トラブルなく土地を売却するための基礎知識完全ガイド

トラブルなく土地を売却するための基礎知識完全ガイド

いざ土地を売却しようとしても、何から手を付けて良いのか分からない方も多いと思います。

特に先祖代々から持っている古い土地は、売却の途中でつまずきやすいポイントがいくつかあります。

例えば、境界が不明瞭のため、土地がそもそも売れる状態になっていない場合があります。また瑕疵担保責任という知識を知らないと、売却後に買主から損害賠償責任を負うようなこともあります。やっとの思いで売却を決めても、今度は売却に必要な権利証が無くて困ってしまう方も多いです。

さらに土地を売却するときに注意したいのが税金です。土地の売却には税金を安く抑えてくれる特例制度がほとんどありません。後で税額に驚くことがないように、税金に関してもしっかり押さえておきましょう。

そこで今回の記事では、土地の売却について詳しく解説いたします。この記事を読むことで、トラブルなく土地をきちんと売却できるようになります。土地を売却しようとしている方は、ぜひご参考ください。

土地売却に関する、より基礎的な内容を知りたい方は『土地売却の流れは?古い家がある土地の売り方も専門家が解説』も併せてご覧ください。

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1. 土地が売れる状態になっていますか

1-1. 境界の明示義務

土地の売主には境界を明示する義務があります。あなたの土地は、そもそも境界をきちんと明示できる状態になっていますでしょうか?

もしあなたの土地がきちんと境界を明示できないものであれば、売主としての義務を果たすことはできません。つまり、境界が明示できないということは、あなたの土地はそもそも売れる状態になっていないということになります。

裁判においても、土地の境界は争いが非常に多い事件です。買主からすると、境界があいまいな土地は、購入にリスクを伴うことになります。

「境界は、なんとなくこの辺です。」と説明されても、買主は不安になるのは当然です。土地を売却する際は、売却までに境界をきちんと明示できるようにする準備が必要です。

土地の境界には、隣地の私有地との境である民々境(ミンミンザカイ)と、道路等の公共の土地との境である官民境(カンミンザカイ)の2種類があります。

※民々境とは両隣や背後地のお隣さんの土地との境界のことです。
※官民境とは自分の土地と道路や歩道との境界のことです。

売却においては、民々境と官民境の両方を明示します。

境界ラインがきちんと明確になっていることを、「境界が確定している」と言います。境界ラインが確定している状況とは、まず境界の端にきちんと境界鋲が打ち込んであることが必要です。次に民々境では、隣地所有者と「筆界(フデカイ)確認書」、もしくは「筆界確認書に準じた名前の覚書」があることも必要です。

また官民境については、境界が確定しても、筆界確認書は存在しません。官民の境界が確定している場合には、道路管理者が境界査定書と呼ばれる書面を保管しています。まずは境界鋲と筆界確認書があるかどうかを確認しましょう。以上、ここまで境界の明示義務について見てきました。

境界が確定しているかどうかについては、簡単に確認する方法があります。そこで次に境界の確認方法について解説します。

1-2. 境界の確認方法

土地の境界が確定しているかどうかについては、一発で確認できる方法があります。それは、「確定測量図」もしくは「確定実測図」という実測図が存在すれば、境界は確定しています。

実測図の中でも「確定〇〇図」と呼ばれる「確定」と名の付く実測図面は特別な意味を持ちます。

「確定」という文言が入っている図面は、全ての境界が確定しているという意味を表しています。ただの、「実測図」や「現況測量図」、「地積測量図」という実測図は、境界が確定しているとは限りません。境界が確定しているかどうかは、「確定〇〇図」という名称の図面の有無について確認することが簡単な確認方法です。

「確定〇〇図」が無い場合、次に「筆界確認書」が全て存在するかどうかを確認してください。

筆界確認書が全て存在するかどうかは、まず自分の土地の公図を取得することから始めます。公図とは、土地の地型を表す簡単な図面です。

公図は、その土地が所在する最寄の法務局で取得することができます。公図の取得には、450円の印紙代が必要になります。
公図は郵送でも取得することが可能です。

土地の単位を筆(フデ)と呼び、一つ一つの筆には地番と呼ばれる番号が振られています。公図を取得すると、隣地の筆の地番が分かります。

隣地の地番が分かったら、各筆との筆界確認書が全て存在するか確認しましょう。

もし、民々境で全ての筆界確認書が揃っているにもかかわらず、確定測量図が無い場合、官民境が確定していない可能性があります。官民境に関しては、前面道路の道路管理者(市道なら市、県道なら県)に問い合わせをして、官民境が確定しているかどうかを確認しておきます。

以上、ここまで境界の確認方法について見てきました。

境界が確定していない場合には、売却までに境界を確定する必要があります。そこで次に境界の確定について解説します。

1-3. 境界の確定

境界が未確定の場合には、測量を行い、境界の確定を行います。境界確定は土地家屋調査士に依頼します。

依頼内容は、「筆界確認書」「確定測量図」の作成の2点です。

筆界確認書は、それぞれの隣地の所有者と「境界ラインはここです」という内容をお互いに確認しあった旨を記載した書面です。筆界確認書は、通常、実印で押印を行います。念のためお互いの印鑑証明書も添付しておくことが望ましいです。

隣地との間で境界鋲が無い場合は、新たに境界鋲を設置します。境界鋲を設置し、隣地所有者との立ち合いを行います。

隣地所有者への打診や立ち合いの段取り、書面の作成等は、全て土地家屋調査士の方で行います。依頼者であるあなたは、土地家屋調査士から立ち合い日の連絡が入るまで、待っているだけで問題ありません。境界に争いのない土地で、隣地所有者も協力的であれば、民々境の境界確定は1ヶ月程度で終了します。

一方で、非常に厄介なのが官民境です。官民境界の確定は、道路管理者とだけではなく、道路の対岸側の土地の所有者との同意を得る必要があります。

対岸側に土地の所有者の数が多いと、官民境界の確定には非常に時間がかかってしまう場合があります。

場合によっては、官民境界の確定には半年以上の時間がかかってしまうこともあります。官民境界が未確定の場合は、早めに測量の実施するようにしましょう。

以上、ここまで境界の確定について見てきました。

それでは次に境界が確定できない場合の対処法について見ていきます。

1-4. 境界が確定できない場合の対処法

境界を確定しようとして、隣地に境界確定の打診をしたところ、境界の了解をもらえない場合があります。

売主には境界の明示義務はあるものの、どうしても境界の了解を得られないということはあり得ます。

しかしながら、買主の了解を得られるようであれば、境界を明示できなくても売却は可能です。その場合、売買契約書には「境界非明示の特約」を付けることになります。境界非明示の特約では、売却後に損害賠償請求等を受けないようにする必要があります。

また、売却後のトラブルを避けるためにも、念のため合意書を取り交わしておくことをお勧めします。

合意書を締結するには、まず売主と買主、隣地所有者の三者で確定できない境界部分の確認を行います。次に、三者で筆界確認書が取得できないことを「確認」します。境界が「確認できないことを確認する」という点がポイントです。そして最後に売主と買主の間で、「売主と隣地所有者および買主の3者で再度境界の確認を行ったことで筆界確認書に変える」という旨の「合意書」を締結します。

売買契約書の「境界非明示の特約」だけで不安な方は、買主との間で合意書も締結しておいた方が安全です。

但し、境界を明示せずに売却することは、あくまでも買主の了解事項になります。買主からすると、境界が明確でない物件は買いたくないというのが基本です。

高く土地を売却したいのであれば、売却前に全ての境界は確定しておくべきです。境界が未確定の土地は、境界確定を行い「売れる状態」とすることから始めましょう。

以上、ここまで「土地が売れる状態になっているかどうか」について見てきました。

2. 土地の瑕疵担保責任

不動産の売主は、瑕疵担保責任の知識を持っておく必要があります。そこで次に土地の瑕疵担保責任についてご紹介します。

2-1. 瑕疵担保責任とは

不動産の売却では、売主は瑕疵担保責任という責任を負います。瑕疵(カシ)とは、売買契約の目的物が通常有すべき品質・性能を欠いていることをいいます。

瑕疵担保責任の対象となるのは、「隠れた瑕疵」になります。隠れた瑕疵とは、買主が通常の注意を払ったにも関わらず、発見できなかった瑕疵をいいます。

民法では、瑕疵が発見されたとき、買主は、発見後1年間は売主に対し、損害賠償を請求できると定めています。また契約目的の達成できない場合には解除も請求できると定めています。

この条文をそのまま適用すると、例えば土地を売却して50年後に瑕疵が発見された場合、51年目までに買主は売主に対して損害賠償請求をできることになります。

放っておくと民法の原則が適用されてしまうため、現実的ではありません。そこで、実際の売買契約では原則を変更する瑕疵担保責任の条文を入れることが通常です。

民法の瑕疵担保責任は、当事者の合意があれば原則を変更するような契約を結んでも良いことになっています。このように原則を合意によって変更できる規定を専門用語で「任意規定」と呼んでいます。

そこで、不動産の売却では買主の合意を前提に、例外的に売主の瑕疵担保責任の全部または一部を免責する取引を行います

一般的に、個人が行う不動産の売却では、買主の合意の元、売主が負担する瑕疵担保責任の責任期間は3ヶ月程度とすることが多いです。

3ヶ月しか瑕疵担保責任を負わないというのは、民法としては例外ですが、不動産の取引ではほぼ一般化しています。

売却後、3ヶ月を過ぎて何も発見されなかった場合、売主は瑕疵担保責任を負わなくても済むようになります。

ただ、瑕疵担保期間を3ヶ月に限定したとしても、売主としては、やはり瑕疵担保責任は負いたくありません。そこで次に回避すべき瑕疵担保責任についてご紹介します。

2-2. 回避すべき瑕疵担保責任

不動産の瑕疵は、雨漏りやシロアリによる床下の腐食等が、例としてよく挙げられます。瑕疵の典型的な例は、ほとんどが建物に起因するものであり、土地の瑕疵とは何かというのは、ピンと来ない人も多いです。

土地の瑕疵の代表例としては、「土壌汚染」と「地下埋設物」の2つです。この2つの瑕疵は、売主としては特約によって瑕疵担保を全て免責しておきたい瑕疵になります。

土壌汚染を除去しようとすると、莫大な費用がかかります。そのため、土壌汚染は売主の瑕疵担保からは特約で完全に免責しておくべきです。

大きな土地の売却などは、売却前に売主側で土壌汚染調査をすることがあります。しかしながら、たとえ土壌汚染調査の結果が「白」であったとしても油断してはいけません。

通常、土をサンプリングして化学的に行う調査でも、地表から50cm程度のところまでしか調査は行いません。この調査は表層調査またはPhase2調査と呼ばれています。

表層調査だけでは、50cmよりも深い部分の汚染土壌を把握することはできません。表層には汚染土壌がなくても、その下に汚染土壌が存在する場合があります。

例えば、買主が地下階のある建物を作る場合、50cmよりも深い部分で汚染土壌が見つかることがあります。地下の土は、敷地の外へ搬出して捨てることになりますが、もしその土が汚染されている場合は捨てる前に汚染除去しなければならなくなります。汚染土壌の浄化費用には、莫大な費用がかかってしまいます。売主としては、地下部分の瑕疵担保責任の追及は避けたいところです。

そのため、土壌汚染については、仮に表層調査の調査結果が「白」であったとしても、特約で土壌汚染については瑕疵担保責任を完全に免責しておくことがポイントです。基本的には不動産会社で配慮してくれるため心配ありませんが、自分でも注意するようにしましょう。

また、地下埋設物についても同様です。

地下には例えば前々所有者が、大きなコンクリートの塊を埋めたままというような場合があります。そのようなコンクリートの塊が残っていると、それを除去するために買主に大きな費用負担が発生します。

地下のコンクリートの塊も、売主には分かりません。地下埋設物についても、特約で瑕疵担保責任を完全に免責するようにしておきます。

但し、瑕疵担保責任は、売主が知っていたにもかかわらず伝えていなかった瑕疵については、瑕疵担保責任を免責することはできません。

地下埋設物も、自分が埋めて黙って売った場合には、売主は責任を免れることはできないのです。

土地に売主が知っている瑕疵がある場合には、事前に買主へ伝えなければいけない点に注意をしておきましょう。

3. 土地売却に必要な書類

それでは次に土地売却について必要な書類についてご紹介します。

3-1. 必要な書類一覧

土地の売却に必要な書類および持参物は以下になります。

土地売却に必要な書類および持参物

  1. 権利証又は登記識別情報通知書
  2. 実印
  3. 印鑑証明書(3ヶ月以内)
  4. 固定資産税・都市計画税納税通知書
  5. 住民票
  6. 本人確認資料(運転免許証等)
  7. 固定資産税評価証明書
  8. 抵当権等抹消書類
  9. 確定測量図
  10. 境界確認書
  11. 越境の覚書

この中で、「権利証又は登記識別情報通知書」、「実印」、「印鑑証明書(3ヶ月以内)」については、所有権の移転登記に要するため、必ず必要となる書類です。個人の方は、印鑑証明書については市区町村役場で取得することができます。

売却に必要な書類の中で最も重要な書類が「権利証」です。

権利証とは、所有者が登記権利者として権利を取得した際に、登記所(法務局)から渡された「登記済証」になります。権利証は所有者しか持ちえない書類です。

一方で、登記識別情報通知書とは、物権変動の登記申請を行うと、権利証の代わりに登記名義人となった申請人に対し通知される書面です。

2005年3月7日より改正不動産登記法の施行以降、利証は登記識別情報通知書に代わっています。登記識別情報は、権利証に代わる書類です。改正不動産登記法の施行以降に購入した土地については、登記識別情報通知書を持っていることになります。

先祖から代々受け継いでいる土地に関しては、権利証を紛失してしまっているような場合も珍しくありません。

そこで次に権利証がない場合の対応方法について解説します。

3-2. 権利証がない場合の対応方法

権利証は権利者本人しか持ちえない書類であるため、権利証がない場合は、売却しようとしている人が、本当に本人なのか確かめる必要があります。

権利証または登記識別情報通知書を紛失している場合、権利証以外による本人確認の代替制度としては以下の3つになります。

権利証または登記識別情報通知書を紛失した場合の対応方法

  1. 事前通知制度
  2. 本人確認情報の提供制度
  3. 公証人による本人確認制度

事前通知制度では、法務局の書面によって本人確認を行う制度です。登記を申請してから数日後、法務局の登記官が所有者本人であることを確認するため、本人宛に封書による「事前通知」を発送されます。

事前通知が発送された日から2週間以内に所有者本人が署名・実印で捺印した「事前通知に基づく申出書」を法務局に提出します。事前通知は本人限定受取郵便(本人のみが受け取ることのできる郵便)であるため、所有者本人が郵便局へ身分証明書を持参して取りに行きます。

本人確認情報の提供制度とは、司法書士によって本人確認を行う制度です。不動産の所有者が登記申請をする本人であることを書類および面談によって司法書士が確認し、本人確認情報を作成して登記の申請時に添付します。司法書士が作成した本人確認情報を添付すれば、原則として事前通知等を行う必要はありません。

公証人による本人確認制度とは、公証人が本人確認を行う制度です。公証人が、不動産の所有が登記申請をする本人であることを公的な証明書及び面談によって確認します。売主は持参した所有権移転登記委任状を公証人に提出し、面前で署名・捺印を行い、「認証書類」を作成します。公証人作成の「認証書類」を添付すれば、原則として事前通知等を行う必要はありません。

このように、権利証は紛失していたとしても土地を売却することは可能です。

但し、代替制度を利用する必要があるため、不動産会社や司法書士へは早めに権利証がないことを早めに伝える必要があります。

まずは、権利証がきちんとあるかどうかを確認するようにして下さい。

以上、ここまで土地売却に必要な書類について見てきました。

4. 事前に知っておきたい土地売却と税金

土地を売却すると税金が発生することがあります。そこでここでは土地を売却したときの税金について解説します。

4-1. 譲渡所得と税率

個人の所得には、給与所得、譲渡所得、不動産所得、事業所得、山林所得、退職所得、利子所得、配当所得、一時所得、雑所得と呼ばれる10種類の所得があります。

このうち、不動産を売却した際に発生する所得を譲渡所得と呼びます。譲渡所得とは、不動産の売却額ではありません。売却によって発生する利益のことを譲渡所得と呼びます。

譲渡所得は、以下の計算式で表されます。

譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用

譲渡価額とは土地の売却額になります。取得費は、売却した土地を購入した際の昔の購入額になります。

厳密に言うと、取得費は以下のものを含めることができます。

  1. 購入時に支払った仲介手数料
  2. 購入時に支払った立退料や移転料
  3. 購入時の売買契約書に貼付した印紙税
  4. 購入時の登録免許税や登録手数料
  5. 購入時の不動産取得税
  6. 購入時の搬入費や据付費
  7. 購入時の建物等の取壊し費用

また、譲渡費用は、土地の売却に要した費用です。譲渡費用には以下のものを含めることができます。

  1. 売却時の仲介手数料
  2. 売却時の広告費や測量費
  3. 売却時の売買契約書に貼付した印紙税
  4. 売却に伴い発生した立退料
  5. 売却に伴い発生した建物等の取壊し費用

譲渡所得は、取得費や譲渡価額によって、プラスの場合もあれば、マイナスとなる場合もあります。

プラスであれば税金は所得税及び住民税、復興特別所得税が発生します。マイナスであれば税金は発生しないことになります。

よって土地を売却しても税金は発生する場合と発生しない場合があるということになります。

税金が発生する場合、税率は売却した土地の所有期間によって異なります。所有期間は5年以下であれば短期譲渡所得、5年超であれば長期譲渡所得と呼ばれています。短期譲渡所得および長期譲渡所得の税率は以下の通りです。

保有期間 所得税率 住民税率
5年以下(短期譲渡所得) 30% 9%
5年超(長期譲渡所得) 15% 5%
所有期間に関わらず復興特別所得税(所得税に対して税率2.1%)が発生します。

尚、マイホームを取り壊した後の土地を売却した場合、譲渡所得から3,000万円を控除してくれる特例があります。この特例を3,000万円特別控除の特例と呼びます。

土地売却時に使える3,000万円特別控除の要件

転居後に家屋を取り壊した、転居してから3年後の12月31日までか、取壊し後1年以内か、いずれか早い日までに譲渡する場合(取壊し後にその敷地を貸し付けたり、事業の用に供したりすると適用外となる)

3,000万円特別控除を適用すると、譲渡所得は以下のように計算されます。

譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用 - 3,000万円

特例を適用した結果、もし譲渡所得がマイナスになれば、税金は発生することはありません。非常に有効な特例ですので、要件に合致するか確認するようにして下さい。

以上、ここまで譲渡所得と税率について見てきました。

では、取得費が分からない場合はどうしたら良いのでしょうか。そこで次に取得費が不明の場合について見ていきます。

4-2. 取得費が不明の場合

先祖代々持っているような土地の場合、取得費が全く分からないケースがあります。この場合、実際の取得費の代わりとして、概算取得費というものを計算で用います。概算取得費とは譲渡価額の5%を取得費として計算する方法です。

概算取得費を用いた場合の譲渡所得は以下のように計算されます。

譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用
     = 譲渡価額 - 譲渡価額×5% - 譲渡費用

概算取得費を用いると、取得費がとても小さいため、譲渡所得が大きくなってしまいます。そのため、取得費が分からないような土地を売却すると、ほぼ税金は発生します。

昔から持っている土地であれば、所有期間は相続で引き継ぐことができます。多くの場合、相続で引き継いだような土地は、長期譲渡所得が適用され、税率は所得税が15%、住民税が5%となります。

例えば、以下のような条件の土地を売却した場合の税金を計算してみます。

売却する土地の条件

  • 譲渡価額:1,000万円
  • 取得費:不明
  • 所有期間:50年(5年超なので長期譲渡所得となります。)
  • 譲渡費用:36万円(仲介手数料)
税金

譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用
     = 譲渡価額 - 譲渡価額×5% - 譲渡費用
     = 1,000万円 - 50万円 - 36万円
     = 914万円

所得税 = 譲渡所得 × 税率(15%)
    = 914万円 × 15%
    = 137.1万円

復興特別所得税 = 所得税 × 2.1%
        = 2.87万円

住民税 = 譲渡所得 × 税率(5%)
    = 914万円 × 5%
    = 45.7万円

税額合計 = 所得税 + 復興特別所得税 + 住民税
     = 137.1万円 + 2.87万円 + 45.7万円
     = 185.67万円

取得費が不明であり、かつ長期譲渡所得となる土地を売却した場合には、ざっくり、約2割弱の税金がかかるというイメージとなります。

尚、相続によって取得した土地であっても、被相続人が住んでいた空き家を取り壊して売却した場合には、3,000万円特別控除を適用できます。

3,000万円特別控除が適用できると、概算取得費を用いても譲渡所得が相当に圧縮されます。但し、相続空き家を取り壊して3,000万円特別控除を適用する場合、以下の要件が必要となります。

取り壊す空き家の要件

  1. 相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋であること
  2. 1981年5月31日以前に建築された家屋であること
  3. 相続の開始直前においてその被相続人以外に居住していた者がいなかったこと
  4. 相続の時からその取壊しの時まで事業の用、貸付の用又は居住の用に供されていたことがないこと、かつ、土地について相続の時からその譲渡の時まで事業の用、貸付の用または居住の用に供されていたことがないこと
  5. 土地の売却額が1億円以下であること

土地の売却では、残念ながら税金を抑えてくれるような特例はあまりありません。そのため、3,000万円特別控除ができる場合は、税金面においてかなり良い条件の売却と言えます。

土地で3,000万円特別控除を適用できるケースは、「自分のマイホームを取り壊して売却する場合」と「相続空き家を取り壊して売却する場合」の2つのパターンに限られます。

貴重なケースですので、該当可能性のある場合は、要件に合致するかどうか、きちんと確認しましょう。

以上、ここまで. 事前に知っておきたい土地売却と税金について見てきました。

それでは最後に、隣地への打診について解説します。

5. 高く売るなら必ず隣地に打診する

土地を売却する場合、隣地への売却打診は必須です。

特に地型(土地の形のこと)の悪い土地であれば、必ず隣地へは声をかけるべきです。地型の悪い土地は、普通に売却すると価値が低くなりますが、隣地の人が購入する場合、隣地の敷地が広くなるため、第三者よりも高い価値を見出すことができます。

そのため、土地を売る場合は、まず隣地から声をかけることが定石です。

もし、隣地所有者への売却であれば、自分で買主を見つけることになるため、不動産会社に仲介を依頼する必要もありません。売主としては仲介手数料も発生しませんし、高く売却できるため、隣地への売却は非常にメリットがあります。

ところが、実際の売却においては、隣地に声をかけてもなかなか売却できないことも多いです。理由としては、元々全く購入する気がない人が急に購入を打診されても、高額のお金がなかなか出せないためです。

よって隣地へ売却を打診する際は、回答期限も伝えておくことがポイントです。

「土地を買ってもらえませんか?」と打診するのと同時に、「もし興味がございましたら、1ヶ月以内に返事を下さい。お返事が無ければ、第三者へ売却します。」と伝えておくのが良いでしょう。

隣地所有者は、購入の検討者が自分だけだと思うと、値段を下げてくれるのを待つ人が多いです。ところが、他にも購入する人がいる可能性が分かると、真剣に購入を検討し始めます。購入は早い者勝ちであると認識させるのがコツです。

尚、隣地以外へ土地を売却するのであれば、やはり不動産会社の力を借りることをお勧めします。

不動産会社は、コストをかけてインターネット広告を掲示してくれます。インターネット広告は、不動産を売却するにあたって最も効果的な媒体です。土地を良い条件で売却するためには、不動産会社の協力は欠かせません。

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まとめ

いかがでしたか?

土地の売却について解説してきました。

土地の売却では、境界の明示や土壌汚染等の瑕疵担保責任の免責等がポイントでした。また権利証については、さっそく有無を確認するようにしてください。税金に関しても、取得費が不明の場合には、約20%の税金がかかります。

さらに、土地を高く売却するのであれば、隣地への打診か、もしくはHOME4Uの利用がポイントでした。後々トラブルとならないためにも、しっかりと準備をしたうえで土地の売却を行いましょう。

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