土地を売却する際、地中に埋設物がないか懸念されていませんか?
埋設物があると買主との間でトラブルに発展する可能性があるため、揉め事を起こさずに売却したいと考えている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、地中埋設物の調べ方と撤去費用をお伝えした上で、トラブル防止の方法を解説します。
これを読めば、安心して土地を売却できるでしょう。
- 地中埋設物の調べ方
- 地中埋設物の撤去費用
- 地中埋設物のトラブルを防止するポイント
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Contents
1.地中埋設物とは?調べ方と撤去の費用
地中埋設物とは、地中に埋まっている障害物のことです。
- 建物基礎
- 井戸
- 浄化槽
- 屋根瓦
- コンクリートガラ
- 岩
- 医療廃棄物
- 古い水道管
以上のようなものが地中埋設物に当たります。
このような地中埋設物は残らず撤去する必要があります。
売却後、土地に地中埋設物が発見されると、売主は買主から契約不適合責任を問われるからです。
契約不適合責任を問われると、損害賠償の請求や契約解除の申し出をされるなど、最悪の事態に発展するおそれがあります。
売却後のトラブルを避けるため、地中埋設物の撤去方法と、その際にかかる費用を詳しく見ていきましょう。
1-1.地中埋設物の調べ方
地中埋設物の調査は、専門知識や専用の機材がないとできません。
そのため、地中埋設物を調べる場合には専門の業者に依頼するのが一般的です。
埋設物の調べ方には、以下の3つが挙げられます。
- 地歴調査
- 地中レーダー探査
- ボーリング調査
ひとつずつ見ていきましょう。
1-1-1.地歴調査
地歴調査とは、過去にどのように土地が利用されてきたのかを調べる方法です。
埋設物の有無を確認する際に最初に行われる調査で、登記簿や古地図、地形図などを使用し、過去の土地の利用歴を確認します。
過去にガソリンスタンドやクリーニング店、工場などに利用されていた場合は、何らかの埋設物がある可能性が高いです。
化学物質で土壌が汚染されている可能性もあるので注意してください。
地歴調査の場合、簡易的な調査で5~10万円程度の費用がかかります。
1-1-2.地中レーダー探査
地中レーダー探査とは、地歴調査の結果、埋設物がある可能性が高いと判断された場合に実施される非破壊検査です。
アンテナを走査することにより電磁波を照射し、レーダーチャートという反射波形から地中埋設物や空洞の有無、地盤の緩みなどを調査します。
調査する土地の広さによって異なりますが、一般的な住宅地で10~15万円程度の費用がかかります。
1-1-3.ボーリング調査
ボーリング調査とは、埋設物がある可能性が高いと判断された場合にボーリングマシンを使って行われる破壊検査です。
ボーリングマシンで地面に8cm程度の穴をあけ、鉄の筒状の部品を挿入し、ハンマーによる打撃を複数回行って地盤の強度を測定します。
実際に地面に穴をあけて行われるため調査精度が高く、地下水の調査による土壌汚染も調べることが可能です。
簡易調査で10万円程度、詳細調査で30万円程度の費用がかかります。
1-2.地中埋設物の撤去費用
調査で埋設物が見つかった場合、調査費用とは別に以下のような撤去費用が発生します。
埋設物の種類 | 撤去費用(1平方メートルあたり) |
---|---|
木くず | 5,000円~ |
コンクリートガラ | 12,000円~ |
石膏ボード | 12,000円~ |
カーペット | 15,000円~ |
レンガ | 22,000円~ |
屋根瓦 | 22,000円~ |
タイル | 25,000円~ |
サイディング | 25,000円~ |
上記の埋設物の種類ごとの撤去費用に加えて、撤去時に使用するダンプやトラックの運送費が発生します。
2tトラックの目安は18,000円からとなっており、使用する種類や大きさによって異なります。
2.地中埋設物が残っていると責任を問われる場合がある
地中に埋設物が残ったままの土地を売却した場合、買主が建物を建てようとした際に埋設物が邪魔になります。
地中に埋まった埋設物を取り除くには費用と時間がかかるため、買主からクレームがつきます。
地中に埋設物があった場合は、契約不適合責任によって売主が責任を負うことになるのが一般的です。
特に廃棄物が地中に残っていることを知りながら売った場合、責任の重さから損害賠償を請求されることもあるので注意が必要です。
ポイント
- 売主は地中埋設物を全て撤去する義務がある
- 売主が地中埋設物があることを把握している場合、告知義務がある
- 知っていながら告知しない場合、損害賠償など責任を問われる可能性がある
契約不適合責任を問われた場合、どのような事態が起こるのか見ていきましょう。
2-1.契約不適合責任を問われるとどうなる?
契約不適合責任を問われると、売主は買主から「損害賠償の請求」や「契約解除の申し出」をされます。
契約不適合責任は、民法第562条~564条に以下のように明記されています。
民法第562条(買主の追完請求権)
引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。民法563条(買主の代金減額請求権)
前条第一項本文に規定する場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。民法第564条(買主の損害賠償請求及び解除権の行使)
前二条の規定は、第四百十五条の規定による損害賠償の請求並びに第五百四十一条及び第五百四十二条の規定による解除権の行使を妨げない。出典:e-Gov 法令検索.”明治二十九年法律第八十九号 民法”.(参照2023-10-25)
上記によると、引き渡しされた不動産に不備があった場合、売主は買主に対して責任を負います。
地中に埋設物が埋まっているケースでは、買主は埋設物がないことを前提に購入しているので、埋設物があった場合には売主が責任を負うのです。
2-2.契約不適合責任が問われた過去の判例
実際に地中の埋設物が原因で契約不適合責任が問われた事例があります。
以下は平成30年3月29日に東京地裁で下された判決です。
売主が建物を取り壊してから買主に売却した際、地中に建物の建築の障害となる取り壊し前の建物の土間スラブ、コンクリートガラなどの埋設物が発見された事案。買主は売主や媒介業者に対して、埋設物の除去にかかった費用や弁護士費用などを含めて計2,480万円余を請求。
買主の売主に対する計2,480万円余の請求を認める。媒介業者に対する請求は棄却。
損害賠償が認められた理由は、以下の2つです。
- 建物の取り壊しが不完全で埋設物が残っていることを売主が知りえた状況にあった
- 知りえた場合は買主への告知義務が発生し、今回の事例では売主は告知していなかった
なお、契約不適合責任が問われる期間は10年間です。
3.契約不適合責任に関するトラブルを防止するためのポイント
ここまで見てきたことから、地中に埋設物があり契約不適合責任を問われた場合、数千万円の損害賠償を請求される可能性があるとわかりました。
トラブルを回避するためにも、以下の3つのポイントを押さえておくことが大切です。
- 地中埋設物があるなら重要事項説明で告知する
- 土地がどのような用途で使われていたか説明する
- 心配なら地中埋設物を調査する
詳しく見ていきましょう。
3-1.地中埋設物があるなら重要事項説明で告知する
地中埋設物があることを知っている場合は、売買契約締結時の重要事項説明で必ずその旨を伝えましょう。
重要事項説明の際に告知して、相手が了承したのであれば契約不適合責任を問われません。
トラブルを防ぐためにも、必ず告知しましょう。
3-2.土地がどのような用途で使われていたか説明する
地中埋設物の有無に関係なく、売主には地歴(土地がどのような用途で使用されていたか)を説明する義務を負います。
ただし説明したからといって、埋設物が見つかった場合の責任が免除されるわけではありません。
とはいえ、地歴を説明しておけば買主とのトラブルを最小限に抑えられる可能性があります。
3-3.心配なら地中埋設物を調査する
土地売却後のトラブルを回避したい方は、不動産会社に相談して地中埋設物の調査を行っておくと安心です。
地中埋設物の調査方法は以下の3種類です。
調査方法 | 調査目的 |
---|---|
地歴調査 | 過去にどのように土地が利用されてきたのかを調べる (費用相場:5~10万円 |
地中レーダー調査 | 地中レーダー調査:専用の機器を使って行われる非破壊検査 (費用相場:10~15万円) |
ボーリング調査 | ボーリング調査:ボーリングマシンを使って行われる破壊検査 (費用相場:30万円程度) |
費用が発生するものの、調査を実施しておけば安心して土地を売却できるようになります。
この記事のポイントまとめ
地中埋設物とは、地中に埋まっている障害物・障害物のことです。
以下のようなものが地中埋設物に当たります。
- 建物基礎
- 井戸
- 浄化槽
- 屋根瓦
- コンクリートガラ
- 岩
- 医療廃棄物
- 古い水道管
埋設物があった場合は、調査費用だけでなく、撤去費用も発生します。
数千万円程度の費用がかかる場合もあるので注意しましょう。
詳しくは「1.地中埋設物とは?調べ方と撤去の費用」をご覧ください。
地中埋設物が残っていた場合、買主に契約不適合責任を問われる可能性があります。
また、地中埋設物があることを知っていて黙っていた場合は損害賠償責任を負うことにもなるので注意してください。
土地を売却する場合には、以下のポイントを押さえておきましょう。
- 売主は地中埋設物を全て撤去する義務がある
- 売主が地中埋設物があることを把握している場合、告知義務がある
- 知っていながら告知しない場合、損害賠償など責任を問われる可能性がある
詳しくは「2.地中埋設物が残っていると責任を問われる場合がある」をご覧ください。
地中埋設物のトラブルを未然に防ぐためにも、以下のポイントを押さえた上で土地を売却することをおすすめします。
- 地中埋設物があるなら重要事項説明で告知する
- 土地がどのような用途で使われていたか説明する
- 心配なら地中埋設物を調査する
詳しくは「3.相続した土地の評価額が減額される例」をご覧ください。