マンションの権利書は紛失したらどうなる?再発行の可否やなくしたときの対策方法

マンションの権利書 紛失時の対策方法

マンションの売却時に提示を求められる書類のひとつに「権利書」があります。

しかし保管場所を失念し、直前に権利書が用意できないことも往々にしてあるのではないでしょうか。

この記事では、マンションの権利書がなぜ必要なのか解説した上で、紛失したときの対策方法をご紹介します。

この記事を読んでわかる3つのこと
  • マンションの権利書の必要性
  • マンションの権利書を紛失したときの対処法
  • マンションの権利書を紛失したときの注意点

これを読めば、権利書の詳細がわかり、マンションの売却を速やかに行えるでしょう。

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1.マンションの権利書とは

マンションの権利書とは

マンションの権利書とは、マンションを購入して、名義人を売主から買主に変更する登記を行う際に取得する書類です。

マンションをはじめとした土地の売却をする際に、所有者の確認や、名義人を変更する手続きなどのために不動産会社に提示を求められるのが一般的です。

では権利書とはどのような書類なのかを詳しく見ていきましょう。

1-1.「権利書」は俗称

権利書は俗称で、正式名称は「登記済権利証」です。
不動産の所有者が誰かという不動産の権利に関する情報が記載された書類なので、「権利証」とも呼ばれています。

登記済権利証と登記簿は同じものではありません。
登記済権利証は「所有権の移転登記が完了したことを証明する書類」ですが、登記簿は不動産の登記情報が記載されているものです。

登記簿は不動産を管轄する法務局で、誰でも手数料を支払えば登記情報を閲覧できます。

一方、登記済権利証は法務局での移転登記が完了した際に発行される書類なので、基本的に移転登記を行った本人しか見ることができません。

登記簿と登記済権利証の違い

1-2.現在は「登記識別情報」に一本化

以前は移転登記の際に登記済権利証が発行されていましたが、不動産登記法の改正で2006年以降は12桁で構成される符号が記載された「登記識別情報通知」が発行されるようになりました。

登記識別情報通知の見本
出典:法務省

登記識別情報に切り替わった背景には、発行元が法務局からオンライン庁に変わったことが関係しています。

これまでは登記済権利証を作成する際に本人が法務局に出頭して手続きを行う必要がありました。

2023年現在は登記識別情報に一本化されたため、オンライン申請が可能です。

「登記済権利証」と「登記識別情報通知」の記載事項の違いは以下の通りです。

権利証の記載事項 登記識別情報通知の記載事項
  • 受付年月日
  • 受付番号
  • 法務局名入りの印鑑
  • 不動産の所在地
  • 12桁の登記識別情報
  • 受付年月日
  • 受付番号
  • 不動産の所在地
  • 不動産番号
  • 登記の目的
  • 名義人

2.マンションの権利書は紛失したら再発行できる?

マンションの権利書は紛失したら再発行できる?

マンションを売却する際には、権利書の提示を求められる場合があります。

しかしマンションの購入から年月が経っていて、権利書を紛失してしまったという方も少なくありません。

そこで再発行を申し出ようと考えている方もいるかもしれませんが、権利書の再発行はできません。
権利書は、あくまでも所有権の移転登記が完了したことを証明するための書類だからです。

しかし、所有権そのものが失われるわけではないのでその点はご安心ください。

2-1.紛失しても所有権はなくならない

結論から言うと、マンションの権利書を紛失しても所有権を失うことはありません。

所有権を有するのは登記簿に記載されている人物です。
そのため、移転登記が完了したことを証明するだけの権利書を紛失しても所有権自体はなくならないのです。

2-2.登記識別情報への切り替えも不可

権利書は不動産登記法が改正される前に発行された書類です。
紛失を理由に、改正された後に発行された登記識別情報への切り替えを希望する方もいると思います。

しかし、権利書から登記識別情報に切り替えることもできません。

権利書も登記識別情報も、移転登記が完了したことを証明する書類なので、所有者が変更した場合しか発行してもらえないのです。

再発行および切り替えのどちらも不可能であることを理解しておきましょう。

3.マンションの権利書を紛失したときの対策方法

マンションの権利書を紛失したときの対策方法

マンションを売却する際、不動産会社に権利書の提示を求められます。

しかし、権利書を紛失してしまってもマンションの売却が不可能になるわけではありません。

権利書を紛失してしまっても、以下のいずれかの方法でマンションの所有権を証明できればマンションの売却は可能です。

  • 司法書士に本人確認を依頼する
  • 公証人に本人確認を依頼する
  • 事前通知制度を活用する

上記のなかでもっとも一般的なのは、司法書士に本人確認を依頼する方法です。
それぞれ詳しく見ていきましょう。

3-1.司法書士に本人確認を依頼する

司法書士と面談して、売却予定のマンションの所有者と売主が同一人物であることを証明してもらいます。
司法書士は国が認めた国家資格の所有者で、信頼性が高く、権利書がない場合でもマンションを売却できる可能性が高いことから最も多く利用されています。

司法書士に本人確認を依頼する際には、以下のような書類が必要です。

【必要書類】

  • 本人確認書類(運転免許証やパスポートなど)
  • 実印
  • 印鑑証明書
  • 所有者であることを証明するもの(売買契約書や固定資産税納付書など)

司法書士に依頼する際は3~5万円程度の費用がかかります。
また、本人確認に時間を要するため、早めに依頼しましょう。

3-2.公証人に本人確認を依頼する

公証人役場を訪れて、公証人に本人確認をしてもらいます。
公証人とは、公証人法の規定により法務大臣が任命し、国の公務をつかさどる人を指します。
しかし、司法書士による本人確認と比べて、公証人の本人確認は大雑把であるため、無効になる可能性があるので注意してください。

公証人に本人確認を依頼する際には、以下のような書類が必要です。

【必要書類】

  • 本人確認書類(運転免許証やパスポートなど)
  • 実印
  • 印鑑証明書

公証人に本人確認を依頼する際は数千円程度の費用がかかります。

司法書士に本人確認を依頼する場合と比べて費用を抑えられますが、「認められない可能性がある」「公証役場を訪れる手間がかかる」の2点がデメリットと言えます。

3-3.事前通知制度を活用する

事前通知制度とは、権利書が提供されないで行われた移転登記の申請手続きが、その移転登記が所有者の意思に基づいて申請されたものかどうか確認する制度です。
法務局からの通知に対して、売主が署名・押印し、2週間以内に返送すれば移転登記が完了します。

手続きの際には以下の書類が必要です。

【必要書類】

  • 本人確認書類(運転免許証やパスポートなど)
  • 実印
  • 印鑑証明書

事前通知制度を活用する際は数千円程度の費用がかかります。

しかし、承認してくれない可能性があるため、なるべく他の手段を選びましょう。

4.権利書を紛失したマンションの売却で注意すること

権利書を紛失したマンションの売却で注意すること

マンションの権利書を紛失した場合、マンションの売却が速やかに進まない可能性があります。

トラブルを未然に防ぐには、権利書を紛失したマンションを売却する際、以下の点に注意することが大切です。

  • 相続したマンションの名義変更に権利書は不要
  • 保管場所を再度よく確認する
  • 決済直前の対応にならないようにする

それぞれ詳しく見ていきましょう。

4-1.相続したマンションの名義変更に権利書は不要

相続したマンションの名義を変更する際は権利書が必要ありません。

名義変更の際に権利書の提示を求めるのは、土地の所有者本人に名義変更の意思があるのかを確認するためです。
相続が発生したということは、マンションの所有者が亡くなっているので本人の意思確認ができません。
そのため、相続したマンションの名義変更に権利書が必要ないのです。

名義変更が完了した後、新たに権利書が発行されます。
相続したマンションを売却する際は、この権利書が必要なので紛失しないように保管しましょう。

4-2.保管場所を再度よく確認する

権利書を紛失してもこの記事でご紹介した対策方法のいずれかを選択することによって、マンションの売却を進めることは可能です。

しかし、いずれの対策方法を選択した場合も手間と費用がかかるため、紛失しないに越したことはありません。

また、紛失した権利書が第三者の手に渡っている場合、実印や印鑑証明書も揃っていると悪用されるリスクがあります。
最悪の場合、勝手に名義変更手続きをされてしまうので注意が必要です。

大切な書類であることを理解したうえで保管しているため、紛失しにくい場所に保管していることが多いです。
具体的には以下のような場所を探してみると見つかる可能性があります。

  • 書斎
  • 金庫
  • 神棚
  • 仏壇
  • 銀行の貸金庫

まだ探していない場所が上記にある場合は一度探してみることをおすすめします。

4-3.決済直前の対応にならないようにする

マンションの売却では、売買契約の締結時にすぐにマンションを引き渡しません。
売買契約の締結から2~3か月程度の期間があいて、代金の決済とマンションの引き渡しが行われます。

権利書が必要になるのは、代金の決済とマンションの引き渡しのタイミングです。
売買契約の締結時に権利書の紛失に気付いていれば、十分な時間があるので速やかに対策方法のいずれかを選択すれば間に合います。

しかし、決済直前に権利書の紛失に気付いた場合、いずれの対策方法も時間が必要なので間に合わない可能性があります。

間に合わなかった場合は、決済が中止になる可能性もあるため、決済の1か月前には権利書の有無を確認しましょう。

また、適切な対策方法を選択するためにも不動産会社に速やかに相談しましょう。

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この記事のポイントまとめ

マンションの権利書とはどんなもの?

マンションの権利書とは、マンションを購入して、名義人を売主から買主に変更する登記を行う際に取得する書類です。

権利書とはあくまでも俗称で、正式名称は登記済権利証です。

また、2006年以降は不動産登記法の改正で登記識別情報に統一されています。

詳しくは「1.マンションの権利書とは」をご覧ください。

マンションの権利書は紛失したら再発行できる?

マンションの権利書は、一度紛失すると再発行できません。
その理由は、権利書は所有権の移転登記が完了したことを証明するための書類だからです。

マンションの権利書については他にも以下のポイントを押さえておきましょう。

  • 紛失しても所有権はなくなることはない
  • 登記識別情報に切り替えることはできない

詳しくは「2.マンションの権利書は紛失したら再発行できる?」をご覧ください。

マンションの権利書を紛失したときの対策方法はある?

マンションの権利書を紛失したときは、以下のいずれかの対策方法を選択することで代替できる可能性があります。

最もおすすめなのは、代替できる可能性が高い司法書士に本人確認を依頼する方法です。

  • 司法書士に本人確認を依頼する
  • 公証人に本人確認を依頼する
  • 事前通知制度を活用する

詳しくは「3.マンションの権利書を紛失したときの対策方法」をご覧ください。

権利書を紛失したマンションの売却で注意することはある?

権利書を紛失したマンションを売却する際は、以下点に注意しましょう。

  • 相続したマンションの名義変更に権利書は不要
  • 保管場所を再度よく確認する
  • 決済直前の対応にならないようにする

詳しくは「4.権利書を紛失したマンションの売却で注意すること」をご覧ください。