地一部の売却・活用のため
分筆は、土地の一部を売却する目的で行うことがあります。
例えば、土地の一部のみを売却したい場合は、希望の形に分筆してから売り出します。
また、土地が広く売りにくいことが予想される場合に、分筆して売却しやすい大きさにすることもあります。
他にも、土地活用のために分筆する場合もあります。
例えば、農地の一部を分筆し、土地の地目を宅地に変更して家を建てるケースや、一部を駐車場にしたい場合などに利用されています。
農地は他の地目の土地に比べ、固定資産税などが低い傾向にあります。
土地の一部だけの地目変更にとどめれば、固定資産税の上昇も抑えることができます。
2-2.相続後に共有不動産となるのを回避するため
相続した土地が、共有不動産になるのを回避する目的で分筆を行うこともあります。
共有不動産とは、1つの土地の権利を複数人で持ち合う不動産のことです。
共有不動産は、売却したり他人に貸したりする際に共有者全員の同意が必要で、1人の所有者の判断で自由に扱うことができません。
そこで、相続した土地を各相続人が単独で所有できるように分筆を行います。
分筆を行い、共有不動産を回避できれば、各自の判断で自由に土地の売却や賃貸などができるようになります。
2-3.相続税を節税するため
土地の相続税を節税する目的で、分筆する場合もあります。
土地の相続税は、土地の相続税評価額(相続における土地の価値)をもとに算出されます。
相続評価額は、土地と道路の接面状況で大きく変わります。
例えば、土地の2面が道路に接する角地は利便性が高く、相続税評価額が高くなります。
そこで、角地を1面しか接道しないように分筆すれば、その部分相続税評価額を下げ相続税を抑えることができます。
他にも、道路に接している部分の幅を分筆によって狭めることで、相続税評価額を下げられます。
3.土地を分筆するデメリット
土地を分筆した場合、以下のようなデメリットが生まれる可能性があります。
それぞれ詳しく解説していきます。
3-1.形状の悪さ・建築制限で活用しにくくなる
分筆の形状が悪いと、活用しにくい土地になることがあるため注意が必要です。
例えば、分筆して接道部分の幅が極端に狭くなると、車の出入りがしにくくなる恐れがあります。
また、分筆して奥に細長い形になれば、思ったような建物が建てられなくなるかもしれません。
さらに、分筆によって土地の面積が小さくなると、建物の再建築が制限されることも考えられます。
建築基準法では、建ぺい率や容積率などの規制で、土地面積に対して建築できる建物の大きさを定めています。
分筆をして土地が小さくなると、土地に対する建物比率が大きくなり、増築などが制限されやすくなります。
なお、分筆後の建物が建ぺい率や容積率の規制内容に違反する場合、違法建築物となります。
この場合、事前に土地家屋調査士がストップを出すはずですが、所有者自身が理解しているとより安全です。
3-2.評価額が下がり売却しにくくなる
「2-3.相続税を節税するため」で解説したように、分筆によって土地の価値を下げることができます。
意図的、意図的でない、どちらの場合にせよ、土地の価値が下がれば売却価格も下がります。
例えば、角地を分筆して1面道路の土地にしてしまうと、日当たりが良く車の出入りもしやすい角地に比べ、売却しにくくなり価値が大きく下がる可能性があります。
また、細い進入路を通り敷地内に入る旗竿地も、車の出入りがしにくいなどの理由から敬遠されやすくなります。
売却価格を低く設定しないと、いつまでも売れ残ってしまう恐れもあるでしょう。
他にも、細長い形や台形、三角形といった不整形地に分筆した場合も、使いにくいイメージを持たれ売却時に不利になることが考えられます。
売却を前提に分筆する際は、売りにくい形にならないよう十分な注意が必要です。
3-3.税金が高くなる
住宅が建っている土地を分筆すると、税金が高くなることがあります。
住宅用地には減税措置があり、固定資産税などが減額されています。
ところが、住宅が建つ土地から分筆して建物がない別の土地になると、減税の対象から外れ税金が増えてしまいます。
住宅が建つ土地に適用される減税措置は、以下のようになっており、土地の広さや評価額によっては大きな減税額になっている可能性があります。
住宅用地の区分 | 固定資産税 | 都市計画税 |
---|---|---|
小規模住宅用地 (200平米以下の部分) |
評価額 × 1/6 | 評価額 × 1/3 |
一般住宅用地 (200平米を超える部分) |
評価額 × 1/3 | 評価額 × 2/3 |
「“固定資産税・都市計画税(土地・家屋)”.東京都主税局 . (参照2024-08-16)」をもとに、お家のいろはが独自に作成
住宅が建っていない土地に分筆しても、すぐに売却する計画なら、増えた税金の負担は一時的なもので済みます。しかし分筆後も所有し続ける場合は、税金の増額に十分注意したほうがよいでしょう。
4.分筆ができない土地もある?
土地の状況によっては、分筆できない場合もあります。代表的な状況として、以下の2つがあげられます。
分筆を検討する際は、所有する土地が該当しないか必ず確認しましょう。
4-1.境界が明確になっていない
所有する土地と、隣接する土地の公的な境界が明確になっていないと、分筆はできません。
土地の境界が不明確な場合は、隣地所有者に立ち会ってもらい「境界確定」を行うことで明確にできます。
隣地所有者との紛争などにより境界確定ができない場合は、筆界特定登記官に境界を特定してもらう「筆界特定制度」を検討しましょう。
他にも、裁判所に境界の確定してもらう「境界特定訴訟」といった方法がありますが、法的に境界を確定できるメリットがある反面、数年単位の期間と訴訟や調査にかかる多額の費用が発生します。
4-2.最低敷地面積を下回る
最低敷地面積とは、建物を建てる際に最低限確保しなければならない土地の広さです。自治体によって特定の地域に対し定められ、具体的な最低限度の面積も自治体で異なります。
対象地域内にある土地を、最低敷地面積を下回る広さに分筆してしまうと、建物が建てられなくなります。土地の所有者が建築できないだけでなく、売却した場合も購入者は建物を建築できません。
建築を目的とする土地においては、最低敷地面積を下回る分筆はできないといってよいでしょう。
5.土地を分筆する流れと期間
一般的な土地の分筆は、以下のような流れで行います。
- 土地家屋調査士に依頼
- 法務局や役所にて調査
(申請地の詳細な情報や地域の土地に関する条例、都市計画などを調査) - 現地の確認
(状況により仮測量を行う場合もあり) - 分筆計画の立案
- 境界確定
(隣地所有者や必要に応じて役所の立ち会いにより実施) - 境界標の設置と筆界確認書の作成
(状況により確定測量を行う場合もあり) - 登記申請
上記の流れで行う分筆にかかる期間は、境界が明確で境界確定を行わない場合で10~20日ほどです。
境界確定が必要な場合は、隣地所有者が一般の方なら2~3か月、隣地が道路や河川などで国や県、市町村の所有だと3~6か月が期間の目安になります。
6.土地の分筆にかかる費用
土地の分筆にかかる費用は、大半が土地家屋調査士への報酬です。
日本土地家屋調査士会連合会の資料によると、分筆の報酬相場はおよそ42万円です。
ただし、境界確定を行うなど、土地家屋調査士の作業が増えると100万円以上かかることもあります。
出典: “ 土地家屋調査士報酬ガイド(令和4年度版)” . 日本土地家屋調査士会連合会.(参照2024-08-04)
土地家屋調査士の報酬以外では、登記の際に納める登録免許税が、土地1筆に対し1,000円かかります。
また、分筆にあたり所有権についての変更がある場合は、登録免許税と司法書士報酬がかかります。
登録免許税は固定資産税評価額の4/1000、司法書士報酬は目安として5万円ほどです。
分筆にかかる費用については、以下でも詳しく解説しています。併せてご覧ください。
まとめ
土地の分筆とは、登記上の1つの土地を複数に分ける手続きのことです。
土地を売却しやすくしたり、相続した土地が共有不動産になるのを避け、自由に扱えるようにしたりする目的で行います。
単に土地を区切るだけに思えるかもしれませんが、不用意に分筆すると形状の悪さから建築が制限され、さらには土地の評価が下がり売却しにくくなる恐れもあります。
実際に分筆を行うには、境界が明確になっている必要があり、境界が不明確な場合は隣地所有者と境界確定を行い明確にします。
ただし、境界確定は半年近い期間がかかることがあり、費用も高額になりやすいという注意点があります。
分筆を計画する際は、早めに土地家屋調査士に相談しましょう。
分筆後の売却を考える方は、事前に不動産会社にも相談しておくとスムーズです。
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