マンション売却時の手取り額が分かれば、資金面での計画がより深く立てられます。
本記事では、マンション売却後の手取り額の計算方法を具体的なシミュレーションを用いて解説します。
また、手取り額を増やすコツについても紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。
- 「マンションを売りたいけど、どうしたらいいか分からない方」は、まず不動産会社に相談を
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Contents
1.マンション売却の手取り額計算方法
マンションを売却したとき、手元に残るお金は売却金額からさまざまな費用や税金を差し引いた金額になります。
つまり、売却金額がそのまま手取りになるわけではありません。
手取り額 = 売却金額 - ( 諸費用 + 税金 + ローン残債 )
目安として、諸費用は売却金額の3~5%程度、税金は所有期間が5年を超えると利益に対して2割程度です。売却金額から諸費用と税金、さらにローン残債を引いた額が最終的な手取り額です。
2.マンション売却にかかる費用・税金
マンション売却の手取り額を知るためには、売却にかかる費用や税金を計算しなくてはいけません。売却にかかる費用や税金には次のものがあります。
2-1.仲介手数料
マンション売却では多くの場合、不動産会社へ仲介を依頼します。仲介手数料は売買契約が成立した際に不動産会社へ支払う報酬です。
仲介手数料は法律で上限が定められており、以下の速算式で求められます。
取引額 | 仲介手数料(別途消費税) |
---|---|
200万円以下の場合 | 売買価格 × 5% |
200万円超400万円以下の場合 | 売買価格 × 4% + 2万円 |
400万円超の場合 | 売買価格 × 3% + 6万円 |
※仲介手数料には別途消費税が発生します。
例えば、売却金額が1,000万円の場合、「1,000万円 × 3% + 6万円」で36万円が消費税を除いた上限です。
あくまで上限であるため、不動産会社によっては、安く設定している場合や、交渉次第で減額してもらえる場合もあります。
2-2.印紙税
マンションを売却する際に作成する売買契約書には、印紙税が課税されます。
印紙税は、売買契約書に記載された売買金額に応じて税額が決まり、売買契約書に収入印紙を貼付して納税します。
例えば、契約金額が1,000万円超5,000万円以下の場合は1万円です。
以下の表は、国税庁が公開している売買契約書にかかる印税税額をまとめた表です。
2027年(令和9年)3月31日までは軽減税率が適用されます。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
---|---|---|
10万円を超え 50万円以下のもの | 400円 | 200円 |
50万円を超え 100万円以下のもの | 1千円 | 500円 |
100万円を超え 500万円以下のもの | 2千円 | 1千円 |
500万円を超え 1千万円以下のもの | 1万円 | 5千円 |
1千万円を超え 5千万円以下のもの | 2万円 | 1万円 |
5千万円を超え 1億円以下のもの | 6万円 | 3万円 |
1億円を超え 5億円以下のもの | 10万円 | 6万円 |
5億円を超え 10億円以下のもの | 20万円 | 16万円 |
10億円を超え 50億円以下のもの | 40万円 | 32万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 | 48万円 |
2-3.譲渡所得税
マンションの売却によって得た利益のことを譲渡所得と言い、所得税と住民税がかかります。
これら2つの税金は、併せて譲渡所得税と呼ばれることもあります。
譲渡所得は、所有期間5年を境に区分が異なり、以下のように譲渡所得税率も異なります。
所有期間 | 所得税 | 住民税 | 合計 |
---|---|---|---|
5年以下(短期譲渡所得) | 30.63% | 9% | 30.63% |
5年超(長期譲渡所得) | 15.315% | 5% | 20.315% |
※2037年までは復興特別所得税が含まれます。
2-4.住宅ローン返済に関する費用
マンションを売却して住宅ローンを完済すると次の費用がかかります。それぞれを確認しましょう。
- 繰り上げ返済手数料
- 抵当権抹消にかかる登録免許税
- 司法書士への報酬
繰り上げ返済手数料
マンションを売却する際、住宅ローンを完済する必要があります。
繰り上げて一括返済を行う場合は、繰り上げ返済手数料が発生する場合があります。
3万~5万円程度かかる場合もありますが、インターネットバンキングなどでは無料としている金融機関もあります。
抵当権抹消にかかる登録免許税
住宅ローンを借りる際は、不動産を担保とするために抵当権という権利が設定されています。
住宅ローンの完済後は抵当権を抹消する必要があり、抹消手続きには登録免許税がかかります。
抵当権抹消にかかる登録免許税は、不動産1つにつき1,000円です。
土地と建物は別の不動産ですので、それぞれ1,000円ずつかかります。
司法書士への報酬
前項で紹介した抵当権抹消の手続きは、本来自分で行うことができます。
ただし、売却代金を合わせて住宅ローンを完済する方は、決済・引き渡し時に抵当権抹消手続きをしなければいけないため、司法書士に依頼するのが一般的です。
司法書士は、必要な書類の作成や登記申請を代行します。
抵当権抹消手続きを司法書士へ依頼する際の報酬は、1.5万〜2万円程度が相場です。
2-5.任意のサービスにかかる費用
マンションを売却する際には、以下のようなサービスを利用される方も多くいます。
必ず利用する必要はなく、利用する場合だけ費用がかかります。
- ハウスクリーニング
- ホームステージング
- ホームインスペクション
ハウスクリーニング
ハウスクリーニングとは、専門の掃除会社が家中を掃除してくれるサービスです。
素人の日常的な掃除よりも格段に綺麗になりやすいため、購入希望者の内覧時には良い印象を与えられ、早期売却や高値売却につながる可能性があります。
費用は間取りや広さ、汚れぐあいによっても変動しますが、3LDKの場合7~10万円程度が相場です。
ホームステージング
ホームステージングとは、内覧に向けて、室内をインテリアコーディネートするサービスです。
購入希望者の購買意欲を高めるきっかけとなり、高く、早く売りやすくなります。
ホームステージングの費用は、家具や雑貨をレンタルして部屋を装飾する場合、1か月あたり5~10万円程度が相場です。
ホームインスペクション
ホームインスペクションは、住宅の専門家が建物の劣化状況や不具合などを調査するサービスです。
建物の状態を第三者によって客観的に評価されるため、購入希望者は安心しやすく、売却後のトラブルも少なくなります。
ホームインスペクションにかかる費用の目安は、マンションの場合で5万円ほどです。
2-6.引っ越しにかかる費用
引っ越し費用は、移動距離や荷物の量などによって大きく変動します。また、時期も重要で、2~4月の繁忙期には費用が高くなります。
3人家族で引越を想定した場合、通常期であれば移動距離が同都道府県程度(50キロメートル以内)で9万円ほど、移動距離が近隣地方程度(500キロメートル以内)で15万円ほどが相場です。
繁忙期の場合、同都道府県程度(50キロメートル以内)で12万円ほど、移動距離が近隣地方程度(500キロメートル以内)であれば20~25万円ほどが相場です。
また、引っ越しに伴い不要な家具や家電を処分しようとすると、処分費用が必要となる点にも注意が必要です。
3.譲渡所得税の計算と特例
譲渡所得税は、全くかからない場合もあれば、数十万円~百万円以上かかる場合もあります。そのため、マンション売却での手取りを計算するうえで、譲渡所得税の計算が正しくできることは重要です。
譲渡所得税の計算については、初見では難しく感じる方も多いため、この章で詳しく解説いたします。
3-1.譲渡所得税の計算方法
譲渡所得税は、売却によって得た利益(譲渡所得)に対してかかる税金です。
売却金額にそのまま課税されるわけではありません。
譲渡所得税の計算は、まず利益である譲渡所得を計算し、その後に税率をかけて求めます。
譲渡所得は以下の様に求めます。
例えば、売却金額3,000万円、取得費2,200万円、譲渡費用300万円の場合、譲渡所得は500万円になります。
取得費は、マンション購入時にかかった費用です。物件の購入価格に加え、購入時の仲介手数料や登録免許税、不動産取得税などが該当します。
なお、建物については時間の経過とともに価値が減少するため、経過年数に応じた減価償却費相当額を建物の購入費から控除する必要があります。
譲渡費用は、マンションの売却に直接要した費用です。売却時の仲介手数料や印紙税などが該当します。ローンの残債は譲渡費用にならないため注意しましょう。
譲渡所得が求められたら、税率をかけて税金額を算出します。
譲渡所得税の税率は、次の表の通りマンションの所有期間が5年を超えるかで変わり、長く所有していたほうが税負担は軽くなります。
所有期間 | 所得税 | 住民税 | 合計 |
---|---|---|---|
5年以下(短期譲渡所得) | 30.63% | 9% | 30.63% |
5年超(長期譲渡所得) | 15.315% | 5% | 20.315% |
例えば、所有期間15年のマンションを売却し、譲渡所得500万円がでた場合の譲渡所得税は、1,015,750円になります。
3-2.譲渡所得税に関する特例
マンションを売却したときには、譲渡所得税に関する特例を活用できる場合があります。
確定申告時に特例を適用させることで、税負担を抑えられます。
本項では、以下4つの特例を紹介します。
- 3,000万円特別控除の特例
- 10年超え所有軽減税率の特例
- 買い替え特例
- 損益通算・繰り越し控除の特例
3,000万円特別控除の特例
3,000万円特別控除の特例は、マイホーム売却で生じる譲渡所得を、最大3,000万円まで控除できる特例です。
所有期間に定めはありませんが、親子や夫婦間の売却では使えないなど、いくつかの適用要件があります。
特例を適用すれば、譲渡所得が3,000万円までは非課税になるため、ほとんどの方が譲渡所得税ゼロにできるでしょう。
10年超え所有軽減税率の特例
10年超え所有軽減税率の特例とは、所有期間が10年を超えているマイホームを売却した際に適用できる、軽減税率の特例です。
所有期間5年を超えている場合の譲渡所得税率は20.315%ですが、特例を適用すれば14.21%に軽減されます。
ただし、軽減税率が適用されるのは譲渡所得6,000万円以下の部分だけになります。
なお10年超え所有軽減税率の特例は、3,000万円特別控除の特例と併用ができます。
買い替え特例
買い替え特例(特定の居住用財産の買換えの特例)は、マイホームの買い替え時に適用できる特例で、売却時に発生した譲渡所得税を、新しいマイホームの売却時まで繰り延べることができます。
買い替え特例を利用すれば、売却益の税負担を回避でき、買い替えの資金計画も立てやすくなります。
損益通算・繰り越し控除の特例
マンションを売却して損失(譲渡損失)が出た場合、損益通算や繰り越し控除の特例の対象となる場合があります。
損益通算の特例では、譲渡損失分を他の所得から控除できます。
例えば、給与所得500万円の方が、譲渡損失600万円でマンションを売却した場合、その年の給与所得をゼロにできます。
繰り越し控除は、損益通算で控除しきれなかった譲渡損失を、翌年以降3年間にわたり繰り越しできる特例です。
前述の例で言えば、譲渡損失600万円を給与所得500万円から差し引き、100万円の控除枠が余っている状態のため、翌年でまた100万円分の損益通算ができます。
4.手取り額をシミュレーションしてみよう
ここからは、具体的な数字を用いて、手取り額をシミュレーションします。
次のような条件でマンションを売却すると、手取り額がいくらになるか見てみましょう。
購入時の 情報 | マンション取得費(減価償却費相当額控除後) | 4,000万円 |
---|---|---|
その他の取得費 | 120万円 | |
売却時の 情報 | 売却金額 | 5,000万円 |
譲渡費用 | 200万円 | |
譲渡費用以外の売却にかかった費用 | 50万円 | |
住宅ローン残債 | 3,000万円 | |
所有期間 | 8年 |
まず譲渡所得税を計算するため、譲渡所得を計算します。譲渡所得は、売却金額からマンション取得費とその他の取得費の合計、および譲渡費用を引いた額です。
求めた譲渡所得に税率をかけて、譲渡所得税額を計算します。所有期間が5年超の場合、税率は20.315%です。
手取り額は、売却金額から譲渡費用と譲渡費用以外の売却にかかった費用、譲渡所得税額、そしてローン残債を引いて求めます。
このシミュレーションでの手取り額は、1,611.9万円になります。
なお、上記シミュレーションでは、「3-2.譲渡所得税に関する特例」で解説した3,000万円特別控除の特例を適用していません。
3,000万円特別控除を適用した場合は、シミュレーションにおける譲渡所得が3,000万円以下のため非課税になります。
5.マンション売却の手取り額を増やすコツ
ここからは、マンションを売却する時に手取り額を増やすためのコツを、次の通り4点紹介します。コツを掴んで、マンションの売却活動を有利に進めましょう。
- 複数社の査定を比較して不動産会社選びに注力する
- 売り急がずに仲介で売る
- 不動産売買の繁忙期を狙う
- 住宅ローン残高が少なくなってから売る
5-1.複数社の査定を比較して不動産会社選びに注力する
マンションを高く売却するためには、複数社の査定を比較して不動産会社選びに注力することが重要です。
不動産会社には得意な地域や分野があります。例えば、特定のエリアの販路が充実している会社や、築古物件ばかりを得意とする会社などさまざまです。
そのため同じ物件でも不動産会社によって売却のノウハウが異なり、売却の結果も変わってきます。
マンションの査定をするときは、1社ではなく複数の不動産会社へ依頼して、査定額やサービス内容を比較した上で、物件に最適な会社を選ぶことが大切です。
NTTデータグループが運営する一括査定サービス不動産売却 HOME4U(ホームフォーユー)は、全国から厳選した2,300以上の不動産会社と提携しており、最大6社へ同時に査定を依頼できます。
適切な査定額、信頼できる不動産会社を見つけやすくなるので、ぜひご活用下さい。
5-2.売り急がずに仲介で売る
マンションを売却する方法には、仲介と買取の2種類があります。
仲介とは、不動産会社に仲介を依頼し、購入希望者を探す方法です。
購入希望者を探すまでに時間のかかる場合がありますが、市場価格に近い価格での売却が期待できます。
買取とは、不動産会社が直接物件を買い取る方法で、すぐに現金化できますが、売却価格が市場価格よりも安くなります。
不動産会社が物件を再販するための費用や、それを差し引いたうえでの利益を考慮し、買取価格を設定するからです。
基本的に高く売りたい方は仲介を選ぶようにしましょう。
ただし、購入希望者を募る十分な時間をとらずに売り急いでしまうと、安売りしてしまう原因となります。
あまりにも時間がない方は、買取も前向きに考えていきましょう。
5-3.不動産売買の繁忙期を狙う
不動産市場は2〜3月にかけて、取引が活発になり需要が高まるため、好条件での成約が期待できます。
新生活の準備を始める方が多く、転勤や進学などで住み替えを検討する方も増えるためです。
需要が高い時期は、購入希望者を募りやすいため、より好条件で売却できる可能性が高まります。
繁忙期にはすでに売り出されている状況にしておくことが重要なので、余裕をもって事前準備を行っていきましょう。
物件の査定や不動産会社選び、売却活動の準備など、2〜3か月前から計画的に進めておくことをおすすめします。
5-4.住宅ローン残高が少なくなってから売る
住宅ローンが残っている場合、売却金額の一部は住宅ローンの返済に充てる必要があります。
住み替えの資金も少なくなってしまうので、住宅ローン残高はできるだけ少なくなってから売りましょう。
適切に返済を行えば住宅ローン残高はいずれゼロになりますが、マンションの価値はゼロにはなりません。
一戸建てに比べて、マンションは建物価値が長く残りやすいため、ある程度高く売れる可能性があります。
簡単ではありませんが、住宅ローンの返済を進めて、マンションを高く売ることが、手取り額を増やす最大の方法です。
まとめ
マンションを売却したときの手取り額は、売却金額からさまざまな費用や税金を差し引いた金額です。
売却金額がそのまま手取り額になるわけではないので注意しましょう。
売却にかかる費用のうち最も大きくなりやすいのは仲介手数料です。
譲渡所得税の計算は少し難しく、特例の適用等も考慮して計算する必要があります。本記事3章の内容を何度かご覧いただければより深く理解できるかと思います。
また、手取り額を増やすには当然、高く売ることが重要です。
マンションを高く売却したい方は、複数社に査定を依頼し、比較し、高く売ってくれる信頼できる不動産会社を選びましょう。
複数社への査定依頼は大変ですが、NTTデータグループが運営する一括査定サービス「不動産売却 HOME4U」を利用すると簡単です。
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