不動産の売却益で翌年の住民税があがる!計算方法や負担を抑える制度

不動産の売却後は、売却益(譲渡所得)に応じて翌年の住民税が増加することがあります。
この住民税の増加は、家計に思わぬ影響を与える可能性があり、特に、売却益が大きい場合には、その影響も大きくなります。

この記事では、不動産の売却益によって翌年の住民税がどのように上がるのか、計算方法や納付タイミング、負担増加を抑える制度について詳しく解説します。

不動産売却でかかる税金については『不動産の売却で税金はいくらかかる?』もご覧ください。

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1.不動産の売却益で翌年の住民税が上がる

不動産を売却して得た売却益は、翌年の住民税に大きな影響を与えます。
不動産の売却益(譲渡所得)は分離課税であるため、給与所得になどにかかる住民税とは異なる税率で計算され、翌年に合わせて請求されます。

譲渡所得は、あくまで売却で得た利益になりますので、売却金額とは異なります。
そのため、不動産売却によって必ず住民税が上がるわけではありません

また、売却損(譲渡損失)が発生した場合は、特例の適用により、その損失をほかの所得と相殺して住民税額を抑えることが可能です。
詳しくは、「4-3.売却損の損益通算および繰越控除の特例」で解説いたします。

2.不動産売却で発生する住民税の計算方法

不動産を売却した際は、譲渡所得に対して所得税と住民税が課されます
譲渡所得とは、不動産の売却価格から取得費用や譲渡費用を差し引いた金額です。(取得費用には売った不動産の購入時の費用も含まれますが、建物部分は減価償却を考慮する必要があります。)

譲渡所得はその年の所得として計上されますが、分離課税のため他の所得と合算されず、別の税率で計算されます。
税率は不動産の所有期間によって異なります、以下の通りとなっています。

所有期間 所得税 住民税
所有期間5年以下
(短期譲渡所得)
30.63% 9%
所有期間5年超
(長期譲渡所得)
15.315% 5%

住民税だけを計算したい場合は、譲渡所得に住民税率をかけましょう。
住民税計算までの流れをまとめると、以下の通りです。

1.譲渡所得(売却益)を計算する
譲渡所得 = 売却価格 -(取得費 + 譲渡費用)

2.譲渡所得に住民税率をかける
所有期間5年以下なら:譲渡所得 × 9%
所有期間5年超なら:譲渡所得 × 5%

短期と長期のどちらの譲渡所得に該当するかは、不動産を売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えているかどうかで判断されます。
例えば、2019年4月15日に購入した物件を2024年5月20日に売却すると、短期譲渡所得となります。

不動産の所有期間の数え方

不動産売却にかかる住民税は売却益(譲渡所得)の大きさで異なります。不動産の査定額を知っておくと、売却金額の目安が分かるため、住民税をより詳しく計算できます。

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3.不動産売却の住民税を納付するタイミング

不動産を売却すると、その売却益に対して住民税が課され、売却の翌年に納付します。
ここでは、詳しい納付の時期と方法について見ていきましょう。

3-1.売却の翌年6月あたりから

不動産の売却益にかかる住民税は、売却した年の翌年に送付される住民税通知書にて、納付額が知らされます。
この通知書は通常、毎年6月頃に送付されます。
通知書には、前年の所得に基づく住民税の総額や、分割納付の場合の各期ごとの納付額が記載されているため、納税者は年間の税負担を事前に把握することができます。

住民税は、通常6月、8月、10月、そして翌年1月の4回に分けて納付する仕組みになっています。ただし一括での納付も可能であり、その場合は通知書に記載された総額を一度に支払うことになります。

3-2.普通徴収か特別徴収かを選べる

住民税の納付方法には、普通徴収と特別徴収の2種類があります。

普通徴収
普通徴収の場合は、納税通知書とともに納付書が送られてきます。納税者は納付書を用いて、銀行や郵便局、またはコンビニエンスストアで住民税を納付します。普通徴収は、主に自営業者や無職の方などが利用する方法です 。
特別徴収
給与所得者の場合、特別徴収が適用されることが一般的です。この方法では、住民税は6月から翌年5月までの12回に分けて、毎月の給与から自動的に天引きされます。会社が住民税を計算し、給与から差し引いたうえで地方自治体に納付する仕組みです。

どちらの方法を選ぶかは、納税者の状況や勤務形態によります。特別徴収ならば税金の支払いを自動化できるため、多くの給与所得者に利用されています。

4.不動産売却の住民税負担を抑える制度

不動産売却による住民税の負担を軽減するためには、いくつかの特例制度を活用することができます。
以下で紹介する特例は、いずれもマイホームの売却に際して適用されるものです。これらの制度を理解し、適切に利用することで、住民税の負担を大幅に抑えられます。

4-1. 3,000万円特別控除の特例

3,000万円特別控除の特例は、マイホームを売却した際に譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度です。例えば、譲渡所得が4,000万円出た場合、この特例を利用すると3,000万円分が控除され、残りの1,000万円のみが課税対象となります。このように、多くの利益が出た場合でも、住民税の負担を大幅に軽減できます。

3,000万円特別控除の特例の適用を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります。

  • マイホームの売却であること
  • 売却した年の前年および前々年に同特例を利用していないこと
  • 売却相手が親族など特定の関係者でないこと

詳しい適用要件などについては、「国税庁.“No.3302 マイホームを売ったときの特例”」をご覧ください。

4-2. 10年超え所有軽減税率の特例

10年を超えて所有していたマイホームを売却する場合、この特例の適用を受けることで譲渡所得に対して軽減税率が適用されます。
具体的には、譲渡所得のうち6,000万円までの部分は住民税率が4%に軽減され、6,000万円を超える部分には5%の税率が適用されます。

適用を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 売却する不動産を売却した年の1月1日時点で10年を超えて所有していること
  • マイホームの売却であること
  • 売った年の前年および前々年にこの特例の適用を受けていないこと

詳しい適用要件などについては、「“No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例”.国税庁」をご覧ください。

4-3. 売却損の損益通算および繰越控除の特例

売却損の損益通算および繰越控除の特例は、マイホーム売却で売却損が発生した場合に使える2つの特例です。

損益通算は、売却損を所得と相殺できる特例です。
繰越控除は、相殺しきれなかった売却損を、翌年の売却損として繰越できる特例で、最大で3年間にわたって適用できます。

適用を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります。

  • マイホームの売却であること
  • 新たに購入した不動産が居住用であること
  • 売却年の1月1日において所有期間が5年を超えていること
  • 新居宅を取得した年の12月31日において、償還期間10年以上の住宅ローンを有すること

詳しい適用要件などについては、「“No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)”. 国税庁」をご覧ください。

4-4. 買い替え特例

マイホームを売却して新たなマイホームを購入する場合、売却益にかかる住民税の支払いを繰り延べることができる制度です。この特例を利用することで、売却時の税負担が軽減され、次のマイホーム購入に必要な資金を確保しやすくなります。

適用を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 売却する不動産が自分が住んでいた住宅であること
  • 売却年の1月1日において所有期間が10年を超えていること
  • 売却代金が1億円以下であること
  • 売却した年の前年から翌年までの間に新たな居住用財産を購入すること

ただし、この特例は3,000万円特別控除、軽減税特例、譲渡損失についての特例と併用することができません。

詳しい適用要件などについては、「“No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例”.国税庁」をご覧ください。

4-5. ふるさと納税

ふるさと納税を活用することで、住民税の負担を軽減することが可能です。ふるさと納税は、地方自治体に寄付を行う代わりに控除が適用される制度であり、寄付金額から自己負担額の2,000円を除いた金額が所得税および住民税から控除されます。

不動産を売却して所得が増えた場合、増加した所得に応じてふるさと納税の上限額も上がります。

詳しくは「“No.1155 ふるさと納税(寄附金控除)”.国税庁」をご覧ください。

5.住民税に関する注意点

不動産を売却した際には、住民税のほかに所得税が発生します。これらの税金を適切に処理するためには、確定申告が必要です。
売却益が出なかった場合でも、確定申告をすることで、損失の繰越控除などの特例を利用することができます。

ここでは、住民税や確定申告にまつわる注意点を2つ紹介します。

5-1.不動産売却で発生した所得税は確定申告時に納付

譲渡所得に課税される税金は、所得税と住民税です。
住民税は、売却の翌年の6月以降に納税するのに対して、所得税は確定申告期限である、売却の翌年の3月15日までに納付します。

なお、納税の前に確定申告が必要です。売却の翌年の2月16日から3月15日までが確定申告期間となります。(年によって前後する場合もあります。)
期間内に申告と納税を行わないと、延滞税や加算税などのペナルティが課されることもあるため注意が必要です。

5-2.売却損が出ても確定申告をした方がいい

不動産を売却した際に損失が出た場合の確定申告は任意ですが、損益通算と繰越控除の特例を適用できる可能性があるので、可能であれば確定申告を行いましょう。
特例について詳しくは、「4-3. 売却損の損益通算および繰越控除の特例」をご覧ください。

一方で売却益が出ている場合は、確定申告は義務になります。

まとめ

この記事では、不動産売却に関する住民税や、住民税の負担を軽減するための特例などを解説しました。

住民税の税率は、不動産の所有期間によって異なります。所有期間5年以下なら9%、所有期間5年超なら5%です。
そのため住民税の計算では、課税の対象である譲渡所得の正しい計算と、所有期間の把握が重要です。

ただし住民税の計算は、確定申告と他の所得に基いて自治体がそれぞれ行ってくれるので、ご自身での厳密な計算は本来必要ありません。
売却に向けて資金計画を立てていきたい方は、ご自身で計算してみましょう。

売却前に詳しく計算するには、査定額(おおよその売却金額)を知っておく必要があるので、事前に不動産会社の査定を受けておくとスムーズです。

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