マンションを相続した場合、相続税を計算して期限内に申告する必要があります。しかし、相続税の計算は建物評価額や基礎控除などの理解も必要なため、適切な計算ができるか不安に感じている方も多いのではないでしょうか。
本記事ではマンションの相続に関する以下の内容を解説しています。
- マンションの相続税計算方法と相続税評価額の求め方
- マンション相続で税金がかからないケース
- 相続税を抑える3つの控除
- マンションの相続税負担を軽くする方法
マンションの相続税について理解を深め対策をしておくことで、マンション売却の際もスムーズに進む可能性が高まります。
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Contents
1.マンションの相続税を計算する方法
不動産の相続手続きを進める前に、まずは相続税の計算方法を理解しておかなければなりません。
まずは以下の3つを確認していきましょう。
- マンションの相続税の計算方法
- マンションの土地と建物それぞれの相続税評価額の計算式
- 相続税の税率
正しく計算して納税しなければ「更正の要求」や「修正申告」などの手間がかかり、延滞税や過少申告加算税、重加算税などのペナルティが発生することもあります。ひとつずつ整理して理解を深めましょう。
1-1.マンションの相続税の計算式
マンションの相続税の金額は以下の計算式で求めます。
相続税額 =
(マンションの【1】相続税評価額 - 【2】基礎控除)× 【3】相続税率 - 【4】控除
【1】の相続税評価額とは、相続するマンションの遺産としての評価額のことで、査定金額や売却金額などとは異なります(1-2で後述)。
【2】の控除額は対象の評価額から差し引かれる「基礎控除」や「配偶者控除」のことで、控除額が評価額を上回ると相続税は課税されません(1-4で後述)。
【3】の相続税率は相続税評価額に比例して税率が大きくなります(1-3の一覧表に記載)。
【4】で、もう一度控除が差し引かれますが、これは【2】の基礎控除とは異なるもので、相続税率と同じように相続税評価額に比例して金額が変わります(1-3の一覧表に記載)。
なお、この計算式は「マンション以外の遺産がある場合」にも利用するものです。マンション以外の不動産や預貯金などがある場合は、相続税評価額に遺産評価額を加算して計算しましょう。
1-2.マンション相続税評価額の求め方
マンションの相続税評価額を求めるためには、マンションの土地部分と建物部分のそれぞれの評価額を算出する必要があります。
まとめて計算すると誤差が発生するので、それぞれ計算して後で合算します。
マンションの土地は一般的に「敷地権」と呼ばれる権利が設定されています。敷地権とは、建物の所有権と敷地利用権を分けて処分できないように設定されている権利です。
土地はマンションの所有者全員での共有持分で、共有持分も被相続人の財産なので、相続税評価額を求める際には計算する必要があります。
1-2-1.建物部分の相続税評価額の計算式
建物部分の相続税評価額を確認するためには、固定資産税評価額の「家屋」部分を確認します。
固定資産税評価額を確認するためには、固定資産税の納税通知書や、役所や税事務所で固定資産税の評価証明書を取得して確認しましょう。
取り急ぎ建物部分の相続税評価額を概算で計算したい場合には以下の計算式でも求められます。
概算相続税評価額 = マンションの購入金額 × 70%
手元に納税通知書がある場合は、それを確認することが確実です。
1-2-2.土地部分の相続税評価額の計算式
土地部分の相続税評価額を計算するためには、国税庁が公示している相続税路線価を用いて計算します。
路線価が設定されているエリアでは以下の計算式を用います。
相続税評価額 = マンション全体の敷地面積 × 相続税路線価 × 敷地権割合
相続税路線価は、国税庁が公表している「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」を参照し、敷地の前面道路のものを確認しましょう。
路線価が設定されていないエリアでは、倍率方式という以下の計算式を用います。
相続税評価額 = マンション全体の固定資産税評価額 × 倍率 × 敷地権割合
マンション全体の固定資産税評価額は固定資産税の納税通知書や固定資産税の評価証明書で確認できます。倍率については、前述の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」をご確認ください。
1-3.マンション評価額の税率
マンション評価額の税率は、評価額が大きくなればなるほど比例して税率が高くなります。
控除額についても同様です。
相続税率と控除額の詳細は以下の速算表を参照しましょう。
相続税評価額 | 税率 | 控除金額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | なし |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
参照:国税庁「相続税の税率」
1-4.控除と相続税の算出シミュレーション
計算式や必要な数字の解説を踏まえて、相続税の算出シミュレーションをしましょう。
相続税を計算するためには相続税評価額以外にも相続人の人数による「控除額」を検討する必要があり、相続のケースでは以下の2種類の控除が重要です。
基礎控除 | 3,000万円の控除額に加え、相続人1名に対し600万円の控除額が加算される。相続人が3名ならば3,000万円+600万円×3名=4,800万円が基礎控除額になる |
---|---|
配偶者控除 | 1億6,000万円、または法定相続分相当額のどちらか大きい額を控除 |
これらの基礎控除を踏まえ、以下条件のマンション相続における相続税を検討します。
- 固定資産税評価額6,000万円
- 路線価は100万円/平米
- 敷地面積2400平米
- 持ち分は12000/900,000
1-4-1.配偶者1人と子供1人の相続税シミュレーション
シミュレーションをする際に、マンションの相続税評価額を求める必要があります。
建物は固定資産税評価額が6,000万円なので、相続税評価額も6,000万円です。
土地に関しては路線価から以下の計算で求めます。
2,400平米 × 100万円/平米 × 12,000/900,000 = 3,200万円(小数点以下四捨五入)
土地の相続税評価額が3,200万円と算出できましたので、建物の相続税評価額と合算し、相続税評価額は9,200万円になりました。
続いて基礎控除額を計算します。
今回のシミュレーションでは相続人は配偶者と子供1人なので、基礎控除額は以下の計算式で求めます。
3,000万円 + 600万円 × 2人 = 4,200万円
そして、相続税評価額から基礎控除額を差し引いて、課税対象額を求めます。
9,200万円 - 4,200万円 = 5,000万円
この5,000万円に法定相続分をかけあわせ、それぞれの相続評価額を算出しなければなりません。
法定相続分は配偶者が2分の1で子供が全員で2分の1ですが、今回は子供が1人なので、それぞれ2分の1ずつ相続します。
配偶者の相続評価額 =5,000万円 × 2分の1 = 2,500万円
子供の相続評価額 = 5,000万円 × 2分の1 = 2,500万円
それぞれの相続評価額から税率を確認、今回は2,500万円ずつなので税率は15%、控除額は50万円、これらを元に相続税額を求めます。
配偶者の相続税額 = 2,500万円 × 15% - 50万円 = 325万円
子供の相続税額 = 2,500万円 × 15% - 50万円 = 325万円
最後に配偶者控除を検討します。
配偶者控除を用いた場合、配偶者の相続税評価額から1億6,000万円を差し引くとマイナス、法定相続分の2,500万円を差し引くとプラスマイナスゼロです。
よって、配偶者控除により配偶者は相続税を負担せず、子供に325万円の相続税が課税されます。
1-4-2.子供2人の相続税シミュレーション
相続人が子供2人の場合のシミュレーションを検討してみましょう。
マンションの相続税評価額は9,200万円、基礎控除は今回も2名の相続人なので4,200万円、相続税評価額から基礎控除を差し引いた課税対象額は5,000万円です。(参照:1-4-1.配偶者1人と子供1人の相続税シミュレーション)
子供2名の場合の法定相続分は2分の1ずつになるため、法定相続分を踏まえて相続税を計算します。
子供1の相続税額 = 5,000万円 × 2分の1 × 15% - 50万円 = 325万円
子供2の相続税額 = 5,000万円 × 2分の1 × 15% - 50万円 = 325万円
したがって、子供1人につき325万円の相続税が課税されます。
2.マンションの相続税がかからないケース
マンションの相続税がかからないケースとして、マンションの評価額が基礎控除以下のケースがあります。
相続人が2名なら4,200万円の基礎控除がありますが、マンションの評価額が4,200万円以下ならば相続税は課税されません。
また、被相続人に借金や負債などマイナスの財産があり、マンションの評価額よりマイナスの財産のほうが大きいケースにも相続税は課税されません。
例えば、住宅ローン残債が残っている状態で相続が発生し、マンションの評価額より残債のほうが大きくなるケースです。この場合、住宅ローンという借金がマンションの評価額より大きいので相続税が課税されません。
ただし、マンション以外に預貯金などその他の資産がある場合は合算して計算しなければならないので注意しましょう。
3.マンションの相続税を抑えられる3つの控除
マンションを相続した際の相続税において、税額を抑える3つの控除があります。
- 基礎控除
- 配偶者控除
- 小規模宅地等の控除
それぞれ相続税の計算に大きな影響を与えるものなので、しっかりと把握しておきましょう。
3-1.基礎控除
基礎控除は相続人の人数によって控除額が変わるもので、どの相続でも必ず計算に算入するものです。
基本額の3,000万円に加えて、相続人1人につき600万円が相続税評価額から控除されます。
配偶者と子供2人の合計3名ならば3,000万円+600万円×3名=4,800万円が控除される計算です。
基礎控除より相続税評価額が少なければ相続税がかからず、申告の必要もありません。
3-2.配偶者控除
配偶者控除は遺産を相続する配偶者のみ適用される控除で、以下の2種類の金額から大きい額を控除額として計算可能です。
- 1億6,000万円
- 配偶者の法定相続分
もし、マンションの相続税評価額が1億6,000万円以下ならば、配偶者分の相続税は課税されません。
法定相続分とは、相続人別に定められている相続人の取り分のことで、以下のように定められています。
相続人 | 配偶者の法定相続分 |
---|---|
配偶者のみ | 遺産の全て |
配偶者と子供 | 遺産の2分の1 |
配偶者と被相続人の親 | 遺産の3分の2 |
配偶者と被相続人の兄弟姉妹 | 遺産の4分の3 |
遺産総額が1,000万円、相続人が配偶者と被相続人の兄弟2人の合計3名だった場合、配偶者の法定相続分は1,000万円の4分の3なので、750万円になります。
3-3.小規模宅地等の控除
小規模宅地等の特例とは、相続した土地の相続税評価額を最大で80%減額できる制度です。
この特例を受けるための条件として、被相続人が自宅として利用していた土地を配偶者か被相続人と同居していた親族が相続することが挙げられます。
条件を詳細にまとめると以下のようになります。
- 被相続人が住んでいた土地
- 330平米(100坪)以下
- 相続人が被相続人と同居していた配偶者、または同居していた親族
- 相続人が被相続人と別居していて3年以上借家に住んでいる親族
この特例はマンションの場合も敷地権に対して適用されます。
建物に対しては適用されないため、一戸建てなどと比べると控除される割合は小さいですが、相続税額に影響がある控除特例と言えるでしょう。
4.マンションの相続税の負担を軽減する方法
これからマンションの相続が控えている、もしくは相続中で、相続税が課税されることが事前に計算して分かっている場合、下記の対策をすることで相続税の負担を軽減できます。
- 生前贈与
- 相続後に売却
相続が発生する前であれば時間に余裕を持って対策を検討、もしくは準備できるので確認しておきましょう。
4-1.生前贈与する
生前贈与とは相続が発生する前に、他者に自分の財産を贈与する方法です。
配偶者に贈与する場合、贈与税の配偶者控除が利用できる場合があります。
贈与税の配偶者控除とは、夫婦間で居住用の不動産を贈与した場合、最大で2,000万円までの贈与が非課税になる制度で、以下の条件を満たすことで利用できます。
- 婚姻期間が20年以上であること
- 現在そのマンションに住んでいて、引き続き居住する予定があること
この制度を利用し、生前に2,000万円分の持ち分を配偶者に贈与しておけば、その分の相続税が抑えられるでしょう。
また、子供などの親族に対しては年間110万円までの贈与が非課税になる暦年贈与を利用する方法があります。
1年ごとに110万円分の持ち分を子供にわたす方法で、時間がかかる、契約書などを取り交わす、登記手続きなどが必要で手間がかかりますが、相続税を抑えることができます。
4-2.相続後に売却する
売却価格が相続税評価額より低い場合、売却価格が評価額になるので、相続発生後に売却することで相続税を抑える効果があります。
しかし、相続税評価額より高い金額で売却してしまうと相続税が余計にかかる可能性もあるので注意が必要です。
事前に相場を確認し、不動産会社に査定依頼して売却価格を確認しておくことをおすすめします。
相続したマンションを利用しないのであれば、売却することも視野に入れて事前に準備しておくと良いでしょう。
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まとめ
マンションの相続税について理解は深まったでしょうか。以下、おさらいです。
マンションの相続税を計算するには土地と建物の評価額を計算し、以下の計算式で求めます。
相続税額 =(マンションの相続評価額 - 基礎控除額)× 税率
ただし、基礎控除額がマンションの相続税評価額より大きい場合、相続税は課税されないことがポイントでした。
相続税を抑える控除として以下の3つがあります。
- 基礎控除
- 配偶者控除
- 小規模宅地等の控除
また、相続税を軽減するための方法としては「生前贈与」と「相続後の売却」の2つがあります。どの控除や手続きを利用できるかしっかり把握し、申請することで大きく節税できる可能性が高まります。
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